Interview

演出・松居大悟&俳優・尾上寛之が語る、同世代で挑む、長塚圭史作品『イヌの日』について

演出・松居大悟&俳優・尾上寛之が語る、同世代で挑む、長塚圭史作品『イヌの日』について
劇団ゴジゲン主宰で映画監督としても活躍している松居大悟と、1994年の朝の連続テレビ小説『ぴあの』に出演し、9歳で役者としてのキャリアをスタートさせた実力派俳優、尾上寛之。2012年にクリープハイプ「オレンジ」のMVで初タッグを組み、同年に安藤 聖を含む3人による演劇ユニット、おかぼれを結成。共に1985年生まれの同学年である二人が、この夏、長塚圭史が手がけた阿佐ヶ谷スパイダースの名作『イヌの日』をリメイク上演することになった。「登場人物と重なる30歳前後の同世代のメンバーで危険なものを作りたい」と語る演出の松居と、最も危険な役を任された尾上に本作にかける意気込みを聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 関 信行


17歳のときに圭史さんに演劇の原体験を与えられた二人が今回一緒にやる

長塚圭史さん率いる阿佐ヶ谷スパイダースの劇作『イヌの日』をリメイクしようと思った理由から聞かせてください。

松居 演劇を始めたきっかけはヨーロッパ企画なんですけど、それよりも前、演劇好きの母に連れられてよく、三谷幸喜さんとか、G2さんとかの舞台を福岡で観に行ってて。高校生のときに阿佐スパの『ポルノ』(2002年/長塚圭史 作・演出)を観て強い衝撃を受けたんですよね。坂の多い街の市長選挙で、市長候補が街にエスカレーターを作ることが必要だっていうことを示すために自分で足を折ったりするという内容で。テレビや映画ではやっちゃいけないようなことをやっていて。しかも、この人たちは正しいと思ってやってる、「演劇ってすげえ!」っていう原体験があって。

尾上 僕が演劇を初めて観たのはテレビなんですけど、大倉孝二さんが主演の『ダブリンの鐘つきカビ人間』(2002年/後藤ひろひと 作・G2 演出)です。芝居の上手さはもちろん、こんなに面白いものがあるのかって、テレビで観てるのに圧倒されたのを覚えてます。そのあとすぐに、初めて自分でお金を払って観に行ったのが、大阪のシアター・ドラマシティで上演されてた『マイ・ロックンロール・スター』(2002年/長塚圭史 作・演出)なんです。内容は忘れちゃったけど、とにかく唖然としたことだけはすごく覚えてて。

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松居 すごいね(笑)。17歳のときに圭史さんに演劇の原体験を与えられた二人が今回一緒にやるのか。僕は大学で演劇を始めて、圭史さんの事務所に入ったときに本人にもその話をしたんですけど。そのあと阿佐スパの過去の資料を見てたときに、この作品(『イヌの日』)のことを知って、また衝撃を受けたんですよね。初恋の女の子を15年間監禁するというお話で。それからずっと気になってて、圭史さんに2年前に「やりたいです」と言って、許可をもらったんです。小学5年生の子が15年間監禁するから、ちょうど今の自分と同じくらいの年齢だなと思ったときに、「同世代で作リたい!」と思って。寛之は同い歳で、ゴジゲンを休止していたときに一緒におかぼれをやっていたから、一番最初に声をかけて。

尾上 でも、直接は言われてないよね?

松居 うん。恥ずかしくて言ってない(笑)。事務所に聞いてもらった。

尾上 芝居のあらすじとか内容を聞く前に、「松居くんから話きてるんだけど」って言われて。ちょっと食い気味に「大悟が言うなら絶対にやりますよ」って答えたからね。

松居 かっこいいよね。でも、僕は直接、寛之に「やろうよ」ってなんか言えなくて(笑)。

尾上 そうだったんだ。

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(笑)居酒屋で話しながら、「俺らの世代で俺らの『イヌの日』を作ろうぜ」っていう話をしてるのかと思ってました。

松居 違うんですよ。おかぼれのときも安藤(聖)がいると話すけど、二人だとそんなにね……恥ずかしくなっちゃうんですよ(笑)。

ちなみに最初の出会いは覚えてますか?

松居 ゴジゲンの舞台『極めてやわらかい道』(2011年)を観に来てくれたとき?

尾上 それが一番最初です。そのときは挨拶くらいで終わったんですけど、前から(安藤)聖ちゃんと「脚本が書けて演出ができる同年代の人となんかやりたいね」っていう話をしてて。聖ちゃんが「松居くんがいいんじゃない?」ってセッティングしてくれたんですよ。それで、当日早めに行ったら、もう大悟が待ってて、「あ、どうも」「どうもどうも、聖ちゃん遅れるみたいですね」「そうっすね。どうしましょうか」ってドキマギした感じになって(笑)。二人で乾杯して話してる途中に聖ちゃんが来て、「3人でユニットをやりたい」っていう本題を話して。

松居 ちょうどその日の昼にゴジゲンを休止するっていう会議をしてたんですよ。その夜だったから、すごい運命的なものを感じたんですよね。しかも、ゴジゲンで押さえてた劇場もあったから、それはもう「やろうよ!」ってすぐになって。

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その飲み会が出会ってから2回目ですよね。そこで、どうして一緒にやろうと思いました?

松居 「カウンターでありたい」みたいな話をしたんだよね。自分たちでやりたいことをやりたいけど、安藤と寛之は劇団を持ってないし、現場では先輩に囲まれることも多くなる。だったら、同世代で立ち向かっていこうっていう発想で。僕もゴジゲンを休止したところだったし、二人の活動は僕とは違うロジックだったから、うらやましいのもあって。絶対に刺激を受けるだろうなと思ったんですよね。何より、単純に一緒にいて楽しかった。で、そのタイミングでクリープハイプのメジャー・デビュー時のMVの準備もしてたから、「オレンジ」のMVのカップルをこの二人でやってみようと思って。おかぼれをやる前に二人を呼んだという。

尾上 「オレンジ」のMVが大悟と一緒に最初の作品ですね。あのマンション寒かった記憶しかない(笑)。

松居 (撮影は)1月だったからね。それで、クリープハイプをやって、おかぼれをやって。

尾上 急接近したけど、そんなに二人だけで会うことはないんですよね。絶対に聖ちゃんを含めた3人とかで。

松居 なんか恥ずかしいんだよね。でも、今回は本当に寛之や(玉置)玲央と一緒にやりたいって思ったの。それで断られたらせつなすぎると思って(笑)。

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尾上 今回、こうやってできて、楽しいよね?

松居 うん。こういう寛之を見るのが新鮮。普段はあまり一緒に飲んだりしないし。ある意味、プロフェッショナルというか、職人気質なところがあるなと思ってて。意外と、はしゃいだりする姿を見たりしたことがなかったから。

尾上 今回、すごい楽しいよ。ほぼ毎日、一緒にご飯に行ってるし。なかなかないよね。

松居 おかぼれのときはこんなに一緒に行ってない。それぞれの責任が重かったのかもしれないけど。

尾上 そうだね。終わったらすぐに帰って、セリフを覚えて、明日の準備をして、みたいな。(演奏する)楽器もあったし。

松居 でも、今回はみんなで作る舞台で、みんなと時間を過ごすことに意味があるなと思ってて。

みんなで作るというのはどういう意味ですか?

松居 今回は本が僕じゃないからこそ、みんなで一緒に考えたいと思ったんです。だから、稽古の前半はできるだけ自分の考えを言わないで、見てることに徹してるところがあって。僕が何かを言っちゃうとそれが正解なわけじゃないのに、演出家が言うならそうしないといけないって思われるのが嫌だなと。なんというか、答えはないものなんだけど、今回は一緒に答えを探しながら、ちゃんと劇を一緒に作ってるなっていう感じがあるんですよね。

尾上 圭史さんが作った本の意味を深く自分たちなりに考えてるもんね。