Interview

独占! 大江千里国際電話インタビュー。NY、充実のJAZZライブの日々

独占! 大江千里国際電話インタビュー。NY、充実のJAZZライブの日々
大江千里は、この7月にニューアルバム『answer july~Senri Oe Jazz Song Book~』をアメリカでリリースした。レジェンドのシーラ・ジョーダンなど、初のボーカリストをフィーチャーしたこのアルバムが好評で、ニューヨークの“The Jazz Gallery”で行なわれた『answer july』のお披露目ライブもソールドアウト。ジャズ・ピアニストとしての活動がいよいよ本格化してきた。 また、9月には日本で『answer july』が発売になる。 オーセンティックなアプローチながら、とても親しみやすいジャズに仕上げたのは、さすがだ。独自のポップセンスを発揮してジャズ・シーンでも注目を集めるニューヨークの千里に、電話インタビューして近況を聞いてみた。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / Mami Yamada

大江千里

ニューアルバム『answer july』の曲を、“The Jazz Gallery”のオーディエンスの前で演奏してみて、感触はどうでしたか?

この3年間、曲ができると、レコーディングする前に毎月出ているライブハウス“Tomi Jazz”で演奏してきました。そこでお客さんの反応を見てからいろいろ修整したり、ボーカリストのシーラ・ジョーダンとのレコーディングが終わると、また違った気持ちでライブに臨むようになったり。そういうことを相棒のベーシスト、ジム・ロバートソンと、ずーっとやり続けてました。なので、The Jazz Gallery”でのライブは、僕とジムとの3年間の集大成みたいな感じでしたね。 普段は2人でやってるライブに、いろんな歌手が加わってくれたんですが、特にシーラ・ジョーダンが凄かった。年長者なのにすごい気迫で、こっちまでがグイグイ乗せられる。フレッシュなエネルギーを感じて驚いたというか、すごく感謝しましたね。シーラとライブを一緒にやれて「嬉しいなあ」って噛みしめながら、伴奏させていただきました。

大江千里

シーラに「一緒にアルバムを作りませんか?」ってお願いしたときの最初の気持ちを思い出しましたか?

もちろん最初の気持ちを思い出しましたけど、実はそのとき、彼女は体調を崩してたんですよ。もしかしたらライブに出られないかもしれないって思ってたんですけど、シーラが時間通りに現れて、元気な顔で「ドロップ食べるぅ?」とか言ってくれて(笑)。

ははは! 大阪のオバハンかよっていう(笑)。

そうそう(笑)。優しいんですよね。僕が緊張してるのを解きほぐそうと思って「大丈夫? ドロップ食べるぅ?」って何気なく言ってくれた。

でも歌い始めたら、一番年上なのにみんなを引っ張っていくぐらいのパワーで。

そう、グイグイ来てましたね。さすがにチャーリー・パーカーと親交があったシーラ・ジョーダンだけに、気迫が凄かったです。今、ラップとかいろいろな音楽がありますけど、もともと器楽に歌詞を乗せて、即興的なスタイルで始まったのがジャズ・ボーカリーズですからね。中でもシーラの歌は、語りに近い。だから今の若い人が聴いても共感できる部分があると思う。 そのシーラを目の当たりにしながら伴奏してるんだっていう興奮もありました。それも自分が作った曲じゃないですか。そういう単純な喜びがある一方で、しっかりやらないとダメだなとも思ってました。「しっかりやらないと」っていうことは、肩に力を入れるんじゃなくて、今までやってきたことをそのまま平常心でやるっていう。 それでも、“The Jazz Gallery”での1部のライブは丁寧にやり過ぎちゃって、時間を大幅にオーバーしてしまいました(笑)。だから2部でドライにテンポアップしてやったら回り始めてこれが結果的によかった。でも皆さんのおかげで無事に終わることができました。ありがとうございました。

大江千里

そして、そのライブの最後に被災地に向けた「KUMAMOTO」を演奏しましたね。

はい。「KUMAMOTO」は「どこかでこの曲を必要としている人に届けばいいな」っていう気持ちで書きました。チャリティだからこそ「ひとつの曲として成立してなきゃいけない」「シンプルで心に届くものを」っていうところで書いた曲なので、ライブの2部の最後にこの曲を聴いていただけて心からホッとしました。皆さんにもそういう気持ちになっていたければ。

大江千里

オーディエンスの反応はどうでしたか?

「KUMAMOTO」に対してのお客さんの反応は、ものすごかった。ストレートで大きな拍手とスタンディング・オベーションだった。 ただ正直言って、普段の生活の中で「地震が熊本であったんだよ」って言ってもアメリカ人の中では「え? そうなの?」っていうことも結構多いんです。「ほら、熊本で地震があったじゃない?」って普通の会話の中で言うと、「え、知らない、知らない、ごめんなさい、いやあ、知っとくべきだったね、ごめんね!」っていう。世界中でいろんな災害が起こっているから、それは熊本だけじゃないので、みんなそれだけに頓着できないっていうのもあるのかもしれないけど、だからこそやっぱり、「熊本」のことを「東北」のことをきちんと伝えていかなきゃ忘れられるっていうか。

大江千里

メッセージ以前に、インフォメーションでもあったっていうことなんですね、きっと。

そうですね。チャリティとかは日常に根ざしていてアメリカの社会で普通にあることなので、今これを必要としている人たちのために書いたのだと曲の情報を真摯に伝えることはライブでも重要です。MCでも照れたりせずに「こういう目的にために、こういう人たちのためにこの曲を書きました」ってきちんと話すと、ものすごく集中して聴いてもらえるし、実際伝わるんですよね。

きっとその裏返しで、「知らなくてごめんね」って言うんでしょうね。

そうそう。だから、みんな日常の中で社会的なことへの意識が高いですよ。たとえば自閉症の子たちを助けたり、糖尿病の人たちを応援したり、アルコール依存症を克服しようとしている人たちのためにライブをやったりっていうのは、わりと日常の中で社会的なオプションとして身近にあってごく普通に行われていることなんですね。

大江千里

ニューヨークのライブが終わったあとに、アムステルダムでもライブを行なったそうですね。

アムステルダムは去年に続いて2回目だったんですけど、今回は事前にいろいろPRもできたんで、お客さんがけっこう来てくれて、感動的なライブでしたねえ。 そんなにでっかいところではないんだけれど、会場はアートを供給している場所でした。隣がライブラリーで、そのライブラリーがクローズした時間に舞台をトントンカンカン造って。まずマーサ・グラハム舞踏団のプリンシパルの折原美樹さんのショーが20分ぐらいあった。僕はその舞踏の伴奏もやりました。それが終わったあとに3分ぐらいのブレイクを挟んで、僕のライブが40分ぐらいかな。ちょっと多くやらせてもらいました。「ゴー・ダッチ(注:ダッチはオランダのこと。意味は“割り勘”)」っていう言葉があるんだけど、素直っていうか、オーディエンスがストレートなんですよね。ぶっちゃけてて、反応が面白い。自分で「あ、ハズしたな」と思うと向こうもシュンとなるし、素直にぶつかって「うわー、俺、汗掻いて何喋ってるんだろう」と思うとそれが伝わってウワーッと拍手になったり。だから「ああ、やっぱり飾ったり、言葉を選んだりするよりは、自分の心にあることをそのままぶつけて、一生懸命演奏すると、それをわかってくれるんだなあ」って思って、すごく嬉しかったですねえ。

ニューヨークとは違う新鮮さがあったんですね。

そうですね。ニューヨークの場合はエンタテイメントに慣れてるっていうのがあって、演奏が始まる前に「You’re so great!!」みたいな感じで、「まだ聴いてねえじゃん!」みたいな(苦笑)。それがニューヨークのノリの良さで、オーディエンスがアーティストを育ててくれるようなところがあって好きなんですけど、アムステルダムの人たちは、もっと耳をそばだてて、静かに見守るっていうか、サポートの仕方がちょっと違う感じでした。それだけに素直にグワーッとアクションがくると嬉しいんですよ。

それぐらい違うんですね。

19歳ぐらいの若いオランダ人の子が、トコトコっと僕のところにやって来て、「CDってまだある? 僕、現金ないからさあ、ATMで今からお金を下ろしてくるから待っててね」って言って、CDを買ってくれた。それを胸に抱きしめて「これ、今夜聴くんだあ」って。やっぱりちょっとキュンときましたね(笑)。「ありがとー」って。

そして、日本でのお披露目ライブは?

アルバムが日本で9月7日に出るんで、基本的にピアノひとりで行くので、ソロの楽しさを僕も満喫したい。まずは東京JAZZにでます。ベースのジム・ロバートソンと、「KUMAMOTO」を歌ってくれた平麻美子さんも来てくれます。そのあと仙台の定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、基本はピアノ1本でいろんなところに出ます。 アルバムの正式なツアーは10月、11月に福岡から始まって、BLUE NOTE TOKYOの千秋楽までです。そこには再びジム・ロバートソンが日本に来てくれて、ローレン・キンハンっていうニューヨークボイシズの女性ボーカルも来ます。

最後に近況を聞かせてください。

6、7月はいろんな人に楽曲提供するプロジェクトをやってました。あとは人のお手伝いっていうか、伴奏のお仕事とかそういうのもやったりしてました。 それと今、僕は自分のレーベルのオーナー且つ従業員なんで、ディスクユニオンさんやタワーレコードさんに卸しをやったり(笑)、毎日、いろいろ細かいことをやってるんですけど、今回はいっぱい仕入れていただけたので「腕がパンパンになるよ」ってハアハア言いながら、CDを何箱も担いで「ウリャーッ!」って郵便局に行ったり(笑)。これはやっぱり幸せな、ありがたいことだなって思いますね。8月はアメリカでオペラの人とやったり、昔チャーリー・パーカーが演奏してたハーレムの店で演奏をしたり、いろんなライブがあるので、いい感じに仕上がって日本に行きますのでお楽しみに。いろんなところで演奏をしたり喋ったり、いろいろできる場所を日本のスタッフが作ってくれているので、僕も楽しみにしてます。なので、皆さん、待っててほしいですね。

ありがとうございました。

大江千里

リリース情報

9月7日発売 『answer july』~Senri Oe Jazz Song Book~

大江千里 『answer july』~Senri Oe Jazz Song Book~

【初回生産限定盤/CD+DVD+フォトブック】 VRCL-10130~10131 ¥4,500(Tax In) 【通常盤/CD】 VRCL-10132 ¥3,000(Tax In)

1.Tiny Snow 2.Answer July 3.Without Moon or Rain 4.Just A Little Wine 5.You and Me 6.Very Secret Spring 7.Mischievous Mouse 8.The Garden Christmas 日本盤ボーナストラック「KUMAMOTO」

ライブ情報

国内最大級のジャズ・フェスティバル「第15回 東京JAZZ」出演決定!!!!

9月3日(土) the CLUB(COTTON CLUB) 『Music for Tomorrow』 ★大江千里 and friends <1st show> Open 16:00 / Start 17:00 <2nd show> Open 19:00 / Start 20:00

Japan Tour / Senri Oe「Answer July ~Jazz Songs Book~」東京公演決定!!!!

11月4日(金)@Blue Note TOKYO <1st show> Open 17:30 / Start 18:30 <2nd show> Open 20:20 / Start 21:00 11月5日(土) @Blue Note TOKYO <1st show> Open 16:00 / Start 17:00 <2nd show> Open 19:00 / Start 20:00

プロフィール

大江千里(オオエセンリ)

1960年9月6日生まれ。NY在住。 1983年にシンガーソングライターとしてエピックソニーからデビュー。2007年末までに45枚のシングルと18枚のオリジナルアルバムを発表。音楽活動のほかにも、俳優として映画やテレビドラマに出演。NHK「トップランナー」のMC、ラジオ番組のパーソナリティのほか、エッセイや小説も執筆。 2008年ジャズピアニストを目指し、NYのTHE NEW SCHOOL FOR JAZZ AND CONTEMPORARY MUSICへ入学。ジャズピアノ専攻。AARON GOLDBERG やJUNIOR MANCEなどのピアニストに師事。2012年卒業。 2012年7月、ジャズピアニストとしてのデビュー作『BOYS MATURE SLOW』を全米発売。2013年9月に『SPOOKY HOTEL』を発売。日本ではBILLBOARD JAPAN JAZZ CHARTSでともに1位を獲得。『BOYS MATURE SLOW』は雑誌ジャズジャパン(元スイングジャーナル誌)主催のNISSAN PRESENTS “JAZZ JAPAN”AWARD 2012でTHE ALBUM OB THE YEAR : NEW STARを受賞。2013年、自身が率いるビックバンドで東京ジャズ2013に参加。2015年2月14日に3枚目のアルバム『COLLECTIVE SCRIBBLE』を発売。同年4月には、ポップミュージシャンからジャズピアニストへ。 勇気と努力と音楽と仲間たち。心揺さぶられる感動のリアルストーリー。【カドカワ・ミニッツブック】で24回連載したものをまとめた単行本、『9番目の音を探して 47歳からのニューヨークジャズ留学』を発売。そして、2016年7月5日、New Album『answer july』を発売。4枚目にして初の全曲ボーカルもの。発売日にNYの「The Jazz Gallery」で行ったライブでは、チケット販売後すぐにSOLD OUTとなり、大盛況を収めた。現在、ベースとなるNYで毎月最終木曜日に、ライブを行いながら自身のアルバム製作のみならず、アーティストへの楽曲提供や、NY在住のジャズアーティストの発掘にも乗り出している。

Senri Oe – Jazz Pianist in NY senri garden note