LIVE SHUTTLE  vol. 58

Report

山口洋が同朋ミュージシャンと被災地にエール。愛あるR&Rが溢れる夜

山口洋が同朋ミュージシャンと被災地にエール。愛あるR&Rが溢れる夜

MY LIFE IS MY MESSAGE for 九州 ▶POWER TO THE PEOPLE 山口洋・仲井戸“CHABO”麗市・矢井田瞳 featuring古市コータロー(THE COLLECTORS) @東京キネマ倶楽部 2016.8.27

東日本大震災直後の2011年4月からこれまで、福島県相馬市、南相馬市の人たちと共に、街の復興を目的に、音楽が描く希望の風景を届け続けてきた山口洋を中心とするMY LIFE IS MY MESSAGE。 今年は4月に起きた熊本地震に対し、これまで力をもらってきた福島の人々が九州へ力を送りたいという思いのもと、MY LIFE IS MY MESSAGE for 九州▶POWER TO THE PEOPLEと題されたライブが東京キネマ倶楽部で2日間に渡って開催された。 仲井戸“CAHBO”麗市、矢井田瞳というお馴染みのメンバーに加え、1日目はTHE COLLECTORSの古市コータローが登場。 それぞれのミュージシャンの情熱や志、スピリット、そしてリスペクトが、音楽の中に溢れ、圧倒的な力でオーディエンスを包み込んでいた1日目の様子をレポートする。

取材・文 / 佐伯 明 撮影 / 三浦麻旅子


「音楽に恩返しができるとしたら、それはいったいどういうことだろうか?」と思う。 この場合の問題設定として「音楽で誰かに恩返しをする」と考えれば、答えはさほどむずかしくはない。チャリティという形をとって、地域なり人々に還元をすればいいからだ。しかし“音楽に恩返し”となると、10代の頃から心酔愛聴し僕らの自我を決定づけた音楽の内実と力を、もう一度洗い直し、その内実と力を表現する必要があるから、である。 2011年の東日本大震災の直後から、福島県相馬市、南相馬市の人々と共に街の復興を目的として始められた有志の集団であるMY LIFE IS MY MESSAGE(以下、MLIMM)は、山口洋を中心とし、仲井戸“CHABO“麗市をはじめとする多くのミュージシャンが参加している。 この2人の音楽と人柄&作品をある程度以上知る者であれば、冒頭に記した“音楽に恩返しをすること”に対し、沈思黙考する2人であることを察知できるだろう。そう、“時に逡巡しながらも考えて行動する”ということができる(僕が考えるに)この上ない2人だ。 理由としては、2人の足跡に刻まれた数々の作品=楽曲群の多くが、音楽の内実と力を洗い直し、自ら表現したものであるからだ。言い方を換えれば、山口さんにしろ、CHABOさんにしろ、かつて心酔愛聴した音楽を咀嚼する能力が、まず非常に高い。それは、オマージュ(敬意)というものを底辺にしつつ、愛聴した音楽がどこに向かおうとし、何を欲していたのかを読み取る能力が高いのである。 したがって、単純発想としてのチャリティ〜それは確かに尊いものだが〜ではなく、最終的にチャリティとして機能する音楽活動だとしても、そこまでに至る過程において、音楽の内実と力を解析し咀嚼した、言わば“頭脳と心の綾的時間軸”が感じ取れるのである。 今年のMLIMMは、“for 九州 POWER TO THE PEOPLE”と名付けられていることからもわかるように、九州をふるさとに持つ山口さんが、これまで相馬に向けてきた意識を、震災にあった熊本に対し差し向けたライブ・イベントと言っていいだろう。実際のところ、福島の人たちも、今年は(熊本を含む)九州の人に気持ちを届けたいと言ってくれたという。 8月27日の1日目はfeaturing:古市コータロー(THE COLLECTORS)と題されてスタート。まずは、山口さんが前口上を述べた。 彼は、いくぶん緊張しながらも「今日ステージに登場してくれるミュージシャンは皆、固有の音を奏でてくれる人たち。なので、ステージと客席の間に希望が見える風景を描いてください、とだけお願いしました」なる発言に、妙に納得した。 2O3C8732s_MLMM0826 そのままトップバッターは、山口洋。「TOKYO CITY HIERARCHY」をアコースティック・ギター1本で弾き語る。 弾き語りは、周知の如く、歌と楽器がプレイヤーによって直結しているため、「どう歌いたいか?」と「どう弾きたいか?」がほとんど過不足なく現れる場面だ。山口さんのギター・バッキングには、独特のハネ感=スウィング感があり、一方でギター・ソロになるとリズムの溜めや伸びというものを出す。その落差=コントラストが、絵画的かつ映像的な“音楽のシーン”を作っていくのだということがわかってくる。 MLIMMは、震災を受けてエフエム熊本にてラジオ番組を始めるステイトメントも客席に伝え、続く、盲目のスキーヤーにインスパイアされた楽曲「BLIND PILOT」へと入っていった。直前のアコースティック・ギターのバッキングをループさせながらのディストーションの効いた端正なソロは、見事であった。 2O3C8744s_MLMM0826 「彼女は、戦友・同志みたいなもの」と紹介された矢井田瞳がステージに上がり、コーラスが重なる「雨の後、路は輝く」(by HEATWAVE)を披露した。矢井田さんのボーカルには、以前からオリエンタルなテイストを感じていたのだが、それがプラスされると「雨の後、路は輝く」がクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング@ロサンゼルスから、御堂筋@大阪に変わっていくのだなと思えた。 2O3C8832s_MLMM0826 矢井田さん単独となってからは、カラオケでの年季を感じさせたカヴァー「津軽海峡冬景色」(by 石川さゆり)と「地平線と君と僕」が、彼女のソングライターとシンガーの境界を感じさせて、興味深かった。 2O3C8902s_MLMM0826 「私の大好きな曲を思い切り歌いたいと思います」とMCして歌われた「津軽海峡冬景色」は、彼女ならではの、少し鼻にかかった声と8分の6拍子、いわゆる3連を強調するバッキングに、デビュー16年目を迎えた矢井田さんの蓄積を見た。 6E3A9499s_MLMM0826 「今までアーティスト写真を見て“怖い人かなー”と思っていたんですが、すごい優しい人でした」と矢井田さんに紹介された古市コータロー。 2O3C9070s_MLMM0826 シャッフル・リズムの「いつかきっと」が1曲目になったセットリストは、古市さんのセンチメンタリズムをつかみ上げるようなものになっていく。 「モノクロームガール」のあとに、客席から「力抜いてー」と声が掛かる。僕の目に彼は緊張しているようには見えなかったけれど、長年のファンはいつもと違う古市さんの雰囲気を感じ取っていたのかもしれない。 シーケンスとともに歌った「のらりくらり」、バラッドの「Baby Moon」と、アコースティック・ギターを絵筆のように使い、“楽曲を着色する”方法が取られていた。 2O3C9126s_MLMM0826 古市さんがCHABOさんをステージに呼び込み、RCサクセション時代のCHABOさんのギタープレイを、古市さんが熟知しているということで選ばれたカヴァー曲は「エネルギー Oh エネルギー」。ホンキートンク調ピアノで表現してもいい部分を、ギターで表現するのは難易度の高い技だが、2人でやりきった。 6E3A9512s_MLMM08262O3C9285s_MLMM0826 CHABOさん1人のステージになり、「今日はカヴァーを演りたい気分なんだ」とMCされ、歌い出したのは、戦後日本のスタンダード・ナンバーに匹敵する「夏の思い出」。 低音弦のギター・バッキングによるこの古い曲には、CHABOさんの持つ知性、つまりは、観念の産物である永遠の夏に向けた飽くなき憧れと、それを表そうとする絶えざる注力が満ちあふれていた。続く、リトル・スティービーワンダー時代の名曲「A Place In the Sun」の日本語カヴァーも、全く同様だった。 ここまで書いてくると、読者諸氏にも大方察しが付いていることだろう。 そう「音楽に恩返しする」には、知性と注力した歴史が、両輪になって、初めてできるものなのである。CHABOさんのライブ・パフォーマンスは、そのことを指し示しており、結果、MLIMMの底辺思想めいたものを形成していることは、ほぼ間違いない。 2O3C9391s_MLMM0826 山口さんをステージに呼び込んでの「R&R Tonight」は、もちろんCHABOさんのオリジナル楽曲だけれども、3曲のカヴァー曲を“踏まえて” この曲に到達すると、とてつもない音楽の力を感じずにはいられないだろう。歌い出しに、山口さんのバッキングを尊重するようにCHABOさんは、自分のギターをミュート=消音して歌い始めるところに、何を感じたか? それは、連帯のようなものである。 6E3A9543s_MLMM08262O3C9472s_MLMM0826 アンコールでは、出演者全員でセッション的パフォーマンスを披露。矢井田さんのヒット曲「My Sweet Darlin’」から、山口さんの名曲「満月の夕」まで、東京キネマ倶楽部に居合わせた人すべてが、つかの間の幸福感を感じるだけではなく、その幸福感をどんなふうに(被災した人々を含め)音楽の最終的聴き手に届けるべきなのか? はたしてそれができるのか? 皆で感じ考える現場であった。そして、おそらくほぼ間違いなくMLIMMは、今後も続いていくことだろう。 2O3C9652s_MLMM08266E3A9730s_MLMM0826

MY LIFE IS MY MESSAGE for 九州▶POWER TO THE PEOPLE 2016.8.27セットリスト

01 TOKYO CITY HIERARCHY <山口洋> 02 BLIND PILOT <山口洋> 03 雨の後、路は輝く <山口洋 with 矢井田瞳> 04 Ring my bell <矢井田瞳 with 山口洋> 05 マワルソラ <矢井田瞳> 06 津軽海峡冬景色 <矢井田瞳> 07 地平線と君と僕 <矢井田瞳> 08 Circle <矢井田瞳> 09 いつかきっと <古市コータロー> 10 モノクロームガール <古市コータロー> 11 青い風のバラード <古市コータロー> 12 のらりくらり <古市コータロー>
13 Baby Moon <古市コータロー> 14 Heartbreaker <古市コータロー> 15 Mountain Top <古市コータロー> 16 エネルギー Oh エネルギー <仲井戸麗市 with 古市コータロー> 17 夏の思い出 <仲井戸麗市> 18 A Place In the Sun <仲井戸麗市> 19 Ol’ 55 <仲井戸麗市> 20 R&R Tonight <仲井戸麗市 with 山口洋> アンコールセッション <ALL CAST> 01 My Sweet Darlin’ 02 それだけ 03 上を向いて歩こう 04 満月の夕

【MY LIFE IS MY MESSAGE】

東日本大震災直後の2011年4月に福島県相馬市、南相馬市の人たちとともに、街の復興を目的として立ち上げた有志の集まり。 MUSIC ACTIONとして、2011年6月より、山口洋を中心に、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳ら、趣旨に賛同する多くのミュージシャンと共に、数多くのライブを行ってきた。山口洋と仲井戸“CHABO”麗市による「MY LIFE IS MY MESSAGE TOUR」は今年で4年目。全国各地のフェスにもミュージシャン有志と出演している。 今年は、4月に起きた熊本地震を支援するためのライブを熊本で行ったり、「MY LIFE IS MY MESSAGE for 九州▶POWER TO THE PEOPLE」を開催。 9月25日から月に一度、「音楽」を通じて、熊本と福島、そして全国を繋ぐラジオ番組「MY LIFE IS MY MESSAGE Radio」がエフエム熊本にてスタート。FMK(エフエム熊本)77.4MHz 毎月第4日曜日 夜8:00~8:55 DJ 山口洋(HEATWAVE) ※配信エリア外の方は、radiko.jpプレミアムのエリアフリー聴取で聴くことができます(有料サービス)。

MY LIFE IS MY MESSAGE公式サイト http://mylifeismymessage.jp/

ライブ情報

山口洋

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016 9月10日(土)、11日(日) 岐阜県中津川市 中津川公園内特設ステージ ※9月11日(土)のLIVE FOR NIPPON 〜Pray For 熊本〜での出演となります。

山口洋 on the road again “Blind Pilot” 9月18日(日) 静岡・UHU 10月21日(金) 奈良・ビバリーヒルズ 10月22日(土) 岡山・Blue Blues 10月24日(月) 広島・音楽喫茶 ヲルガン座 10月25日(火) 小倉・GALLERY SOAP 10月27日(木) 長崎・BAY SAIDE BAR R-10 11月13日(日)  金沢・メロメロポッチ

うたのありか2016ツアー リクオさんと中川敬 (ソウル・フラワー・ユニオン)さんのツアーに、ゲスト出演 11月12日(土) 京都・磔磔

オフィシャルサイト http://no-regrets.jp/index.html


仲井戸“CHABO“麗市

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016 9月10日(土)、11日(日) 岐阜県中津川市 中津川公園内特設ステージ ※9月10日(土)は麗蘭、9月11日(日)は浜崎貴司 GACHI SOLAR SPECIAL(浜崎貴司、仲井戸“CHABO“麗市、佐藤竹善(Sing Like Talking)、PES(RIP SLYME)、山田将司(THE BACK HORN))での出演となります 9月24日(土)、 25日(日) 旧大名小学校体育館(福岡市中央区) ※9月24日(土)の出演になります。

なつかしい×あたらしい なにわブルースフェスティバル 9月18日(日)大阪・なんばHatch 出演者(五十音順):有山じゅんじ、上田正樹、内田勘太郎、大久保初夏、OSAKA ROOTS BAND、金子マリ、くいだおれ太郎、香西かおり、SAKISHIMA meeting(新良幸人/下地勇)、ザ・たこさん、清水興、仲井戸麗市、山岸潤史

ソウル・フラワー・ユニオン 続・ニューエスト・モデル結成30周年ツアー ゲスト:仲井戸麗市 9月24日(土)下北沢 GARDEN

麗蘭:Lay-Run 25th Anniversary Year「愛があれば歳の差なんて」 10月9日(日)東京・AKASAKA BLITZ 10月21日(金)新潟・LOTS 10月27日(木)名古屋・DIAMOND HALL 10月29日(土) 大阪・Billboard Live OSAKA

旅に出る二人TOUR 仲井戸“CHABO“麗市with早川岳晴 10月31日(月)熊本・レストラン&バー CIB ※5月17日からの振替公演です

SUPER SESSION 2016 Presented by Amrita Custom Guitars 11月10日(木)東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE 出演:徳武弘文 with 鉱石ラヂヲ/仲井戸“CHABO“麗市/いまみちともたか(ヒトサライ)/島袋優(BEGIN)/岡本定義(COIL)/下地イサム/阿部真央/村上紗由里

オフィシャルサイト http://www.up-down.com/020chabo/index0.html


矢井田瞳

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016 9月10日(土)、11日(日)岐阜県中津川市 中津川公園内特設ステージ ※9月11日(日)「インディーズ電力 大取締役会」の一日社長として出演します。

豊中市制施行80周年記念式典 10月15日(土) 大阪府豊中市立文化芸術センター 第一部 13 時~14 時 45 分 第二部 15 時30分~17 時30分 ※第二部へ出演します。

矢井田瞳 弾き語りLIVE「ヤイダヒトリ」 12月3日(土) 東京・日本橋三井ホール

オフィシャルサイト https://yaiko.net/


古市コータロー(THE COLLECTORS)

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016 09月11(日) 岐阜県中津川市 中津川公園内特設ステージ ※9月10日(土)はTHE King ALL STARS、9月11日(日)はTHE COLLECTORSでの出演となります。

THE COLLECTORS 30th Anniversary Tour 10月1日(土)  熊谷・HEAVEN’S ROCK Kumagaya VJ-1 10月7日(金)  周南・ LIVE rise 10月8日(土)  熊本・B.9 V1 10月10日(月)祝  岡山・IMAGE 10月15日(土)  郡山・CLUB#9 10月16日(日)  盛岡・CLUB CHANGE WAVE 10月22日(土)  大阪城野外音楽堂 11月3日(木)祝  福井・CHOP 11月5日(土)  岐阜・ants 11月6日(日)  浜松・FORCE 11月13日(日)  柏・ThumbUp 11月20日(日)  水戸・LIGHT HOUSE 11月22日(火)  札幌・cube garden

THE COLLECTORS “MARCH OF THE MODS” 30th Anniversary 2017年3月1日(水) 日本武道館

オフィシャルサイト http://thecollectors.jp/

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