黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 25

Interview

ゲームプロデュースの最先端 齊藤陽介氏(中)多分、みんなバカだった…

ゲームプロデュースの最先端 齊藤陽介氏(中)多分、みんなバカだった…

自分より面白いゲームを作る人たちがいる環境を整えよう

齊藤 『せがれいじり』に関しては私が尊敬する渡辺泰仁(注24)っていうプロデューサーが。ほんとにあの人もおかしい人で『バスト ア ムーブ』(注25)とか。

注23:主人公の「せがれ」を操作して、「セケン」と呼ばれる世界を探索していく、いわゆるバカゲー。『ウゴウゴルーガ』のCGを担当した秋元きつね氏が原作を手がけており、独創的かつ前衛的なキャラクターデザインや、すさまじくオバカな内容が受けミリオンヒットとなった。1999年にプレイステーション向けに発売。

注24:『バスト ア ムーブ』や『せがれいじり』などの個性的なゲームの開発を手がけてきたことで知られる。近年は『戦国IXA』などのオンラインゲームの開発・運営にも携わっている。

注25:音楽に合わせてコマンドを入力していくことで、キャラクターがいかに上手くダンスするかを競うリズムアクションゲーム。ポップなサウンドや3Dで描かれたユニークなキャラクターたちが話題となった。1998年にプレイステーション向けに発売。

渡辺さんも異色のプロデューサーですよね。

齊藤 メッチャ変わっていますし、絶対にマネできないと思います。『バスト ア ムーブ』を作ったときもすごいなと思いまし。『せがれいじり』なんてゲームじゃないですからね、アートですよね。「すごいな、この人は」って思いました。今はもう辞められましたけど『スターオーシャン』チームの山岸(功典)さん(注26)も尊敬する先輩ですね。

注26:『スターオーシャン』シリーズや『ヴァルキリープロファイル』シリーズなど、トライエース作品のプロデュースを手がけたことで知られる。現在は株式会社モノビットのVRゲーム事業部部長を務める。

齊藤さんのアバンギャルドさは、ご自身のバックグラウンドからきているものなのでしょうか。

齊藤 自分が楽しいか、楽しくないかっていうのはあるかもしれないですね。プロデューサー職っていう部分に関しても、ディレクターのほうが楽しいに決まってるじゃんと自分では思っています。けれども、自分より面白いゲームを作る人がいっぱいいますから、そこをやる必要はないんです。だったら、自分より面白いゲームを作る人たちがいる環境を整えようと。そういう方が向いているなと思ったんです。

スーパーファミコンの頃は仕様を書いたりとかデータを作ったりとか、いわゆるゲームデザイナーみたいな仕事もしていたんですよ。当時はプレイステーション時代よりもっと少ない人数でやっていたんで。でも、私よりもっと面白いことを考える人がいっぱいいるんだから、別に私じゃなくていいよねっていう感じでした。

自分は3割ヒッターだったらいいかと思いながらやっています

そこの割り切りがなかなかできなくて、ズルズルいってしまう方がけっこう多いと僕は感じているんですよ。

齊藤 プロデューサーがあれこれ口を出すことが正解か不正解かっていったら、どちらとも言えないです。結果論になるので絶対的な正解はないと思うんです。ただ、口を出すんだったら、お前がディレクターをやれよと私は思いますね。アナタが任命したディレクターなんだから、任命したんだったらそこは任せなさいよと。自分が言われたらイヤでしょって。だから、あまりに聞いてくるディレクターは逆に信頼してないです。もちろん、聞かれたときには、すぐにこっちのほうがいいんじゃないかっていうのを、ディレクターと同じ目線でジャッジできるようにしておかないといけないとは思っていますけどね。

それが常に新しいことをやろうという気持ちに繋がるわけですか。

齊藤 新しいものを作ってくれる人が周りにいてくれるから、そういう流れになっているのかもしれないですけどね。周りが王道のものを作る人ばっかりだったら、もしかしたら全然違ったかもしれないです。でも、それ(王道モノ)が心から楽しめないようなら、やっていなかったかもしれません。やっぱり新しいもののほうが楽しいなって、どこかで思っているので。

でも、何もないところから新しいものを作るっていうのは精神的な負担も大きいですよね。当然、ビジネスだから成功させなきゃいけないですし。

齊藤 そうですね。だから、自分は3割ヒッターだったらいいかと思いながらやっています。

それで、いろいろすごいタイトルが生まれたのでしょうか。安藤(武博)さん(注27)の『鈴木爆発』(注28)とか。これ大丈夫なのかなと思いましたけど(笑)。

注27:『鈴木爆発』、『疾走、ヤンキー魂。』、『ケイオスリングス』シリーズなど、さまざまなゲームのプロデュースを手がける。2015年にスクウェア・エニックスを退社し、株式会社シシララを設立。ゲームプロデューサーの傍らゲームDJとしても活動中。

注28:制限時間内での爆弾の解体を目指すパズルゲームで、そこにいたるまでのストーリーが実写で展開される。その内容がシュールかつ突飛でバカゲーとして名高い。

齊藤 多分、上の者たちのしていることを見ていたからでしょうね。こういうことをやってもいいんだっていう。私とか渡辺とかを見ていたら、そりゃああなるわなって。「それで良かったのかな?」とも思うんですけど。

いや、でもエニックスって王道とアバンギャルドが混在していて、すごい会社だなと僕は常々思っていましたよ。

堀井さんとサバゲ―を

齊藤 ハハハ、そうですね。あそこまでとんがったものを作る会社はそうそうなかったですもんね。

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