Interview

鈴木勝吾&平野良が、ミュージカル『憂国のモリアーティ』で投げかけるメッセージとは。本作から広がるふたりの最近の“憂い”についても

鈴木勝吾&平野良が、ミュージカル『憂国のモリアーティ』で投げかけるメッセージとは。本作から広がるふたりの最近の“憂い”についても

名探偵シャーロック・ホームズの宿敵、ジェームズ・モリアーティ教授の視点でコナン・ドイルの小説を翻案した物語が話題となっている漫画『憂国のモリアーティ』が、ピアノとヴァイオリンによる生演奏でミュージカル化! 原作は構成・竹内良輔、漫画・三好 輝によって『ジャンプSQ.』(集英社)にて好評連載中。コミックス発行部数は累計100万部を突破している。
初ミュージカル化される本作には、2.5次元のみならず各方面で活躍中の俳優陣が集結。19世紀末のロンドンで、階級制度による悪を取り除き理想の国をつくろうとするウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役を鈴木勝吾、シャーロック・ホームズ役を平野良が演じる。
ほぼ初共演だというふたりの対談は、原作を読んだ感想や役づくりの話から、現代社会への“憂い”や役者として心がけていることなど、ワイドに展開。思慮深い彼らがつくるミュージカル『憂国のモリアーティ』も、含蓄に富む素敵なステージとなるに違いないという確信が強まるトークとなった。

取材・文 / 片桐ユウ 撮影 / 冨田望


「いいこと、悪いことって何だろう」と考えるキッカケになれば

おふたりの共演は初めてですか?

平野良 舞台はライブ&朗読劇(『激奏三国志~Soul Of Rock~』12年)で一度だけ。それ以来かな? あ、『千銃士』(ゲーム、TVアニメにて共にCVを担当)の収録が一日だけかぶったことがあった!

鈴木勝吾 ありましたね。あとはドラマ『青空の卵』(12年)のとき。

平野 同じ作品に出ていたことはあるけど、ガッツリ絡むっていうことはなかった感じだよね。

鈴木勝吾

お相手の作品をご覧になられたことや、役者としての印象は?

平野 僕は映像でミュージカル『薄桜鬼』を。共演したときも感じていましたけど、「本当にしっかりしているな」って印象ですね。例えると「町の不動産屋さんもいいけど、やっぱりなんだかんだで、大手の不動産屋さんっていいよね」っていう感じ

鈴木 (笑)。アフターケアもしっかりしております、みたいな?

平野 そうそう! 絶対に変なことになりませんよ、っていう安心感がある。

鈴木 ありがとうございます(笑)。僕からも、舞台を観て感じるものと同様に、しっかりしていらっしゃる役者さんという印象でした。『青空の卵』のとき、目が見えない役を演じていらしたんですけど、その役づくりを見ていて「面白いな」と思ったのが最初です。その後、主演されていた「飛龍小」(ジョー&マリ プロジェクト『熱闘!!飛龍小学校☆パワード』16年)を拝見して。

平野 西田シャトナーさん(脚本・演出)の!

鈴木 そうです。シャトナーさんって天才な方だと思っているんですけど、あの独特の演出って“声”も必要とされると思うんです。そこも素晴らしかった記憶がある。

平野良

では、お互い信頼のお相手ですね。そんなおふたりが臨まれる『憂国のモリアーティ』、原作の印象はいかがですか?

鈴木 シャーロック・ホームズが主人公ではなく、その敵役を主軸に置いて進んでいくストーリーで、逆の立場から見ているところがまず面白くて。それと同時に、すごく哲学的な話だという印象がありました。実際にそれを行動で示していくウィリアムという人物がいるので、世直しの話でもあり、設定を現代や日本に置き換えても成り立ちそうな感じがしましたね。それだけ軸がしっかりしていますし、読んでいて止まらなくなりました。

平野 コナン・ドイルがつくったもともと面白い作品を別の角度から描いていくので、もとの作品が持つ力にプラスしたアナザーストーリー的な面白さがあると思いました。それに日本人って、悪いことをしているけどそれは市民のため……っていう話、好きじゃない? 石川五右衛門とか必殺仕事人とか……(笑)。

鈴木 わかります、義賊的な感じ。

平野 そうそう! 犯罪は悪いことだけど、その“だけど”を描いている作品だから面白い。それは僕が日本人として親しんできた物語のテイストと通じていたこともあるのかなと思ったりした。

その義賊的な物語に感じた面白さは、共感でしょうか? それとも爽快感?

平野 あー、それはどっちもかなあ。

鈴木 僕も両方ですね。ただ自分が年齢を重ねてきて、若い頃には知らなかった裏側や信じていたものが瓦解していく年齢というか……。本当に最近、日本ってダメだなーと思っている、まさに“憂国の勝吾たん”なので。

平野 ん!!(笑)

鈴木 世界や政治のことにしても、日常についても「なんでこうなんだろう」と、すごく思っていますから。なので、この時代の大英帝国を変えようとするウィリアムという人物にはものすごく共感しますね。僕は劇場型犯罪を繰り広げることはできないですけど(笑)、演劇・芝居をすることで自分の思っていることを発信していって、ひとりでも変われば……と思っているところはあるので。それをどうやって今回、出していこうかと思っています。

ウィリアム役、ピッタリということですね!

鈴木 こんなに美しくないですけど(苦笑)、共感できるウィリアムがやっていることだから、爽快感も感じられるんだと思います。

平野 ウィリアム、心がね、すごいよね!

鈴木 すごいです、まずブレないもん。まあ、犯罪者って、理由を聞いてみると当人なりの正義というものが出てくるものだとは思うんですけど……。

平野 うん。正しいことを振りかざし過ぎると、それって正しくなくなるような気がしていて、俺は。

鈴木 わかります!

平野 昨今、SNSの燃え方や言葉狩りがすごいじゃない。もちろん正しいんだよ。でも「その正しさにかこつけて攻撃し過ぎじゃないですか……?」って思ったりする。善悪や倫理で考えると正論ではあるけど、「善悪はどっちなんだろうね?」と、最近すごく思う。僕はSNSをやっていないんだけど、ニューストピックスとか見ると“誰々の発言が波紋”とか絶対出てくるから。

鈴木 僕はテレビって“TV SHOW”だと思うので、その中の人の発言や物事を真っ向から否定していると、そのうちに何のフィクションも許せなくなってくるんじゃないかと思っています。

平野 そうなんだよね。言葉ひとつにして、日本語ってとても豊かでいろいろな表現方法があるから、その言葉尻だけを取って攻撃すると、言葉の中にあった奥ゆかしさや言葉に込めない“粋”な部分がなくなってしまうよ!?という。正しいことを言っているように見せかけて、想像力や許容力がせばまってきているような気がする。……こんなことを言いつつ、モリアーティにも共感しているって言うと、矛盾していると感じられてしまうかもしれないけど(笑)。「果たしてどちらが悪なのか?」っていう話ね?

鈴木 わかります。

平野 正しいとされていることが本当に正しいことなのか、それはみんなが考え続けなきゃいけないことだと思うんですよ。なのに「これが正しいとされているんだから」と思い込んで、考えを止めてしまっていることに対して、俺はどうなのかなって思う。

鈴木 ああ~すごく共感する! 早く一緒に飲みに行きましょう!

飲み屋さんでおふたりが熱~く語り合っている姿が想像できます(笑)。

鈴木 今の時点で尽きないですからね。それで取材が全然進まないっていう……。すみません!

平野 あはは(笑)。

いえいえ! おふたりの思っている社会の現状、このご時世から見ても、この『憂国のモリアーティ』という作品を今、舞台化する意味がとてもあるなと感じました。

平野 うん! 絶対に面白いと思うな。

鈴木 もちろん美しいとかカッコいいということもしっかりありながら、そういうことに置き換えられるのではないかというマインドがあるので、観に来た方が作品を超えて、自分の周りに対して思うことにもなってくれたらいいなと思います。

平野 この作品を読んだあとにモリアーティの言動を見て「いいこと、悪いことって何だろう」と考えるキッカケになってもいいし、いろんな広がりが期待できる作品だと思います。

ちなみにおふたりは、この作品の原案でもあるコナン・ドイルの小説や他の派生作品に触れたことはありますか?

平野 僕は小説の短編を何本か。あと海外ドラマの『SHERLOCK(シャーロック)』!

鈴木 僕、それ観たいんですよー! 何年か前に公開された映画は観ているんですけど。

平野 ドラマもめっちゃ面白いよ! 今、尊敬している俳優を聞かれたら主演のベネディクト・カンバーバッチって答えるくらいハマっているもん。演じ方が天才的!

鈴木 僕もハマっちゃいそう……。

平野 追いつけるんじゃない? 1話が2時間くらいのものもあるけど、たしか3話くらいで1シーズンって括りだから。

鈴木 『ウォーキング・デッド』みたいな感じですね。

平野 そうそう。え!『ウォーキング・デッド』も観てる?

鈴木 はい、僕はSeason9まで観ました。

平野 俺、まだSeason8まで! 絶対、ネタバレ、ダメね!

鈴木 大丈夫、言いません(笑)。でも僕もゾンビをいったん休止して、探偵に行こうと思います!

1 2 >