Interview

松坂桃李が娼夫を演じる舞台『娼年』。脚本・演出の三浦大輔の挑戦を、佐津川愛美、猪塚健太も交え話を訊く

松坂桃李が娼夫を演じる舞台『娼年』。脚本・演出の三浦大輔の挑戦を、佐津川愛美、猪塚健太も交え話を訊く

松坂くんがここまでやってるとか、彼が全力でやってる姿にみんなが感化されてる

その“大変な芝居”の中身はどうなりそうですか?

佐津川 原作を読んで感じていたよりも、悲しくて切ない舞台になりそうです。まだ、全部を通せてないのでわからないんですけど、全部を通したらすごいことになるんじゃないかなっていう気がしてます。なんというか……“過激な性描写”っていう部分が前面に出てるとは思いますが、女性目線で言えば、女性の欲望や人間としての普通の感情がすごく溢れ出ている作品になるんじゃないかなっていう気がしています。どうでしょう?

猪塚 そうですね。本当に人間と人間がぶつかり合う感動みたいなものが大きくて。それって、原作だけではわからない、舞台で生でやってるからこその感動だなって思うんです。今の時点でそう思っているので、全部を通したときに、また自分が全然想像もしてなかったような良さが絶対に生まれるなって感じていますけどね。

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佐津川さんからもありましたが、三浦さんといえば、過激な性描写や人間の性欲をあらわに描くイメージがあります。その中でも、最初にあった“新しい挑戦”とは何かが気になっているのですが。

三浦 今回の挑戦は、もちろん、言葉のコミュニケーションはありますが、ほとんどがセックスを介したコミュニケーションで伝えるっていうところなんですよ。だから、一人の女性とのセックスシーンが10分くらいある。延々とセックスを見せるっていうことですね(笑)。

すごいですね。セックスを観客に目撃させること。そこにはどんな意図があります?

三浦 いままでの演劇での性描写は、何か演劇的な手法で隠したり、わざと見えなくさせて、観客の想像力をかき立たせるっていうやり方が多かったように思うんです。そうじゃなくて、目の前でセックスをもろに見せることで、お客さんに何かが沸き起こるんじゃないかっていう可能性が絶対にあるなと思って。実は僕もそこはそんなにやってこなかったところなんです。その過程には興味があったけど、セックスそのものを描くことに興味がなかったっていうのもあって。でも、もしかしたら、と思ったんですよね。それが、悪趣味ではなく、役者同士のちゃんとした肉体を通したコミュニケーションだったら、会話と同じように成立するんじゃないかなって思ったのが、この原作を舞台化しようと思ったモチベーションだったんです。それは僕だけじゃなく、役者さんの意気込みだったり、そこに賭けて、体を張って、身を委ねるっていう思いがないとできない。だからこそ、オーディションや本やセットや、慎重に稽古前から進めていって、今に至っていて。でも、松坂くんや高岡さんをはじめ、役者さんたちのモチベーションの高さと意気込みっていうところで、いい感じになってるなと思います。自分の中では珍しく。

あははは。珍しくなんですね。

三浦 大変なことをやらせているのに、役者さんが内にこもったり、テンパったりしないで、こういう作品をこう描きたいからやるしかないっていうような、もっとやろうっていう感じになってる。だから、僕も遠慮なくやれてるし、すごく健全な稽古場になってると思います。 shonen_9026

役者としては、肉体のコミュニケーションについてどう考えてますか? 特に佐津川さんは、言葉が話せない役でもあります。

佐津川 一番最初に絡みをやった稽古のあとに、三浦さんと飲みに行ったんです。そこで、「セリフのやりとりじゃなくて、肉体同士でのやりとりをすると、セリフでやっているよりも早く近づけるでしょ?」っていうことをおっしゃっていて。その言葉がすごく腑に落ちて、なんだか大丈夫って思えたんです。まだ形としては完璧にできてるわけではないんですけど、いつもとは違う感覚で、言葉がなくても通じ合えることを感じられている気はしています。

三浦 僕が描こうとしているものは、役者さんの肉体を使って、ほぼ出来つつあります。あとは洗練させていくだけで、それが成立しないっていうことはないかなって現時点では思っています。僕自身も、実のところはわからなかったんですけどね。「できんのかな?」とも思ってたんですけど、想定していた感じにはちゃんとなってきてます。それは役者さんの頑張りだと思いますよ。あとは、松坂くんの人柄かな。松坂くんはほとんどみんなとセックスするんですけど(笑)、彼の人を受け入れるおおらかさに、みんな委ねることができている。爽やかという意味ではなく、人に対しての向き合い方が真摯なので安心感もあるんじゃないかなって思ってますけど。

主演の松坂さんについてはどうですか?

佐津川 三浦さんが仰ったとおり、役に対しても、人に対しても真摯だと思います。でも、いい人なんだけど、ただのいい人じゃないというか……いい子だよねっていう感じだけじゃなくて、何を考えているのかわからない部分もあるんです。

三浦 本当の芯の部分を見せてないかもしれないね。

佐津川 でも、すごくいい距離感を保ってくれています。特に女性側としては、相手にすごく気を遣われ過ぎると、こっちも気を遣ってしまうんですが、そういうのもないからラクなんですよね。

猪塚 たしかにね。本人は相当いろいろ考えて行動してると思うんですけど、それを見せない雰囲気がありますね。

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座長としての松坂くんはどう映ってますか?

三浦 態度で引っ張るのではなく、演技で引っ張ってるっていう感じですかね。松坂くんがここまでやってるとか、彼が全力でやってる姿にみんなが感化されてるっていうのはあるかな。それは高岡さんら女性陣も同じですけどね。

佐津川 先頭に立って引っ張るというよりは、中心にいるっていう感じ。絶対に揺るがずに中心にいてくれる感じかな。

猪塚 なんでも受け入れてくれそうな感じがありますね。

三浦 猪塚くんとの肉体の交わりもありますからね、ちゃんと。

猪塚 はい。まったく嫌じゃない(笑)。それは、松坂くんだからじゃないかなって思います。もちろん、役に入ってお芝居してるんですけど、よりやりやすく、よりもっと交わっていこうって思わせてくれるような、不思議な力があります。実際に交わる前までは不安だったんですけど、交わってみたら、もっと交わりたいって思わせてくれる感じです(笑)。それって、自分がやってる役だけではなくて、本当に彼が、いろんな方との本気の交わりを芝居の中でどんどん見せてくれるから、自分ももっとやろうって思えるっていうか。セリフだけじゃない、身体のコミュニケーションが多いぶん、それを見て感化される部分がすごく大きいですね。

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では、本番に向けて、最後に三浦さんから観客のみなさんへのメッセージをお願いします。

三浦 僕の舞台で、『娼年』が原作ということで、ある程度の想定はしてくると思うんですけど、たぶん、予想よりもびっくりすると思います(笑)。性描写に関しては、なるべく原作のままやろうと思っているし、そこは妥協してないので、エロい興味でも、松坂くんの裸を観たいでも、なんの興味でもいいから、できるだけいろんな人に観て欲しいです。観終わったあとには、違う感覚になると思うんですよ。ここまで性を描きながらも、最後にはきっと、優しい気持ちだったり、あったかい気持ちが味わえる作品になると思います。だから特に、こういうセクシャルな題材に抵抗がある人にもぜひ観てもらいたい。誰にでもある部分を描いた、とても優しい芝居なので、演劇好きやサブカル好き以外の人にも広がってくれたら嬉しいなと思います。

ステージ情報

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『娼年』

【東京公演】2016年8月26日(金)〜9月4日(日)東京芸術劇場プレイハウス ★東京公演当日券販売決定! 詳細
【大阪公演】2016年9月7日(水)〜9月11日(日)シアター・ドラマシティ
【福岡公演】2016年9月14日(水)・9月15日(木)久留米シティプラザ ザ・グランドホール

大学生の森中領は、ある日、友人の紹介で一人の美しい女性、御堂静香と出会う。女性に対して無関心の領は静香から自分が経営するボーイズクラブに誘われ、娼夫として働き始める。やがて領は女性の欲望の不思議に魅せられ、次第に仕事へのやりがいを見つけていくのだが……。

【原作】石田衣良
【脚本・演出】三浦大輔
【キャスト】松坂桃李 高岡早紀 佐津川愛美 村岡希美 安藤 聖 樋井明日香 良田麻美 遠藤留奈/須藤理彩 猪塚健太 米村亮太朗 古澤裕介 江波杏子 尾藤亜衣 鈴木葵椎 楢原嵩琉 【企画・製作】ホリプロ

『娼年』オフィシャルサイトhttp://www.shonen.jp

プロフィール

三浦大輔

1975年生まれ、北海道出身。1996年にポツドールを結成。主宰を務め、ポツドールの全公演の作・演出を手がけるほか、脚本家、演出家、監督として幅広く活躍。2003年に溝口真希子と監督を務めた初の映像作品『はつこい』が第25回ぴあフィルムフェスティバル審査員特別賞を受賞。2006年上演舞台『愛の渦』で第50回岸田國士戯曲賞を受賞。近年の主な作品には【映画】『愛の渦』(14/原作・脚本・監督)、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(10/脚本・監督)【テレビ】『裏切りの街』(dTV/16/脚本・監督)【舞台】『禁断の裸体-Toda Nudez Será Castigada-』(15/演出)、『母に欲す』(14/作・演出)、『失望のむこうがわ』(14/作・演出)、『ストリッパー物語』(13/構成・演出)、『裏切りの街』(10/作・演出)などがある。監督を務めた最新映画『何者』は10月15日より公開される。

佐津川愛美

1988年生まれ、静岡県出身。2005年に初出演映画『蝉しぐれ』(黒土三男 監督)で第48回ブルーリボン助演女優賞、2007年に映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(吉田大八 監督)で第50回ブルーリボン助演女優賞、新人賞にノミネート。近年の主な出演作品には【映画】『誰かの木琴』(16年9月10日公開/東陽一 監督)、『片思いスパイラル』(16/原桂之介 監督)、『貞子vs伽倻子』(16/白石晃士 監督)、『ヒメアノ〜ル』(16/吉田恵輔 監督)、『グラスホッパー』(15/青島 武 監督)【テレビ】『あさが来る』(CX/16)、『恋愛時代』(NTV/15)、『最後から二番目の恋』(CX/14・12)【舞台】『フレンド-今夜此処での一と殷盛り-』(14/横内謙介 作・演出)、『残酷歌劇「ライチ☆光クラブ」』(13/江本純子 脚本・演出)、『遭難、』(12/本谷有希子 作・演出)、『飛び加藤~幻惑使いの不惑の忍者~』(12/河原雅彦 演出)などがある。10月20日〜上演舞台『夜にて』(ジョンソン&ジャクソン 作・演出)に出演。

猪塚健太

1986年生まれ、愛知県出身。アミューズ所属演劇集団、劇団プレステージに所属し、2010年の旗揚公演よりほとんどのプレステージ作品に出演。2008年に出演した『トミカヒーロー レスキューフォース』(TX)にて注目を集める。近年の主な出演作品には【映画】『深夜食堂』(15/松岡錠司 監督)、『女子ーズ』(14/福田雄一 監督)、『大奥』(10/金子文紀 監督)【舞台】『朗読劇「僕とあいつの関ヶ原」「俺とおまえの夏の陣」』(16/中屋敷法仁 演出)、『The Love Bugs』(16/岸谷五朗 作・演出)、『里見八犬伝』(14/深作健太 演出)、『クザリアーナの翼』(14/岸谷五朗 作・演出)、『チ・ヨ・コ・レ・イ・ト〜ビターな大人のラブコメディ〜』(13/大関 真 演出)、『ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズン』(11/井関佳子 脚色・演出)【テレビ】『みんなのニュース』(CX/16)、『同窓生〜人は、三度、恋をする〜』(CX/14)などがある。10月27日〜上演舞台『珍渦虫』(水野美紀 演出)に出演。

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