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ONE OK ROCKが新しいロックバンド像の提示を目指したサウンドで“台風の目”となる──アルバム『Eye of the Storm』レビュー

ONE OK ROCKが新しいロックバンド像の提示を目指したサウンドで“台風の目”となる──アルバム『Eye of the Storm』レビュー

僕らもう30。社会人として責任を持つイメージ

ONE OK ROCKの約2年ぶりのニューアルバム『Eye of the Storm』は、彼らの最高傑作であると同時に新境地の作品となった。パンク、ラウド、ヘヴィといった形容とともに語られてきたONE OK ROCKのギターロック・サウンドは本作で大きな転換点を迎え、彼らはそういった自分たちの定型を大胆に打ち破ろうとしているからだ。

「ONE OK ROCKは、わりと最近のバンドのように世間では捉えられているところもあると思うんですけど、僕らもう30になったんですよね。だから、今の僕らは世間一般的に言われているロックバンドとしての年齢を超えつつあるということは、本作を作るうえでベースにありました。中学を卒業して高校に行くというレベルの成長ではなくて……なんだろう、大学を卒業して社会人として責任を持つ、そういうイメージに近かったんです」(Taka)

『Eye of the Storm』は驚くほどシンプルな演奏を元にしたアルバムだ。ノイジーでヘヴィなギターの音圧や、激しく打ち込まれるドラムやベースの重低音をぎちぎちに詰め込んだ密度で勝負するのではなく、シンプルなギター、ベース、ドラムス、そしてボーカルを広大な空間の中でいかに効果的に配置し、デザインするかを考え抜いた結果として、開放感とダイナミズムが際立つアルバムになっている。また、EDMやトロピカルハウスのようなエレクトロサウンドも積極的に導入し、ゴスペルやR&B風のメロディ、ヒップホップを感じさせるビートメイクも積極的に取り入れている。つまり、旧来型のロックバンド像を強化するよりも、新しいロックバンド像の提示を目指したサウンドになっていると言ってもいいかもしれない。

『35xxxv』でアメリカレコーディングを敢行、そして前作『Ambitions』ではアメリカのレーベルと契約し、バンド活動の照準を世界へと向け始めたONE OK ROCK。ハイブリッドなロックアルバムとなった『Eye of the Storm』は、旧来型のギターロックが絶滅危惧種となっているアメリカで彼らが戦うために、まさに必要不可欠な変化であり、進化だったのだ。

「僕らみたいなバンドは特にそうだと思いますけど、海外のバンドに影響を受けて自分たちの音楽をやっているバンド、少なくとも洋楽の影響を受けてバンド活動をしている人は多いですよね。でも、洋楽的なアプローチの仕方と、洋楽の影響を受けたうえで日本に対してアプローチをする仕方ではまったく別なんだと思うんです。僕らの場合は前作『Ambitions』を作るときにアメリカのレーベルと契約して、アメリカ拠点のバンドとしてリリースしていくっていうことになったとき、前者のほうをやらなきゃいけないと強く感じたんです」(Taka)

シンプルなバンドの演奏をプロダクションで埋めていって、最終的な答えはライヴにあるっていうものに

『Eye of the Storm』の制作は、『Ambitions』のワールドツアーが始まったのとほぼ同じタイミングでスタートしたという。

「でも、あのワールドツアーは1年くらい回っていて、たしかライヴの回数としても100本くらいやったんじゃないかな。その間の本当に3ヵ月とか、どうにか時間を作って。そこから延びて延びてここまできたから。実際の日数でいうと1年もかかっていないんですけど、ツアーをやりながらアルバムを作るとなると、どうしてもそのくらい時間がかかってしまうんですよね」(Taka)

LAとロンドンで行われた『Eye of the Storm』のレコーディングには、当地の著名なプロデューサーや共作者が多数参加し、しかもその多くが今作で初めてタッグを組んだスタッフだったという。ONE OK ROCKの新境地は、そんな未知の出会いとチャレンジによって切り拓かれていったのだ。

「今回はプロデューサーが提案してくる内容がかなりえげつないことが多かったんですよ(笑)。例えば、僕のボーカルについても、ボーカロイドをあえて使うとかもそうですし。コンプをすごく強くかけたりとかね。でも、そんななかで自分の歌のレベルがすごく上がったと感じています。歌いながら、まだまだいけるって感じられたんですよね。そこが自分的には苦しいところなんですけど。今回はエレキ、アコギに限らず、曲中でギターは1本しか使ってないんです。今までは必ず2本は重ねてレコーディングしていたんですけど。でも今回は1本だけ。その1本の音圧が足りなければその同じ1本の音を足すっていう、すごくシンプルです。だからベースももちろんそうですし、ドラムもそうですし、楽器隊はシンプルを通り越えたところまでいっていると思う。でも、それをやりたかったんです。シンプルなバンドの演奏をプロダクションで埋めていって、最終的な答えはライヴにあるっていうものにしたかった」(Taka)

シンプルなバンドアンサンブルと、高度に緻密なプロダクションの融合によって、未だかつてないスケールとダイナミズムを獲得した『Eye of the Storm』。彼らがそんな本作のテーマのひとつとしていたのが、かのクイーンのサウンドメイクだったという。クイーンは70年代から80年代にかけて活躍した世界的ロックバンドで、彼らもまたロックの常識にとらわれないユニークな手法を駆使して曲作りを行っていたバンドだ。ちなみにクイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』はここ日本でも興行収入100億円超えの記録的大ヒットとなっており、観たという人も多いのではないか。

「昨年からクイーンの映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットしていますよね。あの映画を観たらきっと皆さんもわかると思うんだけれど、クイーンのレコーディングのやり方は、ギターを何本も何本も使って演奏して録るというよりも、プロダクションの段階で様々な音を入れたり、ボーカルを重ねてみたり、オペラで歌ったりすることで、曲を膨らませていますよね。僕らも今作ではああいうようなことを自分たちのレコーディングでやりたかったんです」(Taka)

自分たちがいつも“台風の目”であり続けているっていう意識

アルバムタイトルの『Eye of the Storm』は、本作のオープニングナンバーのタイトルでもある。日本語では“台風の目”という意味になるが、彼らはこのタイトルにいかなるバンドの現在地を刻みつけようとしたのだろう。

「タイトルはなかなか決まらなくて大変でした。でもやっぱり、自分たちがいつも“台風の目”であり続けているっていう意識は根底にあったんじゃないかな。自分たちのいる場所はつねに晴れわたっているけれど、周りを嵐に巻き込んでいって、爪痕を残していくっていう」(Taka)

『Eye of the Storm』はヴィヴィッドな色彩が躍動するアルバムのアートワークも含め、解放的でポジティブなヴァイヴを放っているアルバムでもある。ちなみにアートワークについてTakaは「一見するとグチャグチャだけれども、その中にちゃんと芯の通ったメッセージ性が感じられる。何をやるべきかまだはっきり決まっていないけれど、それでも未来がキラキラしているような感じが、今のONE OK ROCKとリンクした」と語っていたが、この“カオスの中の希望”という感覚は、本作の歌詞にも一貫しているものだ。

アルバムからの先行シングルとしてリリースされ、アメリカで撮影されたアジア系アメリカ人の少年の葛藤を描いたミュージックビデオも話題を呼んだ「Stand Out Fit In」も、まさに本作のポジティヴィティを象徴する曲だ。彼らは「Stand Out Fit In」を「はみ出して馴染む」と訳すのに非常に苦労したというが、これは日本人として、マイノリティとしてアメリカに渡った彼らの実感そのものだろうし、“人と違うことを恐れず、同時に自分と違う人を受け入れる”というこの曲に込められた想いは、多くのファンに届く普遍的なメッセージでもある。

「はみ出して馴染む、これはまさにアメリカに行って感じた僕らの実感ですよね。ミュージックビデオもああいう内容にならないとだめだと思ったんです。僕らバンドが出てきて歌っている様子を撮影しても意味がないというか、この曲のメッセージで大事なのはそこではないんですよね。まずは最初に映像ありきで、次に歌詞や曲、そういう順番でこそメッセージがきちんと伝わるんじゃないかって。アジア系アメリカ人の少年を主人公にして、監督もアジア系の人にお願いしたので、彼と僕らでそのモチベーションを共有できましたし。もちろん、僕がアメリカに渡ったときの自分の環境って、(ミュージックビデオの少年のように)小さい頃から向こうで育った人のそれとはまったく違いますよね。正直、僕らは日本でONE OK ROCKとして成功してしまってからアメリカに行ったので、集まってくる人間もそんなに悪いやつはいないんですよ。でも、その中でもやっぱり感じたんです。アジア人に対するアメリカ人の気持ち……僕はそれを差別という言葉では表現したくないんですけど。それは差別っていうか、どんな人種でも持っている感情で、“違い”だと捉えているから。結局人数が多ければ多いほど、違いを提示すればそれはネガティブに感じるし……それって、日本人も日本に入ってきた人たちにやっていることだよなって。だから国や人種じゃなくて最終的には個人の問題なんじゃないかって。アメリカに行って、僕はそれを勇気を持って発言できるようになったんです」(Taka)

『Ambitions』のリリース後には初の4大ドームツアーを成功させ、名実ともに日本のロックシーンの頂点に立ったONE OK ROCKは、100公演にのぼるワールドツアーを経てアメリカでの足場もすでにしっかり固めている。世界へのさらなる飛躍の準備は整った。そんな彼らが『Eye of the Storm』とともに目指す次なる目標は何なのだろう。

「今の時代、素晴らしいアーティストがたくさんいるので、何をもって“一番”とするのか難しいんですけど……自分がこれをやったら一番だと思えることだけはやりきりたい。それを自負したまま堂々としていたい。数字で1位を取ることはおそらくそんなに難しいことじゃないんですけど、自分の中でのこれは誰にも負けない、絶対一番だって思えることを遂行し続けていくのはすごく難しいことだと思っているんで。僕らはそれをアメリカでやりたいんです」(Taka)

取材・文 / 粉川しの

ONE OK ROCK(ワンオクロック)

Taka(vocal)、Toru(guitars)、Ryota(bass)、Tomoya(drums)。 2005年にバンド結成。2007年のデビュー以降、全国ライヴハウスツアーや各地夏フェスを中心に積極的にライヴを行う。これまでに、日本武道館、野外スタジアム公演、大規模な全国アリーナツアーなどを成功させる。2016年には11万人規模を動員する野外ライヴ、2018年には東京ドーム2日間を含む全国ドームツアを開催。日本のみならず海外レーベルと契約、ワールドツアーも成功させるなど世界基準のバンド。2019年2月にアルバム『Eye of the Storm』を全世界で同時リリース。2月より〈EYE OF THE STORM NORTH AMERICAN TOUR 2019〉を敢行中。

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