小田和正『あの日 あの時』特集  vol. 10

Interview

KAZUMASA ODA TOUR 2016 “君住む街へ” バンドメンバーインタビューPart.6:吉田翔平

KAZUMASA ODA TOUR 2016 “君住む街へ” バンドメンバーインタビューPart.6:吉田翔平

取材・文 / 小貫信昭 撮影 / 菊地英二

 ストリングスの皆さんへのインタビュー。今回はセカンド・バイオリンを担当する吉田翔平である。小田のツアー・メンバーのなかで最年少の彼を、みんなは親しみを込め“ショーヘイ”と下の名前で呼ぶ。 実はバイオリンといえば、小田とも縁のある楽器だ。小学校3年の時、バイオリン教室に通っていたのだ。キッカケは、鰐淵晴子主演の『ノンちゃん雲に乗る』というファンタジー映画を観たからで、当時10歳だった鰐淵が演じる“ノンちゃん”が、見事にバイオリンを演奏するシーンに憧れを抱き、小田は母に「習いたい」と申し出た。ところが…。生徒ひとりひとりの上達の速度に合わせてくれない先生とソリが合わず、しばらくして教室には通わなくなってしまうのだが…。 といったエピソードをご紹介したあとで、いよいよ本題。今回ご紹介する吉田翔平がバイオリンを習い始めたのは3~4歳の頃だそうで、もちろん現在、プロの奏者として活躍しているわけだから、ずっと練習に余念がなかったのだろう。ただ彼は、クラシック一筋のようで、いわゆるJ-POP系の音楽にも早くから関心を抱いていたのだった。 _DSC0079_s

吉田さんのTwitterを拝見したら、ライブの本番前に、客席の花道を試しに走ってみてる動画がアップされてましたよね(笑)。とても臨場感あって興味深かったんですが。

吉田 あれは“さいたまスーパーアリーナ”の本番前だったかと思うんですけど、小田さんは花道を走るとき、どんな気持ちなのかを知りたくて、やってみたんですけどね(笑)。

僕は走ったことないですけど、近くで見ると、思った以上に“道幅”が狭いんですよね。

吉田 そうなんですよ。でも花道といえば、2012年に横浜の“赤レンガパーク”の野外ステージで、ライブをやったじゃないですか(5月26日の<KAZUMASA ODA TOUR 2011-2012“どーもどーも”その日がくるまで>ファイナル公演)。あの時、1曲だけですけど、ぼくらもワイヤレスをつけて、花道を縦横無尽に動くことが出来たんです。その時はお客さんのすぐ近くにも行けて、熱気が直に凄く伝わってきて、とてもいい想い出になっているんですけど。

お話を聞いていると、吉田さんは「出来ればお客さんの近くへ行きたい!」という想いを、強くお持ちの方のようで(笑)。小田さんのツアーへの参加は、いまも話に出た“どーもどーも”の時からですか?

吉田 はい。その時はビオラを担当して、金原(千恵子)さんのスケジュールが合わないときはバイオリンを弾かせてもらったんです。でも実は、事務所を通じてツアーの打診された時は、“とある大物アーティストの話があるんだけど…”とか、最初は名前も明かしてくれなかったんです。 吉田さん_1_

様々なことが本決まりじゃない状況でのスケジュール調整だったんでしょうかね…。

吉田 そうだと思います。もうその時は、“まだ親にも言わないでくれ”みたいな箝口令が敷かれて(笑)。

あはは。

吉田 それが実は小田和正さんのツアーだと分かった時は驚きましたし、小田さんの代表曲はもちろん聴いてたから凄く嬉しかったのを覚えてます。ただ僕自身、長いツアーというのは初めての経験でもあったので、凄く緊張もしましたけど。

実際にツアーを回ってみて感じたことというと?

吉田 そもそも小田さんの音楽は、“とりあえずここは弦でも入れて…”、みたいな感じではなくて、最初からそれが在ってこそ成り立つものも多いんですよね。小田さんご自身が弦のアレンジもされてますしね。で、あの時小田さんが、「オフコースの頃、コーラスの動きを考えるのが楽しかったように、今はストリングスのこと考えるのが楽しい」と仰ってたんですが、その話を伺って、とても弾き甲斐を感じたの覚えてますけどね。 _DSC0091_s

担当するセカンド・バイオリンというのは、どんな役割なのか教えてもらえますか?

吉田 音的には金原さんの弾くファースト・バイオリンの下にいて、金原さんを支える役割で、セカンドはファーストの邪魔になってはいけないし、とはいえ押え過ぎれば“もうすこし来て欲しい”みたいなことにもなる。そのあたり、黄金律のようなものがあるのかもしれないけど、匙加減が難しいんです。でも金原さんは、“ここは出してここは抑えて”みたいなイメージをしっかり持っている方なので、間違ったことをしたらちゃんと指摘してくださるし、僕は勝手に“師匠”だと思って、金原さんから様々なことを学ばせてもらってます。

イメージがあることが大切なんですね。そこがあやふやだと、支えるにも支えようもないですからね。

吉田 そうなんですよ。こっちも好き勝手やって、「でもなんか違うなぁ」って、その繰り返しになりかねないですから。

吉田さんはJ-POPもお好きだそうですが、今回の小田さんのツアーで演奏される曲の中には、ストリングスがメインのものもあれば、バンド・サウンドのものもありますよね。演奏するにも意識が違うと思うのですが。

吉田 弦の役割が強い「心はなれて」や「言葉にできない」「さよならは言わない」の時は“身構える”というか、繊細に弾くことを心掛けますが、バンドが全面に出てる曲はエネルギッシュに弾くようにしてます。あと“盛り上げ役”という意識があるのが「キラキラ」や「Yes-No」ですね。演奏だけじゃなく、立ち振る舞いも含めて、お客さんに盛り上がってもらえるよう心掛けてます。 吉田さん_2

吉田さん自身のお気に入りの曲というと…。

吉田 「愛を止めないで」ですかね。あと「Yes-No」もそうですけど、イントロで弦が入ってきて、そこからぱっとバンドに切り替わるようになってるんですが、ああいう曲の世界観が途中で変わるアレンジは、個人的にも大好きです。

激しい曲とかで、全員が一丸となって演奏する場合、ややもするとストリングスは埋もれがちになりそうな気もするけど、そんなことはないんですかね…。

吉田 僕たち4人の中でも、確かに激しい曲では音の高いファースト・バイオリンに較べ、それより下の音のものは“埋もれる”って思われがちなんですが、でも“パッと聴くと目立たなくても無くなると気づく”というか、そんな縁の下の力持ちな役割を担う曲があってもいいんじゃないかなと、そう思ってはいるんですけどね。

なるほど…。“無くなると気づく”というのは、音楽のひとつの大切な部分に関する話かと…。では最後に、ツアー後半から終盤へ向けての意気込みなどを。

吉田 ともかく小田さんのツアー・メンバーは、超レジェンドな小田さんをはじめ、レジェンドな方達ばかりですし、そのなかで僕はぺーぺー過ぎるというか(笑)、日々揉まれつつ、それが“とてもいい経験値となって貯まっているなぁ”と、毎回本番が終わるたびに思うんですよ。でも(木村)万作さんは、このバンドでは最年長なのですが、ドラム叩いててテンション上がって、いつもと違うフィルを演奏したあと、ふと顔を見るとキラキラ笑ってたりするんですよ。高揚して、子供の顔になってるというか、そういうお姿を見ると刺激になりますよ。もちろん他のみなさん含め、素晴らしいミュージシャンの方達と演奏できること自体、僕にとって大きな刺激だし、光栄なことだと思ってるんですけどね。

というわけで、心の中ではいつも、小田さんと一緒に“花道を疾走している”吉田翔平さんでした。

小田さん_2_194

吉田翔平 Yoshida Shohei(Violin)

1982年生まれ。4歳よりバイオリンを始め、桐朋学園大学音楽科を卒業。 Liveサポートとして小田和正、槇原敬之、藤井フミヤ、玉置浩二、渡辺美里、flumpool、平原綾香、→Pia-no-jaC←、大塚 愛、ONE OK ROCK、MAN WITH A MISSION、菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール、鈴木雅之、絢香、坂東玉三郎、日笠陽子等に参加。

小貫信昭

80年代より、雑誌『ミュージック・マガジン』を皮切りに音楽評論を開始。以後、主に日本のポップス系アーティストのインタビュー、各媒体への執筆などに携わりつつ今日に至る。主な著書には日本の名ソング・ライター達の創作の秘密に迫る『うたう槇原敬之』(本人との共著)、小田和正『たしかなこと』『小田和正ドキュメント 1998-2011』(本人との共著)、人気バンドの凝縮された1年間を繙いたMr.Children『es』(本人達との共著)、また評論集としては、ロック・レジェンド達への入門書『6X9の扉』、J-POPの歌詞の世界観を解き明かした『歌のなかの言葉の魔法』、また、ゼロからピアノ習得を目指した『45歳・ピアノ・レッスン!』などなどがある。現在、歌詞のなかの“言葉の魔法”を探るコラムを「歌ネット」にて好評連載中。

All Time Best Album あの日 あの時

あの日 あの時
FHCL-3005 ~ FHCL-3007 ¥3,611+税 【初回仕様限定盤】 ・デジパック仕様 ・特製ギターピック封入(2種(「あの日あの時ver.」or「君住む街へver.」)から1種ランダム封入) *本人直筆のタイトル「あの日あの時」or「君住む街へ」がピックに印刷されています。
日本人に長き渡り親しまれ、J-POPシーンのトップとしてそれぞれの時代を駆け抜け数々の記録を打ち立ててきた小田和正。1969年オフコースを結成し、翌70年プロとして音楽活動を開始、「さよなら」「言葉にできない」などのヒット曲を発表、今作にはオフコース時代のセルフカバー作品に手を加え多数収録。89年2月オフコースを解散後、ソロアーティスト活動を再開。1991年270万枚を超える大ヒット作となった「ラブ・ストーリーは突然に」明治安田生命CM曲でのヒット曲「たしかなこと」「今日もどこかで」やSUBARU ブランドCM タイアップソング「wonderful life」や、5月から全国東宝系にてロードショー公開される映画『64-ロクヨン-前編/後編』の主題歌「風は止んだ」も初CD化。まさに43年に渡る小田和正の創作活動の軌跡をたどった、珠玉の50曲を収録。
【DISC 1】
  1. 1. 僕の贈りもの
  2. 2. 眠れぬ夜
  3. 3. 秋の気配
  4. 4. 夏の終り
  5. 5. 愛を止めないで
  6. 6. さよなら
  7. 7. 生まれ来る子供たちのために
  8. 8. Yes-No
  9. 9. 時に愛は
  10. 10. 心はなれて
  11. 11. 言葉にできない
  12. 12. I LOVE YOU
  13. 13. YES-YES-YES
  14. 14. 緑の日々
  15. 15. たそがれ
  16. 16. 君住む街へ
【DISC 2】
  1. 1. 哀しみを、そのまゝ
  2. 2. between the word & the heart-言葉と心-
  3. 3. 恋は大騒ぎ
  4. 4. ラブ・ストーリーは突然に
  5. 5. Oh! Yeah!
  6. 6. そのままの 君が好き
  7. 7. いつか どこかで
  8. 8. 風と君を待つだけ
  9. 9. 風の坂道
  10. 10. それとも二人
  11. 11. my home town
  12. 12. 真夏の恋
  13. 13. 伝えたいことがあるんだ
  14. 14. 緑の街
  15. 15. woh woh
  16. 16. the flag
  17. 17. キラキラ
【DISC 3】
  1. 1. たしかなこと
  2. 2. 大好きな君に
  3. 3. 明日
  4. 4. 風のようにうたが流れていた
  5. 5. ダイジョウブ
  6. 6. こころ
  7. 7. 今日も どこかで
  8. 8. さよならは 言わない
  9. 9. グッバイ
  10. 10. やさしい雨
  11. 11. 東京の空
  12. 12. その日が来るまで
  13. 13. 愛になる
  14. 14. そんなことより 幸せになろう
  15. 15. やさしい夜
  16. 16. wonderful life
  17. 17. 風は止んだ

小田和正スペシャルサイト:http://www.kazumasaoda.com/

オフィシャルHP:https://www.fareastcafe.co.jp/

PROFILE

小田 和正 (おだ かずまさ)

1947年9月20日生 神奈川県横浜市出身
東北大学工学部、早稲田大学理工学部建築科修士課程卒業 1969年オフコース結成。翌70年プロとして音楽活動を開始、「愛を止めないで」「さよなら」「Yes-No」などのヒット曲を発表する。 82年には日本武道館連続10日間公演を実施、それまでの記録を塗り替えた。日本の音楽シーンに様々な記録を残しつつ、89年2月、東京ドーム公演を最後にオフコース解散。その後、プロデュース活動を経てソロとしてアーティスト活動を再開。91年に発表したシングル「ラブ・ストーリーは突然に」は270万枚を超える大ヒット作となった。また映画やテレビの特別番組など映像監督としても活躍し、これまでに「いつか どこかで」(92年)、「緑の街」(98年)の2本の映画監督作品を発表している。2001年からは毎年12月に「クリスマスの約束」と題した音楽特番を放映(TBS)、好評を博している。 2008年4月5日を皮切りにスタートした全国ツア―「今日もどこかで」は、ドーム4公演を含め、全国で53万人を動員する記録的なものとなった。そして、2011年4月20日6年ぶりのオリジナル・アルバム『どーも』発表。業界紙オリコンにてチャート1位を記録。5作連続、通算9作目のアルバム首位を獲得し、自身の持つアルバム最年長1位記録を更新した。同年5月7日長野BIG HATを皮切りに、5大ドーム8公演を含む全国31会場59公演総動員74万人、1年に及ぶ全国ツアーを実施した。 2013年4月24日に約2年5カ月ぶりのニューシングル「その日が来るまで / やさしい風が吹いたら」の両A面シングル発売。さくらの植樹活動を通じて震災を風化させないように取り組む「東北さくらライブプロジェクト」の活動を支援するコンサートは、今後も継続的に実施してゆく。同時期ベストアルバム「自己ベスト」が発売から足掛け11年で500週目のランクイン(=TOP300入り)を果たす史上初の快挙を成し遂げた。 7月2日9枚目のオリジナル・アルバム『小田日和』リリース。同年25会場50公演の37万人動員の全国ツアーを実施。 2016年ベスト・アルバム『あの日あの時』を発売。また、全国ツアー『明治安田生命Presents KAZUMASA ODA TOUR2016「君住む街へ」』を2016年4月30日(土)の静岡エコパアリーナからスタートさせた。

ツアースケジュール

【明治安田生命Presents 「KAZUMASA ODA TOUR2016 君住む街へ」】 4/30(土)・5/01(日)静岡エコパアリーナ 5/07(土)・5/08(日)四日市ドーム 5/14(土)・5/15(日)別府ビーコンプラザ 5/21(土)・5/22(日)函館アリーナ 5/28(土)・5/29(日)富山市総合体育館 第一アリーナ 6/07(火)・6/08(水)神戸・ワールド記念ホール 6/14(火)・6/15(水)さいたまスーパーアリーナ 6/21(火)・6/22(水)朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター 6/30(木)・7/01(金)東京体育館 7/06(水)・7/07(木)盛岡市アイスアリーナ 7/13(水)・7/14(木)北海道立総合体育センター 北海きたえーる 7/23(土)・7/24(日)さぬき市野外音楽広場テアトロン 7/30(土)・7/31(日)宮城セキスイハイムスーパーアリーナ 8/05(金)・8/06(土)ビックパレットふくしま 8/11(木・祝)・8/12(金)出雲ドーム 8/17(水)・8/18(木)マリンメッセ福岡 8/24(水)・8/25(木)大阪市中央体育館 8/30(火)・8/31(水)名古屋・日本ガイシホール 9/6(火)・9/7(水)大阪城ホール 9/17(土)・9/18(日)広島グリーンアリーナ 9/27(火)・9/28(水)国立代々木競技場第一体育館 10/09(日)・10/10(月・祝)高知県立県民体育館 10/18(火)・10/19(水)横浜アリーナ 10/29(土)・10/30(日)宜野湾海浜公園屋外劇場
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