LIVE SHUTTLE  vol. 332

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山崎育三郎 全国ツアー東京公演。煌びやかで夢のような空間“育三郎ランド”。変幻自在なエンターテイナーぶりのステージを振り返る

山崎育三郎 全国ツアー東京公演。煌びやかで夢のような空間“育三郎ランド”。変幻自在なエンターテイナーぶりのステージを振り返る

山崎育三郎 LIVE TOUR 2019 〜I LAND〜
2019年1月26日 昭和女子大学人見記念講堂

独自のジャンル“ミュージカルポップス”をコンセプトにしたオリジナルアルバム『I LAND』を引っ提げた全国ツアー「山崎育三郎 LIVE TOUR 2019 〜I LAND〜」。全9公演中5公演目となる東京公演は、ミュージカル界のプリンスであり、数多くの映画やドラマで活躍する俳優であり、オリジナル楽曲を歌うアーティストである自身のエンターテイナーとしてのポテンシャルを存分に発揮したステージとなっていた。

開演時間を少し過ぎた頃に客電が暗転し、紗幕にサーチライトに照らされた彼のシルエットが浮かび上がった。幕が下りると同時に観客は大歓声をあげ、アルバムの幕開けを飾っていたオープニングナンバー「I LAND」から総立ちで大盛り上がりとなった。山崎育三郎には生まれ持った天性の華やかさというものがある。彼がステージの中央に立ち、くるりと一回転し、観客に向けてニコッと笑うだけで、そこは一瞬にして、煌びやかで夢のような空間に変わる。日常を少しだけ離れたロマンチックな世界=「I LAND」=“育三郎ランド”へと、歌とダンスだけで連れて行ってくれるのだ。

スイングするミュージカルナンバー「Get yourself」で観客の鼓動をあげて身体を揺らし、そのままビートを止めずに、初主演ドラマの主題歌に起用されたシングル「あいのデータHappy ver.」へ。<幸せなんて全て自分次第>と高らかに歌い上げ、最初のMCでは高校生時代に留学したアメリカで心を閉ざしてしまったエピソードを明かした。自身を変えるきっかけとなったダンスパーティーで500人の前で踊った時に流れていたという50cent「In Da Club」のラップも披露し、「不器用な男のラブストーリーになってます」と解説した「Beginning」と留学時代に感じた思いを込めた「Turning point」という2曲のバラードを豊かな表現力でじっくりと聴かせ、観客を魅了した。

アルバムからの楽曲を5曲続けた後の中盤は彼の多彩な面が味わえる構成となっていた。ツアー、ドラマ、ミュージカル、アルバムの制作など、2018年度の自身の活動を振り返りながら、NHKドラマ10『昭和元禄落語心中』で演じた天才落語家の助六として練習していた落語と主演を務めたミュージカル「モーツアルト!」の本番の様子を交互に演じてみせ、ゆずが担当したドラマ主題歌「マボロシ」を歌い、そのままバンド演奏に合わせて、「夢金」を演じ、大きな拍手を浴びた。そして、ピアノに座り、WOWOWのドラマ「宮沢賢治の食卓」で演じた音楽教師としてピアノまで弾くという自由自在なエンターテイナーぶりに驚かされるばかり。歌とピアノとダンスだけではなく、ラップや落語までできるとは。さらに、NHK「みんなのうた」の楽曲で「人間として一番大事なことはこども心だ」というウォルト・ディズニーの言葉を元に作詞したというカントリーポップ「こどもこころ」と、「(主演の鈴木)亮平くんを思って歌詞を書いた」という大河ドラマ「西郷どん」終了後のミニコーナーに流れるEDテーマ「西郷どん紀行〜道しるべ〜」でダイナミックなロングトーンを響かせたあと、ミュージカルコーナーへと突入した。

ニューヨークのブロードウェイを訪れた時の映像に続き、バンドが「ニューヨーク ニューヨーク」を演奏したあと、レッドブラウンのジャケットとパンツに衣装を変えた山崎育三郎が、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の「カフェ・ソング(Empty Charis At Empty Tables)」を歌い、言葉にならない悲しみや痛みを猛烈な説得力を持って表現。ここで、英語と日本語の歌の発声の違いについての長い講義を経て、この日のスペシャルゲストとして、かつてミュージカル「ロミオ&ジュリエット」や「レ・ミゼラブル」で共演したミュージカル女優の昆夏美が「MCが長いよ!」と笑いながら登場。昆による「オン・マイ・オウン」のエボニーヌの独唱から、「恵みの雨」でのマリウスとのデュエットを経て、初共演となる「ミス・サイゴンメドレー」では見事に息の合ったパフォーマンスを見せ、場内からはスタンディングオベーションが巻き起こり、その拍手はなかなか鳴り止まなかった。さらに、「美女と野獣」を手を取って踊りながら歌唱し、観客が息を飲んで見入るほどの感動をもたらしたミュージカルコーナーは幕を閉じた。

そして、「家族の絆、命の重さを書いた作品です」という自作曲「ヒカリ」をピアノの弾き語りで歌い始め、やがてウッドベースが歩みを共にすると、場内には温かく優しいムードが広がっていった。さらに、「Keep in Touch」もアコースティックギターと歌のみというミニマムな編成ではじめ、徐々にバンドやコーラスが加わっていくことで楽曲のスケール感を広げていった。さらに小学校三年生の時に迷子になった実話を基にしたスパイ映画風のスイングナンバー「宿命」では曲中にセリフのような解説を挟み、ミュージカルにはシリアスだけではなく、コメデイもあることを知らしめた。ステージを降り、客席を歩きながら歌った「Congratulations」のあとは<いっくん!>のコール&レスポンスが沸き起こり、自身の故郷である東京への思いを込めたスウィングジャズ「TOKYO」からGLAYのカバーであるロックナンバー「生きてく強さ」、朝の情報番組のテーマソングに起用された「Wonderland」で観客全員がタオルを回して盛り上がったところで本編は終了した。

アンコールではピアノとアコースティックギターの伴奏で、『美女と野獣』から野獣に抑えた心を表現した「ひそかな夢 EVERMORE」を切々と歌い上げ、「過去最高に長い公演になりました。みなさん最高です! 本当に楽しかったです」と深々とお辞儀をし、最後に、歌詞にあるように「心からのありがとう」という感謝と「10年後も笑って会えますように」という約束にも似た願いを込めた「smile」を明るく朗らかに歌い、この日のライブは大団円を迎えた。「I LAND」=「育三郎ランド」に誘う魔法の言葉である<HOCUS POCUS>というフレーズが流れる中、山崎の「ありがとう」という呼びかけ会場からも「ありがとう」と声が溢れる中、投げキッスをしてステージを後にした。

客電がつき、非日常の空間から日常へと戻った筆者と編集者は、どちらかともなく「次はミュージカルが見たいね」と口にし、帰路に着いた。なお、山崎育三郎は3月から宮本亜門が演出する主演ミュージカル「プリシラ」がスタートする。2016年12月に初演された作品の再演。ディスコナンバーを中心に、歌って踊って、笑って泣ける、ミュージカルの全てが詰まった最高のエンターテインメントになっているそう。彼が扮するドラッグクイーンぶりに興味がある方はぜひ劇場に足を運んでほしい。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / Rina Asahi

山崎育三郎 LIVE TOUR 2019 〜I LAND〜
2019年1月26日 昭和女子大学人見記念講堂

セットリスト

SPECIAL GEST:昆夏美

M1. I LAND
M2. Get yourself
M3.あいのデータHappy ver.
M4. Beginning
M5. Turning point
M6.こどもこころ
M7.西郷どん紀行〜道しるべ〜
M8. Empty Chairs At Empty Tables
M9.オン・マイ・オウン
M10.恵みの雨
M11.ミス・サイゴンメドレー〜(サン・アンド・ムーン〜世界が終わる夜のように)
M12.美女と野獣
M13.ヒカリ
M14. Keep in touch
M15.宿命
M16. Congratulation
M17. TOKYO
M18.生きてく強さ
M19. Wonderland
【アンコール】
M20.ひそかな夢EVERMORE
M21. smile

公演情報

ミュージカル『プリシラ』

2019年3月 日生劇場(主演 ティック(ミッチ)役)
オフィシャルサイト
http://www.tohostage.com/priscilla/

山崎育三郎(I) 尾上松也(M) 城田優(Y)の3人による演劇プロジェクト「IMY」発足&「旗揚げコンサート」開催決定!

4月20日(土) Bunkamuraオーチャードホール
※出演:IMY(山崎育三郎 尾上松也 城田優)
IMY旗揚げコンサートオフィシャルサイト
https://event.1242.com/special/imy2019

ミュージカル『エリザベート』

6月7日(金)~ 8月26日(月) 帝国劇場
オフィシャルサイト
https://www.tohostage.com/elisabeth/

山崎育三郎

俳優、歌手。1986年1月18日生まれ、東京都出身。A型。
2007年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢。以降、ミュージカル俳優として活動。2015年、ドラマ『下町ロケット』(TBS系)真野賢作役で、一躍注目を浴び、ドラマ『あなたのことはそれほど』ではミステリアスな同僚を演じるなど幅広い演技をみせ、個性派俳優として活躍。2017年7月期には金曜ナイトドラマ「あいの結婚相談所」(テレビ朝日系)主演藍野真伍役を演じ、更に8月16日に自身初めてのオジリナルシングル「Congratulations / あいのデータ」をリリース。
2018年10月期ドラマ10「昭和元禄落語心中」(NHK総合)では、天才落語家助六役を演じ、『第14回コンフィデンスアワード・ドラマ賞』助演男優賞。
2019年1月から、オリジナル・アルバム『I LAND』を引っさげ、2019年1月からスタートしたツアー「山崎育三郎 LIVE TOUR 2019 〜ILAND〜」も無事終了。
2019年4月12日公開の劇場版「名探偵コナン 紺青の拳」レオン・ロー役でゲスト声優を担当する。

オフィシャルサイト
http://www.ken-on.co.jp/1936/

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