小田和正『あの日 あの時』特集  vol. 9

Interview

KAZUMASA ODA TOUR 2016 “君住む街へ” バンドメンバーインタビューPart.5:金原千恵子

KAZUMASA ODA TOUR 2016 “君住む街へ” バンドメンバーインタビューPart.5:金原千恵子
小田和正『あの日 あの時』特集Part.Ⅸ

KAZUMASA ODA TOUR 2016 “君住む街へ” バンドメンバーインタビューPart.5:金原千恵子

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取材・文 / 小貫信昭 撮影 / 菊地英二

 小田のツアー「君住む街へ」の東北編が無事終了した。僕も伺って、幅広い年齢層が熱烈歓迎するさまを目の当たりにした岩手・盛岡、小田が大学時代を過ごし、想い出も多い“第二の故郷”宮城・仙台、そして場内に常設のスタンドのない「ビックパレットふくしま」ゆえ、他とは趣きの違う会場の雰囲気となった福島・郡山と、熱く熱く、熱すぎるほどに盛り上がった。そしてこの記事をお読み頂く頃には、霊験あらたかな場所である出雲でのライヴが行われているはずだ。 さてこの連載、Far East Club Bandの四人へのインタビューのあとは、ストリングス・チームの登場である。ふだん何気に“ストリングス”などと呼んでしまうが、小田のツアーに参加しているのは、個性豊かな面々であり、通常のポップやロックのコンサートでは付加的なものになりがちな弦楽器が、曲によっては音楽の中枢を担うのが小田のライヴの特色でもある。そこから生まれる表現の幅や伝わる感情の豊かさこそが、まさに聴きどころのひとつとなるのだ。 トップパッターはファースト・バイオリンを担当する金原千恵子。彼女の名前は、様々な場所で見掛けたことがあるはずだ。ではさっそく…。 _DSC0381_s

金原さんが小田さんのステージに参加したのは2008年11月の『今日も どこかで』のドーム追加公演からだそうですが、その後、2011年の『どーも どーも』、さらに2014年の『本日 小田日和』を経て、今回のツアーへと至るんですよね。

金原 弦のカルテットがすべての日程に加わることになった最初のツアーが『どーも どーも』の時で、でも私はスケジュールの関係で、半分くらいしか参加出来なかったんですよ。それもあって、その時は思ったように様々なことが絡み合わなくて、色々悩んで、小田さんにも相談して、そのあと何年か掛けて、今のような形で演奏出来るようになってきたとは思ってるんですけどね。

ここまで来るには時間も必要だった、と。

金原 前回の『本日 小田日和』の時も、落ち込むくらい“ダメだなぁ”って思うことがあって、でもある時、まだまだではあるけど、少しはそれを克服できてる部分もあることに気づいたんです。“あ、なんかこの歳になっても、成長してる!”って(笑)、そう思えた瞬間があったことが大きかったですね。

“成長している”というのは、小田さん自身、今も自分に感じていることのようにも思えるんですが…。

金原 もちろんもちろん、そうだと思いますね。 20160514_kinbara_1b_667_s

よく我々はレコーディングなどのクレジットで“金原ストリングス”という名称を目にしますけど、それとは別に、個々のプレイヤーが集まっているのがこのツアーの弦の4人、なんでしょうか。

金原 そうですね。チェロの堀沢真己さんとはいつも仕事してましたけど、バイオリンの吉田翔平くんやビオラの徳高真奈美さんとはふだんカルテットでは一緒にやっていたわけじゃなくて、小田さんのツアーが初めてでした。だから最初は色々とディスカッションしながら、でしたよ。もちろん今では、気心知れてるというか、いい関係を築けているんじゃないでしょうかね。

それはライヴを拝見するたびに伝わってきます(笑)。ところでストリングスが重要な曲というと、例えば「言葉にできない」だと思うのですが、演奏中に心掛けていることはありますか?

金原 あの曲は2008年のドームの時からやらせて頂いてますけど、やはり私としては、その時々の小田さんのエネルギーに寄り添う、というか、それが大切なことだと思ってます。そもそも小田さんがピアノ弾いて歌い出す曲のテンポも、日によって微妙に違ったりしますから。ただ、寄り添うだけではなく、時には自分から仕掛けたりもしてますけど…。

“仕掛ける”といいますと?

金原 “あ、今日は小田さん、こんな感じで行きたいだろうな…”とか感じながら、ちょっとここは私が先に行って“引っ張らせてもらおうかな?”みたいな時もあるんです。ただ、「言葉にできない」だとしたら、私たちが居る場所と小田さんがピアノ弾いて歌う場所はけっこう離れているんで…。

ピアノがあるのは花道少し渡った辺りですからね。

金原 もっと近くだったら息づかいとか感じられるんでしょうけど、そうはいきませんから、モニターを頼りにその日の歌とピアノのタッチを感じ取りつつ…、なんですけどね。 _DSC0369_s

バンドのみなさんにもお訊きしたんですが、共演するにあたって小田さんから指示されることやリクエストされることはあるんでしょうか?

金原 基本、自由にやらせて頂いてます。時々、「ここのタイミングはこうしてくれ」とかって言われる場合もありますけど、ほぼ、任せられてますね。なので「今日はこういうふうにやって、次回はこうやろう」とか、いろいろチャレンジも出来るんですよ。

毎回毎回、意識も違うわけですね。

金原 ただチャレンジといっても、小田さんの歌を輝かせるためにやってることなので、「ちょっとお前、それはないだろう」ってことにはなりませんけどね(笑)。

演奏に関して、小田さんから具体的に言われたことで覚えていることとかありますか?

金原 「今日もどこかで」で、♪誰かが いつも君をみている~♪ のとこで歌とヴァイオリンがかけ合うフレーズがあるのですが、小田さんから、その部分が歌いながらとても感動するんだ、というようなことを何度か言っていただいたことがあります。その君の音がお客さんを感動させているんだよ、ってこともメールで言っていただいたこともあり、感涙でしたし自信にもなりました。

改めて、バイオリンを弾く立場で感じる小田作品の特色というと、どんなところでしょうか。

金原 小田さんは学生のころ建築学科だったからか、ハーモニーとかメロディの流れ方とか、すごく構築されてますよね。しかもひとつひとつのフレーズがすごく長くて、まさに楽器も“歌うように”演奏するアレンジになってる。でもこういうのは、音の取り方、フレーズの作り方がとても難しくもあるんです。ちゃんとやらないと、もの凄くヘタに聞こえちゃう。なんていうか…、“ブレスが上手に続かない歌をうたうヒト”みたいな、そんな聞こえ方になってしまうんです(笑)。特色といえば、まずはそこですね。 201600508_kinbara_4b_421_s

ツアーのセットリスト的にはどうでしょうか。

金原 繊細なニュアンスを求められる演奏が立て続けにあったりもして、それは他ではあまりないことだし、とても練習にもなるし、鍛えられるし、ありがたいことだと思ってますね。

金原さん達って、弦楽器だからって静かに座って演奏してるだけじゃなく、身振り手振りでお客さんを盛り上げたりもしますよね。

金原 コンサート観てて自分も参加したくても、“この曲のリズムは2-4で取っていいのだろうか?”とかって、不安な時ってあるじゃないですか? でもステージにいる人間が示してくれたら、“あ、こんな風にしていいんだ…”って、安心してノレると思うんですよ。実は私自身、音楽を仕事にする前、いろいろなライヴを観に行って客席で感じてきたことでもあったんですよ。ステージにいる人間がそうやってあげることで盛り上がれるなら、やってあげたほうがいいし、やはりみんなで、一緒に楽しみたいですから。

最後に音楽以外のことでも、小田さんと話していて印象に残っていることや、これからどんな風に共演していきたいか、といったことをお聞かせ頂けますでしょうか。

金原 小田さんは「もっともっと」ってよく仰るんですよ。「もっと感動させられる思う」「もっと伝えられると思う」。いつもそう仰るので、自分もステージに上がったら、「もっと感動させられる」と言い聞かせるようにしてます。小田さんもそう思って今日もステージに立つんだろうし、「だったら私も頑張らなきゃ」って。

みんながそう想ってれば、誰かに言われたからやるのではない、本当の力が湧いてきそうですね。

金原 最近つくづく思うのは、小田さんはアーティストとしてはもちろん、人間として素晴らしいし、強くて優しくて繊細かと思うと大雑把なところもある不思議なヒトでもあるし、知れば知るほど魅力的だということなんですよ。いっさい偉ぶらず、私たちと同じ目線で話してくれるし、親しくなったからってベタベタするわけじゃなく、でも凄く私たちにも愛情を注いでくださるし、それを感じるからこそ、音楽で返したい、出来るだけいいものを作りたいって、毎回毎回、ステージが始まるたびに新鮮な気持ちになります。小田さんの背中から学ぶことは、まだまだたくさんあります。でも素晴らしい人は、みんな背中で語ってますよね。 20160528_oda01_3b_759_s

金原千恵子 Kinbara Chieko(Violin)

金原千恵子ストリングスのリーダーとして、小田和正、桑田佳祐、サザンオールスターズ、福山雅治、エレファントカシマシなど、様々なアーティストのレコーディング、ツアーに参加。 またソロ・アーティストとしてバイオリン・ミーツ・ダンスミュージックをテーマに国内外でアルバムをリリース。 現在、年内にリリース予定の最新アルバムのレコーディング中。 公式サイト:http://www.kinbarachieko.com

小貫信昭

80年代より、雑誌『ミュージック・マガジン』を皮切りに音楽評論を開始。以後、主に日本のポップス系アーティストのインタビュー、各媒体への執筆などに携わりつつ今日に至る。主な著書には日本の名ソング・ライター達の創作の秘密に迫る『うたう槇原敬之』(本人との共著)、小田和正『たしかなこと』『小田和正ドキュメント 1998-2011』(本人との共著)、人気バンドの凝縮された1年間を繙いたMr.Children『es』(本人達との共著)、また評論集としては、ロック・レジェンド達への入門書『6X9の扉』、J-POPの歌詞の世界観を解き明かした『歌のなかの言葉の魔法』、また、ゼロからピアノ習得を目指した『45歳・ピアノ・レッスン!』などなどがある。現在、歌詞のなかの“言葉の魔法”を探るコラムを「歌ネット」にて好評連載中。

All Time Best Album あの日 あの時

あの日 あの時
FHCL-3005 ~ FHCL-3007 ¥3,611+税 【初回仕様限定盤】 ・デジパック仕様 ・特製ギターピック封入(2種(「あの日あの時ver.」or「君住む街へver.」)から1種ランダム封入) *本人直筆のタイトル「あの日あの時」or「君住む街へ」がピックに印刷されています。
日本人に長き渡り親しまれ、J-POPシーンのトップとしてそれぞれの時代を駆け抜け数々の記録を打ち立ててきた小田和正。1969年オフコースを結成し、翌70年プロとして音楽活動を開始、「さよなら」「言葉にできない」などのヒット曲を発表、今作にはオフコース時代のセルフカバー作品に手を加え多数収録。89年2月オフコースを解散後、ソロアーティスト活動を再開。1991年270万枚を超える大ヒット作となった「ラブ・ストーリーは突然に」明治安田生命CM曲でのヒット曲「たしかなこと」「今日もどこかで」やSUBARU ブランドCM タイアップソング「wonderful life」や、5月から全国東宝系にてロードショー公開される映画『64-ロクヨン-前編/後編』の主題歌「風は止んだ」も初CD化。まさに43年に渡る小田和正の創作活動の軌跡をたどった、珠玉の50曲を収録。
【DISC 1】
  1. 1. 僕の贈りもの
  2. 2. 眠れぬ夜
  3. 3. 秋の気配
  4. 4. 夏の終り
  5. 5. 愛を止めないで
  6. 6. さよなら
  7. 7. 生まれ来る子供たちのために
  8. 8. Yes-No
  9. 9. 時に愛は
  10. 10. 心はなれて
  11. 11. 言葉にできない
  12. 12. I LOVE YOU
  13. 13. YES-YES-YES
  14. 14. 緑の日々
  15. 15. たそがれ
  16. 16. 君住む街へ
【DISC 2】
  1. 1. 哀しみを、そのまゝ
  2. 2. between the word & the heart-言葉と心-
  3. 3. 恋は大騒ぎ
  4. 4. ラブ・ストーリーは突然に
  5. 5. Oh! Yeah!
  6. 6. そのままの 君が好き
  7. 7. いつか どこかで
  8. 8. 風と君を待つだけ
  9. 9. 風の坂道
  10. 10. それとも二人
  11. 11. my home town
  12. 12. 真夏の恋
  13. 13. 伝えたいことがあるんだ
  14. 14. 緑の街
  15. 15. woh woh
  16. 16. the flag
  17. 17. キラキラ
【DISC 3】
  1. 1. たしかなこと
  2. 2. 大好きな君に
  3. 3. 明日
  4. 4. 風のようにうたが流れていた
  5. 5. ダイジョウブ
  6. 6. こころ
  7. 7. 今日も どこかで
  8. 8. さよならは 言わない
  9. 9. グッバイ
  10. 10. やさしい雨
  11. 11. 東京の空
  12. 12. その日が来るまで
  13. 13. 愛になる
  14. 14. そんなことより 幸せになろう
  15. 15. やさしい夜
  16. 16. wonderful life
  17. 17. 風は止んだ

小田和正スペシャルサイト:http://www.kazumasaoda.com/

オフィシャルHP:https://www.fareastcafe.co.jp/

PROFILE

小田 和正 (おだ かずまさ)

1947年9月20日生 神奈川県横浜市出身
東北大学工学部、早稲田大学理工学部建築科修士課程卒業 1969年オフコース結成。翌70年プロとして音楽活動を開始、「愛を止めないで」「さよなら」「Yes-No」などのヒット曲を発表する。 82年には日本武道館連続10日間公演を実施、それまでの記録を塗り替えた。日本の音楽シーンに様々な記録を残しつつ、89年2月、東京ドーム公演を最後にオフコース解散。その後、プロデュース活動を経てソロとしてアーティスト活動を再開。91年に発表したシングル「ラブ・ストーリーは突然に」は270万枚を超える大ヒット作となった。また映画やテレビの特別番組など映像監督としても活躍し、これまでに「いつか どこかで」(92年)、「緑の街」(98年)の2本の映画監督作品を発表している。2001年からは毎年12月に「クリスマスの約束」と題した音楽特番を放映(TBS)、好評を博している。 2008年4月5日を皮切りにスタートした全国ツア―「今日もどこかで」は、ドーム4公演を含め、全国で53万人を動員する記録的なものとなった。そして、2011年4月20日6年ぶりのオリジナル・アルバム『どーも』発表。業界紙オリコンにてチャート1位を記録。5作連続、通算9作目のアルバム首位を獲得し、自身の持つアルバム最年長1位記録を更新した。同年5月7日長野BIG HATを皮切りに、5大ドーム8公演を含む全国31会場59公演総動員74万人、1年に及ぶ全国ツアーを実施した。 2013年4月24日に約2年5カ月ぶりのニューシングル「その日が来るまで / やさしい風が吹いたら」の両A面シングル発売。さくらの植樹活動を通じて震災を風化させないように取り組む「東北さくらライブプロジェクト」の活動を支援するコンサートは、今後も継続的に実施してゆく。同時期ベストアルバム「自己ベスト」が発売から足掛け11年で500週目のランクイン(=TOP300入り)を果たす史上初の快挙を成し遂げた。 7月2日9枚目のオリジナル・アルバム『小田日和』リリース。同年25会場50公演の37万人動員の全国ツアーを実施。 2016年ベスト・アルバム『あの日あの時』を発売。また、全国ツアー『明治安田生命Presents KAZUMASA ODA TOUR2016「君住む街へ」』を2016年4月30日(土)の静岡エコパアリーナからスタートさせた。

ツアースケジュール

【明治安田生命Presents 「KAZUMASA ODA TOUR2016 君住む街へ」】 4/30(土)・5/01(日)静岡エコパアリーナ 5/07(土)・5/08(日)四日市ドーム 5/14(土)・5/15(日)別府ビーコンプラザ 5/21(土)・5/22(日)函館アリーナ 5/28(土)・5/29(日)富山市総合体育館 第一アリーナ 6/07(火)・6/08(水)神戸・ワールド記念ホール 6/14(火)・6/15(水)さいたまスーパーアリーナ 6/21(火)・6/22(水)朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター 6/30(木)・7/01(金)東京体育館 7/06(水)・7/07(木)盛岡市アイスアリーナ 7/13(水)・7/14(木)北海道立総合体育センター 北海きたえーる 7/23(土)・7/24(日)さぬき市野外音楽広場テアトロン 7/30(土)・7/31(日)宮城セキスイハイムスーパーアリーナ 8/05(金)・8/06(土)ビックパレットふくしま 8/11(木・祝)・8/12(金)出雲ドーム 8/17(水)・8/18(木)マリンメッセ福岡 8/24(水)・8/25(木)大阪市中央体育館 8/30(火)・8/31(水)名古屋・日本ガイシホール 9/6(火)・9/7(水)大阪城ホール 9/17(土)・9/18(日)広島グリーンアリーナ 9/27(火)・9/28(水)国立代々木競技場第一体育館 10/09(日)・10/10(月・祝)高知県立県民体育館 10/18(火)・10/19(水)横浜アリーナ 10/29(土)・10/30(日)宜野湾海浜公園屋外劇場
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