Tリーグ丸かじり  vol. 11

Column

ニッペの連敗を11で食い止めた“カトミユ”の不思議ワールド

ニッペの連敗を11で食い止めた“カトミユ”の不思議ワールド

Tリーグもいよいよ終盤だ。3月に両国国技館で行われるプレイオフ・ファイナルに進むのは木下アビエル神奈川(以下、KA神奈川)と日本生命レッドエルフに決まり、日本ペイントマレッツ(以下、ニッペM)とトップおとめピンポンズ名古屋は残念ながら最下位争いとなった。特にニッペMは11月17日から実に11連敗という悪夢のような展開だったが、その連敗を鮮やかに止めたのが“カトミユ”こと加藤美優だ。

加藤美優はここまで9戦6勝3敗。そのうち7試合までが3-0勝ちか0-3負けだ。

2月10日のKA神奈川戦。首位を独走するKA神奈川にとってはホーム最終戦で10連勝がかかった試合で、その勝利に酔いしれようと2317人の観客が詰めかけていた。一方のニッペMは11連敗中の長いトンネルの中。開始早々にKA神奈川が2マッチを奪い、勝負あったかに見えたが、なんとここからニッペMが2-2に追いつき、1ゲームだけで試合を決するヴィクトリーマッチになだれ込んだ。そこに登場したのが加藤だった。加藤はKA神奈川のエースで世界ランキング4位の石川佳純を鬼神のごとくのプレーで打ち破り、チームの連敗を食い止めた。しかもその80分前に加藤は石川に0-3で負けているのだ。劇的にもほどがある勝利だった。

2月10日のKA神奈川戦。加藤美優が石川佳純を撃破し、大逆転劇の主役となった。

卓球女子の黄金世代といえば、伊藤美誠、平野美宇、早田ひなの高3トリオが有名だが、小学生時代の学年別(2学年毎)大会のすべての全国タイトルをこの3人が獲ってきたわけではない。1つ上に加藤がいたからだ。加藤は伊藤、平野の優勝を阻むこと実に5度、今も世界ランキング22位、日本選手で6番目につけている天才選手なのだ。

幼いころからそのプレースタイルは独特で、特に台上のボールに対してバックハンドで「チキータ」と逆方向に回転をかける技を自ら開発して「ミユータ」と名付けるなど、その行動も独特だ。ネッシーに対抗して屈斜路湖の未確認動物をクッシーと名付けたようなものだ。さすがに個人名からとった「ミユータ」は定着せず、今は一般的には「逆チキータ」などと呼ばれているが、加藤が使うときだけはいまだに「ミユータ」と評されるという、マスコミをも独特の世界に引きずり込む不思議な存在だ。

サービス精神旺盛な加藤美優。「強さ」だけではない、不思議な魅力を併せ持つ。

Tリーグでの加藤の戦績は極端だ。1ゲームだけで勝敗を決するヴィクトリーマッチを除くと、通算9試合に出場して6勝3敗だが、なんとそのうち7試合までが3-0勝ちまたは0-3負けなのだ。とてつもなく強いとか弱いとかでもないかぎり、卓球の試合でこれは異常である。これを「精神的にムラがある」と見る人がいそうだが、逆に、一切の精神のブレがないからこそデジタルな勝敗になるとも解釈できる。真相は不明だ。あるいは単なる偶然かもしれないが、そんなことにさえ「何か理由あるのでは?」と思わせる不思議な存在が“カトミユ”こと加藤美優なのだ。

取材・文 / 伊藤条太 写真提供 / T.LEAGUE

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著者プロフィール:伊藤条太

卓球コラムニスト。1964年岩手県生まれ。中学1年から卓球を始める。東北大学工学部を経てソニー株式会社にて商品設計に従事。日本一と自負する卓球本収集がきっかけで在職中の2004年から『月刊卓球王国』でコラムの執筆を開始。世界選手権での現地WEBレポート、全日本選手権ダイジェストDVD『ザ・ファイナル』シリーズの監督も務める。NHK『視点・論点』『ごごナマ』、日本テレビ『シューイチ』、TBSラジオ『日曜天国』などメディア出演多数。著書『ようこそ卓球地獄へ』『卓球天国の扉』など。2018年よりフリーとなり、近所の中学生の卓球指導をしながら執筆活動に励む。仙台市在住。

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