Interview

これは“劇場で毎週上映会をやるべきアニメ”です─『荒野のコトブキ飛行隊』鈴代紗弓×ZAQがアツく語った、音と歌への圧倒的こだわり

これは“劇場で毎週上映会をやるべきアニメ”です─『荒野のコトブキ飛行隊』鈴代紗弓×ZAQがアツく語った、音と歌への圧倒的こだわり

一面の荒野が広がる世界。空から突然降ってきた様々なものは、その世界と人々の生活を急激に変えていった。とりわけ飛行機の存在は人々に大きな影響を与えた。時は流れ……レシプロ機「隼」に乗り込む個性的な女性パイロットたちからなる雇われ用心棒「コトブキ飛行隊」は、大切な積み荷を空賊から守るため、商船・羽衣丸の仲間たちとともに、今日も大空を翔けるのだった――。2019年1月より放映を開始した『荒野のコトブキ飛行隊』は、『ガールズ&パンツァー』で知られる水島努監督を筆頭に、シリーズ構成に横手美智子、アニメーション制作にGEMBAといった手練れのスタッフを配するオリジナルアニメーション。レシプロ機同士のリアルな空戦シーンが、早くも話題を呼んでいる。

そのオープニング主題歌「ソラノネ」を歌うのは、作家としても活躍する新世代のアニソン系シンガーソングライター・ZAQ(ざっく)。コトブキ飛行隊メンバーが歌うエンディング主題歌「翼を持つ者たち」でも作詞・作曲・編曲を手がけている。そのZAQと「翼を持つ者たち」で初めてキャラクターソングを歌った主人公・キリエ役の声優・鈴代紗弓の初対談が実現。『荒野のコトブキ飛行隊』の魅力と主題歌の制作エピソードを語ってくれた。

取材・文 / 阿部美香 撮影 / 山本マオ


歌モノは全てZAQに任せたいと最初に言われていたので、「じゃあ絶対にアフレコを見に行きます!」と(ZAQ)

鈴代紗弓(左)、ZAQ(右)

期待のオリジナルアニメ『荒野のコトブキ飛行隊』の放映がスタートしました。西部劇調の世界観とレシプロ機の迫力ある戦闘シーンが早くも話題ですね。コトブキ飛行隊の活躍が軸となる物語ですが、主人公・キリエを演じている鈴代さんから、内容を紹介していただけますか?

鈴代紗弓 はい! タイトル通りと言いますか、荒野が広がる世界で、ビジュアルは可愛いんですけど、内面はとても強くてカッコいい女の子6人が、荒野を駆け抜けていく作品です。キリエ達はレシプロ機に乗って戦うんですけど、この世界の中では空戦が日常で。その戦いや仲間達の絆が、西部劇風にテンポ良く描かれています。

キリエはどんな女の子ですか?

鈴代 すごく主人公らしさがある女の子だと思います。パイロットとしての腕はすごく正確なんですけど、頭に血が上りやすくて、先走りがち(笑)。キリエも私もキャピキャピした女の子じゃないので、自然に演じられているところもあると思います。

ZAQ さすが主人公!(笑)

鈴代 いえいえいえ! みんなで作ってる作品ですから!

コトブキ飛行隊の設定が雇われ用心棒というのも、じつにマカロニウエスタンっぽい。まだ若いお二人ですが、西部劇になじみはありました?

鈴代 なんとなく聞いたことはあるなと思って、演じる前に西部劇について調べてみたんですけど、本編を観て、これが西部劇の世界なんだろうなと、イメージに納得しました。

ZAQ 私もそうですね。西部劇といえば昔の映画のマカロニウエスタンの印象が強いですね。

そういう意味でも、とても個性的なオリジナルアニメです。そしてZAQさんご自身が歌うオープニング主題歌「ソラノネ」も、鈴代さんも参加するコトブキ飛行隊が歌うエンディング主題歌「翼を持つ者たち」も、作詞・作曲・編曲はすべてZAQさん。これまでも多数のアニメ作品に主題歌を提供していますが、今回はどのように取り組まれましたか?

ZAQ 今回は、オープニングもエンディングも、さらにいうと3月にリリースされるコトブキ飛行隊6人のキャラクターソングのミニアルバム(『コトブキ飛行隊、一曲入魂!』」も、歌モノは全てZAQに任せたいと最初に言われていたんです。なので、「じゃあ絶対にアフレコを見に行きます!」と、お願いしました。

アーティストさんがアフレコ見学をされるのは、珍しいですね。

ZAQ 私もあまり経験はないですね(笑)。もちろん資料やシナリオは事前にいただいたんですが、今回はキャラソンもあるので、資料だけでは分からない劇中キャラクターの細かい部分も知りたいし、歌ってくれる声優さんの性格も知りたくて。私もいろいろな声優さんに楽曲を歌ってもらっていますが、中には歌はあまり得意じゃないという方もいらっしゃるし、音楽が大好きでキャラソンもぜひ歌いたいという方もいらっしゃる。歌詞はシンプルなほうがいいのか、譜割りが細かくても心地よく歌っていただけるかとか、声優さんの音楽観によって、 曲の作り方も変わってくるんですよ。とくに今回は、声優さんもフレッシュな方が多いので、事前情報をなるべくたくさん知りたくて、第1話のアフレコスタジオにお邪魔しました。

鈴代 私もその時に初めてZAQさんにご挨拶をさせていただきました!

歌も私たちがお芝居する感覚と、遠いものではないのかな?と(鈴代)

『荒野のコトブキ飛行隊』のアフレコ現場は、いかがでした?

ZAQ まず「すごいな!」と思ったのが、キリエが好物のパンケーキを食べる音に、水島監督がすごくこだわっていらっしゃったことですね。

鈴代 ありましたね! 他のキャラクターがしゃべっている裏で、パンケーキを食べるアドリブをしてくださいと言われました。それもけっこう尺が長くて、「美味しい」などのセリフを言わずに、食べる時の咀嚼音だけというオーダーだったんです。

ZAQ ひたすらハムハムするんですよね。

鈴代 でも、まだ第1話の収録だったので、好物とはいえキリエがどのくらいパンケーキが好きなのかは、私自身もまだ把握しきれていなくて、難しかったです。

たしかに、どう好きかによって、食べ方のニュアンスも変わりますよね。

ZAQ そこがすごいですよね、声優さんは。たしか鈴代さん、一度ブースを出て監督さんと映像を確認してましたよね?

鈴代 はい。アフレコ用の映像は、まだ完成していなかったんですが、監督の手元には動きがもっと進化したバージョンがあったので、それでキリエの食べ方を確認させていただいてました。

ZAQ セリフへのこだわりもすごかったですね、水島監督。キリエが「夢みたいなおいしさ」という言うシーンを、ニュアンスを変えて何回か録ってらっしゃった。素人の私が聞くと、「どれもいいじゃん、おいしそうじゃん!」と思うんですけど、監督は納得いくまで何度もトライされていました。

鈴代 あのセリフは尺に合せるのが難しくて。テンポが速いシーンなので、最初はついていくのに必死で、セリフを尺に収めるのが大変だったんです。といって、あまり早くしゃべり過ぎると、ちゃんとしたお芝居にならない。その加減が難しかったですね。

そういうディテールへのこだわりは、ZAQさんが楽曲制作やレコーディングで経験されていることと同じかも知れないですね。

鈴代 それこそ先日、レコーディングの時に、私がZAQさんに「どうやって歌を作って歌ってらっしゃるんですか?」とお聞きしたら、逆に「どうやってお芝居してるんですか?」と聞かれてしまって(笑)。あ、でも歌も私たちがお芝居する感覚と、遠いものではないのかな?と納得しました(笑)。

ZAQ そうなんですよね(笑)。

水島監督は音響監督も兼任されているので、“音へのこだわり”も相当ですよね。

ZAQ それでまたびっくりしたんですけど、空戦シーンは、ほぼセリフがないですよね。ずっと飛行機が飛ぶ音とダララララーっという機銃の音と……。

鈴代 弾が機体に当たるギャギャギャギャギャっていう音だけで(笑)。

ZAQ その音質がまた、アナログ録音してるんじゃないかと思うくらい、めちゃめちゃいいんですよね。

オンエアをヘッドフォンをかけて聴くと、リアルなSEとステレオ効果によって、本当に戦場でドッグファイトをしている気分が味わえました。

ZAQ アフレコスタジオでもそうでした。そして何より、鈴代さんたちが戦闘中に「クッ」とか「ハッ」とかしか言ってない。映像が未完成なのに、その中でものすごく戦ってるんですよね。声優さん達の想像力と表現力ってすごい。12月の完成披露上映会で初めて1話の完成映像を観たんですけど、あの時のお芝居がこのシーンになったんだ! と感心しました。キャラクター以外、ほぼ描かれていない映像の段階で、どうやって世界に入り込めるのか、私には不思議でした。

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