Weekly モバイルエンタメステーション  vol. 24

Column

米津玄師に続け! 2019年来るネット発ソングライター3選

米津玄師に続け!  2019年来るネット発ソングライター3選

昨年最大のヒット曲となった米津玄師「Lemon」。米津はボーカロイドを用いて作曲活動をするクリエイター、いわゆる「ボカロP」から表現者としてのキャリアをスタートしたということで、そのオルタナティブなシーン自体にも改めて光が当たった。

SNSや動画サイトのコメント機能を使ったリアルタイム性の高いファンとのコミュニケーションや、動画・イラスト・タイポグラフィなど、複合的な情報の組み合わせにより世界観をトータルに表現できるのが特徴のこのシーン。米津玄師に続けとばかりに新たな才能がひしめく中から、3人の注目ソングライターをピックアップした。

セレクト・文 / 北出 栞

Eve

空白的でフラットな存在感

自分以外のクリエイターの作った歌を歌ういわゆる「歌い手」文化を出自とし、後に作詞作曲も手掛けるようになったという経緯を持つEve。彼の歌唱法は「フラット」という形容で特徴づけられる。どこか語りかけるような調子もあり、2月リリースの2ndアルバムのタイトルは『おとぎ』。「slumber(眠り)」と「dawn(夜明け)」という2つのインスト曲で挟まれた構成で、優しさと残酷さを備えた、一篇の童話集のような心地よさがある。

また、彼はアパレルブランドのデザイナーという顔も持つ。その屋号である「harapeco商店」のサイトに行くと「性別や体型を選ばない、等身大の自分でいられるようなユニセックスブランド」とある。性差や体型という、人が生まれ持ったものに対する目線が、ここでもフラット。ボカロPを出自としダンスなどの身体表現に向かっていった米津玄師と、きれいな対称性を描いている。包容力のある空白的な存在感は、「アーティスト=自己表現」という観念が根強い日本のポップミュージックシーンにおいて新しさを感じさせるものだ。

もちろんそうしたコンセプトを実現する「Eve」という個の能力が秀でていることも疑い得なく、イラストレーターのMahが描く「目」の存在感の強いキャラクターは、捉えどころがないようでいて強い意思を感じさせる彼自身を的確に表したビジュアルだと言えるだろう。

Eve オフィシャルサイト
http://eveofficial.com/


須田景凪

「高速ボカロック」の正統後継者

すだけいな、と読む。「バルーン」名義でボカロPとしても活動しており、「シャルル」という楽曲がJOYSOUNDの10代カラオケランキングで2017年度の1位を獲得したという。「ボカロも歌も両方大好きだし、それぞれの良さをごっちゃにもしたくないので。ちゃんと差別化して、お互いの良さを出して、作り分けていきたい」とは、公式サイトに掲載のオフィシャルインタビューからの言。本名での活動に完全にシフトした感のある米津に比して(彼も「ハチ」である自分を決して否定してはいないのだが)「バルーン」との活動を並行させていく意思があることが伺える。

サウンド的には初期の米津玄師……というか、ヒトリエや「じん」などがしのぎを削っていた2010年代初頭のいわゆる「高速ボカロック」のシーンを思い起こさせる。かつてのプレイヤーたちがそれぞれの方向に向かっていったのに対し、エアポケットになったシーン共通の特徴……「高速紙芝居」とも言うべき静止画の素早い切り替えとテンポチェンジ、タイポグラフィとの組み合わせの妙で「視覚的に訴えかける」音楽の可能性を、生歌唱と生演奏により再構築し、改めて追求しようとしているのが興味深い。

メジャー初作品『teeter』はあいみょんやWANIMAらを擁するレーベル「unBORDE」からのリリースとなっており、今後どのような展開を見せるか期待が高まる。

須田景凪 オフィシャルサイト
https://www.tabloid0120.com/


キタニタツヤ

多岐にわたる活動形態を持つ新世代

これまで挙げてきた2人に比べると知名度が低いだろうか。ボカロPとしては「こんにちは谷田さん」の名義で活動しており、 同じくボカロシーンから生まれたバンド「ヨルシカ」のサポートベーシストをしていたり、ClariS「コネクト」やLiSA「oath sign」などを手がけた作曲家の渡辺 翔、女性ボーカリストsanaと組んだユニット「sajou no hana」の一員でもあるなど、活動形態は多岐にわたる。

昨年ソロアーティストとして初めてリリースしたアルバム『悪魔の踊り方』は、漢字を多用した曲タイトルやダークなコラージュ風のアートワークにも表れたマイナー調の世界観を、ダンスビートを強調したバンドサウンドに乗せて聴かせる。ポストロックやオルタナティブR&B、ラップの要素を取り入れた楽曲も存在するなど様々な音楽的トレンドに目端が利いており、作家としても活動するがゆえの引き出しの多さを感じさせる。

楽曲提供やプロデュースを行うバンドマンの存在は珍しくなくなったが、パーマネントなバンドに加えサポートプレイヤー、作家、そしてソロとここまで複数の顔を持つミュージシャンは中々いないだろう。まだ20代前半。作家気質の彼が「自分という楽器」を使ってどのような表現をしていくのか今後が楽しみだ。

キタニタツヤ オフィシャルTwitter
@hello_tanitasan


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