Interview

Nulbarichの次なるステージ。武道館公演で得たエネルギーが結実したアルバム『Blank Envelope』

Nulbarichの次なるステージ。武道館公演で得たエネルギーが結実したアルバム『Blank Envelope』

Nulbarichのアルバム『Blank Envelope』が完成した。昨年リリースされた「Kiss You Back」(資生堂「アネッサ」CM曲)、「VOICE」(シチズン クロスシーCM曲)という2曲の配信シングルに三井アウトレットパークCM曲「All to Myself」、映画『台北暮色』のエンディングテーマ「Silent Wonderland」、テレビドラマ『デザイナー 渋井直人の休日』のエンディングテーマ「Sweet and Sour」という入魂の楽曲を取り揃えた本作は、日本武道館ライヴ以前、以降の大きな心境の変化が鮮明に焼き付けられたNulbarichにとって転機となる作品だ。果たして、彼らは武道館のステージからどんな風景を見たのか。そして、バンドはどこへ向かおうとしているのか。フロントマンのJQに話を訊いた。

取材・文 / 小野田雄 撮影 / 冨田望

多彩なジャンル感をもっとはっきり色濃く表現したかった

前作『H.O.T』から1年経たずして、早くも新作アルバム『Blank Envelope』が完成しましたね。

そうなんです。ちょっと早すぎたんじゃないかなとも思いつつ、でも、曲が出来てしばらく経つとアラが気になってしまう人間なので、フレッシュなうちに出しておかないとなって思ったんですよね。

アルバムのお話をうかがう前にまずは2018年の活動を整理しておきたいんですけど、対外的には11月5日の日本武道館単独公演で締め括った去年1年は、Nulbarichにとってどんな年でしたか?

自分にとって2018年の活動は、ツアーを回って各地のフェスに出て、ジャミロクワイの武道館公演でサポートアクトを務めさせてもらった2017年のアップデート版という感じですね。2018年はツアー規模が大きくなって、武道館もNulbarichの単独公演になって、やっていることは変わっているようで、意外と変わっていないという見方もできると思います。ただ、2018年はメジャー進出2年目ということもあり、“お客さんにとってはひとつの基準が出来てしまっているんじゃないか”とか“珍しいもの見たさのお客さんが減るんじゃないか”とか、そういう難しさを想定して若干ビビりつつもいたのですが、活動の規模や音楽性はちゃんとアップデートできたと思いますし、武道館の準備や構想は大変でしたけど、すごくいいインプットになりました。

活動の規模が大きくなれば、かかる負荷も大きくなるわけで、そんな慌ただしいなか、アルバム制作に向かえたということはバンドの状態がすこぶる良かったんですね。

フレッシュなインスピレーションが自分の中に芽生えたら、すぐ曲に落とし込んでおきたいタイプなので、忙しいときほど何かを感じるし、それが曲になって出てくるというか、逆に家でボーッとしているだけだと何も浮かんでこないんですよ。だから、2018年の活動は制作を進めていくうえで、自分にとってはいい刺激になって。音楽的に、『H.O.T』の曲も完成当時は振り切ったつもりだったんですけど、その後、さらなるスキルを手にしたこともあって、今回のアルバムでは一曲一曲をしっかり振り切ったアレンジにして、多彩なジャンル感をもっとはっきり色濃く表現したかったんです。

例えば、8曲目の「Toy Plane」はヒップホップの中でもトラップ色が濃厚な楽曲になっていますもんね。

そうですね。以前の曲だったら、そういう要素を部分的に取り入れるだけだったんですけど、「Toy Plane」は一曲丸々トラップで押し切った曲になっていますし、「Stop Us Dreaming」なんかも前作で言うところの「Heart Like a Pool」のような、ビルボードチャートでヒットしているアンセムをイメージした曲なんですけど、今回はもっと王道のアンセムになっていたりとか、その曲がもともと持っている力、個性を色濃くすることで、アルバムで表現しているジャンルの多彩さも際立っているんじゃないかと思います。

楽曲のタイプは多彩であり、なおかつ、散漫な印象がなく、アルバムを通して一貫性が感じられる作品ですよね。

そう感じてもらえる流れになっているなら良かったです。それぞれの曲を作っている段階ではアルバムの流れはまったく想定していなかったので、曲順に関しては、めっちゃ迷ったんですよ。けど、最終的にはすでに世の中に出ている曲が前半にまとまったというか、2曲目の「VOICE」から7曲目の「Kiss You Back」は武道館のステージに立つ前に出来た曲で、8曲目の「Toy Plane」から12曲目の「Stop Us Dreaming」に関しては武道館後に一気に作ったんです。だから、自分の中ではそういう前後半に分かれているというか。

後半、10曲目の「Focus On Me」では、向かう先は霧に包まれていて、その先は見えないし、イメージできていないけど、それくらいがちょうどいいと歌われていますが、その気持ちは武道館に立ったからこそ抱いた素直な心境なんだろうなと感じました。

まさにそうなんです。武道館に立ったことで至った確信めいた心境はたしかにありましたし、でも、その先の道は選択肢がいくらでもあるわけで、まずは今いる場所をしっかり守っていこうと思いましたし、守っていくためにはバンドの規模を大きくしていくための挑戦は必要不可欠だなって。だから、「Focus On Me」をはじめアルバム後半の曲は曲調こそ違えど、一歩進んだバンドの心境が反映されたものになっていますし、アルバムの締め括り方も前作『H.O.T』のように大合唱でエンディングを向かえるようなイメージではなく、突き進んでいったまま、その先に続いていく終わり方なんですよ。

作品だけ聴くと、Nulbarichはクールなバンドのようにも思えるんですけど、ライヴがそうであるように、実は熱くてエモいじゃないですか。その姿を素直にそのまま曲に投影しているところが今回の作品の真骨頂というか、JQくんにそういう作品を作らせた武道館公演はバンドにとって本当に大きな転機だったんだなって。

公演前に、武道館のステージに立つことで何かに気づきたい、確信めいた気持ちを抱きたいと思っていた自分がいたのはたしかで。というのも、この2年のバンドは全速力で走ってきてしまったので、いいインプットがなければ、その先を走っていくのが不安だったというか、楽曲は『H.O.T』と今回のアルバム前半の曲で出し切ってしまったし、今持てるすべてのものを出し切らないと武道館でその先の風景を見ることはできないだろうなって思っていたので。そして、そのとおりを武道館でやってみたら、会場のみんながそれに対して応えてくれたし、そこで得たエネルギーに押されて、アルバム後半の曲は1ヵ月ちょっとで一気に完成したんですよね。

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