LIVE SHUTTLE  vol. 57

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華原朋美のボイスが会場全体を「幸せオーラ」で包む最大の理由

華原朋美のボイスが会場全体を「幸せオーラ」で包む最大の理由

TOMOMI KAHARA CONCERT TOUR 2016〜君がそばで〜 @NHKホール 2016.8.27

ここ数年ずっと、プロデューサー武部聡志とともに、聴かせる作品を目指してじっくりと制作に取り組んでいる華原朋美。この5月にリリースされた「君がそばで」で、華原のバラード・シンガーとしての力量をあらためて知った人も多いはず。その一方で、日本テレビ『PON!』の月曜レギュラーを務めるなど、バラエティ番組でも相変わらず独特なノリで視聴者を楽しませてくれている。20周年を迎えた昨年からは、TOKYO MXテレビ『音ポケPOPS』のMCとして、話題のアーティストを紹介する役目も。今なお誰からも「朋ちゃん」と呼ばれる妹気質の存在感を持ちながら、過去の経験を奥行きにして、シンガーとして唯一無二の熟成の仕方をしている。そんな華原の最新の姿に触れたくて、8月27日、『TOMOMI KAHARA CONCERT TOUR 2016〜君がそばで〜』の東京公演@NHKホールに足を運んだ。
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会場につるされたレトロなシャンデリア、ステージ中央の階段からフロントにかけて敷きつめられた赤い絨毯。ちょっとクラシカルな雰囲気だ。そこにフルコンのピアノとストリングス・カルテットを含めたミュージシャンが静かにスタンバイ。まったく想像してなかった生の音で始まったのは、これまたまったく想像してなかった「summer visit」だった。階段から、お姫様のようなドレス姿の華原が登場すると、会場は一気に総立ちに。2ミリオンを越した1stアルバム『LOVE BRACE』に収録されたこの曲は、シングルにはならなかったが、当時本人が「思い出がいっぱいつまった曲」と語っていた。それをド頭に持ってきて、しかも観客と一緒にワイパーしながら晴ればれと歌う姿を見て、ああ、朋ちゃんはもう本当に大丈夫なんだな! とうれしくなった。 続いて、これまた90年代の大ヒット曲「Hate tell a lie」。ラップ調のこの曲が実は個人的に大好きだったので、久しぶりに聴けて思わず体が動いてしまった。たぶん観客も同じ気持ちだっただろう。昔よりずっと太くなった声で、抜群のリズムのキレで奏でられるメロディアス・ラップは、めちゃくちゃ迫力がある。サポート陣のアンサンブルも素晴らしく、生のコーラスが加わるのも素敵だった。さらにストリングルの効いたプログレのようなサウンドで「たのしくたのしくやさしくね」。どれも本当に華原にしか歌えない、華原のために書かれた曲だなと思う。気づけば3曲揃ってあの頃のゴールデンヒッツ。20年経っても変わらない可愛さで、でも、けっして懐メロとしてではなく、進化した今のカタチで表現できてるのは、やはりここ数年のたゆまぬ努力があったからだろう。
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「朋ちゃーん!」という叫び声があちこちから起こると、「はーい」と笑顔で応える華原。「今日が本当に楽しみで、昨日は10時間くらい寝てきました!」とお茶目なハズしも見せつつ、「短い時間かもしれないし、長い時間かもしれないけど、最後までよろしくお願いします」と挨拶。何も飾らないそのままの言葉に、こちらの気持ちもほころんだ。 ls_tomomi_kahara1380 ls_tomomi_kahara9900 序盤早くもゲストで登場したのは、藤澤ノリマサ。ふたりはこれまでも共演する機会があったようで、やりとりがなんだか姉弟のような雰囲気だ。藤澤からの意外なツッコミみに、「ノリちゃん、どうしたの? 今日は芸能レポーターみたい」と、華原がたじたじとなる場面では、会場からクスクス笑いがもれた。コラボしてくれたのは、あのレ・ミゼラブルの「夢やぶれて-I DREAMED A DREAM-」。オペラ唱法も取り入れた藤澤のダイナミックな歌声と、上へも下へもハーモニーを自在に行き来するテクニックが、華原の鬼気迫る表現力と合体した瞬間、この曲がまったく新たな魅力をまとい始めた。個性派シンガー同士の強力なデュエットという意味で、非常に稀有な光景だったと思う。 ls_tomomi_kahara1551 ls_tomomi_kahara1582 中盤、ブーツとビジューがあしらわれたチェックのコート、そして長いポニーテールという颯爽とした秋モードになった華原は、再び90年代のアガるナンバーを披露。そして、二組目のゲスト、山猿を呼び込んだ。プライベートでも仲のいいふたりならではの軽妙なトークをしばし展開したあと、山猿のアルバム『あいことば3』に収録されたコラボ曲「Happy days feat.華原朋美」のアンサーソング「もっとHappy Days」を初披露。会場にはめいっぱいフレンドリーで明るいエネルギーがあふれた。そのムードに乗って、ラストスパートでは華原が客席に降りて、観客とハイタッチしながら歌う場面も。「みんなの朋ちゃん」だからこそ、観客はその時間をひとつの演出として整然と共有し、楽しんでいる。華原とファンのいい信頼関係を垣間見た気がした。 ls_tomomi_kahara1299 本編ラストは、最新曲「君がそばで」。今回のツアーで重要な役どころを果たしているピアノの宗本康兵が、華原のために書いた温かいバラードだ。ポルノグラフィティなども手がける宗本とは、もう三度ほどツアーを一緒に回ってきている。そうやって積み上げていくなかで、ファン同様、ミュージシャンともまた、しっかりと信頼関係を築き上げられているんだろう。 昨年、20周年のタイミングで久しぶりにインタビューをする機会を得た折り、華原は、それこそ「summer visit」など思い出のたくさん詰まった曲を歌うとき、心の置き場をどうしていいかわからない時期があった、と、自分を俯瞰でとらえつつ率直に語ってくれた。デビュー当時から取材させてもらっていた身としては、それはかなりせつない話でもあった。でも今は、冒頭で書いたように、華原は晴ればれとあの頃の曲と向き合うことができているのだと思う。自分にとっても、ファンにとっても愛すべき曲を、シンガーとして伝えることの幸せを味わえているのではないだろうか。デビュー当時のヒット曲を歌えば、「いつまでも過去にしがみついている」と言う人もいる。でも、そうではないのだ。歌い手として恵まれたその曲たちを屈託なく届けることこそが、華原が未来に向かうということだったんじゃないだろうか。これからも、今の華原朋美として、あの頃の曲を堂々と歌っていってほしい。そう心から願った夜だった。

文 / 藤井美保 撮影 / HAJIME

プロフィール

華原朋美

1995年「keep yourself alive」でデビュー。以後「I BELIEVE」「I’m proud」等ヒット曲をリリース。歌手活動以外にもCM・ドラマ・バラエティー等で活躍するも2007年活動休止。2012年12月、5年ぶりに芸能活動を再開した。2013年4月に約7年振りとなるシングル「夢やぶれて-I DREAMED A DREAM-」を発売。同年6月には武部聡志氏プロデュースによる自身の代表曲をセルフカバーしたアルバム「DREAM-Self Cover Best-」発売。2014年に発売したカバー・アルバム「MEMORIES」シリーズ2作品では、2作連続オリコンランキングTOP10入り。自身の生き様をカバー曲で表現したことが評価され、第56回日本レコード大賞「企画賞」を受賞。2015年デビュー20周年を迎え、約9年振りのオリジナル・シングルを発売。2016年、新たなキャリアを踏み出し、より洗練されたその歌声で多くのファンを魅了し続けている。

オフィシャルホームページ:http://sp.tomomikahara.com

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