Interview

山崎育三郎がミュージカル『プリシラ』で伝えたい、“今”を生きる大切さ

山崎育三郎がミュージカル『プリシラ』で伝えたい、“今”を生きる大切さ

僕の気持ちをお客様に届けるということだけ

ところで、山崎さんはどうしてそんなに多作で、他分野でも活躍される行動力があるのかというのが疑問なんですが。

ストレートプレイやミュージカル、ドラマ、映画、声優、歌手といろいろなことに挑戦させていただいていますが、僕の中の感覚はすべて一緒なんです。劇場で応援してくださる方、テレビの視聴者の方、コンサートに足を運んでくださる方、どのジャンルにも僕の気持ちを届けたい対象がいて、どういう僕がいればお客様に楽しんでもらえるかをいつも考えています。たまたま僕のデビューはミュージカルだったので、歌、ダンス、お芝居、3つを同時にやらなくてはいけなかったから、結果としてドラマや映画、歌のフィールドに繋がったのかもしれませんね。ですが同時に、バラバラの仕事がミュージカルにフィードバックされたときに、僕を成長させてくれていることに気づいたりします。

私の中では、歌手としての山崎さんと、お芝居をする山崎さんは、まったく別人に見えることがあります。

どちらも一緒ですよ(笑)。ただ、先ほどもお話ししたように、大切なのは僕の気持ちをお客様に届けることなんです。ライヴで歌っているときは、僕は客席に座っているひとりひとりに想いを届けたくなります。2,000人いても、たったひとりに対してこのフレーズを、あのフレーズは次の方にといった具合に、最終的に皆さんに伝えようと心がけています。お芝居も一緒で、気持ちを届けたい対象がブレると、誰に対してお芝居をしているのかわからなくなりますから。

ミュージカル『モーツァルト!』のインタビューで、お芝居の核は“会話”とおっしゃっていたのが今でも記憶に残っています。

“会話”は僕だけではできないので、相手にかける言葉は丁寧に、その反応でもらった言葉を大切にすることでお芝居が生まれます。日常生活でもそうですよね。ひとりよがりになると孤独になるし、行き詰まってしまう。人と交流することで自分の気持ちが穏やかになり開放的になるから、人と関わっていくこと、ちゃんと自分の気持ちを伝えること、他人の言葉を受け止めることが、お芝居だけでなく人としても大切ですね。

山崎さんをお芝居や歌に駆り立てるものはあるのですか。

楽しくてそれ以外に思い浮かばないんです。面白くないと仕事はできないと思うタイプで、つまらないと思ったら続けていられないかもしれません。

もう少し深くお伺いしてもよろしいですか。

僕らの仕事は“モノ”を扱う職業ではないんです。ライヴや舞台は、コーヒーや洋服といった“モノ”ではないですよね。つまり、チケットを買っていただく対象が“空間”になります。幕が開くまでは何もないのに、歌を歌い、お芝居をして、ありがたいことにお客様にチケットを買っていただく。食事を食べるように、“空間”で人の心を満たして幸せな気持ちにできる職業はほかに見当たらないと思います。先日の〈山崎育三郎 LIVE TOUR 2019 〜I LAND〜〉でも、僕が歌うことでみんなが笑顔になっていく雰囲気や、人の心が変わっていく様子に感動させていただきました。誰もができる仕事ではないからこそ恵まれていると思います。

考えても仕方がない。ダメでもぶつかっていくことが大切

そんな山崎さんでも、ティックと同じように悩みを抱えることはあるのでしょうか。

いつもですよ。たとえば、美味しくないご飯を食べたときかな(笑)。

(笑)どういうふうに乗り越えられるのですか。

気合いです。立ち止まったらダメなんです。悩んだら考えても仕方がないから、ダメでもぶつかっていくことが大切です。

逆に役者をして最高に満足を得られる瞬間はありますか。

お客様と互いに共感できたときです。お客様と「良かった」という瞬間を感じられたときの喜びといったら……やはりひとりでは楽しくないんです(笑)。そのために、僕は“今”しか考えないようにしています。与えられたものを、その瞬間、どれだけできるかで次に繋がっていく。当たり前に続くと思っていたらいい加減に過ごしてしまうから、目の前のことにどれだけ集中できるのか、どれだけのパフォーマンスができるのか、「明日はないよ」とイメージをしたときにどんなステージができるのか、どれだけ自分を追い込めるのか。“今”を必死に生きることが未来に繋がっていくと思っているので、毎日の稽古もなんとなくやらずにテーマを決めて臨んでいます。

自分のテンポで呼吸をして、己を信じて生きていくこと

それでは、見どころをお願いいたします。

再演ですから、とにかく初演からパワーアップした舞台をお届けしたいです。お客様の期待を裏切らないパフォーマンスをしたいし、これだけゴージャスで華やかなミュージカルは日本にないので、ご覧になっても損はさせないし、ミュージカルが初めてだという方も、ぜひ劇場にいらしてください。

『プリシラ』とは、女性の名前を意味しているそうですが、お話を伺っていると、今の時代では単一の意味では収まりきらないと感じました。

『プリシラ』というタイトルは“誇り高くありのままの自分でいる”という意味だと思います。そのためには、リラックスすることです。自分のテンポで呼吸をして、己を信じて生きていくことが大切なんですよ。

ミュージカル『プリシラ』

2019年3月9日(土)~3月30日(土)日生劇場

STORY
舞台はオーストラリア。仕事も私生活もうまくいかないドラァグクイーンのティック(山崎育三郎)に、別居中の妻・マリオンから電話がかかってきた。最近、息子のベンジーがティックのことを知りたがっているのだという。ティックはベンジーと会ったことがない。ドラァグクイーンである自分には父親の資格がないのではないかと悩んでいた。マリオンはそんなティックに対し、自らが支配人を務めるカジノでドラァグクイーンのショーをやって欲しいと依頼。そこでベンジーにも会って欲しいと伝える。内心迷いながらもティックは、誇り高いトランスジェンダーであるバーナデッド(陣内孝則)と、若くエネルギッシュなゲイであるアダム(ユナク/古屋敬多)のふたりに声をかけ、共にカジノへと向かうことを決める。向かう先に別れた妻子が待っていることを秘密にしたまま……。

演出:宮本亜門
翻訳:エスムラルダ
訳詞:及川眠子
音楽監督:前嶋康明

出演:
ティック(ミッチ)役:山崎育三郎
アダム(フェリシア)役:ユナク、古屋敬多(Lead)
バーナデット 役:陣内孝則
DIVA 役:ジェニファー
DIVA 役:エリアンナ
DIVA 役:ダンドイ舞莉花
ミス・アンダースタンディング 役:大村俊介(SHUN)、オナン・スペルマーメイド
ボブ 役:石坂 勇
マリオン 役:三森千愛
シンシア 役:キンタロー。、池田有希子
シャーリー 役:谷口ゆうな
ICHI
大音智海
奥山 寛
鈴木ゆま
砂塚健斗
高木裕和
土器屋利行
広瀬斗史輝
堀部佑介
陣慶 昭
瀧澤拓未

オフィシャルサイト
Twitter(@priscilla_japan)

山崎育三郎(やまざき・いくさぶろう)

1986年1月18日生まれ、東京都出身。2007年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢され、以降数多くの舞台、映画、テレビドラマなどで活躍。主な出演ミュージカル舞台は『モーツァルト!』、『エリザベート』など多数。2017年5月からニッポン放送『I AM 1936』のパーソナリティを担当。2018年7月には、初のオリジナルアルバム『I LAND』をリリース。2019年1月〜〈山崎育三郎 LIVE TOUR 2019 〜I LAND〜〉を開催し、大盛況。また、4月12日公開の劇場版「名探偵コナン 紺青の拳」でゲスト声優担当、尾上松也、城田 優とユニット“IMY(あいまい)”プロジェクトを立ち上げ、4月20日(土)にBunkamuraオーチャードホールで旗揚げ公演が開催される。6月にはミュージカル『エリザベート』に出演予定。

オフィシャルサイト
Twitter(@ikusaburo_0118)

フォトギャラリー
< 1 2