Interview

フレデリックの進化の軌跡。広がりと深みが増した『フレデリズム2』で提示する、彼ら流のダンスミュージックの楽しみ方

フレデリックの進化の軌跡。広がりと深みが増した『フレデリズム2』で提示する、彼ら流のダンスミュージックの楽しみ方

約2年4ヵ月ぶりの2ndフルアルバム『フレデリズム2』をリリースするフレデリック。2017年~2018年の活動を一枚に集約した内容で、この2年間で急速に音楽的な進化を遂げた彼らの軌跡が鮮やかに記されている。さらに、初回限定盤にはDVD「フレデリズムツアー特別公演-LIGHT LIVE ♩=120〜140- at SHIBUYA WWW X(2018.11.20)」が付く。現在ツアー〈FREDERHYTHM TOUR 2019〜飄々とイマジネーション〜〉中の彼らだが、2019年はライブ三昧の1年になりそうだ。

取材・文 / 岡本明

バンドとしての視野も広がってきたから出来上がったアルバム

2年4ヵ月ぶりのアルバムですが、シングル曲、EP収録曲、新曲と、2017年~2018年の活動が詰まった内容ですね?

三原健司 前作の『フレデリズム』を作ったときもメジャーデビューしてからのフレデリックの作品というところで、そのときの活動を形にしたものだったんです。今回の『フレデリズム2』も、武ちゃん(高橋 武)が正式メンバーとして入った2017年から今までの軌跡をちゃんと道として示したいと思ったので、こういう形にするのが大事かなと。

2年あると、アルバムに向けてじっくり作りやすかったんじゃないですか?

健司 振り返るといろんな経験をしてきたなと思います。アリーナ(神戸ワールド記念ホール)でのワンマンライヴや、フェスでステージがどんどん上がっていく様だったり、4人になって初のワンマンツアーとかもそうですけど、自分たちが語れるものがたくさん生まれた2年だったなと思います。

引き出しも増えて、バンドとしてのスケール感も大きくなって、それが形になったアルバムですね。

三原康司 そうですね。向上心はリリースのたびに持ち続けていたことですけど、それだけじゃない部分、見えなかったところもちゃんと見えるようになって、バンドとしての視野も広がってきたから出来上がったアルバムだと思います。

見えなかったところというと?

康司 アリーナ公演を終えて感じたことなんですけど、「飄々とエモーション」はアリーナに向けて作った曲でもあって。そのときに楽曲をシンプルに伝えるために、サウンド感もシンプルにしたんです。大きな会場で細かいことをやってもゴチャッとなるから一音一音をきっちり届けようという気持ちで。それも、アリーナクラスでライヴを行っているようなアーティストさんの音楽を聴いてみて、大きな会場で聴かせるためにこういうサウンド感になっているんだって気づいたからなんですけど、自分たちが実際に立ってみて気づけることも多かったですね。そこにちゃんと気づけたから見えてきたものもあるし、だから生まれた楽曲もたくさんありますね。

その都度見えてきたものが積み重なって、今回のアルバムに繋がっていったわけですね。特に1曲目が最新の「LIGHT」で始まるので、アルバムのカラーを強烈に印象付けますね?

康司 あの曲はダンスミュージックにこういうアプローチも面白いよねって出来上がった曲ですね。いろんな視野を持っていないとできない曲なので、それができる可能性はバンドとして素晴らしいと思います。

各々が持っている持ち味をさらにパワーアップ。広がりと深みの両方が増している

長い制作期間だったと思いますけど、レコーディングで印象に残っていることというと?

健司 今までになかった要素を取り入れているときは、新しい挑戦だと思いました。「CLIMAX NUMBER」はビート的にフレデリックにはあるタイプなんですけど、楽曲的に冬をイメージさせるようにしてあって、そういう曲はこれまでになかったですね。新しい試みなので、これを聴いた人にどう感じてもらえるか、ワクワクしながらレコーディングしてました。

この曲はモータウン調ですね?

康司 作っているときからモータウンの曲をいろいろ聴きあさって、すごく考えました。土台みたいな部分は往年のモータウンの要素ですけど、それをどうフレデリックの新しい形として届けるか。あと、「スキライズム」はフレデリックのもともとのスタイルを進化させた曲ですし、「逃避行」は自分の理想とするダンスミュージックの形が出来上がった曲だなと思っています。

「逃避行」は面白いですね。「ばっくれたいのさ」って繰り返される歌詞が耳に残って。

康司 歌詞もサウンドも素晴らしいです!(笑)

赤頭隆児 僕が印象に残っているのは「CLIMAX NUMBER」で。康司くんがグロッケンを叩いているんですけど。ほかの楽器は、これまでにやっていなかったから印象に残ってます。

康司 買いましたね。やりたかったんですよ(笑)。もともとのデモは似た音色を入れていたんですけど、やっぱり生のほうがいいなと思って。気持ち的にも違いましたね。

高橋 武 僕が印象的なのは「逃避行」です。康司くんから、「スキライズム」は今までのフレデリックの軸をパワーアップさせた曲という話がありましたけど、「逃避行」に関しては僕自身のスタイルをパワーアップさせたところもあって。結構細かいリズムを刻んでいるんですけど、そのリズムのもとになっているもののひとつが、前のアルバムに入っている「レプリカパプリカ」に出てくるフレーズだったり。そういうふうに、外から取り入れるより自分の中にあるインプットの中でパワーアップさせる作業が多かった曲だと個人的に思っていて。今回のアルバムに関しても、間口を広げることができたと感じているし、それ以外にも各々が持っている持ち味をさらにパワーアップさせることもできて、広がりと深みの両方が増していると思います。

こだわったのはどういう部分ですか?

高橋 ダンスミュージックの形っていろいろあると思っていて。その中で今回はダンスミュージックのビートの在り方について、いろんなタイプの表現の仕方ができたと思っています。「LIGHT」だと、いわゆる邦楽でいう4つ打ちより洋楽的なアプローチの4つ打ちのビートだったり。「エンドレスメーデー」は、サビがずっとシンコペーションしている。つまり、裏拍で4分音符が鳴っているんですけど、それも解釈によっては4つ打ちです。「スキライズム」は、フィルインをスカっぽくしたり。早い4つ打ちのビートって、べつにギターロックだけの特権ではなくて、様々なジャンルでもあるものなので。ひとえに4つ打ちといってもいろんなタイプがあるように、ダンスミュージックといっても幅広い意味があるので、その中で様々な要素をいろんな曲で提示できているなと思います。

今の話にもありましたけど、「エンドレスメーデー」ってキメがガチガチに入っていますね?

高橋 入ってますね。2サビ明けのキメとか、最高ですね(笑)。しかも、ライヴだとクリックを聴きながら演奏してますけど、サビが始まってから終わるまで、一度もクリックと合わないんですよ(笑)。クリックは表拍の4分音符で鳴っているけど、こちらの演奏はずっとシンコペーションしているので。

やりにくそうですね?(笑)

高橋 楽しいんですけどね(笑)。

二面性の捉え方という視野を変えていけたらなというメッセージがある

康司 今、武くんが話したダンスミュージックの見え方って、いろんな視野を持って音楽に挑み続けている、作り続けているなと思うんです。これから僕らを知ってくれる人もいるわけじゃないですか。そういう人たちにとって、こういう音楽を聴いたときの楽しみ方を増やしてあげられる、そんなアルバムにもなっていると思います。あと、音楽面だけじゃなくて、メッセージでいえば、二面性のある曲が多いです。「LIGHT」は光と影だったり、「かなしいうれしい」は悲しい気持ちと嬉しい気持ち、「スキライズム」は好きと嫌いだったり。たとえば “嫌い”っていう言葉って先入観がある言葉で、ネガティブな印象があると思うんですけど、実際は嫌いという感情が生まれる裏に深い意味があると思っていて。その裏側に気づけることで、それは音楽だけじゃなく、自分たちの性格に対しても変わっていくべきなんじゃないかと思えるし。『フレデリズム2』では二面性の捉え方という視野を変えていけたらなというメッセージがあるので、そこは大事に考えました。

それは今回の一番大きな柱ですね?

康司 そうですね、もっとこうしたら面白くなるのになって、話し合いながらバンド活動をしているので。そういうことがちゃんと外に届いていくことは大切なことだと思います。

歌詞もそうですけど、サウンドにも光と影がありますよね。そこはうまくリンクしている。

康司 そこは関係値がないと難しかったりするので。真逆の言葉じゃないですか、それをどううまくバランス良く伝えるか難しいんですけど、その理解がメンバーとお互いにできて作り上げられたと思います。

ボーカリストとしての幅が広がったなと聴いてもらえると嬉しい

それこそ深みですね。これだけ楽曲の幅が出ると、歌い方もかなり多彩な表現力が求められるんじゃないかと思いますが……。

健司 そうですね。もちろん、2年前に録った曲もありますし、そこから自分の声の幅が広がったりもしています。この2年の経験で自分が感じたのは、ライヴの規模が大きくなってたくさんの人の前でやっていても、聴いてくれる人は一人称だし、ひとりに刺さるもの、自分に刺さるものが欲しいと思ってみんな来てくれている。そこで、多くの人に伝わる歌声というのももちろんありつつ、でもひとりの人がグッとくるような、それこそ等身大の自分が語りかけるような声を作りたいなと思ったんです。それには話し声をそのまま歌にすることが大事だなって、今回のレコーディングを始めてから気づいて。それを意識したのが「夜にロックを聴いてしまったら」「YELLOW」なんです。

「YELLOW」は、たしかに地声の感じに近いですね?

健司 キーを下げてもらったのもあるんですけど、そこを意識し始めてから自分のボーカルの幅が広がったので、声の変化、ボーカリストとしての幅が広がったなと聴いてもらえると嬉しいですね。より客観的になれた自分がいました。

「YELLOW」は新しいですね。こんなふうに抑制の効いた感じはこれまでになかったと思います。

康司 新しい試みでしたね。「LIGHT」と同時期に作ったんですけど、サウンド面でもシンセベースを重ねたり挑戦したので、面白い曲になってます。

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