山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 53

Column

Marc Benno / Speak Your Mind 永遠の少年性

Marc Benno / Speak Your Mind  永遠の少年性

“the boy 40 tour”──。結成40周年を迎えるHEATWAVE山口洋の、今年のツアー・タイトルだ。
ミュージシャンであり続けることと、“少年”であり続けること。
通底するスタンスは、その先に何を見据えるのか?
ひりひりする感性と眼差しで、永遠のテーマについて書き下ろす。


偉大な先達と演奏していて、その瞳の中に「少年」を発見することがある。澄んでいるのとはまた違う何か。ドキっとする。そうかこの「少年」が音楽を奏でてきたのか、と。

わかりやすい例え。近頃のキース・リチャーズ。好々爺にして、目がときどき14歳。「少年」だからサバイヴしたのか、サバイヴしたから「少年」なのか。なんにせよ。彼がこんな人生を歩むなんて、40年前は誰も想像できなかった。

本来、誰もがこころの中に持っているはずの少年性。どうして人はそれを失ってしまうんだろう? ある種、特別な生き方をした人間たち。彼らの目が「死」を確実にとらえたとき、加齢と反比例して、それがより浮き彫りになってくるのだろうか?

閑話休題。

音は必ず減衰する。永遠には続かないし、同じ瞬間は二度とない。その儚さが美しい。

減衰は音の「死」でもある。そして人間ほど「死」を怖がる生き物もいない。飼っていた犬や猫が僕の腕の中で死んでいくのを見たが、彼らはただ己の運命を受容しているだけだった。

どんなに金を積んだところで、いつか誰の身にも、一生に一度だけ訪れるプレシャスな体験。それって、そんなに怖がることかな? そんなに悲しまなきゃいけないことかな? 音楽を通じて、僕はときどき考える。

それゆえ。いつだって後悔のないように生きろ。この一瞬に全力を尽くせ。それが未来を創る唯一の方法だから。僕の中の少年は僕をそう叱咤する。だって、できることはそれだけだから。とってもシンプル。誰かと自分を比べたり、卑屈になったり、悪口を云ってる時間がもったいない。

輪廻を信じないのなら、今生はこれで終わり。それでいいんじゃないのかな。「死」を見つめたとき、見えてくる「生」がある。たぶん、少年性はそこから立ち昇ってくる。それは簡単に失わない方がいいんじゃないかなぁ。自分が自分であるために。

どこかに少年が棲んでいなければ、バンドなんてやってられない。あと、なんだっけ? バカみたいに人を信じる力。人を恨まない力。たとえ、裏切られたとしても、それは全部自分の中で発生したこと。人のせいじゃない。

自分の中に少年を見出せなくなったら、ステージを降りるときなんだろう。年齢なんか関係ない。生きてる間が夢なんだよ、きっと。

「少年性」というテーマでレコード棚を探した。これだ。退廃と気だるさと陽だまりの中にある、永遠の少年性。マーク・ベノが1971年に放った名作『Minnows / 雑魚』。ジェシ・デイヴィス、ボビー・ウーマック、ジム・ケルトナー、リタ・クーリッジ、素晴らしいミュージシャンと奏でられるスワンプ・ロックの名作。

中でも特別に好きなのは「Speak Your Mind / スピーク・ユア・マインド」。気だるいサウンドにのってこう歌われる。

All you have to do
All you have to do
All you have to do is speak your mind
君がしなければならないことは
君がしなければならないすべてのことは
君のこころを話すことだけ (拙訳)

48年前の音楽。マーク・ベノは23歳でこれを歌った。おおよそ、すべてが信じがたい。こんな23歳いないよ。でも、あなたが僕の感性を信じてくれるなら、一度、この曲を耳にしてほしい。僕らが失ってはいけないはずのみずみずしい「少年性」がここにはあるから。

感謝を込めて、今を生きる。


マーク・ベノ / Marc Benno
『雑魚 / Minnows』

ユニバーサル・ミュージック 
UICY-15472(SHM-CD仕様/解説・歌詞・対訳付)
1970年代前半、レオン・ラッセルやデラニー&ボニーらとともに“スワンプ・ロック”と呼ばれたシンガー・ソングライター&ギタリスト、マーク・ベノの最高傑作。デイヴッド・アンダーリのプロデュースのもと、クラレンス・ホワイト、ジェシ・デイヴィス、ボビー・ウーマック、ジェリー・マギー、ジム・ケルトナー、ニック・デカロ、リタ・クーリッジほか豪華メンバーがサポート。みずみずしい感性で傷口をそっと撫でるようなギターと歌、ブルースやR&B、ゴスペルや民間伝承歌等、自身の好きなものに限りないリスペクトを注ぎ込んだ音楽性は、他に類を見ない。1971年発表。2016年にSHM-CD仕様で再発。


著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。1990年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』には阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。2019年2月22日公開の映画『あの日のオルガン』(監督:平松恵美子、主演:戸田恵梨香、大原櫻子)にアン・サリーによるカヴァー「満月の夕(2018ver.)」が起用されたことでも話題に。2011年の東日本大震災後は、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らと“MY LIFE IS MY MESSAGE”として、福島県相馬市の人たちと希望のヴァイブレーションを起こすイベントを続けている。2018年4月から池畑潤二(Drums)、細海魚(Keyboard)
と新生HEATWAVEとしての活動を開始。今春3月25日からは名古屋を皮切りにソロ・ツアー“山口洋(HEATWAVE)the boy 40 tour”をスタートさせる。4月6日、7日には東京・国立で本連載の番外編ライヴ・イベント第2弾を開催。トークとライヴの2部構成で、連載で書き下ろしたアーティストの楽曲紹介をはじめ、HEATWAVE結成40年秘話や、カヴァー曲、新曲などを各日異なるテーマで披露する。

オフィシャルサイト

Rock’n Roll Goes On!Vol.3

3月21日(木・祝)東京 代々木 Zher the ZOO
【出演】リクオwith HOBO HOUSE BAND(ベース:寺岡信芳/ギター:高木克/ドラム:小宮山純平/ペダルスティール:宮下広輔) ゲスト:山口洋(HEATWAVE)
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山口洋(HEATWAVE)the boy 40 tour

2019年3月25日(月)名古屋TOKUZO
2019年3月26日(火)京都coffee house拾得(Jittoku)
2019年3月28日(木)高松 Music & Live RUFFHOUSE
2019年3月30日(土)広島 音楽喫茶ヲルガン座
2019年4月1日(月)大坂 南堀江 knave(ネイブ)
2019年4月3日(水)静岡 LIVEHOUSE UHU(ウーフー)
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「Seize the Day/今を生きる」番外編トーク&ライヴ

“Long Way For Freedom”
2019年4月6日(土)国立 地球屋
“Long Way For 40th”
2019年4月7日(日)国立 地球屋
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HEATWAVE SESSIONS 2019

2019年4月18日(木)横浜THUMBS UP(サムズアップ)
2019年4月20日(土)京都 磔磔(takutaku)*磔磔45周年記念 HEATWAVE SESSIONS 2019 in 磔磔
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