ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』特集  vol. 5

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古川雄大らの“愛”と“ピュアネス”が溢れる奇跡の舞台。ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』上演中!

古川雄大らの“愛”と“ピュアネス”が溢れる奇跡の舞台。ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』上演中!

2月23日(土)から東京国際フォーラム ホールCにて、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が上演中だ。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を原作に、ロミオ役(Wキャスト)に2017年版から続投の古川雄大、大野拓朗、ジュリエット役(トリプルキャスト)には同じく2017年版に続く出演となる生田絵梨花、木下晴香に加え、本作で初舞台の葵わかなが務めるほか、三浦涼介、木村達成、黒羽麻璃央なども新キャストとして登場し、潤色・演出の小池修一郎により、2年ぶりに生まれ変わる。初日前日に行われたゲネプロの模様をレポートする。

※この日のゲネプロは、ロミオ 役を古川雄大、ジュリエット 役を葵わかな、ベンヴォーリオ 役を三浦涼介、マーキューシオ 役を平間壮一、ティボルト 役を渡辺大輔、死のダンサー 役を大貫勇輔が務めた。

取材・文・撮影 / 竹下力

古川雄大から感じたスケールの大きなスター性

おそらくどこかの気の利いたジャーナリストが名付けたのだろう、1950年代の中葉から終わりにかけ、街にいる若者のグループに“族”という呼称を付けることが流行していた。たとえば“カミナリ族”“六本木族”“暴走族”など枚挙にいとまがないが、その中でも輝きを放っていたのが“太陽族”だった。そのイメージの中心には石原慎太郎というイコンがいて、芥川賞を受賞した『太陽の季節』という小説がバイブルになり、映画化に際しプロデューサーの水の江瀧子に見出された慎太郎の弟・石原裕次郎が続いていく。言わずもがな、石原裕次郎は戦後最大の映画スターになった。

終演後にまず感じたのは、古川雄大というひとりの男性にもともと内在していたスター性が、今作の舞台でより輝きを増したということだった。ロミオとジュリエットが結婚式に歌う荘厳なストリングスが華麗なナンバー「エメ(Aimer)」で味わうことのできた、鳥肌が立つ瞬間。葵わかなとのデュエットも素晴らしかったけれど、何よりソロをとったときの古川雄大の独特な美声からは、“愛”という感情が怒涛のように押し寄せてくる。そのあまりにもピュアな居住まいは、泣けなかったら嘘になってしまう。

古川の伸びやかな歌、長身のしなやかな体躯、発する台詞のきめ細やかさ。それらすべてが、圧倒的なスケールを持っていた。カーテンコールでは少しお茶目な表情も見せていたけれど、新しい時代のスターとしての佇まいを凛と放っていた。もちろん、この公演はダブル、トリプルキャストで、ひとつの公演だけで何かを断言できるわけではないのだが、古川は“ロミジュリ”3回目の挑戦にして、まさに“古川雄大”という役者そのものを獲得したのではないだろうか。

ストーリーはシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をもとにしている。ただし、時代は近未来。舞台はイタリアにある街、ヴェローナ。そこではふたつの名家、モンタギュー家とキャピュレット家が争っている。モンタギュー家には一人息子のロミオ(古川雄大)とその仲間であるベンヴォーリオ(三浦涼介)とマーキューシオ(平間壮一)たちがいる。一方、キャピュレット家には一人娘のジュリエット(葵わかな)と従兄弟のティボルト(渡辺大輔)らがいる。ヴェローナ大公(石井一孝)の命により両家の間に冷戦状態が続くなか、キャピュレット卿(岡 幸二郎)がジュリエットに婚約者を紹介しようと仮面舞踏会を催す。そこにマーキューシオたちが潜り込み、ロミオとジュリエットは出会い恋に落ちる。そこから名シーンのバルコニーでの告白、ロレンス神父(岸 祐二)を介して行う結婚式と続く。彼らの許されない恋はどうなってしまうのか。

潤色の小池修一郎は、難解なシェイクスピアの言葉を現代的な台詞に置き換え、観客にもわかりやすく伝えながら、それでいて時折り、シェイクスピアの言葉を引用し、観客を歴史の目撃者にもしていく。新演出版から引き続き、衣裳はサイバーパンク色が強く、セットも美術も近未来を意識したものになっていて、かなりインパクトがあった。

“&”という記号が導き出す“青春”という普遍性

ミュージカルやリーディングなど、『ロミオとジュリエット』は様々な形態になり、それぞれの演出家の視点が付与され、多くの国で上演されている。小池修一郎が手がける今作においては、『ロミオ&ジュリエット』というタイトルの“&”という記号がこの舞台を特徴付けているかもしれない。

物語が進むにつれて、両家の争いは激化をたどり、集団抗争的な色彩が強くなっていくが、むしろ強調されていたのは、“大人”対“子供”というシンプルな抑圧者と被抑圧者の構造だ。それが観る者の心を鷲掴みにする。なぜなら、親に対する反発心は誰しもが経験しただろうし、シンプルに感情移入できるからだ。そして、そこから強く感じるのは“無軌道な青春”というべき若者の熱き息吹だった。

ロミオとジュリエットは結婚したといっても、ロミオは18歳でジュリエットは16歳である。反駁する家ゆえの反骨心によるやけっぱち感もあるだろうし、10代のふたりが永遠という意味を理解するには幼すぎる。なのに“永遠の愛”を誓ってしまうあたり、自分たちの行く末など気にしていない、どこか刹那的な生き方を感じさせるのだ。とはいえ、時代のせいかもしれないが、どこか達観している風情も感じさせ、時代設定を含め、よりアクチュアルで、今風に言えば“エモい”といってもいいだろう。

また、ミュージカルナンバー「世界の王」に代表されるような「誰からも支配されず、誰しもが無敵になれる瞬間がある」というド級のポップソングにも、誰もが青春時代に感じた、自分が何者にでもなれるような錯覚にも似た若者特有の高揚感がある。

それゆえ、タイトル表記の“&”からは、直訳の“そして”の意味合いを強く感じる。“ロミオとジュリエット”のふたりだけで括る若さゆえの悲劇の物語ではなく、ベンヴォーリオ、マーキューシオ、ティボルトも含めた若者たちが青春を謳歌する、あらゆる角度から青春というテーマを切り取った舞台ともいえるからだ。彼らは自分という存在に悩み、憂い、苛立ち、反発する。それが“生きている”証明であるかのように。だからこそ、際立つ明解な対立構造にも魅力が増すのだろう。

“死”を乗り越えるための“愛”という感情

オープニングは、紗幕に爆撃など戦争をイメージした映像が映し出され、死のダンサー(大貫勇輔)がひたすら踊るシーンから始まる。戦争の悲惨さを訴えるだけではなく、静かに死のダンサーが一心不乱に踊るという行為が、“ロミジュリ”の通奏低音である悲劇をシンボリックに表現しており、見事なものだった。戦争、諍い、争い、抑圧、復讐、それらは“死”を連想させる。なぜなら、例に挙げた言葉はすべて、他者を蹂躙することで成立するものだからだ。そして、それらへの抵抗と衝突で生まれる、敗北、挫折、焦燥、死……争いからしか生まれないネガティブな状態を浄化するものが、“愛”だと訴えている。“愛”という不確かだけれど確かに存在するものを信じる力が希望へと繋がる。“愛”とは他者を慈しむこと。そんな小池修一郎の美学が徹底された演出となっている。

三浦涼介演じるベンヴォーリオは男の友情に熱く生き、平間壮一は狂気じみた演技でマーキューシオを熱演、ティボルト役の渡辺大輔は「何に苛立っているのかわからないけれどとにかく苛立つ」という若者独特の気持ちを卓抜に表現していた。また今作が初舞台、初ミュージカルとなる葵わかなは、純真で一途で、自分の信念に生きる少女を熱演していた。カーテンコールで少し目を潤ませていたが、古川を中心にしたカンパニーがどれだけ彼女の心を励まし、ここまで辿り着いたのかを表しているようで感動的だった。

彼らの個性が存分に活かされ、“その日、そのときだけ”の舞台がつくり上げられるカンパニーがここには出来上がっていた。だから、どのキャストの組み合わせを観ても楽しめることを約束してくれる。今日を生きることは楽ではないけれど、こんな感動的な舞台があるから、明日へ生きる希望をもらうことができる。本作は、悲劇を超えた、慈愛に満ちた舞台になっている。

東京公演は2月23日(土)~3月10日(日)まで、東京国際フォーラム ホールCにて上演される。愛知公演は3月22日(金)~3月24日(日)まで刈谷市総合文化センターで上演。そして、大阪公演の3月30日(土)~4月14日(日)の梅田芸術劇場メインホールでの公演で千穐楽を迎える。

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

東京公演:2019年2月23日(土)~3月10日(日)東京国際フォーラム ホールC
愛知公演:2019年3月22日(金)~3月24日(日)刈谷市総合文化センター
大阪公演:2019年3月30日(土)~4月14日(日)梅田芸術劇場メインホール

原作:ウィリアム・シェイクスピア
作:ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出:小池修一郎

出演:
ロミオ 役:古川雄大、大野拓朗
ジュリエット 役:葵わかな、木下晴香、生田絵梨花
ベンヴォーリオ 役:三浦涼介、木村達成
マーキューシオ 役:平間壮一、黒羽麻璃央
ティボルト 役:渡辺大輔、廣瀬友祐

キャピュレット夫人 役:春野寿美礼
乳母 役:シルビア・グラブ
ロレンス神父 役:岸 祐二
モンタギュー卿 役:宮川 浩
モンタギュー夫人 役:秋園美緒
パリス 役:姜 暢雄
ヴェローナ大公 役:石井一孝
キャピュレット卿 役:岡 幸二郎

死のダンサー 役:大貫勇輔、宮尾俊太郎(Kバレエ カンパニー)

R&Jダンサー:
飯田一徳、祝 陽平、大場陽介、岡田治己、小南竜平、小山銀次郎、酒井 航、鮫島拓馬、鈴木凌平、高木勇次朗、仲田祥司、渡辺崇人、伊藤香音、おごせいくこ、織 里織、小松芙美子、齊藤恕茉、Sarry、島田友愛、杉浦小百合、鈴木百花、平井琴望、深瀬友梨、松島 蘭

オフィシャルサイト
Twitter(@musical_RJ)

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