『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』特集  vol. 3

Interview

劇場版3部作がファン絶賛の好スタート。『PSYCHO-PASS サイコパス』塩谷直義監督に訊く新プロジェクトの狙い、2Dアクションアニメへの尋常ならざるこだわり

劇場版3部作がファン絶賛の好スタート。『PSYCHO-PASS サイコパス』塩谷直義監督に訊く新プロジェクトの狙い、2Dアクションアニメへの尋常ならざるこだわり

人間の心理状態を数値化し管理する近未来を舞台に、潜在犯を裁き取り締まる刑事たちの熱い活躍を描く人気アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』。2018年春、電撃的に復活が発表された本シリーズは、2015年公開の『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』以来、約4年振りに劇場版3部作からなる新プロジェクト『PSYCHO-PASS サイコパスSinners of the System』(以下『SS』)として復活を果たしている。

『SS』3部作は、『PSYCHO-PASS サイコパス』劇中ヒストリーから3つの時間軸を抽出し、これまで語られてこなかったエピソードを描いているのが魅力だ。2019年1月25日より公開中の『Case.1 罪と罰』は、TVシリーズ第二期の後、2117年冬を舞台に、監視官・霜月美佳(CV:佐倉綾音)と執行官・宜野座伸元(CV:野島健児)がバディを組み、潜在犯隔離施設の闇を暴く物語。

続く2月15日公開の『Case.2 First Guardian』は、TVシリーズ第一期より前、常守朱(CV:花澤香菜)が公安局刑事課一係に配属される以前の2112年を舞台に、国防軍所属時代の須郷徹平(CV:東地宏樹)と、宜野座の父であり、執行官の征陸智己(CV:有本欽隆)を主軸とした物語。そして3月8日公開の『Case.3 恩讐の彼方に__』では、『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』で描かれた2116年のSEAUn事件後、アジアを放浪する狡噛慎也(CV:関智一)のその後のエピソードを描いていく。

なぜ今、『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズが、新プロジェクト『SS』として復活を果たしたのか? ファンに熱狂的に迎えられた『Case.1 罪と罰』について今だから話せる意図、まったく新しい視点から描かれる『Case.2 First Guardian』の制作エピソードを中心に、『SS』が目指すものを、シリーズ全ての監督であり『SS』ではストーリー原案も手がけた塩谷直義に聞いた。

取材・文 / 阿部美香


ありがちな「ファン待望のサイドストーリー」に終わらない、どの方向から観ても「攻めていく」話にしたかった

『Case.1 罪と罰』より

今回掲載中の特集では、『Case.1 罪と罰』のメインキャストである佐倉綾音さん野島健児さんにも『SS』始動時のお話を伺いました。企画自体は2015年公開の劇場版あたりから、既にあったそうですね?

塩谷監督 そうですね。今回の『SS』3部作を “新プロジェクト”という言い方をさせていただきたいのですが……2015年の劇場版の公開中に、「次の『PSYCHO-PASS サイコパス』もやりませんか?」という話はいただいていました。ただ、やりたいが、どういう形が『PSYCHO-PASS サイコパス』としての新しい表現、新しいプロジェクトにふさわしいのかと考えたとき、TV新シリーズや、ムービー(長編)の第二弾をすぐに立ち上げるというのは、ちょっとキツいなと思ったんです、物理的にも。ですから、内容を精査したかった。

TV第一期では、シビュラシステムによる世界の秘密に翻弄される二人の主人公を描き、第二期では、シビュラシステムの盲点は何だったのか? がテーマになりました。劇場版も大きくはその流れの中にあります。となると、そこから『PSYCHO-PASS サイコパス』の続き――ナンバリングとしての本編ストーリーの続きを描くとしたら、一期、二期に続く話にならなければ嘘になる。でも僕は、次をやるなら、そこから入らなくても良いのでは?と考えていました。

それはなぜですか?

塩谷 これまで物語と時間の都合上、メインストーリーから外れてしまったエピソードもあるわけです。そういったものは、メディアミックスとして例えば漫画や小説でフォローされていますが、映像にはなっていない。今回はその部分、断片的なエピソードを新作として自分達で映像化したいと思いました。

ただし、これまでの物語の穴埋めではなくて、その先を描く。今作るべきものだと考えました。例えて言うならば、“新プロジェクト”は、大河ドラマなんです。『SS』は、その中の起点になるピースにしたかった。今回の三部作は、大河の小さな上流であり、新たな水が湧き出て大河に合流するまでの細い川筋です。これを示すほうが、観た人が、よりこの大河自体がどう形成されているかが最後に理解できる。そんな“新プロジェクト”を作りたいと考えたんです。作品の骨子がはっきりした今だからできると思いました。

『Case.1 罪と罰』より

その細い川筋が、『SS』なわけですね。公安局刑事課一係が個々の事件を追いながら、シビュラシステムそのものの在り方に迫っていく緻密でリアルな設定による近未来SFとしての『PSYCHO-PASS サイコパス』ストーリー。それはまさに、大河ドラマのようです。すごく腑に落ちました。

塩谷 山から流れ出て、より川幅が広がり、流れが勢いを増す大河ドラマをいきなり動かすのではなく、細部から動かしていこうというのが、新プロジェクトとしての『SS』ですね。

『SS』で描かれているのは、いわゆるナンバリング本編のスピンアウト、サイドストーリー的な物語と考えることができますが、それを一挙3作連続公開というのはユニークですね。シリーズ自体も、長く熱狂的な人気が続いていますし。

塩谷 人気があるかないかは、僕には実感がないんですよ(苦笑)。ただ……『PSYCHO-PASS サイコパス』を待っていた方がいらっしゃってくれたとすれば、それはTV一期で、揺るがない軸を作れたことが間違いなく大きい。軸が柔らかかったり、折れやすいものだったら、どこかで物語が破綻したり、軽くなってしまうものですよね? 正面から観ると立派でも、横から見たらペラペラじゃないか! と(苦笑)。そういう作品にならないために、しっかり地固めをしてきたので、今回のように断片的な3エピソードが並んでも、「なるほどね」と納得できるドラマの器は作れていると思います。

さらに『SS』には、「ファンの方が待ち望んでいたサイドストーリー」に終わらない、「新しい物語、目からウロコになるお話を観せたい」という想いがありました。どの方向から観ても「攻めていく」話にしたかったです。

『Case.2 First Guardian』より

『SS』では塩谷監督ご自身がストーリー原案を手がけられました。3つのエピソードは、どのように決めていかれたのですか?

塩谷 まず、狡噛編(『Case.3 恩讐の彼方に__』)は、色々と思うところがあり、今シリーズで作るべきだと思いました。それに絶対に観たいじゃないですか(笑)。

はい。古巣の刑事課一係を飛び出し、消息が分からない狡噛は、最も気になるキャラクター。人気も絶大ですからね。

塩谷 そして霜月・宜野座編(『Case.1 罪と罰』)も、二期の流れからするとあってしかるべき。きっとプロデューサー側もそう考えているだろうなと(笑)。問題は、須郷・征陸編(『Case.2 First Guardian』)でした。僕はとても描きたかったエピソードですが、それ(企画)が、果たして通るかどうか。プロデュース側からすると、本編のメインキャラクターとして活躍した人たちではないので、新作として勝負しにくいですからね(苦笑)。ただ、描かれるドラマは間違いなく面白くなると確信していたので、OKが出て安心しましたね。

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