Tリーグ丸かじり  vol. 10

Column

あわやラブゲーム。その時!! わざとミスする珍マナー?

あわやラブゲーム。その時!! わざとミスする珍マナー?

当コラムvol.8で、岡山リベッツの吉村和弘が0-10まで行ってあわやラブゲームを食らいそうになった話を紹介したが、結果的にラブゲームにはならなかった。相手の木下マイスター東京の松平健太が、次のボールをわざとレシーブミスしたからだ。

10数年前から、卓球の国際試合では、スコアが10-0になると、リードしている方がわざとミスをして相手に1点を与える「マナー」が見られるようになった。一説によると中国のプロリーグから始まったと言われ、0点で勝って相手の面子を潰さないための配慮だという。

卓球が1ゲーム11点制になったのは2001年から。それ以前は21点制だったので、さすがにそんなケースはほとんどなかったが、11点制だと実力が近くても勢いで0-10になることが結構ある。0-7ぐらいになると「まさか完封?」という考えがよぎってますます緊張し、意外と簡単に0-10になるのだ。

昨年1月の全日本選手権の女子シングルス決勝で、伊藤美誠と平野美宇が10-0になったし、昨年10月のユース五輪の男子シングルス決勝でも、王楚欽(中国)と張本智和が10-0となり、いずれもリードしている方がわざとサービスミスをした。

張本智和でさえ0-10に追い込まれる。それが11点制の怖いところだ

それにしてもなんと珍妙なマナーだろうか。そもそも相手にわかるようにわざと点を恵むことは、相手の面子を保ったことにならないし、むしろ相手を愚弄する行為のはずだ。常に全力で戦うことこそが相手を尊重することであり、その競技を重んじることであり、スポーツマンシップであるのに決まっている。完封された屈辱から奮起することだってある。

もしも野球で、大差で勝っている方が、いかにもわざとフライを落とすとか、連続してフォアボールを投げて押し出しで1点を与えたらどうだろう。サッカーで大差で勝っている方が終了間際にオウンゴールしたらどうだ。もしもそんな「マナー」があったら絶対にオカしいと思うだろう。そんな珍マナーが卓球の国際大会では定着してしまっているのだ。

小さいころからスポーツマンシップを指導されてきたはずの選手たちだって、こんな行為は肌に合わないと思っているはずだ。マナーだとされているから仕方なしにやっているだけだ。

最近では、この珍マナーが卓球のトリビアででもあるかのようにテレビで紹介されることもあってか、わざとサービスミスをすると、観客から拍手が起こったりする。テレビの解説者がそれを「卓球の正しいマナー」かのように解説することもある。

幸いにも今回の松平のレシーブミスに対しては、観客も解説者もまったく無視、無反応だった。さすがだ。あとは選手だ。Tリーグは日本で新しく立ち上げたのだから、慣例にとらわれず、常に全力で戦うことをマナーにしてはどうだろうか。

ゴーゴーTリーグ!

日本発祥のTリーグは世界の慣例にとらわれず、常に全力をマナーにしてほしい

取材・文 / 伊藤条太 写真提供 / T.LEAGUE

T.LEAGUE(Tリーグ)オフィシャルサイト
https://tleague.jp/

著者プロフィール:伊藤条太

卓球コラムニスト。1964年岩手県生まれ。中学1年から卓球を始める。東北大学工学部を経てソニー株式会社にて商品設計に従事。日本一と自負する卓球本収集がきっかけで在職中の2004年から『月刊卓球王国』でコラムの執筆を開始。世界選手権での現地WEBレポート、全日本選手権ダイジェストDVD『ザ・ファイナル』シリーズの監督も務める。NHK『視点・論点』『ごごナマ』、日本テレビ『シューイチ』、TBSラジオ『日曜天国』などメディア出演多数。著書『ようこそ卓球地獄へ』『卓球天国の扉』など。2018年よりフリーとなり、近所の中学生の卓球指導をしながら執筆活動に励む。仙台市在住。

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