横川良明の演劇コラム「本日は休演日」  vol. 13

Column

推しの出ている『エーステ』は最高。

推しの出ている『エーステ』は最高。
今月の1本:MANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN & WINTER 2019~

ライター・横川良明がふれた作品の中から、心に残った1本をチョイス。独断と偏見に基づき、作品の魅力を解説するこのコーナー。今月はMANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN & WINTER 2019~をピックアップ。観る人すべてを幸せにする本作の魅力を、脳から漏れ出るドーパミンと共にお届けします。

文 / 横川良明

感想は「アカン…もうアカン…」のひと言です

MANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN & WINTER 2019~が絶賛上演中です。まだまだ千秋楽まで日がありますし、楽しみにされている読者の方も多いでしょうから、内容については一切ふれません。

だから今回は、私が観たMANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN & WINTER 2019~が最高だった件について、つらつらと書いてみたいと思います。みんなー、最後までついてきてー。

昨年、2.5次元シーンに颯爽と登場したMANKAI STAGE『A3!』。今さら説明するまでもないかもしれませんが、原作はイケメン役者育成ゲーム『A3!』。プレイヤーが“総監督”となって、まだ“つぼみ”である役者たちを育て、借金まみれの弱小劇団・MANKAIカンパニーを立て直す、というのが大まかなストーリーです。

MANKAIカンパニーは春組・夏組・秋組・冬組という4つの組に分かれており、前回の~SPRING & SUMMER 2018~では春組・夏組が旗揚げ公演を成功させるまでのストーリーを舞台化。そして今回の~AUTUMN & WINTER 2019~では、残る秋組・冬組にスポットが当てられました。

ひとときの宴のような感動体験を多くの人に共感していただけるよう言語化するのが自分の役目だと心得た上で、今回の~AUTUMN & WINTER 2019~の感想をお伝えするなら「アカン…もうアカン…」のひと言です。

何がそんなに「アカン」のか。

それは、ええ、推しが出ているからです。

『エーステ』に出てくる推しは、完全にチートアイテム

いやー、推しが出てる『エーステ』を完全にナメてた。もう破壊力、半端ないって。ちょっと幸せすぎて足腰が立たなくなる。

基本、推しが出ている舞台というのは、それだけでリッツ・カールトンのスイートぐらいの価値があるのですが、『エーステ』の幸福感は格別。こんな贅沢を味わえるのは、叶姉妹か僕かというレベルです。

なぜそんなに『エーステ』に出ている推しが最高なのかと言うと、だって『エーステ』はその人の持っている魅力の引き出しをこれでもかってぐらい開けてくるから。たぶん空き巣でもそんなに引き出しは開けないってぐらい開けてくる。

推しが舞台に登場した瞬間、頭の中が核分裂状態。跳んだり跳ねたり、一挙手一投足が可愛すぎて、あまりのキュートさに「ちょっと見ない間にまた腕を上げやがって…」って少年漫画に出てくるニヒルなライバルキャラみたいな台詞が出てくる。

今回、推しはわりと元気系のキャラクターだったので、リアクションもいろいろ多め。台詞がないときも他の人の芝居に細かく反応するところとかいちいち可愛すぎて、どういう塩基配列にしたらこんな愛らしい生き物が誕生するのか、国立遺伝学研究所あたりにサンプルとして提出してほしい。

不思議なもので、推しが舞台上にいるというだけで、幸福度指数が上がり続けるんですよね。メーターがピピピッて上がってる音が、ちゃんと耳の奥の方から聞こえてくる。台詞を発するだけで愛しいと思うし、「今回の役、すごい合ってる。良かったね…」ってむせぶ僕は、完全に『フラガール』のジャケットの松雪泰子みたいな顔してる。観てるだけで体温急上昇。今サーモグラフィーをとられたら確実に全身真っ赤です。

ただでさえ夢見心地にさせてくれる『エーステ』に推しというチートアイテムが投入されたら、そこはもう地上の楽園。パラオよりタヒチより日本青年館ホールです。

この人を推してきて良かったと感慨に耽る外苑前

じゃあ可愛けりゃ内容は何でもいいのかよというと、まったくそんなことはありません。

“役者育成”という看板通り、まだ“つぼみ”の役者たちが満開の花を咲かせるプロセスこそが『エーステ』の見どころ。当然、その成長を描くには、苦悩や葛藤だったり、仲間との衝突だったり、過去との決別だったり、心の陰影まで鮮やかに切り取る必要があるわけで。

僭越ながら、私の推しもストーリー的な山場を担うポジションでして。抱えていた秘密や自分の弱さを吐露するシーンは、こっちの胸まで押し潰されそうに。

もともとよく声は通る方なのですが、しゃにむに感情を乗せても決して聞き取りにくくならず、ちゃんとクリアに発語できるスキルは、以前に比べても一段と磨かれており、その感動はこれが平安時代なら和歌でも詠み上げる勢い。あ~、この人を推してきて良かったと、もはや誇らしい気持ちすら覚えながら家路に着きました。

うちの推し最高×あなたの推しも最高×みんな最高=世界は幸せ

で、ここからがいちばん伝えたいことなんですけど、『エーステ』のいいなと思うところは、そういう推しが観客一人ひとりにいて、その全員がそれぞれに幸せな気持ちになれるところなのです。

推しを持つ者としていちばんやってはいけないこと。それは、自分の推しを褒めたいあまりに、他の人を貶めるような言い方をすることです。これはダメ。ともすると、自分の推しの株まで下げることになるし、誰も幸せになれません。

MANKAIカンパニーは4つの組に分かれているので、それこそ組ごとに比べ合いや競い合いが発生してもおかしくはないところなのですが、不思議とそういうギスギスした気配は一切なし。

春には春の、夏には夏の、秋には秋の、冬には冬の良さがある。そうみんながわかっているのです。だから、季節を愛でるように、ただ自分の推しの組を応援する。ザ・シンプル。それゆえに、愛がストロング。

各キャラクターに向けられた愛情も等しく平和的です。みんな違って、みんないい。

うちの推し最高×あなたの推しも最高×みんな最高=世界は幸せ

みたいな強力無比な方程式がこの世界を築いている。だからでしょうか。なんだか劇場全体がとっても温かいのです。いいよね、誰も貶め合わない世界って。そして、その牧歌的な空気を形成する一員に自分がなれていることに、とってもハッピーな気持ちになるのです。

ここまで書いて気づきました。どうして『エーステ』に出ている推しは、いつも以上にキラキラ輝いて見えるのか。

それは、観客一人ひとりが自分の大好きなキャラクターだったり俳優だったりを、開花前のつぼみを見守るような気持ちで一心に見つめている、その視線から溢れ出る愛と熱が、役者たちの放つ輝きをより眩しいものにしているから。あの至福のネバーランドは、たくさんの人たちの推しに向けられた愛情が乱反射して出来上がっていたのです。だからもうキラキラが止まらない。

ということで、普段から『エーステ』は最高ですが、推しが出ている『エーステ』は最高級に最高でした。現場からは以上です。

MANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN & WINTER 2019~

東京:019年1月31日(木)~2月11日(月・祝)日本青年館ホール
山口:2019年2月23日(土)~2月24日(日)下関市民会館 大ホール
大阪:2019年2月27日(水)~3月3日(日)梅田芸術劇場 メインホール
東京凱旋:2019年3月15日(金)~3月24日(日)天王洲 銀河劇場

原作:イケメン役者育成ゲーム『A3!(エースリー)』
演出:松崎史也
脚本:亀田真二郎(東京パチプロデュース)
音楽:Yu(vague)
振付:梅棒
メインテーマ:「The Show Must Go On!」作詞・作曲・編曲 大石昌良

キャスト
【秋組】
摂津万里 :水江建太
兵頭十座 :中村太郎
七尾太一 :赤澤遼太郎
伏見 臣  :稲垣成弥
古市左京 :藤田 玲

【冬組】
月岡 紬  :荒牧慶彦
高遠 丞  :北園 涼
御影 密  :植田圭輔
有栖川 誉 :田中涼星
雪白 東  :上田堪大

【春組】
皆木 綴  :前川優希
茅ヶ崎 至 :立石俊樹
【夏組】
向坂 椋  :野口 準
斑鳩三角 :本田礼生

鹿島雄三 :滝口幸広
松川伊助 :田口 涼
迫田ケン :田内季宇
飛鳥晴翔 :伊崎龍次郎

神木坂レニ:河合龍之介

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