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バンド、ユニコーンの第13作アルバム。メンバー総活躍バンドの個性

バンド、ユニコーンの第13作アルバム。メンバー総活躍バンドの個性

メンバー総活躍バンド、ユニコーンの第13作アルバム。予測不能なスリルを聴け!

『イーガジャケジョロ』から2年5ヶ月ぶりとなるユニコーンの新しいアルバム『ゅ13-14』がリリースされた。5人の個性が際立ちながら、音楽への飽くなき探究心と遊び心に溢れた作品だ。ユニコーンのこれまでの歴史を踏まえつつ、デビューから彼らを取材し続けている平山雄一氏による、最新作のレビューをお届けする。

文 / 平山雄一


新作『ゅ 13-14』は、そのタイトルどおりユニコ―ンの13枚目14曲入りのアルバムだ。内容はこの2013年から2016年までのユニコーンの様子を反映していて、“ゆ 13-16”と呼びたくなる曲が並んでいる。メンバー5人のすべてが作詞・作曲をし、リード・ボーカルを取るという“ユニコーン方式”は変わっていない。結果、無理なコンセプトでの統一感ではなく、いい意味でバラつきのあるアルバムになっている。次にどんな曲が飛び出すのか予測不能なスリルが、ユニコーンのアルバムを聴き進める醍醐味なのである。

そんなバンドの特長を踏まえてか、『ゅ 13-14』の1曲目から5曲目までは、すべてリード・ボーカルが異なっている。

ポストロックを匂わせる変則的なパターンのドラムで始まる1曲目「すばやくなりたい」は、奥田民生の作詞・作曲・ボーカルのナンバーだ。♪俺たちに明日はない♪、♪やりまくるだけ♪、♪出来たように見えたら 次の行動♪とたたみかける歌詞が意味するとおり、立ち止まらず突き進むバンドの姿勢が単刀直入に宣言されている。ユニコーンの楽曲の面白さはこの歌のように、即断即決。レコーディング候補曲に出くわした瞬間のイメージを、5人が一瞬にして凍結させて仕上げるところから来る。だからリスナーにとって、聴いた印象がいつも新鮮なのだ。

うじうじ考えず、完成させたらすぐ次の課題に取り掛かる。自分たちの音楽の作り方を歌にするバンドなんて、滅多にいない。おそらく奥田がこの歌に込めたのは、そんな音楽作りの向こう側にある自分の“生き方”なのだと僕は思う。生涯をたった1作に捧げるアーティストもいるが、ユニコーンはそれとは反対に、できるだけ速く多くのものを作ることで“今”を作品に封印しようとする。ABEDONの名言に、「仕事が上手い人は、速いんだよ」というのがあるが、まさにそれ。今年、全員が50歳を迎えたユニコーンが、活動をますます加速させていくことを歌っているのかもしれない。

2曲目「オーレオーレパラダイス」は、ギターの手島いさむの作詞・作曲・ボーカルの曲。手島は50歳になったとき、奥田&ABEDONから「新甘えん坊将軍 」という歌をプレゼントされたが、「オーレオーレパラダイス」はけっこう我がままを通すタイプの手島の自画像ソング。サウンドは21世紀のベンチャーズを思わせる素直な8ビートを基本に、ラテン風味を混ぜ合わせている。ちょっと昭和な歌謡曲を思わせるテイストは、元祖・暴れん坊将軍の「マツケンサンバ」を思わせる。やはり将軍様はサンバがお好きなのだろうか。この曲もまた、手島の現時点での人生観を反映しているのが面白い。

3曲目「サンバ de トゥナイト」は、ABEDONの作詞・作曲・ボーカル。ドライブするロックで始まり、途中でいきなり本格的なサンバに突入する。このパートにはドラムもベースも入っておらず、全体から浮いて聴こえてくる。その分断が曲に絶妙なアクセントを加えていて、ABEDONらしいナンバーとなった。

♪出会えた奴らは 出会えた訳でなんら問題ない♪というフレーズは、これもまたABEDONの人生観を表わしている。先日、山形で行なわれた「ABEDON50歳“サクランボー/祝いのアベドン” 」でも、知り合った人だけで祝ってもらったのが嬉しかったと語っていた。
このアルバムでは全体にラテン・パーカッションが多く使われているが、この曲の打楽器陣は最大限の効果を発揮している。音楽作りを本当に楽しんでいる1曲だ。

4曲目「僕等の旅路」で、少しギアがチェンジされる。作詞・作曲は手島いさむなのだが、ボーカルはドラムの川西幸一が取っている。大沢誉志幸の「そして僕は途方に暮れる」(作詞・銀色夏生)を思わせるシチュエーションのラブソングに、川西のボーカルをぶつけてくるところが面白い。しかも川西の歌唱は、まるで浜田○吾のような悲壮感を漂わせている。美メロだけに、その効果は抜群。もし川西のキャラクターを知らない人が聴いたら、いきなり追っかけになってしまいそうなレベルまでハンサムに歌っている点が、やはりユニコーン、恐るべし。ライブに対応するためにドラムは奥田が叩いているのだが、これもまた元・ドラマーの浜○を意識していて、川西の歌をよくサポートしてカッコいい。

5曲目「道」は、本道に戻ってEBIの作詞・作曲・ボーカル曲。♪弱音だってはくさ 弱気にだってなるさ 後悔ないことないさ♪が、EBIの人生なのだ。淡々と歌うEBIに寄り添って、全員が雄大なリズムを刻む。その中で、奥田がカウベルの代わりに木魚を使っているのが笑える。ヒット曲「WAO!」でも活躍しているように、奥田はカウベルの名人だ。しかし、この曲には鋭い響きのカウベルではなく、柔らかなタッチの木魚を奥田は選択。適切なのんびり感を出しているのがさすがだ。

ちなみに川西の“人生観”は、アルバム・ラストの「フラットでいたい」で歌われている。この曲は川西の作詞・作曲・ボーカル。川西の人生観は♪フラットでいたい~ さらっと流したい~ からっと過ごしたい♪ということだ。曲調は2ビートを基調にした昔のブルースバンドのテイストで、ABEDONのブルースハープと、奥田の枯れたギターが“川西ムード”を醸し出す。脳梗塞から完全カムバックを果たした川西は、その人生観をまったく変えていなかったのだった。

1987年にアルバム『BOOM』でデビューしたユニコーンは、来年30周年を迎える。バンドブームの中心的存在として活躍。「大迷惑」や「ヒゲとボイン」、「すばらしい日々」などをヒットさせ、他のどのバンドとも違う音楽性とキャラクターで、唯一無二の印象を残した。この時点で全員が作詞・作曲をし、リード・ボーカルを取るスタイルが確立されていたのは、他に類を見ない。

1993年に一度、解散。16年間のインターバルがあった後、2009年、ユニコーンは再結成された。その際、メンバー間で確認したのは、「解散以前よりいいアルバムを作れなければ、再結成はない」、「再結成後、何かあれば休めばいいので、二度と解散はしない」、「ツアーとアルバム作りをコンスタントに行なう」ということだった。最もシンプルにして厳格な“バンドの約束”だった。

再結成を決心した5人は、完全にシークレットでレコーディングを開始。アルバム『シャンブル』を発表。先行シングルの「WAO!」で、通常のJ-ROCKとは異質のグルーヴと楽しさを持つバンド“ユニコーン”が復活したことを告げた。その他にも『シャンブル』にはビッグスケールのミディアム・バラッド「ひまわり」(作詞・作曲ABEDON、ボーカル・奥田)、自分たちをパロディにした「オッサンマーチ」(作詞・作曲・ボーカル・手島)、全員が持ち味を出した面白ソング「キミトデカケタ」(作詞・作曲・ボーカル・川西)などが収められており、圧倒的なアイデアと演奏力で解散前を軽々と越えてみせた。

また『シャンブル』は再結成後のユニコーンのプロトタイプ(原型)になっている面がある。『ゅ 13-14』の「風と太陽」は、「ひまわり」と同じく作詞・作曲ABEDON、ボーカル・奥田の良さが爆発しているし、EBIの「CRY」は「キミトデカケタ」のように他のメンバーの発想で深みを増したナンバーだ。

その後、『シャンブル』の勢いを継続した『Z』(2011年)、ちょっとゆるい『ZⅡ』(2011年)、新しいユニコーンを提示した『イーガジャケジョロ』(2014年)をリリースしてきた。この間、川西(2009年)、手島(2013年)、奥田(2015年)、EBI(2015年)、ABEDON(2016年)とメンバーの50歳を音楽で祝った。こんなバンドは前代未聞、ユニコーンはことごとく前例のない道を歩く。もっと言えばこうした“バンドの前例”を作ったことが、同世代バンドのウルフルズの活動再開や、ザ・イエロー・モンキーの再結成に何らかの影響を及ぼしていると僕は考えている。

最初に書いたように『ゅ 13-14』は、メンバー5人が2013年から2016年にかけてそれぞれが描いたスケッチのようなアルバムだ。駆け抜ける奥田、他にないパラダイスを見つけた手島、出会えた喜びを歌うABEDON、我が道を全力で来たEBI、そしてフラットでいたい川西。こんな素敵なバラバラ5人組がユニコーンなのだ。
それぞれが活き活きと音楽を作り、9月から始まるツアー“第三パラダイス”では、このアルバムを中心にライブを楽しみ尽くすことだろう。ユニコーンには、“メンバー総活躍バンド”の称号を贈りたいと思う。

リリース情報

【初回限定盤】

【初回限定盤】

【通常盤】

【通常盤】

8月10日発売
アルバム 『ゅ 13-14』

【初回生産限定盤 CD+DVD】
KSCL-2756~KSCL-2757 ¥3,600円+税
【通常盤 CD】
KSCL-2758 ¥3,000円+税
【完全生産限定盤 CD/DVD/アナログ/カセット/おまけ】
KSCL-2750 ¥15,700+税
【完全生産限定盤/カセット】
KSTL-1 ¥3,600+税
【完全生産限定盤/アナログ(12inch)】
KSJL-6183 ¥4,500+税

【収録曲】
01.すばやくなりたい
02.オーレオーレパラダイス
03.サンバ de トゥナイト
04.僕等の旅路
05.道
06.ハイになってハイハイ
07.マッシュルームキッシュ
08.TEPPAN KING
09.マイホーム
10.CRY
11.エコー
12.第三京浜
13.風と太陽
14.フラットでいたい

【初回生産限定盤特典】
MOVIE31 「ゅ 13-14」レコーディングドキュメント

プロフィール

UNICORN


ABEDON(阿部義晴)(key)、奥田民生(vo、g)、川西幸一(ds)、EBI(堀内一史)(b)、手島いさむ(g)。1986年、広島で結成。1987年10月アルバム『BOOM』デビュー。バンドブームを牽引し、「大迷惑」「働く男」「すばらしい日々」など次々とヒット曲を生み出す。それぞれのソロ活動を経て、1993年解散発表。2009年に再始動を発表し、以降も楽曲制作、ライブと精力的に活動を続ける。2009年の川西から始まった50歳を祝うライブも今年7月のABEDONで全員終了。9月からは全国ツアー「第三パラダイス」がスタートする。

オフィシャルサイト
http://www.unicorn.jp/

ライブ情報

ユニコーンツアー2016「第三パラダイス」

09/03 (土) 【東京】 府中の森芸術劇場 どりーむホール
09/07 (水) 【千葉】 市川市文化会館 大ホール
09/09 (金) 【石川】 本多の森ホール
09/11 (日) 【新潟】 新潟テルサ
09/16 (金) 【埼玉】 大宮ソニックシティ 大ホール
09/18 (日) 【宮城】 仙台サンプラザホール
09/19 (月/祝) 【宮城】 仙台サンプラザホール
09/22 (木/祝) 【山形】 南陽市文化会館 大ホール
09/24 (土) 【秋田】 秋田県民会館
10/01 (土) 【愛知】 名古屋国際会議場センチュリーホール
10/02 (日) 【愛知】 名古屋国際会議場センチュリーホール
10/07 (金) 【北海道】 帯広市民文化ホール 大ホール
10/09 (日) 【北海道】 札幌ニトリ文化ホール
10/10 (月/祝) 【北海道】 札幌ニトリ文化ホール
10/14 (金) 【兵庫】 神戸国際会館 こくさいホール
10/15 (土) 【兵庫】 神戸国際会館 こくさいホール
10/17 (月) 【京都】 ロームシアター京都
10/22 (土) 【東京】 オリンパスホール八王子
10/23 (日) 【東京】 オリンパスホール八王子
10/29 (土) 【神奈川】 パシフィコ横浜 国立大ホール
10/30 (日) 【神奈川】 パシフィコ横浜 国立大ホール
11/05 (土) 【福岡】 福岡サンパレス
11/06 (日) 【福岡】 福岡サンパレス
11/12 (土) 【大阪】 オリックス劇場
11/13 (日) 【大阪】 オリックス劇場
11/19 (土) 【広島】 広島文化学園HBGホール
11/20 (日) 【広島】 広島文化学園HBGホール
11/23 (水/祝) 【東京】 中野サンプラザホール
11/24 (木) 【東京】 中野サンプラザホール
12/5 (月)【高知】 高知県立県民文化ホール オレンジホール
12/7 (水) 【大阪】 フェスティバルホール
12/9 (金)【東京】 東京国際フォーラム ホールA
12/17 (土) 【沖縄】 沖縄コンベンション劇場
12/18 (日) 【沖縄】 沖縄コンベンション劇場