Interview

橋本さとし&岸祐二、演出の河原雅彦がミュージカル『ゴッホ』を語る

橋本さとし&岸祐二、演出の河原雅彦がミュージカル『ゴッホ』を語る

画家・ゴッホ役の橋本さとし&弟・テオ役の岸祐二、演出の河原雅彦が『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』を語る

『星月夜』や『ひまわり』などの傑作を残し、そのあまりに激しい波乱万丈の生き様から“炎の画家”などとも称されているヴィンセント・ヴァン・ゴッホ(1853-1890)。彼を支え続けた弟・テオと交わした約700通に及ぶ書簡をベースに、この兄弟の愛と葛藤の半生を描いた二人芝居がミュージカル『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』だ。ゴッホの名画の数々が映写されるプロジェクション・マッピングが画期的で、2014年に韓国・ソウルで初演されて以来再演を重ねてきたこの人気作が、いよいよ日本初演を果たすことになった。
気になるキャストは、ヴィンセント役に橋本さとし、テオ役に岸 祐二。ユニット“Mon STARS”の一員としても共に活躍している橋本と岸だけに、相当息の合った兄弟役が期待できる。さらに今回はヴィンセント役で泉見洋平と野島直人、テオ役で上山竜治と入野自由という若手注目株の4名も日替わりで登場するというチャレンジングな企みも用意されていることも大きな話題だ。
この待望の日本版がどんな舞台になりそうか、上演台本と演出を手がける河原雅彦と、橋本&岸コンビに話を聞いた。

取材・文 / 田中里津子 撮影 / 冨田 望

韓国版とはまた手触りの違う、僕らのこのチームなりの面白いものができることは確信しています

お稽古の進み具合はいかがですか。

河原 いいペースではあるんですけど、もうこのペースを落とすことはできないという危機感があるので、キャスト、スタッフ共にとても頑張ってくれているところです。

橋本 普段だったらこの稽古期間でここまで進んでいたら「すげーなあ!」って思うペースなんだけど、今回はまだ研究生気分ですよ。いつ劇団員になれるかなって感じです。

河原 今はまだ、「ヨーイドン!」までいけてないからね。「位置について……」の段階というか、とにかく毎日やらなきゃいけないことがたくさんあるので。今回は舞台美術の一環としてプロジェクション・マッピングの映像を使うという、はずせない約束事があるので、シーンごとに数多くの段取りがあるんです。だけど段取りを段取りだけで終わらせず、そこに気持ちを乗せていかなければいけないんだけど。

橋本 まだ最初のうちは段取りを詰め込むしかないのでね。

 100メートル走のスタート地点の機械に足をかけようとするたびに、ツルッツルッって滑っている気分ですよ(笑)。

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プロジェクション・マッピングに合わせて動きをつける作業が一番大変なんですか?

河原 今回の舞台は抽象空間なんです。だから舞台上の部屋も場面ごとに、誰かの部屋から誰かの部屋に変わったり、部屋の外に出たりと変化していく。なのでマッピング以外にも、数々の場面転換で机や椅子などを次の設定に合わせて動かさなければならないという。

 それを全部、自分たちでやるんです。

河原 もう、『ゴッホ』ってタイトルより『ダンドリ』にしたほうがいいんじゃないかと思うくらい。『ダンドリ・ザ・ミュージカル』でいいよね(笑)。

橋本 だけど、ヴィンセントは本当はそういう、段取りとか形式に反発した人のはずなんだけどね(笑)。

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そういう意味では、おかしなことになりましたね(笑)。

橋本 例えば、何かを動かす前に「テオ」と弟を呼ぶのか、動かしたあと「テオ」と呼ぶのか。そういう細かいところまできっちり決めて合わせないといけないんです。それをこちら(役者)の気持ち優先にするとすべてが狂ってしまうこともある。となると、つけられている段取りにどれだけ自分の気持ちを寄せていくかということになるので。でもリーダー(河原)は稽古を見るのが俺らだけじゃないから、よりストレスを抱えてるだろうとも思いますけど。

 なんだか、申し訳ないです。いや、変な言い方ですけど、今回は本当にリーダーに助けていただいているので。できない部分には目を瞑っていただきながら、それぞれのやり方をちゃんと大きな心で包んでいただいていることが何より救いです。

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このゴッホとテオの兄弟の話を演じることについては、どう思われましたか。

橋本 とにかくヴィンセントというのは超有名人ですからね。ほかの芸術家よりもかなり、キャラ立ちしているというか(笑)。絵でももちろん有名だけど、その人となりにものすごくスポットが当たっている人じゃないですか。絵画界の超スーパースターなので、観に来る方はすでにイメージがあると思うんですね。ゴッホといったら狂人だとか、情熱の人だとか。でも僕は、ただピュアな人でいたいなと思うんです。ただ、見ている方向がほかの人と違うだけ。あと報われなかった未完の人でもあって、結局死ぬときもゴッホはゴッホなりにやり尽くしたところまでいけていたなら、ある意味最後の最後には報われた人だったと思えるかもしれないんですがね。

 僕としてはまず今回のお話をいただいた時点で、相手役がさとしさんだということはわかっていたし、兄弟の話で二人ミュージカルでと言われたらもうこれはやる以外ないと思いました。ましてや初めてリーダーともご一緒できるなんて、これ以上興奮するものはないくらいの気持ちで食いつきましたね(笑)。自分の役者としてのターニング・ポイントになる作品だろうなと思いますし、テオを演じることはもちろん、さとしさんと一緒に、その一番間近で役に取り組む姿を見られることも、すごく幸せに思います。

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お二人以外のキャストが4名いるというのも、この公演の特長なのかなと思いますが。泉見洋平さん、野島直人さん、上山竜治さん、入野自由さんという若いキャストたちについてはいかがですか。

河原 さとしさんと岸さんの稽古を若い人にはまず見てもらい、そのあとで稽古するのですが、一人一人アプローチが違うので面白いです。その様子を、岸さんは時々消えていたりもするけど(笑)、いるときはしっかりと見ていますよね。さとしさんはわりと奥のほうから見ていて、若い人たちが歌ってるときは一緒になって歌っている。

橋本 見ているというより自主練に近いかな。チラ見しながら「こんな感じなんかー」って確認したり。彼らのことも気にはなりますし、僕にとってもヒントになることを提供してくれたりもするから刺激をすごく受けています。そういうのをチラチラ見ながらこっそりパクってますよ(笑)。

 今は段取りを覚えるのに必死ではあるけど、僕らから生まれ出るもの、リーダーが引っ張り出してくれるものを大事にしながら、それをまず優先して作っているんですね。それを若い人たちがやっているのを見ることで「なるほど、こう見えているのか!」と冷静に確認できるので。

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