Review

10年ぶりの衝撃『テイルズ オブ ヴェスペリア』再新作をプレイする理由

10年ぶりの衝撃『テイルズ オブ ヴェスペリア』再新作をプレイする理由

藤島康介氏やいのまたむつみ氏といった人気イラストレーターの起用、テレビアニメ的な演出を随所に盛り込むなどキャラクター性を重視した世界設定や物語、そして格闘ゲームのようなアクション要素を取り入れたバトルシステムなど、独自の作風を確立し20年以上もの長きに渡って多くのファンに愛されてきたRPG『テイルズ オブ』シリーズ。そのなかでも、公式のキャラクター人気投票企画で主人公のユーリが初登場から3連覇して殿堂入りするなど、ファンからも圧倒的な支持を得てきた『テイルズ オブ ヴェスペリア』(以下、オリジナル版『TOV』)が現行機向けのグラフィックに一新され、『テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER』(以下、『TOVR』)として、10年ぶりに帰ってきた。
いまやトレンドに逆行している感さえある大作RPGであり、ましてや10年もまえの作品である『TOVR』。しかし、じつは“10年まえの大作RPG”だからこそ、今楽しく遊べる理由がある。それはいったい何なのか? 全2回の記事でその理由を伝えてみたい。まず前編となる今回は、ゲームの魅力についてお届けしよう。

文 / 屋城 敦


大作ならではの練り込まれた構成や物語

『TOVR』の舞台は、中世と近世が混ざった文明レベルのファンタジー世界である“テルカ・リュミレース”。人々は、古代の遺産である装置“魔導器(ブラスティア)”によって生活を支えられ、おおむね平和な日常が続いていた。そんな世界の最大都市、帝都ザーフィアスの下町で“何でも屋”のような稼業をしながら気ままに暮らしていた青年ユーリ。しかし、下町で起きた“水道魔導器の魔核(コア)ドロボウ事件”をきっかけに彼と世界の運命は大きく動き出すことになる。

▲帝都の下町から物語は始まる。トゥーンシェードで描かれた、温かみのあるグラフィックがすばらしい

物語の流れは、まさに王道。魔核ドロボウの追跡から始まった旅は、各地で人助けをしながら見聞を深め、世界のあり様や自分の生きるべき道を確かめていくうちに、世界を救うものへと少しずつスケールアップしていく。そのよどみない流れは、さすが長年続く人気シリーズならではの安定感である。それらを織り成すキャラクターたちもまた魅力的。パーティーメンバー全員が何らかの“秘密”を抱えながら冒険をしているのだが、それが見え隠れしているのがうまい見せかた。秘密は知りたいものだから、よりそのキャラクターに興味が湧くという仕組みだ(ただし、ユーリの秘密はプレイヤーと同一なので最初からわかっている)。

▲抱えた秘密をなかなか話してくれない仲間たち。その真相が気になって、どんどんストーリーを進めてしまう。まさに作り手の思惑どおりだ

終始一貫してパーティーの雰囲気が明るいのも『TOVR』のいいところ。物語中盤以降は世界の危機が迫るシリアスな展開が訪れるが、随所で仲間のイジりや軽口を挟みながら旅を盛り上げてくれるので、憂鬱な気分になることがない。年齢を重ねてくるとだんだん“鬱展開”への耐性がなくなってくるというが、『TOVR』にはそんな展開などないのでメンタルが弱いという人でも最後まで問題なく楽しめるはずだ。

▲イタズラを仕掛けるユーリと、いつも引っ掛かるカロル。どんな危機的な状況に追い込まれても和気あいあいとした雰囲気を忘れず、まるで学生の部活動のような明るいノリをずっと続けてくれる

▲道中のアクセントとして、条件を満たすと登場人物が2Dイラスト&フルボイスで会話を行う“スキット”が再生できるようになる。コロコロ表情が変わるなど、演出も楽しいのだ。メインストーリーでは登場しなかった設定が出てくることもうれしい

敵キャラクターもそれぞれ超個性的。まさに“悪代官”という形容がピッタリくるラゴウや、おかしな英語混じりのしゃべりかたをするイエガーなど、“悪役の百貨店”のごとくさまざまなタイプが登場し、伸び伸びと活躍している。直接戦うことになる者もおり、そのバトル中にはユーリたちとの会話が展開するといった仕掛けもあって面白い。そのあいだもバトルは続いており、会話に耳を傾けながらというのはなかなか難しいのだが、慣れてくるとかなり多くのセリフが用意されているのがわかるようになる。

▲10年まえはまだ大量のキャラクターが登場するソーシャルゲームもなく、過去シリーズとの被りを気にせず自由にキャラクター作りができた時代。敵も味方も“オリジナル”なのでとても個性的なのだ

ゲームは、道中に訪れた街やダンジョンで発生するイベントをこなしながら進んでいく。イベントは、ダンジョン攻略なども含めてひとつあたりだいたい1~2時間のボリュームになっている。そのなかに、旅の準備や会話シーン、バトル、ギミック解除などさまざまな要素がバランスよく詰めこまれている。別に時間を気にしながらゲームをしているわけではないのだが、区切りのいいところでセーブして時間を確認してみると、どれもいい感じの時間に収まっている。また、初心者にとってはややハードルの高いバトルの難易度も“コンフィグ”でいつでも変えられるなど、プレイ環境への配慮にもぬかりがない。このあたりの細やかな作りも、最初から全体の構成を見据えながら制作する“大作RPG”ならではと言えよう。

▲セーブはフィールド(陸地)上ならいつでもできるほか、ダンジョン内でもボス戦直前など数ヵ所にセーブポイントがあってそこで行うことも可能。セーブポイントには、触れるだけでHPなどが全回復するものもある

間口の広いバトルシステム

物語とともに『TOVR』の魅力を形成する要素となっているのがバトルだ。辛口な評価が多い巷のゲームファンも、『TOVR』のバトルに関してはかなり高い評価が散見される。
『テイルズ オブ』シリーズの伝統である“リニアモーションバトル”と呼ばれるアクション要素を盛り込んだリアルタイムでの戦いは、見た目は格闘ゲームに近く、キャラクターを操作して3Dのフィールドを縦横無尽に走らせながら敵を攻撃し、倒していくというもの。文字にするといかにもアクションゲームが得意な人向けの難しそうなシステムなのだが、ターゲッティングが自動でなされるうえに、攻撃操作自体はボタンを押すだけなのでチュートリアルで基本操作を覚えればそれほど難しくなく、コマンド入力式よりもテンポよく進むので気持ちいい。むしろ、格闘ゲームのように複雑なコマンド入力をしなくても流麗なコンボをつなげられていい気分を味わえるので、“初心者よりはちょっと上手い”くらいのプレイヤーには打ってつけのシステムだ。

▲コンボをつなげるのに必要なボタンを押す順番さえ覚えれば、誰でもコンボをつなげて“強者っぽい”戦いが可能な親切設計なのだ

このシステムの特徴は、操作するキャラクターや使用する術技の組み合わせなどによってさまざまな戦いかたが可能となっていること。オリジナル版『TOV』の制作プロデューサーである樋口義人氏は『ソウルキャリバー』シリーズを手掛けていたことでも知られているが、その影響もあってか『TOVR』はとくに格闘ゲームのような個性が各キャラクターに配されている。パーティーキャラクター9人がかなり異なる性能を持つ(例外としてユーリとフレンはやや近い)うえ、極端に性能が低い“捨てキャラ”もいないのだ。なお、初心者は強キャラの主人公・ユーリを使っていれば問題ないが、空中戦を挑んでの1対1が得意なジュディスや遠近両対応のレイヴンなどを使いこなせるようになると、さらに楽しさが広がる。

▲操作キャラクターは、あるアイテムを使えばバトル中にも切り替えが可能となる。それぞれ多少のクセはあるが、使いこなせるようになると気持ちいい

▲超必殺技である“秘奥義”。フィニッシュに使うと最高の快感が味わえる

さらに、使用する術技や装備するスキル(パラメーターがアップしたり、特定のアクションが解禁される)によっても戦いかたが変化するのも面白い。『TOVR』の巧みなところは、術技もスキルも序盤のうちはほとんど使えなくて、ゲームを進めるごとに少しずつ使えるものが増えていき、最終的にはすさまじいバリエーションにまで到達すること。プレイヤーの習熟度を見切ったノウハウは、やはり長く続くシリーズだからこそなのだろう。

▲ゲーム終盤になると、ほとんどの術技やスキルが使えるようになっているはず。ただし、それぞれ使える枠は限られているので、自分の戦闘スタイルに合わせて使うものをチョイスするのだ

長く愛されてきた大作RPGだからこその随所の細やかな作りや、多くの人が楽しめるようなノウハウが盛り込まれている『TOVR』。不幸にもオリジナル版『TOV』は家庭用ゲーム氷河期に重なってしまっていたために、そのすばらしさを知らずに過ごしてきた人も多いのではないだろうか。10年まえにその魅力の虜になり、Xbox 360版、PlayStation®3版とプレイし、今ふたたびコントローラーが手放せない日々が続いている筆者は、今回そんな人たちに『TOVR』の面白さを知ってもらおうと筆を執らせていただいた。後編では『TOVR』のもうひとつの見どころであるやり込み要素、バトルのオススメコンボなど実戦的な情報も交えて、“10年まえの大作RPGだからこそ”の面白さを伝えたいと思う。

フォトギャラリー

■タイトル:テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER
■メーカー:バンダイナムコエンターテインメント
■対応ハード:PlayStation®4、Nintendo Switch™、Xbox One、PS(Steam®)
■ジャンル:正義を貫き通すRPG
■発売日:発売中(2019年1月11日)
■価格:オフィシャルサイトをご確認ください


『テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER』オフィシャルサイト

©藤島康介
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.