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レビュー高評価のドット絵シミュレーション『Kingdom』 女王になりきった奮闘の物語

レビュー高評価のドット絵シミュレーション『Kingdom』 女王になりきった奮闘の物語

『Kingdom: Two Crowns』は、新天地に降り立った王となって国作りをする、横スクロールのシミュレーションゲーム。美しいドット絵で描かれた自然のなかを馬で駆け回りながら、資金を集めたり、人々を雇って設備の建設指示を出していくのだ。しかし、王の証である王冠を狙って夜ごとに魔物が襲来し、街をメチャクチャにしてしまう。王の使命は、これら魔物の巣窟を一掃して国に平和をもたらすこと。舞台となる5つの島を巡りながら、魔物討伐の手立てを探ってゆく。本作は、シリーズ3作目であり、“Two Crowns”というサブタイトルのとおり、ふたり協力プレイが可能。また、グリフォンやサラマンダーなど、乗り換えられる動物も増えている。さらに、和風ビジュアルのモードも登場。
今回は、トロフィーもフルコンプするほどのシリーズファンである筆者が、女王になりきってしたためた手記、という形式でゲームシステムを紹介する。なお、手記のなかのセリフや女王の背景などは筆者の妄想ということをご了承願いたい。

文 / 小泉お梅


第1章 白馬に乗った女王と幽霊

私は、女王。
新たな土地を求めてこの島にやってきた。いまの私にはこの白毛の馬しかないが、必ずや繁栄を手にしてみせる――。

▲ゲーム開始まえのロード中に王の見た目が変更できます。王か女王の性別と、肌と服装のカラーリングがボタンを押すたびにランダムで変わります。選定は気に入るタイプが出るまで続けられますが、そのまま待つと確定され、ゲームがスタート。写真は、ふたり協力プレイ時の選択画面です

ふと先を見ると、ぼんやりと宙に浮かぶドレスの女が彼方を指差し、語りかけてきた。「向かうのだ」と。不思議と怖くはなかったが、あの青いドレス、どこかで見覚えがあるような……?

▲本作はほぼテキストがないゲームですが、チュートリアルとして先代の王または女王の幽霊が、国作りの基本を教えてくれます

女の霊の言うとおりに進むと、開けた場所が見えてきた。ここを拠点にするとしよう。
亡霊の囁きに従い、焚き火をし、近くにいたふたりの男を雇うことにした。ちょうど店を出す者も現れたので、弓をひとつ、ハンマーをひとつ買い、先ほどの男たちに与える。弓を手にした男は、さっそく野ウサギを狩り始めた。ウサギ1羽では儲けはわずかなものだが、草原には多く生息している。大猟を期待するとしよう。

▲国作りの第一歩は、焚き火を起こすところから。すると、ショップが自動的に出現。焚き火に始まる拠点の中心は、テント、館、城などにグレードアップできます

▲人を雇う、弓などを買う場合もコインが必要。最初の島はコインが数枚落ちているのでこれを元手にしますが、以降は狩りなどで増やしていくことに。射手がウサギを射ると瞬間的にコインになります。コインを使うときは店の前などに立つと表示される円に、ボタン長押しで入れます

一方のハンマーを持った男は大工となり、私が印をつけた木を切り倒してみせた。木材もコインになるし、こうして開拓していけば、いずれは草原が広がり、よい狩場になるだろう。

▲コインを消費して、切り倒したい木を指示します。伐採するとコインが2枚ほど出現。辺りが拓けると時間経過で草むらが現れ、ウサギが出現するようになります

木を切ったその先に、布きれを被せただけのみすぼらしいテントと、薄汚れた男が見える。ここはどうやら、行く当てのない者たちが流れ着く場所らしい。いまはボロボロでも、貴重な人材だ。これから国を大きくするにも人手が必要になる。彼らに「ともに来てくれないか」とコインを渡すと、身なりを整え、サッパリとした表情で拠点へと歩き出した。
「彼らには、なんの仕事を任せようか?」と、うしろ姿を見送りながら考えると同時に、浮き立つ気持ちになる。彼らは働き手ではあるが、私の国の一部でもある。家族が増えるというのは、こんな感じなのだろうか。このテントには、また様子を見に来るとしよう。新たな民を迎え入れられるかもしれない。

▲テントにはほぼ毎日、流浪の民が出現。彼らをコインで雇うことで国民を増やしていきます。弓などの道具を買っておけば、彼らが自分で店頭から受け取って仕事を開始してくれます。本作は会話や命令コマンドなどはなく、コインの支払いが指示代わり。でも、交流がないわけではなく、民たちは王とすれ違うときにペコリと挨拶してくれますよ

亡霊はまだ言いたいことがあるらしい。今度は盛り上がった土を指し、壁を作るようにと訴えかけてくる。気づけば空が赤みを帯びて、もうすぐ日暮れになろうとしていた。夜が来るまでに私たちを守る備えを築かなければ。それにしても亡霊はなぜ、壁だの、人を雇うだの言ってくるのだろう。これでは、まるで……。

▲盛土の上には防壁を作れます。壁はグレードアップが可能で、条件を満たせば頑丈な石や鉄の壁にできますが、改築にかかる費用もアップ

大工に命じてこしらえた木の柵は、防壁と言うには頼りないが、領地の境を立派に示してくれている。この内側はもう、我が国なのだ。ふと振り返ると、先ほどまでくっついてきた霊の姿が、どんどん薄くなり、スッと消えた。最後はどこか満足げな顔をしていたようにも見えた。その面差しは、私の頭のなかで、いつか見た肖像画と重なる。

「お母さま……」
私と同じように新天地を目指し、志半ばで露と消えた女王。幼きころに旅立ち、ついぞ帰らぬ母など思い出すこともなかったが……。
私が、私こそがこの地を平定してみせる。いや、叶わずとも私のつぎの王が。

第2章 紫色した襲撃者

辺りがすっかり暗くなり、狩りに出ていた者たちも拠点へ戻ってきた。今夜は月が明るいが、それでも柵の向こうの暗闇は深く、先がまったく見えない。目を凝らすことにも飽きて、近くを流れる川に映る松明の灯に目を落とす。水面がキラキラと輝いて、綺麗だ。

▲陽が落ちると、国民は拠点に戻ります。朝が来ればまた狩りを再開。こうして日々を重ねながら国を発展させていきます。ゲーム内の1日は、実際の時間にして5分ほど。昼と夜、刻々と移り変わる風景や水面の反射も本作の見どころのひとつ

そのとき、ドンッ! という大きな音が響いた。
「魔物だ! グリードが来た!」 射手が叫び、矢を射かける。私も馬の腹を蹴って柵へと急ぐ。
暗闇のなか、松明の灯に浮かび上がったのは紫色の顔だった。顔といっても目鼻らしきものはない。グリードは灰色の体をくねらせながら、柵に突撃している。しかし、矢がプツリと刺さると、溶けるように消滅した。

▲夜になるとグリードと呼ばれる魔物が襲来します。王は自ら戦いませんが、射手が応戦してくれます。しかし、数が多いとさばききれないことも……。防壁が壊れるとヤツらは拠点に入り込み、民を攻撃し、コインや道具を盗んでいきます

グリードがいなくなり、ホッと胸を撫でおろす。そういえば心もとない防壁の様子はどうだろう、壊れていないだろうか……。
思わず、外に出てしまったのがまずかった。
ドスンッと衝撃が走る。遅れてきたグリードが馬に体当たりしたのだ。
その弾みで、袋に入れていたコインが散らばる。いくつかは拾えたが、1枚はそのグリードがかすめ盗っていった。続くもう1体がさらに攻撃してくる。拾ったコインは川へと落ち、袋にはもう何もない。
再びの体当たりは、最後に残された王冠を吹き飛ばした。
私の、私の王冠!
黄金の冠が地に落ちるまでは、時の流れが非常に遅く感じられた。幸い、私の馬のほうがグリードより速かったため、王冠を再び拾い上げることができた。その勢いのまま柵の内へ逃げ込む。すれ違いに矢が飛んでいく。
振り向けば、柵の外でぐずぐずと溶けゆく塊が見えた。

「あとわずかでも遅ければ……」
射手の矢が最後のグリードに突き立ったのを見ても、しばらくは心臓の早鐘が鳴り止まなかった。もし冠を失えば、私は君主ではいられなくなる。私にとって、ほかの何よりも耐え難いことだ。

▲王がグリードに襲われると、コインを落としてしまいます。グリードたちはコインや道具を奪うと、巣へ帰っていきます。コインがないときに攻撃を受けると、王冠が落下。王冠を奪われてしまうとゲームオーバーとなってしまいます

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