LIVE SHUTTLE  vol. 54

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大黒摩季 RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO 2016.8.12

大黒摩季 RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO 2016.8.12

文 / 平山雄一


帰って来た大黒摩季!
ホームタウン、札幌でオーデインスを圧倒。そして感激の涙‥‥

ONE OK ROCKで幕を開けた『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO』初日の8月12日は、34000人以上のオーディエンスが詰めかけて大いに盛り上がった。
2日目は、前日に続いての晴天。18年目に突入した北海道の名物フェスは、家族連れも多く訪れ、夏の風物詩としてすっかり定着している。札幌出身の大黒摩季は、地元でも大いに愛されているから、彼女が6年間のブランクから復活するには絶好の舞台となることだろう。

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フェス会場の中央に設けられた“RED STAR FIELD”は、広々としていて、解放感あふれるステージだ。ここにこの日、最初に登場したのは「水曜日のカンパネラ」だった。キャラの立った新進アーティストをひと目見ようと集まった観客たちが、ライブが終わると散っていく。次は大黒の出番だ。
開演前の楽屋を激励に訪れると、大黒は「すごく緊張してます」。しかし硬い表情の奥には、笑顔が潜んでいる。まわりを見れば、この日のために集結したスペシャルバンドのメンバー、ドラムス青木和義(T-BOLAN)、ベース徳永暁人(doa)、サックス勝田一樹(DIMENSION)、ギター原田喧太などの面々がいる。大黒にとっては信頼のおける力強いミュージシャンたちだ。彼らに囲まれて、彼女は緊張感だけでなく、復帰の歓びも感じている。そんな気持ちを青空に委ねるように、大黒は「地元のみなさんに、“大黒摩季”にしてもらいます!」と笑顔で語ったのだった。

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このフェスのリハーサルは“公開”だ。たくさんのアーティストが次々に出演するので、事前にリハーサルをすることはできない。出演アーティストは自分の出番の直前に、お客さんの前でサウンド・チェックを行なうことになる。大黒もその例にもれず、サクッとステージに上がって「夏が来る」を歌った。すると、ぼちぼち集まってきたオーディエンスから「オーッ!」とため息が漏れる。若いロック・ファンは「この人、確か地元の人だよね」とひそひそ話をしている。年季の入った観客は、大黒に合わせて一緒に歌っている。なんだか幸せなリハーサルとなった。この間も観客はどんどん“RED STAR FIELD”になだれ込んでくる。その数はこの時点で5000人を越えていた。

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いよいよ開演だ。1曲目の「熱くなれ」のイントロが流れる中、大黒摩季が登場すると大歓声が上がる。その歓声に負けずに大きな声で、大黒は「ただいま~!!!」と叫んだ。開演前に彼女の頭の中を駆け巡っていたさまざまな想いは、どこかに吹き飛んでしまっている。ステージに再び戻れた歓びが爆発し、それをオーディエンスががっちり受け止めている。さあ、ここからが本番だ。

大黒が歌い出すと、僕の周りの若いオーディエンスがパワフルな声に驚いて「やべー、やべー」と騒ぎ出す。伝説のハイトーンボイスは健在だ。それでも、大黒自身はまだ手探りで歌っているように聴こえる。そのとき、♪自由に思いのままに 本気で生きてみたい♪という「熱くなれ」の歌詞が耳に飛び込んできた。このフレーズが、彼女が復帰ライブの1曲目に選んだ理由だと直感した。自分に言い聞かせるように大黒は歌う。すると彼女の声に落ち着きが出て来たのだった。終わると、登場時よりもさらに大きな歓声と拍手が巻き起こった。

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ピアノのイントロが流れる中、大黒は「さあ、みんな、おさらいしましょう」と会場を埋めたオーディエンスに声を掛ける。始まったのは超豪華なヒット曲メドレーだった。「DA・KA・RA」、「チョット」、「別れましょう私から 私から消えましょうあなたから」、「Harlem Night」という信じられないようなメドレーだ。僕の周囲にいた女子2人組やカップルたちが、全曲を踊りながら歌っている。大黒の歌を通じて思いを分け合った時代の空気が、“RED STAR FIELD”を覆い尽くす。その雰囲気が伝わったのか、大黒の目に涙が浮かんでいるのが遠目からもわかった。

「ただいま戻りました」と言いながら、大黒は何度も何度もオーディエンスに向かってお辞儀をする。オーディエンスは「おかえり~!」と口々に叫びながら拍手を贈る。大黒が涙をぬぐう。「泣くかもしれないなと思ってました。もう一度、歌えるかなって思っていたから、今日、この場に立てるのは奇跡です。でも、これ、現実なんだと思ったら、グッと来ました。めっちゃ嬉しいです!」。大黒のアーティストとしての気持ちが戻って来ているのが、リアルタイムで伝わってくる。こんなリアルな“復帰ライブ”は、滅多にない。「ライジングサンに感謝です」。

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「永遠の夢に向かって」で、地元の応援団がステージに上がる。大黒が講師をしていた札幌スクールオブミュージック&ダンス専門学校の生徒の男子ダンサーたちが現われる。鍛えられたヒップホップ・ダンスで大黒の歌を盛り上げると、大黒はそれに応えて歌にぐっと力が入る。次の「あなただけ見つめてる」では「ガールズを用意しました」と大黒が言って、今度は女子ダンサーの登場だ。これもまたしっかり鍛えられたセクシーなダンスを披露する。何しろ、オーディエンスが楽しそうだ。
そしてついにキラーチューンの「夏が来る」。スペシャルバンドが繰り出す強烈なラテンのリズムに、会場全体が踊りながら歌い出した。歌詞に耳を傾けると、先日、エンタメステーションに掲載されたプロデューサー長戸大幸氏の「大黒摩季は、中島みゆき(の歌詞)のダンサブルな感じです」という言葉が蘇ってきた。確かに大黒の歌詞は、悩んでヘコんでいる人間の共感を呼ぶ。しかもそれが楽しいリズムで歌われるから、不思議な感覚を呼び起こす。「夏が来る」は、この日のライブ中盤のハイライトとなった。

続く「いちばん近くにいてね」もラテンのリズムで盛り上がる。大黒の声も休養前の調子に近づいていく。
「“仮面ライダー”もやりました!」と言って歌い始めた「Anything Goes!」は休養直前にレコーディングされた曲で、『仮面ライダーオーズ/○○○』の主題歌となった曲。大黒の思いのこもったセットリストだ。

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「どこまで戻っているのか、自分ではわからないです。“大黒摩季”に似てましたか?(笑) 次はもっと本物っぽいところを見せます」と、本人しか言えないジョークで会場を笑わせる。すると、また地元応援団が現われた。小樽市立菁園中学校の生徒たちがコーラスで参加する。「この歌はどの街でも笑顔を導き出すことができる歌です。一生、歌っていくと思います」と「ら・ら・ら」が始まる。
もちろん会場は大合唱になる。大黒が言ったとおり、みんなが笑顔になる。大黒自身も笑顔になる。この瞬間、大黒は地元で“大黒摩季”に戻ったのだった。

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「立派なMCを考えてきたけど、やっぱりしゃべるより歌うのがいちばん伝わるね。病み上がりには罰ゲームみたいだったけど、なんとかやれました。みんなの胸に抱かれて、再び音楽をやっていきます」。
ラストナンバーは、「46歳なんで、最後の曲になります(笑)。発散して笑顔になれる曲を作りました」と、病気療養中に一般人として過ごす中で、今の時代に対して感じて来た思いを込めて作ったという新曲の「Higher↗↗ Higher↗↗」。ポップなのにどこか切ない「Higher↗↗ Higher↗↗」を、観客は初めて聴くのにも関わらず、タオルを回して応える。会場がステージと一体になって、“新曲”を楽しんだのだった。復帰に向けての大黒の気迫を感じるライブだった。

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大黒が10月にもう一度、地元・札幌でワンマンライブを行なうことを告げると、オーディエンスは歓声と拍手を返す。大黒は最後に感謝を込めて「ありがとう、MY HOME!」と叫んだ。
30度を超える暑さを上回る熱いライブが、白昼の“RED STAR FIELD”に爽快な風を運んできたのだった。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO セットリスト

1「熱くなれ」
2 大黒摩季 ヒット曲メドレー
「DA・KA・RA」
「チョット」
「別れましょう私から
消えましょうあなたから」
「Harlem Night」
3「永遠の夢に向かって」
4「あなただけ見つめてる」
5「夏が来る」
6「いちばん近くにいてね」
7「Anything Goes」
8「ら・ら・ら」
9「Higher↗↗ Higher↗↗」

ライブ情報

Maki Ohguro 2016Live-HOP! ~Reborn To The Future☆彡~

10月16日(日) 札幌・ニトリ文化ホール
開場17:30/開演18:00
お問い合わせ:WESS 011-614―9999

プロフィール

大黒摩季


札幌市出身、1992年「STOP MOTION」でデビュー。2作目のシングル「DA・KA・RA」を始め「チョット」「あなただけ見つめてる」「夏が来る」「ら・ら・ら」などのミリオンヒットを立て続けに放ち、1995年にリリースしたベストアルバム「BACK BEATs #1」は300万枚を超えるセールスを記録する。当時TV出演やLIVEも行わなかったことから、大黒摩季はCGで存在しないなどの都市伝説があった中、1997年の初ライブでは有明のレインボースクエアに47,000人を動員し、その存在を確固たるものにする。その後も毎年全国ツアーを継続し、精力的に活動するも2010年病気治療のためアーティスト活動を休業する。その間、地元・北海道の長沼中学校に校歌を寄贈、東日本大震災により被災した須賀川小学校への応援歌・歌詞寄贈、東日本大震災・熊本地震への復興支援など社会貢献活動のみ行っていたが、昨年よりDISH//、TUBE、郷ひろみなどの作詞提供をはじめクリエイティブ活動を再開。アトランタ・オリンピックや「ゆうあいピック北海道大会」のテーマソング、アテネ・オリンピックの女子ホッケー・チームのサポートソング、そして2015年には再生に向けたスカイマーク・エアラインに応援歌を提供するなど「応援ソング」には定評がある。2016年8月、ライジングサン・ロックフェスティバルでの出演を皮切りに、故郷である北海道からアーティスト活動を再開。

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