Interview

YUKI  敬愛するミュージシャンとともに仕上げた“セルフ・プロデュース”とも言える最新アルバム。この1枚に注ぎ込んだ思いを語ってもらった。

YUKI  敬愛するミュージシャンとともに仕上げた“セルフ・プロデュース”とも言える最新アルバム。この1枚に注ぎ込んだ思いを語ってもらった。

YUKIが、9thオリジナル・アルバム『forme(フォルム)』をリリースした。YUKI自身、「2回目のソロデビューのような、フレッシュなアルバムになりました」という今作は、自分の中で鳴っている音を形にし、メロディに触発されて生まれた言葉を歌詞にして、一つひとつ創りたい音を構築していった、“セルフ・プロデュース”とも言える一枚。敬愛するミュージシャンたちに作曲をオファーし、歌うことの喜びや楽しさも詰まったこのアルバムへの想いをYUKIに語ってもらった。

取材・文 / 矢隈和恵

学んだことを自分ひとりで応用してみたら、どんな曲が出来るんだろう、どんなアルバムが出来るんだろうと、聴きたくなってしまったんです

今回のアルバムは、まずどんな思いから制作が始まったんですか?

アルバムを制作するときは、いつも自分の理想に近づけようとしているんですけど、完成するとやっぱり100%満足だということはなくて、どういうふうにすればもっと自分の理想に近づくんだろう、と毎回思いながら作っています。前作『まばたき』を作ったあと、またしても探究心のようなものが出てきて。3枚目の『joy』から『まばたき』までずっと同じチームで作品を作ってきて、そこで培ってきたスキルや、こういうときはこういう音にすればいいんだという私なりに習得した感覚、勉強してきた力を自分ひとりで試してみたいと思いました。その学んだことを自分ひとりで応用してみたら、どんな曲が出来るんだろう、どんなアルバムが出来るんだろうと、聴きたくなってしまったんです。

それが今回のアルバムで、セルフ・プロデュースをするきっかけになったんですね。

なるべく多くのことを自分がコントロールすれば、ひょっとしたら思い描いているところに正確にいけるんじゃないか、と試してみたくなりました。音楽に正解はないと思いますし、何をもって成功というのかはわかりませんけど、私にとっての成功は、私が“これ、最高でしょ! この曲が今、世の中に出たら最高に楽しいよね!”と思える曲を作ることなんです。自分で自分のアルバムのファンになるということが、私にとってはいちばんの成功だと思っています。

自分がいつも聴いている曲、大好きなミュージシャン、尊敬しているミュージシャンにお願いしてみたら、私はどんなシンガーになるんだろうと興味がありました

今回のアルバムでは、敬愛するミュージシャンの方々に作曲をオファーされていますが、それはどういう思いから出てきたことなんでしょう。

今回は、自分がずっと聴いてきたものを、自分でも歌いたいと思いました。“今これが歌いたいと思う曲を作ることに、何か怖いことがある?”と自分に問うたとき、怖がることなんて何もないと思いました。私は色々な音楽を聴くのが好きですし、でも、シンガーという部分にもすごく誇りを持ってやっていて、どんな曲であっても歌う自信はこの何年かでついていました。でも、ここにきて、もっと自由度を高くしたいなと思ったんです。自分の思うままに、とことん好きな音を作って、自分が、“今これが歌いたいんだ”という曲の精度を上げることが大事だと思ったんです。

好きな音を作るために、自分が好きでいつも聴いている音楽を作っているミュージシャンと一緒に曲を作ろうと思ったんですね。

今回、曲をお願いするにあたって、自分がいつも聴いている曲、大好きなミュージシャン、尊敬しているミュージシャンにお願いしてみたら、私はどんなシンガーになるんだろうと興味がありました。1枚目のアルバム『PRISMIC』のときは闇雲に、ただまっすぐドーンとぶつかっていくしかできなかったけれど、今は、その先をちょっとだけ見据えて、きっとこうなって、きっと私はこういうふうにやれるだろうから、楽しく素晴らしいものができるはずだ、と思ったら、このような人選になりました。

出来上がってきた曲たちは、イメージ通りでしたか?

「こうきたか」というものもありましたし、「うわ~、面白い」というものもありました。これは一緒にアレンジしたほうがいいなという曲もありましたし、これだったら、こういうアレンジャーさんに、デモ音源とはまったく違う世界にしてもらってもいいかもしれない、とか。そういうジャッジもすべて自分でやりました。たとえば、(津野)米咲ちゃんが作曲してくれた「風来坊」は、デモの状態ではバンド・サウンドだったんですけど、私の好きなアルバムのほぼ全編をプログラミングしていたトオミヨウさんに頼んでみたら面白いものが出来るんじゃないかな、と。私だったらこうはしないな、こういう音は私には思いつかないな、という音がたくさん入っていて、すごく新鮮だと思いました。

この曲は歌詞がすごく印象的ですよね。どんな風が吹いたら、あばらの骨が折れるのか(笑)。一体どこに立ち向かっているんでしょう。

この曲を作っている頃、色々とやらなければいけないことが同時進行していて、すごく忙しかったんです。曲を作って、歌って、他のプロジェクトにも参加していて。でも、それがすごく幸せなことだなと思っていて。無双状態というか、絶対できる、私は大丈夫、という気持ちが大きくて、〈あばらの骨折れるまで〉という歌詞になりました(笑)。<勧進帳>というのは、何にも書いていないものを見て、書いてあるように読む、という、ハッタリをきかせるということなんですけど、私もずっとそうやって強気で、自分を奮い立たせてやってきたなと思って。でも、ハッタリというのはすごく大事なんです。絶対できる、私は大丈夫、という気持ちがすごく働いていたときだったので、こういう歌詞になったんだと思いますね。

「しのびこみたい」は古くからの友人であるNONA REEVESの西寺郷太さんと一緒に作られています。

古くからの友人ではあったけれど、なかなか一緒に曲を作る機会がなくて、でも、音楽的には私がずっとファンだったということもあってこの機会に郷太くんにお願いしました。私があまり歌ったことのない、音数が少なくて、テンポもゆったりしていて、ファルセットもたくさんある曲、とリクエストして作ってもらいました。演奏はNONA REEVESのメンバーです。歌詞も、色々な言葉を思いついては笑いながら作っていって。コーラスもノリノリで、レコーディングは、すごく楽しくできました。

ダメ元でお願いしたんですけど、「一緒にいい曲作りましょう」と快諾してくださって。

そして、「Sunday Girl」は細野晴臣さんの作曲です。これはどういう経緯でお願いすることになったんですか?

自分が好きな音楽をやるには、私が日頃から聴いていて、最高に好きな人にお願いするのがいいなと思って、今回、細野さんにお声掛けさせていただきました。ダメ元でお願いしたんですけど、「一緒にいい曲作りましょう」と快諾してくださって。細野さんもちょうどご自身のアルバムを作られていて、とてもお忙しい時期だったんですけど、レコーディングのとき細野さんに、「この曲はどういう感じで出来たんですか?」と聞いたら、私から詩が届いて、さて、どうしようと思ってスタジオに入ってギターを弾いていたら、1時間もかからずに出来たそうです。すごいですよね。自分が歌う曲ではないものを作るのは、息抜きになって楽しかったよ、と言ってくださいました。

往年の細野節が全面に出ている、ポップスの王道のような素晴らしい曲ですよね。

私ももちろん細野さんの昔の曲も最近の曲も聴いているんですけど、こんなにコード進行が動く曲は久しぶりなんじゃないかと、細野さんに伺ってみたんです。そうしたら、「よくわかったね。久しぶりなんだよね」と仰っていました。まさか自分の詩にこんな素敵な素晴らしいメロディがつくなんて、本当に嬉しいです。

「百日紅」はクリープハイプの尾崎世界観さんの楽曲です。

この曲は、朝、コーヒー屋さんにいたときに携帯に曲が届いて、その曲があまりにも素晴らしくて、その場ですぐ〈嗚呼、好い 流れる血が 私を女だと知らせる〉というサビが出来ました。元々は、不甲斐ない、どうしようもないダメな女性の歌でした。曲を聴いて、頭に浮かんできた言葉をメモしていったんですけど、メモには「ヤキモチ」とか「堕落」とか、ネガティブな言葉しか出てこないメロディでした(苦笑)。尾崎くんのメロディには、そういう詩がすごく合うんです。

メロディが言葉を呼んだんですか?

今回、どの曲もやっぱりメロディに寄り添おうと思っていました。書いてもらった曲に対して、絶対に良い曲にするぞ、と思う気持ちは強く持っていました。この曲も、私が無意識に尾崎くんをイメージして聴いていたのかもしれないんですけど、それを抜きにしても、結構ヤバい歌になってしまって(笑)。でも、悲しい歌を作ってしまって、ライブで歌いたくなくなるのは嫌だと思って、自然とこういう歌詞になりました。彼がいちばん好きだと言ってくれたのは、〈身の程を知れと唱う百日紅 やましさと裏腹に流す涙〉。尾崎くんには、「YUKIさんの曲から溢れ出る女の優しさ、女性みんなが持っている母性みたいなのをすごく感じていました。この曲からも同じようなものを感じて、すごく良かったです」と言われました。

尾崎世界観さんのメロディだからこそ生まれてきた歌詞なんですね。

あと、〈天才だと褒めはやす〉という歌詞が出てきたとき、なんか変だなと思って調べてみたら、正しくは「褒めそやす」だったんです。それで、どうしよう、と尾崎くんに相談したら、「本当は“褒めそやす”かもしれないけど、“褒めはやす”とYUKIさんの声で聴いたときに、YUKIさんが言いたいことはわかる。YUKIさんが作った言葉みたいな感じで、僕はいいと思うので、そのままでいいんじゃないですか」と言ってくれました。やっぱり尾崎くんも自分から出てくる言葉を大切にして、面白い歌詞を書く人なんだなと思いました。

生でやると、リズムは走るし、もたるし、揺れがすごい。でも、今回は特にそういうものを作りたかったし、だからクリックを使っていない曲もあるんです

今回のアルバムは、YUKIさんの思いがはみ出しまくっていて、まとまりすぎていない感じがすごく心地よいですよね。

そうですね。なぜなら生でやると、リズムは走るし、もたるし、揺れがすごい。でも、今回は特にそういうものを作りたかったし、だからクリックを使っていない曲もあるんです。今回は、何の音が入っているのかわからない、ということはやめたかった。それがセルフ・プロデュースということになるのかなと思います。何の音が入っているかを自分で把握していたいというのがありました。

アルバム・タイトルの『forme(フォルム)』というのは、どこから出てきた言葉なんですか?

私は今まで、「こういう歌を歌って欲しい」「こういう曲を作って欲しい」という依頼があれば、その世界の登場人物になって歌を作ってきました。これを何と言うんだろうと思ったときに、“フォルム”という言葉が出てきたんです。私はいくらでも形を変えられる。それがきっと、私がシンガーソングライターではなく、シンガーだということなんだと思ったんです。

このアルバムは絶対に必要でした。これは私が今、出すべきアルバムだったんです

今回のこのアルバムは、YUKIさんから出てきた音と言葉、頭と心の中で鳴っている音が詰まったアルバムになっていますね。

私がいちばん気持ちいい形を探して出来たアルバムが『forme』なんです。この17年、勉強させてもらったことがたくさんありましたし、感謝もしています。こんなに大変だったんだなとわかることもありました。自分でどこまでできるか、足りないところもわかりましたし、上手くできるところもわかりました。そういう意味でも、このアルバムは絶対に必要でした。これは私が今、出すべきアルバムだったんです。「forme」は、実は英語だと「form」で「e」がつかないんです。でも、フランス語で書くと「e」がついて「for me」になる。このタイトルには「フォーミー(=私のために)」という意味もあります。この曲たちは、私のためのフォルムなんです。

そして、3月9日からは全国ツアーも始まります。ツアー・タイトルにある“trance/forme”には、どんな意味が込められているんでしょうか。

今回のアルバムは、曲によって色々な登場人物が出てきて、曲によって私は変われるんです。ライブでも色々と形を変えようと思っていて、変幻自在な私をお見せできればと思いますね。曲も、ライブをやるごとにどんどん変化していくと思うので、きっと面白いことになると思います。「trance」には「夢中になる」という意味もあるので、気心の知れたバンドメンバーと一緒に出す音で、来てくれたみなさんを夢中にさせたいですね。

その他のYUKIの作品はこちらへ。

ライブ情報

YUKI concert tour “trance/forme” 2019

3月9日(土)神奈川県 厚木市文化会館 大ホール
3月10日(日)神奈川県 厚木市文化会館 大ホール
3月19日(火)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
3月20日(水)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
3月28日(木)大阪府 フェスティバルホール
3月29日(金)大阪府 フェスティバルホール
4月6日(土)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
4月7日(日)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
4月20日(土)石川県 本多の森ホール
4月21日(日)石川県 本多の森ホール
4月28日(日) 神奈川県 神奈川県民ホール
4月29日(月・祝)神奈川県 神奈川県民ホール
5月11日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
5月12日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
5月18日(土)広島県 広島文化学園HBGホール
5月19日(日)広島県 広島文化学園HBGホール
5月31日(金)兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
6月1日(土)兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
6月8日(土)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
6月9日(日)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
6月15日(土)東京都 東京国際フォーラム ホールA
6月16日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールA
7月06日(土)愛知県 名古屋国際会議場 センチュリーホール
7月07日(日)愛知県 名古屋国際会議場 センチュリーホール

YUKI

1993年、JUDY AND MARYのヴォーカリストとしてデビュー。
2001年、JUDY AND MARYを解散後、2002年2月にシングル「the end of shite」でソロ活動を開始。
先鋭的なサウンドや前衛的なビジュアルで独自の世界観を確立。
2012年5月、ソロ活動10周年を記念して開催した東京ドーム公演では、バンドとソロの両方で東京ドーム公演を行った女性ヴォーカリストとして“史上初”という記録を作り、約5万人を動員。
2017年までに、音楽チャートで1位を獲得したアルバム5枚を含む、8枚のオリジナルアルバムをリリース。
独特の歌声、表現、存在感は、あらゆる方面から多くの注目を集め、今後も音楽活動とそれに伴うライブ、アートワークの全てから目が離せない。

オフィシャルサイト
http://www.yukiweb.net