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本郷奏多、青柳 翔ら出演の男五人芝居。戸次重幸のソロプロジェクト舞台『MONSTER MATES』開幕レポート

本郷奏多、青柳 翔ら出演の男五人芝居。戸次重幸のソロプロジェクト舞台『MONSTER MATES』開幕レポート

戸次重幸(TEAM NACS)が作・演出を手がけるTEAM NACS SOLO PROJECT 戸次重幸『MONSTER MATES』が、2月8日に東京・EX THEATER ROPPONGIで開幕した。これまで戸次はこのソロプロジェクトで、『GHOOOOOST!!』(07)、『ライトフライト』(09)、一人舞台『ONE』(14)を上演しているが、約5年ぶり、第4弾のソロプロジェクト舞台となる『MONSTER MATES』では、ドラマ、映画、舞台など各方面で活躍し、注目を浴びている個性豊かな4人の俳優たち(本郷奏多、青柳 翔、前野朋哉、吉沢 悠)を迎え、戸次を含めた男5人によるサスペンスコメディを作り上げた。初日公演を直前に控えて同会場で行われたゲネプロの様子と、5人が登壇した囲み取材のコメントをお届けします。

取材・文 / 松浦靖恵 撮影 / 青木早霞(PROGRESS-M)

“MONSTER”は、登場人物の誰かのことであり、全員のことかもしれない

『MONSTER MATES』は、精神科医の坂上寛人(青柳 翔)が住むマンションの一室(リビング)が舞台。リビングの広さや置かれた家具などから、坂上が豪華なマンションで裕福な暮らしをしていることがわかるのだが、ここに住んでいるのは坂上だけではない。昔事故に遭ったことで足に障がいが残ってしまった三波秀和(本郷奏多)が居候していた。

この部屋に最初にやってくる“訪問者”は、鮮魚店店主の今野正志(前野朋哉)。彼は坂上の元患者で、同じマンションに住んでいるということもあってか、これまでも坂上宅に何かと理由をつけてはやってきているようで、坂上と三波が中学時代の同級生で”友達”であることや、三波が定職についていないこと、坂上が大病院の跡取り息子であることなどを知っている。そんなプライベートな事情を知って、ニート状態の三波に対して何かと上から目線の発言をする今野は、三波にとって“イラつくヤツ”であることは間違いないようだ。そしてこの部屋の住人の坂上は、三波やお調子者の今野に対して穏やかな笑顔と優しい口調で接している。そんな彼の様子を見れば、誰もが坂上に対して“いい人”という印象を持つだろう。

次なる“訪問者”はヤクザの桐谷憲次(戸次重幸)。今野が抱えた多額の借金を取り立てるため、今野の所在を追って土足で乗り込んでくる。声を荒げ威圧的な態度を取る行動もそうだが、開襟シャツに派手なジャケットを羽織り、首元には金のネックレス、片手にはセカンドバッグを持った強面の姿は、どこからどう見ても“その筋の人”だ。

少しずつ登場人物が集まってきたこの部屋に最後にやってくるのは、きちんとした身なりをしているが、今の時代には風変わりに見える服装をした“Q”(吉沢 悠)。礼儀正しく、丁寧な言葉遣いだが、無表情のままで話す彼からは感情が何も伝わってこない不気味さがある。坂上と三波は“友達”。今野は同じマンションの住人。坂上と三波にとって桐谷は初対面でも、今野とは“顔見知り”というように、何かしらの繋がりがある間柄だ。しかし、突然この部屋に現れた“Q”と4人は初対面で、いったい何者なのか、なぜこの場所にやってきたのか誰もわからない。それは観客にとっても同じこと。Qは謎だらけの人物でしかない。そしてそんな“Q”が三波に「あなたは不老不死になりました」というひと言を告げることによって、物語は大きく動いていく──。

職業、風貌、性格。それこそ育った環境や今置かれている立場がそれぞれ異なる人物たちが、ワンシチュエーション(マンションの一室)の中で、ファンタジーな要素とも思える“不老不死”というキーワードに振り回され、次第に本性が露呈されていく様は、恐ろしくもあり、時に滑稽でもあった。作・演出を手がけた戸次が本作を“サスペンスコメディ”と称したのは、そういうことなのだろう。

また、戸次は囲み取材で「この芝居に出てくるキャラクターは皆さん以下の連中ばかり。存分に優越感に浸っていただきたい」と発言していたが、観客たちにも彼らのようなゲスな感情がないともかぎらないことや、自分が無意識でやっていることでも、もしかしたら他人を陥れるような発言や行動をしているかもしれないのではないかと思いを巡らせば、この舞台の登場人物がどんな人間であっても、そのひとりひとりを完全に否定できない感情が生まれてしまうかもしれない。戸次がこの舞台に名付けた『MONSTER MATES』の“MONSTER”は、登場人物の誰かのことであり、全員のことかもしれない。そしてこの舞台を観ている自分の中にも“MONSTER”は潜んでいて、何かをきっかけにその得体の知れない“MONSTER”が他人に鋭い牙を向けるかもしれないのだ。

それにしても、Qを演じた吉沢は膨大な台詞量を稽古が始まる前にすべて頭に入れていたとのことで、彼がQという人物に注いだ熱量の大きさに驚かされた。また、戸次は囲み取材時に「なぜこのメンバーを選んだのか?」と問われて、「笑顔が信用できない4人だった」「いち視聴者として観ていて、演技とはいえ、本当に笑いたくて笑っているのかなっていう“腹黒さ”を感じ、役者としての“闇”を感じた」と言っていたが、戸次が自分の“直感”を最後まで信じることができたのは、キャスティングした俳優たちが役者としての“闇”を十分にこの舞台で発揮し、物語にとって重要なポイントのひとつである“生々しさ”をより増幅させ、役柄に投影させていく姿を目の当たりにすることができたからだろう。そして戸次の頭の中だけで練られた構想が、3年の月日を経て脚本になり、このキャスティングでしかなし得なかった作品に仕上がったこと、その達成感というものを、作・演出を手がけた身として、また同じ俳優として、十分に実感できたはずだ。

もし、「あなたは不老不死になりました」といきなり見知らぬ者から言われたとしたら、まず受け入れることはできないだろう。登場人物たちのように、そんなことあるわけがないと告げた相手を疑い、どう考えたってこの世にそんな人間が存在するわけがないと思うだろう。そして、三波のように、なぜ自分が不老不死の体になったのかと疑問を持つだろう。人間に限らず、生物はこの世に生を受けた瞬間から死に向かっているのだし、いつかは自分も“死”を迎えるのが当たり前だと思っている。しかし、もし自分が不老不死になったとしたら……。その不死身な体を利用して、あんなこともこんなこともしてみたいと想像を膨らませ、様々なことを試してみたいという思いにもなるだろう。たとえそれが悪魔に魂を売るような最低最悪の行為であっても。

登場人物たちの様々な思惑が交差していくなかで、永遠の命を授かることは果たして幸せなのだろうかと、この物語は観る者に何度も問いかけてくる。何年経っても歳をとらない自分を、周りの人たちは“バケモノ”扱いするだろう。自分以外の人間はどんどん歳をとっていくのだから、大切な人の死に何度も直面しなければならないはずだ。そんな自分の人生を、変えることができない不老不死の体を、死にたいと思っても死ぬことができない自分を、いったいどう愛せばいいのだろうか。

人間は生きていれば、いずれは死が訪れ、必ずこの世からいなくなる。親も家族も友達も恋人も、自分が好きなタレントや役者も、大して興味のない人でさえ。そして自分も。そう、死は誰にでも平等に(?)やってくる“結末”なのだ。いつかいなくなってしまうとわかっているかわかっていないかで、いつもの日々は変わっていくのだろう。いつかはいなくなってしまう者に対して自分はどう接しているのだろうか、いつかは死を迎える自分はどんな思いで日々を生きていくのか。観る者はきっと自分の大切な人を思い浮かべ、自分が過ごしてきた日々やこれからの日々を、この物語に重ね合わせて、様々な思いを巡らせるだろう。

謎の男・Qが告げた“不老不死”というワードによって、坂上、三波、今野、桐谷は翻弄され、5人の生々しい感情がラストに向ってどんどん加速度を増していく。この物語には、人間の愚かさと悲哀と本性を重ね合わせた大どんでん返しが何度も訪れる。二転三転する展開に、何度もドキドキしたり、ハッとさせられたりする。『MONSTER MATES』が最後に行き着く“結末”とは……。そして、その結末が果たして終わりなのか、新たな始まりになるのか。観る者の心を大きく揺さぶるその結末を、ぜひ劇場で目撃して欲しい。

東京公演は2月13日(水)まで。その後、2月16日(土)~17日(日)福岡国際会議場メインホール、2月22日(金)~24日(日)北海道・道新ホール、3月1日(金)〜3日(日)大阪・森ノ宮ピロティホールで上演される。

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