Interview

the peggies バンドの本質を、そして今の思いを、正直にさらけ出したアルバム。北澤ゆうほにその意図を語ってもらった。

the peggies バンドの本質を、そして今の思いを、正直にさらけ出したアルバム。北澤ゆうほにその意図を語ってもらった。

アニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」のOPテーマ「君のせい」が大きな話題を集めた3ピースのガールズロックバンド、the peggies(ザ・ペギーズ)がメジャー1stアルバム『Hell like Heaven』をリリースした。
タイトルを直訳すると「天国のような地獄」だが、ペギーズ流に意訳すると「現実」というひと言に集約されるだろうか。天国と地獄、生と死、明と暗、希望と絶望、過去と未来、大人と子供、始まりと終わり、ポップとロック、メジャーとインディーズ……。本作は、一般的には相反するものとして捉えられている要素を同時に鳴らすことで、私たちが生きる現実世界と、ペギーズの“いま、現在”が最良の形で浮かび上がってくる1枚となっている。全曲のソングライティングを務める北澤ゆうほ(Vo,Gt)がアルバムを通して伝えたかったメッセージ、連れて行きたかった場所とは!?

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 荻原大志

メジャーにきて初めて、こんなに自分を全部、さらけ出せたなっていう喜びが大きいですね

メジャー1stとなるフルアルバムが完成した感想から聞かせてください。

アルバムだからこそ描ける曲がいっぱい描けたっていうことが自分の中ですごく大きくて。シングル曲は、より広いところに届くように、自分を軸にした架空のストーリーを描くことが多いんだけど、アルバム曲は、自分の心を正直に歌にできた曲が多いんですね。自分的には、メジャーにきて初めて、こんなに自分を全部、さらけ出せたなっていう喜びが大きいですね。

心の中を一番さらけ出せた曲を挙げるとすると。

「する」と「Fortune」かな。

「Fortune」を挙げたのは意外でした! サウンド的にはこれまでにないアーバンR&Bになってますよね。

そうですね。ノリは完全にブラックミュージックルーツで、初めてやる感じですね。ただ、去年1年間を過ごして書けた曲かなと思ってて。デビューした年(2017年)は初体験ものが多くて、とにかく勢いっていうものを自分の中で大事にしてて。前向きに、明るいことだけ、今を見て頑張ろう、みたいな感じだったんですね。だから、悩んだりもしなかったんだけど、デビュー2年目(2018年)に入って、初体験のものも少なくなって。頑張ったっていうだけじゃ許されなくなった時に、初めて自分の力量だとか、ダメな部分が顕著に出てきて。それですごく悩んだりしたんだけど、最近では一番人間らしく過ごせた1年だなっていう自覚がすごくあって。

悩み時期を経てかけた曲だったんですね。

いい意味で力が抜けてるっていうか、ちょっとけだるい感じというか。そんなに前に前にって力みすぎなくてもいいんだ、みたいな。一回、力抜いても、また頑張れるっていうのが自分の中にあるから、あんまり失速することを恐れずに、休憩したいときは休憩しようっていう価値観が生まれて。それがすごい表れてる曲だし、自分的に去年1年間を象徴する曲だなって思ってて。あと、サウンド的には挑戦的なものでもあるから、ペギーズに新しい扉が開けるといいなと思ったし、簡単に言ってしまえば、大人っぽい雰囲気だから、今まで瑞々しいんだろうなと思って聞かずに暮らしていた方々に届くといいなっていう思いもありますね。

もう一方の「する」は攻撃的でダークなギターロックになってます。

私、毎日、朝晩にニュースを見るのが日課なんですね。

それも意外ですね。

世の中で何が起きているのかを把握したいなと思って。ある日、随分と痛ましい事件だなと思いながらテレビを見てて。ニュースを見終わって、部屋に戻って歌ってたら、最初にAメロだけできたんです。すごく心苦しい気持ちになったにも関わらず、私はそれもさておき、誰かに愛されたいとかで悩んでる自分が一瞬、憎らしく感じて。結局、自分のことで精一杯のくせに、他人のことでちゃっかり悲しんだりしちゃうし、心が痛んだり、同情しちゃったりするんだろうって思って。それってどうなんかなって思ったんだけど、そんなことを思いましたっていう曲にはしたくなかったから、結局は愛されたいと願う自分みたいに描き始めて。最後の<僕はこうしてる間にも死に続けてる>は私の去年の気づきですね。

それは絶望でも希望でもないんだけども、いつか終わるっていうのを前提にした上で、じゃあ、今をどうするのか? っていう

アルバム全体の根底に流れてる“気づき”でもありますよね。楽しい時も悲しい時も心臓は動いているし、いつかその鼓動がいつか止まることを自覚しながら生きてる。

そうですね。それは絶望でも希望でもないんだけども、いつか終わるっていうのを前提にした上で、じゃあ、今をどうするのか? っていう。そこの現実的な感覚って、私は絶対に忘れたくなくて。希望に夢を抱くというよりは、希望もあくまで現実的なものでありたいって思ってる。もともと、命もいつか終わるし、死ぬんだぜぼくらはっていう感覚はあったんだけど、果たして、端的に言うんだったらどういう感覚なんだろうって思ってて。それが、去年、アルバムを作ってる最中に、あ! って気づいて。私の価値観だから、みんながそう思わなくていいんだけども、与えられた命があって、毎日生きているし、毎日死んでいるんだなと思って。どんどん命は減っているし、それは死に続けてるっていうことで、死に切った時にこの世から消えるんだって思って。それは私の価値観にピンとくる言葉だなと思って。私の中で大きな気づきだったので。この曲はそういう言葉入れたいなと思って。最近の私のヒットワードをぶち込みました。

とても冷静で現実的な視点ですよね。

ある意味、みんなに現実を突きつけたいという気持ちが大きくて。現実って辛くて、シビアで、しんどいって感じている人が多いかもしれないけど、みんなが思ってるより、意外と明るいし、残念ながら前に進めますっていうことが伝わるといいなと思います。

生き続けてる=死に続けてる現実の中で“変わっていく”こともテーマになってますよね。

確かに。去年の自分の心情的に、今の自分の状態から脱したいっていう気持ちが強くなる瞬間が仕事でもプライベートでもありましたね。変わりたいという気持ちもあるし、「明日」のように変わってしまった自分もいる。変化を求めていたというか、変化に意識を持っていかれていたのかもしれない。

よくも悪くも昔の自分にはなれないし、昔と同じことは絶対にできない

変わっていくことも決してネガティブには捉えてなくて。

振り返ってみると、絶対にいいことであると思うんですよね。よくも悪くも昔の自分にはなれないし、昔と同じことは絶対にできない。それは、ある意味、進化していけてる証拠かなって思ってて。だから、変化はポジティブなものだってわかってるけど、だからこそ、さみしくなる時があるなと思って。それを、「明日」では子供と大人に当てはめてて。

「明日」は現在から過去を振り返る青春ソングになってます。

なんとなく高校生の時を考えてたのかな。すごく懐かしいなっていう気持ちになって。高校生の時って刺激的だったし、高校時代の自分が今の私を作ってるなって思う。本当にどうしようもない、近づくもの全て傷つけるみたいなスタンスで生きてて(笑)。今でも仲良い子は高校の友達なので、それでも味方でいてくれる子がいるの、めっちゃ嬉しいなって思いながら書いてましたね。自分がもし高校3年生で、もうすぐ卒業するってなったら、どういう曲を聴いてグッとくるかな? どういう曲を聞きたかったかな? ってことを想像しながら書きました。高校時代の自分に、23歳の北澤ゆうほが歌いかけてるかもしれない。

高校生の北澤ゆうほにはなんて言ってあげたいですか?

いつ大人になるかはいまだにわからないけど、「君は今から変わるぞ」ってことだけは言いたいですね。当時の私は(ナイフを)振りかざしすぎて、自分が傷ついて泣く、みたいな感じだったんですね(笑)。それが自分だって思い込んでたから。果たして私はこれからどういう風に生きていけるんだろうか、どういう道があるのかなって不安になってた時があると思うけど、大丈夫だよって言いたい。自然の流れで、いろんなものが受け入れられるようになって、いろんなものが好きになった。きっと変われるから大丈夫だよって言いたいですね。それに、青春時代にみんなの輪にうまく入れなかった経験が、今、人に優しくできるパワーの根源にあったり、自分がそういう時期があったから人の悩みを理解できたりもする。そういう意味では大事な時期だったし、心配するなよって言いたい。

意外とみんな同じような経験をそれぞれしてるぞ、みたいな考えが私の根本にあるから

クラップと合唱から始まって、最後はまた合唱で終わる構成になってます。

私の高校時代の話を元にしているけど、みんな経験の中にあると思うんですね。全く一致しなくても、なんとなく通ずる部分はあるだろうなって思うし、ペギーズの曲というのは、独りよがりにならず、みんなで共鳴しあえる曲になったらいいなと思ってて。それも、「みんな、繋がってるよ! 一人じゃないよ!!」っていうよりは、「みんな意外と同じ経験をしているから、そんなに心配しなくていいよ」っていうニュアンスですね。人との繋がりを大事にしようぜ、みんな一緒だぜっていうんじゃなくて、意外とみんな同じような経験をそれぞれしてるぞ、みたいな考えが私の根本にあるから。それを皆で歌うことによって、私だけのものじゃなく、みんなの歌にしたいっていう気持ちがより伝わるんじゃないかなと思って。あとは、漠然とライブでみんなで歌いたいっていう私の願望とイメージが、この曲は特に湧いたので。

無理に一人じゃないって思わなくていいけど、せめて頑張ろうって思ってもらえるようなパワーを与えられたらいいな

本作は「ドリーミージャーニー」や「サマラブ超特急」を始め、シンガロングできる曲が多いですよね。「マイクロフォン」は<叫べ!>と歌ってますし、「かみさま」は<お手を拝借>してるし。

意図してなかったんですけど、気づいたらそうなってましたね。出来上がった時に、「めっちゃみんなで歌ってんじゃん」みたいな(笑)。でも、それは、みんなとの一体感を強要しているんじゃなくて、曲をみんなで分かち合いたいっていう気持ちがあって。どう受け取るかはそれぞれでいいんだけど、一人一人、みんなの曲になるといいなって思う。そして、ライブで個々が集まった時に、パワーが炸裂して、結果として、明日も頑張ろうって思えたらいい。もしかしたら友達が少なかったり、人間関係がうまくいかない人もいるかもしれないけど、無理に一人じゃないって思わなくていいけど、せめて頑張ろうって思ってもらえるようなパワーを与えられたらいいなと思ってて。ライブでひたすら声を出したりする瞬間に何か感じてもらえることがあればいいなって思ってたから、「ここはみんなで歌いたいな」って入れ続けてたら、こんな数になりました(笑)。

みんなで歌える甘酸っぱい胸キュン青春ポップがある一方で、パブリックイメージよりは、きっと苦味を感じるだろうアルバム曲が多いのも特徴的ですね。

イメージを覆したいという気持ちよりは、それとはまた違うというか……。内側でもがいてもがいて、明るさを手にしたんだっていうパワフルさを感じてもらえたらなって思って。ほんとは暗いんだよっていうことではなくて、ペギーズの持つポジティヴなメッセージ性に深みが生まれるといいなっていう感じですね。

それはアルバムを作る前から考えてたことでした? 

考えてました。一番最初の段階の時にメンバーが言ってたのは、「とにかく違う側面を見せたい」ってことで。インディーズの時に培ってきた価値観やサウンドもちゃんと表に出すタイミングなんじゃないかなって。自分たちの気持ち的には、黒白、裏表みたいなコンセプトで作りたいって思ってたんですね。ただ、途中でそこまで明らかに明るい曲と暗い曲をきっぱり分けなくていい、うまい具合にミックスできればいいなってなって。最初は二面性をコンセプトと明言して描き始めたけど、そこまでコントラストはっきりしなくてもいいかなって思って。最初の意識としては、2点揃えてますって提供したかったんだけど、よくよく考えてみれば、私たちの場合は全部、繋がってるから。でも、一番最初に3人で話してたことは最後までずっと意識にはありましたね。

黒白、裏表というコンセプトはタイトルにも表れてますよね。

うん。対極にありつつも繋がってるというか。私たちはすごく明るいメッセージを発信してるけれども、それは明るい要素だけを込めた「前に進もうぜ」っていう言葉じゃなくて。自分の中でもがいて、あがいて、落ち込んだりして、そこから這い上がって前に進もうぜって言ってるし、悩んでてもしょうがないから、前に進むしかないよねっていう、ある意味、諦めっていう意味での前向きさが、私たちが発信するメッセージの根本にあるんですね。それはずっと意識してたことなんですけど、明確にしないと意外と伝わらないものなので、アルバムでしっかりとが伝わるといいなと思ってましたね。

パッと聞き、地獄のようなしんどい明るさかもしれないけど、よく耳を澄ましてもらえれば、きちんと奥行きを感じてもらえると思う

ペギーズのメッセージの本質的な部分でもあるアルバムのタイトルに込めた思いを、最後に改めてお伺いできますか。

私たちは割とポジティヴで陽に当たってる存在だと思うんですよ。もしかしたら、今、悩んでる人にとっては、とても見苦しかったりするかもしれない。思い切り陽が当たってるように見える私たちに、「一緒に行こうよ。頑張ろうぜ」って言われても、「うるせー」って思う人がこの世にはいっぱいいるんだろうなっていうことは私にはすごく理解できて。なぜかというと、私にもそういう時期があったから。「ポジティブなメッセージとか、本当に薄っぺらいわ〜」みたいな時期が自分にもあったから(笑)、そうなりたくないし、悩んでる人にもきちんと手を差し伸べるられるようになりたいんですね。だから、パッと聞き、地獄のようなしんどい明るさかもしれないけど、よく耳を澄ましてもらえれば、きちんと奥行きを感じてもらえると思う。世界には希望しかないし、ハッピーだぜっていうのではなくて、諦めだとか、這い上がることとか、表面は光っていても中はドロドロしていたりもする。最終的に発光している私たちだけども、そこに行き着くまでに色々と考えたりしているから、みんなにもっと寄り添いたいよって思ってて。だからね、しんどいかもしれないけど、私たちのポジティブなメッセージに一回、耳を傾けて欲しい。地獄のような天国かもしれないし、天国のような地獄かもしれない。どっちかわからないけど、みんなで一緒に一回、「しんどいくらい明るいところに行ってみようぜ!」っていう気持ちが伝わるといいなと思いますね。

その他のthe peggiesの作品はこちらへ。

ライブ情報

【the peggies 全国ツアー2019】Hell like Heaven trip

4月7日(日) 渋谷 CLUB QUATTRO
4月12日(金) 岡山 IMAGE
4月13日(土) 京都 KYOTO MUSE
4月20日(土) 新潟 CLUB RIVERST
4月21日(日) 金沢 vanvan V4
4月23日(火) 横浜 BAYSIS
5月11日(土) 札幌 cube garden
5月12日(日) 旭川 CASINO DRIVE
5月19日(日) 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
5月23日(木) 高松 DIME
5月25日(土) 福岡 DRUM Be-1
5月26日(日) 広島 CAVE-BE
6月5日(水) 静岡 UMBER
6月7日(金) 名古屋 CLUB QUATTRO
6月8日(土) 大阪 梅田CLUB QUATTRO
6月15日(土) 赤坂 マイナビBLITZ赤坂

the peggies

北澤ゆうほ(Vo&Gt) 、石渡マキコ(Ba) 、大貫みく(Dr)からなる3人組ガールズバンド。
中学校の同級生で結成し高校時代から都内ライブハウスを中心に本格的に活動を開始。
2014年11月に初の全国流通音源「goodmorning in TOKYO」をタワーレコード限定でリリース。
2015年11月にリリースされたNEW KINGDOMのリード曲「グライダー」がYouTubeの再生回数100万回を超えるなど大きな話題となり2016年7月に行われた渋谷club asiaでのワンマンライブはソールドアウト。2016年10月には初のインディーズシングル「スプートニク/ LOVE TRIP」をリリース。そして、2016年12月8日に行った渋谷クラブクアトロでのワンマンライブでメジャーデビューを発表。
2017年5月10日に「ドリーミージャーニー」でメジャーデビューし、全国各地のラジオ局、TV局、音楽専門チャンネルでのパワープレイを獲得! 6月から全国ツアー「the peggies ドリーミージャーニーツアー2017~野生のペギーズが現れた!!!~」を開催。2017年、9月にはセカンドシングル「BABY!」をリリース。
2018年、初のミニアルバム「super boy !  super girl !!」をリリース、iTunesロックアルバムチャート2位を記録。そのミニアルバムを引っさげたthe peggies史上最大規模の全国ツアー「the peggies tour 2018 super boy !  super girl !!tour~SUPERMARKET TRIP!!!~」では全国10箇所をめぐり、ファイナルはマイナビBLITZ赤坂を成功させた。2018年、メジャーデビュー2年目を迎える。7月5日、「なつめきサマーEP」を配信限定リリース、iTunesロックアルバム1位、総合アルバム3位を記録!

オフィシャルサイト
http://thepeggies.jp

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