モリコメンド 一本釣り  vol. 104

Column

Eve ネット界を牽引するシンガーソングライター。最新アルバムで描いたファンタジックな世界とは?

Eve ネット界を牽引するシンガーソングライター。最新アルバムで描いたファンタジックな世界とは?

投稿動画サイトの“歌ってみた”で注目を集め、シンガーソングライターとして活動を開始、そしてメジャーシーンへ。テン年代以降、数多くのアーティストが通ってきたルートだが、この人の才能は明らかに際立っている。ボーカロイドを中心としたネットカルチャーが日本のポップ・フィールドを大きく変化させている現在において、もっとも注目すべき存在と言っていいだろう。

シンガーソングライター、Eve。彼の音楽的ルーツはBUMP OF CHICKEN、RADWIMPS、Galileo Galileiなどの邦楽ロックバンド、そして、ボーカロイド楽曲だ。たまたま友達の家で、supercellの「メルト」の“歌ってみた”動画を観たEveはネットシーンの音楽に興味を持ち、自分でも“歌ってみた”を投稿するようになり、注目を集めるようになる。2枚の自主制作アルバムを経て、2016年に初の全国流通盤『OFFICIAL NUMBER』をリリース。この頃はカバー曲が中心だったが、その後、自ら作詞・作曲を手がけるようになった。最初のターニングポイントはおそらく、2017年5月に発表された「ナンセンス文学」。エッジーかつポップなギターリフ、鋭利な手触りを備えたバンドサウンド、“互いに傷つけ合いながらも、刹那的な快楽を求める現代人”を想起させる歌詞がひとつになったこの曲は、Eveの豊かな作家性とシャープな表現力を備えた歌、つまり、シンガーソングライターとしての確かな才能を感じさせるに十分だった。Eve自身の“夢”を人気イラストレーターのMahが映像化したMVにもぜひ注目してほしい。

その後も定期的に楽曲を発表してきたEveは、2017年にアルバム『文化』を発表。「ナンセンス文学」「ドラマツルギー」(←緊張感と解放感を共存させたサウンドと“外野から嘲笑するのではなく、矢面に立って表現したい”という意志を込めた歌がひとつになた名曲)を含む本作で彼は、人間の深層に存在している不安や葛藤、孤独を描き出すと同時に、独創的なサウンドメイク、中毒性のあるメロディなど、音楽家のポテンシャルを示した。このアルバムによってEveの存在はさらに広まり、ネットシーンのみならず、幅広い音楽ファンに浸透。「ナンセンス文学」「ドラマツルギー」「お気に召すまま」 「あの娘シークレット」のMVがYouTubeで軒並み1000万再生を超え、オリコンインディーズチャート1位、iTunes2位を記録した。さらに2018年にはアルバム『文化』を伴った東名阪ワンマンツアーを開催。11月に行った自身最大規模となる新木場STUDIO COAST公演も即完させるなど、ライブ・パフォーマーとしても大きな支持を集めた。

YouTubeチャンネル登録者数は約84万人、Twitterのフォロワーは約35万人、MVの総再生回数は1億回するなど、さまざまなメディアで急激に存在感を高めているEve。ニューアルバム『おとぎ』は、彼の最新モードと予想を超えた進化を刻み込んだ作品に仕上がっている。YouTubeでMVが先行公開された「アウトサイダー」「トーキョーゲットー」「アンビバレント」「ラストダンス」をはじめ、昨年の新木場STUDIO COAST公演でも披露された「迷い子」、さらにアクションロールプレイングゲームアプリ『ドラガリアロスト』のキャラクターソングとして制作された「楓」のカバー、未発表の新曲「やどりぎ」「僕らま だアンダーグラウンド」「君に世界」などを含む11曲を収録。Eveのルーツである10年代以降の邦楽ロック、ボーカロイドからの影響を現代的なポップミュージックへとアップデートさせた楽曲は、本作によって確固たるオリジナリティに達している。さらに特筆すべきは、アルバム全体の構成力の高さ。「slumber」(“ウトウトする、まどろむ”)からはじまり、「dawn」“夜明け”で幕を閉じる本作は(「おとぎ」というタイトルから想起させる)まるで夢の中で展開されるようなファンタジックな世界を描き出している。すべての楽曲が有機的につなげ、ひとつの壮大なストーリーに結実させる本作からは、Eveの創造的な視野の広さを実感してもらえるはず。単なる夢物語ではなく、現実社会のリアリティと表裏一体になっているところもこのアルバムの魅力だろう。今作のジャケットデザインは『文化』と同じくMahが担当。楽曲のメッセージを増幅させるようなMVを含め、MahのクリエイティビティはEveの音楽にとって必要不可欠なのだ。

3月から4月にかけて東名阪ツアー「Eve 2019 春Tour[おとぎ]」を開催。一瞬でリスナーを惹きつけるメロディとサウンドの気持ち良さ、そして、リピートするたびに深さを増す物語性を併せ持ったEveの音楽は、音源、ライブ、映像などの様々なメディアと連結しながら、未体験のエンターテインメントを我々に体感させてくれるはずだ。まちがいなく、次世代のシーンを担う才能だと思う。

文 / 森朋之

その他のEveの作品はこちらへ。

Eve 2019 春Tour[おとぎ]

3月25日(月) なんばHatch
3月28日(木) ダイアモンドホール
4月29日(月・祝) Zepp DiverCity

オフィシャルサイト
http://eveofficial.com

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