『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』特集  vol. 2

Interview

『PSYCHO-PASS サイコパス』にこの人あり…の存在感。“完璧に見えて実は可愛いヤツ” CV:野島健児が分析する、宜野座という男

『PSYCHO-PASS サイコパス』にこの人あり…の存在感。“完璧に見えて実は可愛いヤツ” CV:野島健児が分析する、宜野座という男

人間の心理状態を数値化し管理する近未来を舞台に、潜在犯を裁き取り締まる刑事の活躍をシリアスに描く人気アニメシリーズ『PSYCHO-PASS サイコパス』。2012年のTVシリーズ第一期、2014年の第二期、2015年の『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』を経て、登場キャラクターたちのこれまで語られてこなかったエピソードに焦点を当てた、シリーズ約4年ぶりのスピンオフ作品。それが劇場版3部作『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』だ。1作目となる『Case.1 罪と罰』は2019年1月25日(金)より公開をスタートしている。

Case.1の舞台となるのは、『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』後の2117年冬。若き女性監視官・霜月美佳(しもつき みか/CV:佐倉綾音)と、彼女の先輩である執行官・宜野座伸元(ぎのざ のぶちか/CV:野島健児)がバディを組み、潜在犯隔離施設<サンクチュアリ>の闇を暴く。敏腕刑事だった父・征陸智己(まさおか ともみ/CV:有本欽隆)、さらには元相棒・狡噛慎也(こうがみ しんや/CV:関智一)が潜在犯=執行官となり、自分自身も陰惨な事件によって監視官から執行官へと立場を変えながらも、刑事として己の正義を貫いてきた宜野座のその後を、『Case.1 罪と罰』は描いていく。全シリーズを通じて宜野座を演じている声優・野島健児は、本作に何を想い、宜野座をどう演じたのだろうか?

取材・文 / 阿部美香 撮影 / 増永彩子


宜野座くんは僕にとっての“日常”なんです

劇場用アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』

野島さんは、2018年春の『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズ新プロジェクト製作発表や、秋に開催された「第31回東京国際映画祭」での『Case.1 罪と罰』&『Case.2 First Guardian』のワールドプレミア上映などにも登壇していましたが、ファンの反響の大きさをどう受け止めていましたか?

野島健児 (取材時点では)まだロードショー前なので、一般の方からの反響というのは、これからたくさん伺えると思いますが……試写段階から業界関係者の方からは、かなり絶賛の声をいただいていました。本当に「宜野座を演れて良かった! ありがたい」と思いましたし、こんなに素晴らしい作品に携わることができて幸せですね。

TVシリーズ一期のオーディションの時は、『PSYCHO-PASS サイコパス』がこんなにも自分の声優人生において 重要な関わり方をする作品だとは気が付いていなかった。ひたすら宜野座の長台詞を、オーディションで読んでいたことを思い出します。

今回、順次公開となる3作はスピンオフ的な立ち位置ではありますが、しっかりと『PSYCHO-PASS サイコパス』作品として登場するのは、2015年の劇場版以来。今の野島さんのお話ぶりだと、あまり久々感がなさそうですね?

野島 そうですね。そんなに前作から年月が経ってる感じはしないんですよ。劇場版以後も、合間にもちょこちょこと『PSYCHO-PASS サイコパス』と関わる機会があったからですかね。ゲーム(『PSYCHO-PASS サイコパス 選択なき幸福』)が発売されたり、グッズ用に音声を収録したり。なので、宜野座くんとは、たまに街ですれ違うような感覚です。「元気そうだね、こんなところで会うんだね」みたいな(笑)。

今回の『Case.1 罪と罰』も「今度はしっかりお世話になるから、よろしくね」という感じではあったのですが、大きなストーリーとしっかりと台詞があるアニメーションで会うわけなので、「ああ、久しぶりだな」という感覚はたしかにありましたね。

そこで意気込みが生まれてきたり?

野島 いえ、特別に意気込みが湧くわけではないですね。常に意気込みはありますし、「改めて意気込む」という感覚だと、無駄に力んでしまいます。そうではなく、もっと……地続きで演じていきたいという想いですね。僕の中に、この作品がなくなってしまうことは信じられない。この先もずっと在り続けるはずだと思えるくらい、宜野座くんは僕の中に存在していて当たり前な存在なんです。僕にとって、彼は日常なんです。ただ、アニメーションとしてのアフレコは久しぶりだったので、多少の緊張感はありました。

襟を正すような心持ちでしょうか。

野島 何と言えばいいんでしょう……同じメンバーで『PSYCHO-PASS サイコパス』を演じるとしても、そこには過去とは目に見えない境界線がある。それを突破するには、心の強さが必要です。今振り返ると、そういう感覚があったと思いますね。

劇場用アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』

『Case.1 罪と罰』のアフレコ自体は、2017年の6月頃にはもう行われていたそうですね。劇場版で新プロジェクトを展開するという企画も、かなり前から温められていたと伺いました。

野島 そうですね。企画自体……何かしらの形で『PSYCHO-PASS サイコパス』をやりますよ、というお話は、2015年の劇場版の頃から聞いていました。「まだ秘密ですけど、やりますよ」と。ただ、「これは……あるある詐欺かもな?」と思えるくらい(笑)、しばらく続報が途切れていたので、不安はありました。

不安ですか?

野島 そもそも新プロジェクトがスタートするとしても、描かれる時代も分からないですし、公安局刑事課一係がまったくの新体制になっている可能性もある。しかもスピンオフですから、もっともっと過去の話になったかもしれない。宜野座が子供で、お父さんの征陸が現役刑事だった若い頃の話になるかもしれない……と考えると、宜野座が出ない可能性も十分はらんでいたので、本当に劇場版をやると聞いた時は、嬉しかったですね。

実は僕、塩谷(直義)監督に直接聞いたんです、「宜野座出ますか?」って。そうしたら、(大声で)「ちゃんと出ますよ、宜野座さんは!」と張り切って答えていただけたので、本当に安心しました(笑)。

霜月の成長を見守ることも、宜野座なりのやりがいになっているのかも

劇場用アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』

『Case.1 罪と罰』の台本を受け取られた時は、どう感じましたか?

野島 「宜野座、めっちゃ喋ってる、やばい」と(笑)。とはいえ、台本だけでは理解しきれない部分は当然ありました。

事前の映像も合わせて観てからアフレコに臨んだのですが、『PSYCHO-PASS サイコパス』はいつも内容の情報量が多いので、台本と映像だけでは把握しきれない部分もたくさんあったんです。そこからスタジオに集まって、みんなの声を聞いて、自分もチューニングしながら宜野座を演じていく中で、生まれてきたのが……「宜野座くんは、こんなに成長していたんだな」という感覚でした。そんなふうに今作は、自分の中で徐々に段階を踏んで、宜野座が生まれていったような気がします。

『Case.1 罪と罰』の主人公のもうひとり、霜月美佳役の佐倉綾音さんも、霜月の成長を感じたとおっしゃっていました(インタビューにて)。

野島 そうなんですよね。宜野座だけでなく他のみんなもちゃんと成長しているんです。僕はそこが今作の大きな見どころじゃないかと思います。じつに“それぞれの成長物語”ですね。

野島健児 エンタメステーションインタビュー

野島さんは宜野座のどの部分に成長を感じられましたか?

野島 とくに、一緒に潜在犯隔離施設を捜査する霜月に対する態度が一番分かりやすいんですけど……本当に人が変わったようです(笑)。

たしかに!(笑) 昔に比べると、ずいぶん大らかになりましたよね。

野島 実際、人が変わったんだと思うんですよ、今作の宜野座は。一係の他のメンバーに反発ばかりしてきた霜月の面倒を、喜んで見ているように見える。霜月が上から目線で何か言ってきても、全然腹を立てないですし、「人遣いが荒いなぁ」みたいなことを言いながらも、霜月のやりたいことをちゃんと受け止めて、しっかりサポートしています。

昔は潜在犯を嫌悪し、融通が利かずカリカリしていた宜野座がなぜそうなれたかというと、TVシリーズや前回の劇場版などのいろいろな事件や出来事を経験して、人間的にも成長した宜野座にとって、霜月は昔の自分に見えているからなのだろうなと。過去に自分が通ってきた道を、霜月が今歩んでいるからこそ、彼女の行動は手に取るように理解できるし、腹も立たない。自分が成長したように、この先の霜月にも人間的な成長があるということが、ちゃんと見えているんでしょうね、宜野座には。霜月の成長を見守ることも、公安局で仕事をする上で、彼なりのやりがいになっているんじゃないですかね?

なるほど。たしかにそうですね。

野島 霜月も前は本当に意地悪な子で、(常守)朱ちゃんに噛み付くことで「私は強い!」と自分を保っているようなところがあった。でも今回は、ちゃんと自分の仕事を全うすることで、自分を保っていっています。自立し、刑事としてとしてちゃんとやっていける人間になれている。霜月も、そこが大きく違いますね。

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