Interview

あいみょん 衝動から成長の過程を鮮やかに刻んだ新作『瞬間的シックスセンス』を語る。

あいみょん 衝動から成長の過程を鮮やかに刻んだ新作『瞬間的シックスセンス』を語る。

昨年は「満月の夜なら」、「マリーゴールド」、「今夜このまま」の3枚シングルが評判を呼び、紅白歌合戦に初出場。大きく飛躍したあいみょんが、絶好のタイミングでセカンドアルバム『瞬間的シックスセンス』をリリースする。今や日本中に広く知られることになった彼女だが、そのただならぬ才能は2015年のインディーズ・デビュー時から話題を集め、過激で大胆なソングライティングと気迫に満ちた彼女の歌はメジャーで一層磨きがかかり、ファーストフルアルバム『青春のエキサイトメント』はロングセールスを記録。約1年半ぶりとなる注目の新作は、1995年生まれのシンガー・ソングライターの著しい成長と鮮やかな変化が刻まれている。その心境と今をあいみょんが語る。

取材・文 / 佐野郷子

どう転んでも、滑ってもいいなと思ったファーストアルバム。

2018年は紅白歌合戦の初出場で締めくくった1年でしたね。紅白で歌った「マリーゴールド」はもちろん、「愛を伝えたいだとか」 や「君はロックを聴かない」が再びチャートインしたり、さらに注目が高まる状況に。

紅白は異次元すぎて、「アリス・イン・ワンダーランド」のような現実味のない大舞台でしたが、視聴率40%超えの威力を思い知ったというか。「マリーゴールド」は2018年に私自身がお世話になった曲なので、紅白をきっかけに私の曲を聴いてくれるなら、とても有り難いことだなと思います。

そこで、あいみょんさんの過去の曲を遡って聴いた人の中には、ちょっと驚いた人もいたかもしれないですね。

ああ、そうですよね。「マリーゴールド」から入ると、インディーズの頃の曲とかを聴くと、「こんなんも歌っとったんか!?」と思う人もいるかもしれないですね。それもまた面白いかなと思いますけど。

メジャーデビューした頃はどういう目標がありましたか?

いやぁ、目標はなかったですね。いつか太陽の塔の下で歌いたいという遠い夢はありましたけど、明日も続けていけたらいいなくらいの感じでした。まぁ、でも、メジャーデビューはやっぱり大きかったと思います。「インディーズとの違いは何や?」とよく訊かれましたけど、やってみないと分からへんと思ったし、メジャーに行ってすべて前向きな意味で変わりましたね。

状況が変わったなと実感したのは?

なんですかね? 紅白が決まったりした時とかですかね。そんな国民的な番組に出られるということは、自分の音楽がそれだけ聴かれているのかなという自信にはなったし、そうやって変化し続けられることは良いことだと思うので。

ファーストフルアルバム『青春のエキサイトメント』は、まさにタイトルが象徴するような突き刺さる内容でしたが、今振り返ると?

前作はホンマに何かを握りつぶすような衝動とか好奇心が詰まっていたし、若さゆえの何かが叩きつけられたアルバムだったと自分でも思います。1枚目って、どう転んでも、滑ってもいいなと思ったんです。以前はとにかく曲をつくる衝動に駆られて、自分から溢れ出てくるものを貯金するのが楽しいみたいな感覚でしたから。

その衝動が衝撃として受けとめられました。

『青春のエキサイトメント』が思っていた以上にジワジワとしぶとく居座り続けてくれたので、去年はシングルをしっかりつくって、今度のアルバムへ繋げることが出来たんだと思います。2枚目は書き下ろしが多いので、全部がリード曲になるようなアルバムになればいいなと思って作りました。

自分の曲ながら自分を誉めてあげたいと思った「マリーゴールド」

新作『瞬間的シックスセンス』は、4thシングル「満月の夜なら」から始まりますが、口当たりはポップだけれど少しきわどい表現が新鮮でした。

官能的なものを上手く楽曲にしたいと思っていたんです。17歳の頃から官能小説が好きだったのと、音楽でそういう表現が上手なアーティストさん、男性で言うと平井堅さん、桑田佳祐さんが好きなので。

そんな官能的な曲もあれば、「マリーゴールド」のような普遍的なラブソングもある。そのバランスが今のあいみょんさんなのかなと?

そうですね。この曲ができた時は自分の曲ながら自分を誉めてあげたいと思いました。自分が自信を持っていいと思った曲は、大事にしなくてはいけないなと気付かせてくれたのが「マリーゴールド」と、「君はロックを聴かない」なんです。やっぱり、分かるんです。「この曲は絶対いける!」という時は背中がゾワゾワっとするんです。その感覚は忘れたくないし、その瞬間があった曲は自分でちゃんと伝えたい。結果、「マリーゴールド」はすごいところまで飛んでくれました。

「ら、のはなし」は映画『あした世界が終わるとしても』の挿入歌です。

これは映画のための書き下ろしなんですが、映画の主題歌「あした世界が終わるとしても」や、ドラマの主題歌「今夜このまま」もそうなんですが、その作品に寄り添いつつ、自分らしさも出す良い案配を探るのは面白いですね。主題歌って最後に流れることが多いし、物語の締めをつくる音楽をまかされるのは嬉しかったし、自信になりました。今後もやっていきたい事のひとつです。

そういうところは、作家の気質なんですかね?

作家になりたいんです、たぶん。作家=小説というイメージはあるけど、音楽をつくることも作家だと思うし、私は作家でいたいんやなと。絵や文章を書いているときもそんな風に思えるし、自分は作家に向いていると思いたいのかもしれないです。

「僕」という男性の目線で書くことも多いですね。

一人称の「僕」が便利なところは、「私」と「俺」の間の感覚があるからなんです。「僕」って歌うと女の子も男の子も聴きやすいし、だから、よく使うんだと思います。

「頑張れ」と言わなくても、誰かが「助かりました」と思ってくれたらそれでいい。

エレクトロなスローナンバー「二人だけの国」は、不思議な感触が残るディープなラブソングですが、〈ナンマイダ〉の歌詞には意表を突かれました。

尊敬する岡本太郎さんも「芸術は美しすぎてはいけない」と言っているし、きれいなだけの表現ではなくて、汚れの部分を入れることは必要だと思っているんです。この曲と「from 四階の角部屋」はそうですね、食べものに例えると、せっかくきれいなオムライスができたのに、最後のケチャップの一振りがグチャグチャみたいな。美しいものには余計なことをしたくなるし、そういう遊びがどこかに欲しい。

「プレゼント」にはあいみょんさんならではの優しい眼差しがありますね。

傷ついても泣いてはいけないと思っている人って多いような気がするんです。私たちは産声を上げて生まれたわけで、涙を流すことは生まれながら人に備わったプレゼントのようなものだと思えば少しは楽になれるんじゃないかなって。
私、応援歌は好きじゃないし、人を感動させたくて曲をつくるとか絶対したくないんですけど、直接的に「頑張れ」とは言わなくても、誰かが「助かりました」と思ってくれたらそれでいいかなと。

そういえば、あいみょんさんはソウル・フラワー・ユニオンの「満月の夕」を阪神・淡路大震災の起きた1月17日にインスタライブで歌っていましたね。

私、1.17の2ヶ月後に生まれたんですよ。私はお母さんのお腹の中でしか震災は体験していないんですけど、話は色々聞いています。「満月の夕」も震災の時に生まれた歌だそうですが、応援歌ではなくて、あの日の情景を切り取った歌ですよね。若い人にも知ってほしいので最近は毎年歌ってます。小さい頃からお父さんがこの歌を三線で歌っていて、お父さんがつくった歌だと思ってたんです(笑)。後で棚からCDを発見するまでは。

あいみょんさんは、お父さんのCD棚にあった音楽から影響を受け、音楽に夢中になったそうですね。

はい。私が今、みなさんに聴いてもらえる音楽をつくれているのは、お父さんとお母さんが聴いていた昭和や平成のいい音楽をいっぱい聴いてきたからだと思うんです。お父さんが好きな浜田省吾さん、薦められて聴いたフリッパーズ・ギターや小沢健二さんは今でも大好きです。私、オザケンになりたかったんです。なれなかったけど(笑)。

自分の中に棲んでいる少年が顔を出すのは、ないものねだりですね。

「ひかりもの」では大人になってゆく過程での揺れが表れていますね。

インディーズ時代の曲っぽいといわれるんですけど、書き下ろしです。〈たいがいのことでは傷ついてきた〉と歌っているし、もう23歳やし、ちょっとしたことではもう落ち込まないと思っていたら、しょーもないことで泣いたりすることがあって。「人生まだまだ傷つくんやな」と、珍しく感情的になったタイミングで書いたんです。「大人になれ」と言われたり、「子供の心を忘れるな」とも言われたり、「どっちやねん!?」と思うことは常日頃あります。

そんな歌も多いですしね。

大人になるということは、歳を取るということは、脳みそに少し皺が増えて、考えることも変化していくじゃないですか。「あいみょん、丸くなった」とか言われるんですけど、それは意図的ではなくて、自分が成長していく過程で自然とそうなっただけだと思うんですよね。

「恋をしたから」は、素顔が垣間みられるような歌い方がいいですね。

これは弾き語りの一発録りなんです。自分が作詞作曲している時のことはあんまり覚えていないんですが、恋愛が人に与える影響について考えていたんですかね? 人のことを好きになると自分が自分じゃなくなるって言うけど、ホンマにそのとおりで、それってスゴいことやなと。太宰治の「人間は恋と革命のために生まれてきた」という言葉が好きで、人は恋から離れられないし、ラブソングが生まれ続けるのはそういうことかなと。

かと思えば、「夢追いベンガル」では〈セックスばっかのお前ら〉や〈エロも今はいらない〉と歯に衣着せぬ言葉を吐きもする。

ずっと男の子っぽい性格だと言われてきたし、女性でありながら少年でもありたいと思うところがあって、たまに自分の中の少年がワッと出て来るんです。

あいみょんさんの中に棲んでいる少年が時々暴れ出す?

そうなんです。女の子に生まれて良かったと思う瞬間の方が多いんですけど、アーティストとしてのないものねだりですね。男性目線で書くのもそうだし、男の人に生まれてシンガー・ソングライターになってみたかったと思うんです。
いつから自分の中で少年を飼っているかは分からないんですけど、女の子にしては低いこの声がそうさせた気もしますね。

世の中に対する反骨精神はまだ自分にはあるんやなと思います。

〈平成生まれのカリスマが 溢れる世の中についていけない〉も面白い。

こういう曲ができると、世の中に対する反骨精神はまだ自分にはあるんやなと思いますね。でも、セックスピストルズは1ミリも聴いたことがないし、自分じゃない誰かが憑依して書いているような感じもあって。

「GOOD NIGHT BABY」も男の子の視点ですが、ここでは胸がキュンとする情景が浮かび上がって来ますね。

〈君に会いたくて〉とか〈恋しくて〉とか、子供っぽい台詞が多い少年の部分と少女の時の思い出が混ざって、青春を思い出すような曲になりましたね。歌詞がどうしても長くなるのは、物語を書く感覚で作詞作曲しているからだと思います。読み物としても成り立つような歌が好きなんです。

最後の「from 四階の角部屋」は、ドスが効いた歌とフリーキーな演奏が強烈な印象を残しますね。

1分47秒と、私史上いちばん短い曲なんですけど、「from 四階の角部屋」と「二人だけの国」は、良い意味で余計なもの。でも、このアルバムに必要なのかと言われたら、やっぱり必要で。

そういう部分にこそ、譲れないものがあるのでは?

そうですね。「GOOD NIGHT BABY」できれいに終わると思いきや、最後にこういう曲をやってしまう。それが私なりの遊び心なんです。そういう部分も含めて自分でも美しすぎない良いアルバムができたと思っています。

瞬間的に降って来たアイデアと第六感から生まれた『瞬間的シックスセンス』

『瞬間的シックスセンス』というタイトルはどこから?

タイトルは、アルバムをつくる前から決めていました。『青春のエキサイトメント』もそうですけど、漢字とカタカナの組み合わせで、リズム感がいい言葉にしたかったんです。今回のアルバムは「瞬間を大事にしたい」という思いから、最初は「瞬間的」も考えたんですけど、「あいみょん セカンドアルバム 瞬間的」だと何か物足りない、モヤモヤすると思って『瞬間的シックスセンス』にしたんです。

「瞬間を大事にしたい」と思ったきっかけは何かあったんですか?

もしかしたら、音楽や芸術って五感じゃなくて、第六感=シックスセンスから生まれてくるものなのかもしれないと思ったんです。「マリーゴールド」の歌詞にある〈麦わら帽子の君が 揺れたマリーゴールドに似てる〉は、どこからでもなく急に落ちてきたイメージだったんです。そんな瞬間的に降って来たアイデアをいかに拾ってあげるかが、今、いちばん重要なのかなと。

名曲の誕生にはシックスセンスがあるのかもしれないですね。

今は「ヒット曲が生まれない」「CDが売れない」って、音楽をやってへん人が言うじゃないですか? でも、いい音楽は今もめちゃめちゃあると思うんです。TVの音楽番組でも20年前、30年前の曲が歌われていることが多くて、それはそれで良いことではあるけれど、それだけじゃ物足りないし、悔しい。去年は平成の音楽っ子たちに希望を与えてくれた米津玄師さんがいてくれてホントよかったです。私もシンガー・ソングライターなので、自分でつくった曲を聴いてもらいたいんです。

その他のあいみょんの作品はこちらへ。

ライブ情報

AIMYON BUDOKAN -1995-

2月18日(月)  日本武道館[SOLD OUT]

AIMYON vs TOUR 2019 “ラブ・コール”

5月17日(金)北海道 Zepp Sapporo
5月24日(金)愛知 Zepp Nagoya
5月25日(土)愛知 Zepp Nagoya
5月31日(金)大阪 Zepp Osaka BaySide 
6月1日(土)大阪 Zepp Osaka BaySide 
6月9日(日)福岡 Zepp Fukuoka 
6月14日(金)東京 Zepp Tokyo 
6月15日(土)東京 Zepp Tokyo 
6月22日(土)宮城 Sendai PIT 
6月23日(日)宮城 Sendai PIT
・全公演対バンあり。ゲストは後日発表。

AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY-

10月11日(金)埼玉 三郷市文化会館
10月13日(日)北海道 札幌芸術劇場hitatu
10月17日(木)新潟 新潟テルサ
10月18日(金)新潟 新潟テルサ
10月23日(水)大阪 オリックス劇場
10月24日(木)大阪 オリックス劇場
10月26日(土)愛知 愛知芸術劇場
10月27日(日)愛知 愛知芸術劇場
11月2日(土)熊本 熊本市民会館
11月3日(日)鹿児島 鹿児島市民文化ホール第一
11月7日(木)宮城 仙台サンプラザ
11月8日(金)宮城 仙台サンプラザ
11月14日(木)広島 上野学園ホール
11月15日(金)広島 上野学園ホール
11月17日(日)福岡 福岡サンパレス
11月23日(土)愛媛 松山市民会館
11月24日(日)香川 サンポートホール高松
11月30日(土)石川 本多の森ホール
12月14日(土)兵庫 神戸ワールド記念ホール
12月15日(日)兵庫 神戸ワールド記念ホール
12月17日(火)神奈川 横浜アリーナ
12月18日(水)神奈川 横浜アリーナ

あいみょん

1995年生まれ。兵庫県西宮市出身のシンガー・ソングライター。幼少の頃より音楽に触れて育ち、中学の頃からソングライティングを始める。高校卒業後、YouTubeに楽曲をアップしはじめ、ネット上で話題に。2015年3月にタワレコ限定シングル「貴方解剖純愛歌~死ね~」でインディーズデビュー。初の全国流通盤となる1stミニアルバム「tamago」、2ndミニアルバム「憎まれっ子世に憚る」をリリース。2016年11月、シングル「生きていたんだよな」でメジャーデビュー。2017年にはシングル「愛を伝えたいだとか」「君はロックを聴かない」をリリースし、ファーストフルアルバム「青春のエキサイトメント」を発表。2018年にはシングル「満月の夜なら」をリリース。全国ツアー「AIMYON TOUR 2018 -TELEPHONE LOBSTER-」は、初の海外公演含め全公演SOLD OUT。5thシングル「マリーゴールド」をリリースし、デジタルチャートを席巻。11月には自身初の書き下ろしドラマ主題歌「今夜このまま」をリリース。過去最大規模の全国ツアー「AIMYON TOUR 2018 -HONEY LADY BABY-」を開催。2018年の紅白歌合戦に出演した。2019年2月13日に2ndフルアルバム「瞬間的シックスセンス」を発表。2月18日に初の単独日本武道館公演「AIMYON BUDOKAN -1995-」の開催が決定、5月から対バン・ツアー”AIMYON TOUR 2019 “ラブコール”、10月からホールとアリーナでの史上過去最大規模のワンマン・ツアー”AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY-“を開催することを発表した。

オフィシャルサイト
http://www.aimyong.net/