Interview

松坂桃李が娼夫を演じる舞台『娼年』。脚本・演出の三浦大輔の挑戦を、佐津川愛美、猪塚健太も交え話を訊く

松坂桃李が娼夫を演じる舞台『娼年』。脚本・演出の三浦大輔の挑戦を、佐津川愛美、猪塚健太も交え話を訊く

石田衣良の小説『娼年』『逝年』を基に、ポツドール主宰の三浦大輔が脚本・演出を手がける舞台『娼年』。原作者の石田衣良が「性の極限を描いた」と語る物語を、過激でセンセーショナルな作品を世に送り続けてきた三浦がどう舞台化するのか。2014年に公開された映画『愛の渦』や今秋公開予定の『何者』など、近年は映画監督としても活躍する三浦にとっては、2015年に上演されたネルソン・ロドリゲス作の『禁断の裸体-Toda Nudez Será Castigada-』以来1年4ヵ月ぶりの舞台。出演は、普通の大学生から娼夫になる主人公の松坂桃李とボーイズクラブのオーナー役の高岡早紀に加え、佐津川愛美や猪塚健太が強い意気込みを持って挑む。公演まで1ヵ月間以上あるにもかかわらず、すでに舞台セットが組まれた稽古場で、本作に挑む心境と手ごたえを聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 山野浩司 ヘアメイク / 中元美佳(GFA)

今回の挑戦は、ほとんどがセックスを介したコミュニケーションで伝えるっていうところ

まず、三浦さんに石田衣良の小説『娼年』『逝年』を舞台化しようと思った経緯からお伺いしたいと思います。

三浦 きっかけは僕発信ではなくて。プロデューサーの方から「この原作を舞台化しませんか?」というお話がきて。そのときに初めて原作を手に取って読みました。いろいろ考えたんですけど、結果的に自分の中でモチベーションが見つかったので「やります」って答えた感じですかね。

どんなモチベーションが見つかりました?

三浦 原作もののお話もよくいただくんですけど、お話がどうこうっていうよりも、舞台表現として自分の中で新しい挑戦が見出せないとやろうっていう気持ちがなかなかわかないんですね。だから、慎重に作品を選んでいるつもりなんですけど、今回はそれがなんとなく見えて、新しいことができるかなっていう思いでやっていますね。

その“新しい挑戦”に関してはあとでお伺いするとして、キャスティングに関してはどう考えていましたか?

三浦 松坂くん、高岡さん、佐津川さんは先に決まっていて。あとはオーディションで選んでいいと言われたので、有名無名を問わず、なるべく役に合って、モチベーションが高い人。それと、価値観を共有できる人を慎重に選んでいきました。佐津川さんに関しては、ずっと一緒にお仕事したいなと思っていて。なかなか交わらなかったんですけど、今回、タイミングが合ったという感じですかね。喋れない役なんですけど、佐津川さんの雰囲気が合うと思ったんです。猪塚くんはオーディションで。重要な役だったので、慎重にいろいろな方を見たんですけど、その中で役の雰囲気に合いつつ、ポテンシャルも感じて意気込みも高かったので、そこで、決めました。

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佐津川さん、猪塚さんは三浦さんとは初顔合わせですよね。

猪塚 一緒にできることになったのはすごく嬉しいですね。僕にとっても挑戦だったので、最初はめちゃめちゃ緊張したんですけど、オーディションのときからいろんな演出をしてもらったし、絶対にこの舞台をやりたいなっていう思いが伝わって良かったって思ってます。

佐津川 私もずっとご一緒したかったので、本当に嬉しいです。でも、ちょっと怖い印象があったから(笑)。

三浦さんは怖いという印象がありました?

佐津川 何年か前に別の作品で三浦さんのオーディションを受けたことがあったんですけど、静かに怖い感じがあって(笑)。

猪塚 静かに怖いって、一番怖いやつじゃないですか!?(笑)

三浦 え? そんなんでした?(笑)

佐津川 前から三浦さんとお仕事をご一緒したかったので、舞台をやるというのを聞きつけ、ワークショップに行ったこともあるんです。実はそこで、ズタボロに言われまして(笑)。

三浦 ワークショップだから真摯にダメ出しをしましたね(笑)。

佐津川 すごくへこんだんです(苦笑)。やっぱりダメなんだなって、改めて自分の演技について反省をして。それが1年以上前ですか。なので、今回ご一緒できることになって本当に嬉しくて。

三浦 いや、怖いというのは、もう世間的なイメージというか……(苦笑)。

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猪塚 三浦さんもキャストに相当気を遣ってくださっていると思うんですけど。稽古の初日、一番初めに、お尻を出したのは三浦さんで(笑)。

佐津川 そう。めっちゃ気を遣ってくれてるって思いました(笑)。

猪塚 そこで役者としてはすごく気が楽になったというか。ありがたかったです。

佐津川 演出の指導としてなんですけど、桃李くんが脱ぐ場面で、まず、三浦さんがお尻を出して。そのときはまだ笑っていいのかもわからない雰囲気でしたけど、私はずっと笑ってました(笑)。

猪塚 (笑)あれで一気に空気が変わりましたよね?

三浦 そんなことになっていたとは全然気づかなかった(笑)。脱ぐ段取りを決めるために、まず自分でやってみただけで。みんなの緊張を解こうとかっていう意図があったわけではないし、お尻を見られてるっていう意識もなかったんですけど。

じゃあ、稽古に入る前と後では三浦さんの印象は変わりました?

佐津川 はい。全然怖くなかったです(笑)。

三浦 怖くないんですよ、実は。怖さのかけらもないんじゃないかなと思うけど(笑)。

佐津川 そうですね。怒ってるところを見たことないですし。

三浦 そういう評判が広がったのは若いときなんですよ。プロデュース公演をいろいろ経て、怒ってもあまりいいことがなくて。作品を良くするために執着するのは大事なことだけど、雰囲気作りや流れを汲むのも演出家の仕事だって思ようになってきて。それができないとプロデュース公演はやらずに、自分の劇団だけやっていればいいっていう話にもなってしまうから。プロデュース公演の場合はいろんな人が集まってるので、いろんな価値観をまとめてっていうことも演出家の才なのかなって思うようになってきたっていうところですかね。

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実際、三浦さんの演出はどうですか?

猪塚 今一番思うのは、間と、そこに流れる空気っていうのを本当にものすごく大切にしてくれるなっていうことですね。演じているほうからしたら、テンポの良さよりも、気持ちの流れを大事にしてくれるので信頼が置けるし、ありがたいです。

佐津川 私はまさに、ワークショップのときに、その気持ちの流れのことで注意されたんです。すごく当たり前のことだけど、そこを一番大事にしないと、役の気持ちがわからなくなって自分が苦しくなるっていうことを強く感じて。しかも、今回は最初の段階からセットもあって、衣裳や照明も準備されてる。いつもの舞台の稽古よりも、どうなっていくかわからないっていう部分が少ないんです。もちろん不安要素もあるし、まだまだこれからだと思うんですけど、本番に似た形で稽古ができることはすごく助かるなって思います。

立ち稽古の段階からここまで舞台セットが組まれてることは珍しいですよね。

三浦 そうですね。これも経験で得たことですね。遠回りしがちなんですけど、結局は舞台にお芝居を乗っけて見せるので、できるだけ最初から本番に近い状態を作ってくださいってお願いしたんです。今回は劇場も広いから、小さいスペースでごちゃごちゃやって、できた気になっていても、実際の舞台に立って「あれ?」っていう感じになる、その誤差の調整が無駄だなと思って。もちろん、本読みとかはしっかりやっているけれど、完成形に向かっている舞台に上がって稽古をしていくほうが、モチベーションも上がるし、目指すところも見えやすいし、雰囲気も良くなるんだろうなと。やっぱり、何をやるのかわからない状況で芝居をするのって、あんまり建設的じゃないかなっていう気はしてます。特にプロデュース公演に関しては。

本も完成してるんですよね。それは、役者の負担を減らしたいという思いから?

三浦 そうですね。何をやって、何を目指していけばいいのかっていうのを、最初から役者一人一人が理解した状態にしておきたいなって。今、公演まで1ヵ月を切りましたけど、余裕を持ってやれてる状況です。大変な芝居なので、そのくらいのゆとりは持ちたいなって思ってました。

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