SID 15th Anniversary Special マオ Self Liner Notes『歌詞を巡る旅』  vol. 9

Interview

シド 8th Album『OUTSIDER』~メンバーそれぞれの成長が“引き算”という発想にたどり着いた実験的かつ無骨な作品~

シド 8th Album『OUTSIDER』~メンバーそれぞれの成長が“引き算”という発想にたどり着いた実験的かつ無骨な作品~

Self Liner Notes特集「歌詞を巡る旅」もいよいよ残りわずかとなりました。今回、取りあげる作品は2014年にリリースしたアルバム『OUTSIDER』です。シドとしては10周年を終えてのアルバムだったんですけど、当時俺は10周年の区切りとかはあんまり意識してなくて。だから、10周年を経てここからのシドはこうしよう、みたいな発想はなかったんです。そんななかで考えた『OUTSIDER』のコンセプトは、ちょっと無骨感みたいなものを出したいなという狙いがあった気がしますね。無骨っていうと、汗臭さとか泥臭いものをイメージしがちなんですが、そういうものではなくて。4人の音がメインになってる無骨さというのかな。シドからきらびやかさを取ったらどうなるのかな、という発想ですよね。単純に同期の音をちっちゃくして4人の音を大きくするだけでもサウンドはすごく変わるし。曲によっては同期を使わないとか。そういう“引き算”を試した実験的なアルバムでもありました。とはいえ、「MUSIC」とかはね、同期がゴリゴリなんですけど(笑)。「hug」とか「CANDY」は、4人の音というのをすごく意識して作りました。それが楽しかったんですよ。それぞれが鳴らす音、プレーヤーとしても各々が成長してきたんで、そろそろ(音を重ねるより)引き算をしていくのも面白い時期なんじゃないかなと自然とみんなが思うようになっていたんでしょうね。あと、この頃は世の中にある音楽が「音数めちゃくちゃ多いな」と思い始めた時期でもあったんですよ。そういう流れに対して、俺らはもうちょっと減らしてもいいんじゃないかなって思ってて。それは、いまでもウチのバンドのテーマになってますけどね。かといって、極端に音数減らせばカッコいいものができるのかっていったらそうではないので。単純に音を減らせばいいってわけではないんです。だけど、いまはどっちの音にするかっていう選択をするときは、引き算のほうを選ぶ。そういうやり方が続いてますね。アルバムのタイトルは、まず“OUTSIDER”という言葉の響きが好きだったんですよ。あと、この単語の真ん中には“SID”というバンド名が入ってるじゃないですか。そこがカッコいいなと思ったんで決めました。アルバムのジャケットも、そこと連動してますね。

構成・文 / 東條祥恵 撮影 / 今元秀明

めちゃめちゃ気持ちいいんですよ(笑)、大歓声って。ヤバイんです、気持ち良さが

01. laser
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

ステージの1曲目でレーザー光線を出したいなと思って。ほんと、それだけのために作ったっていうと大げさですけど(笑)。ライブの1曲目の歌を書きたかったんです。ライブが始まったとき「俺はいまこういう心情だよ」、「始まるぞ、いまから」という気持ちを歌詞にしています。“長い廊下の その向こうに”という冒頭のところはライブが始まる前のイメージですね。2番で“熱くなることを 恥じた あいつらには 内緒の世界”と歌っているところは、自分がシドのライブに行くって言ったとき、「そんなライブに行ってどうすんだよ」、「行って面白いのかよ」っていうようなことをもし周りの人に言われたとしても、こんな熱い場所は他にはないだろ? っていうことを綴っています。それで“だからどうかお願い 心 両手広げて この声 最後まで 受けとめて”と、最後はストレートに自分の気持ちを出しました。「laser」はShinjiから届いた曲を聴いたときから「アルバムはこれが1曲目がいいな」という気がしてたんで、「次のツアーはこれをライブの1曲目にしたいから」ということをレコーディング前にメンバーに伝えてました。最近はわりとリラックスできてるんですけど、ライブの本番前って俺はすごく緊張するんですよ。だから、楽屋ではいつも部屋にこもって集中してるんです。ずっと。会場入りした時点から集中モードに入っていて、リハがうまくいけば少しはリラックスできるんですけど、ちょっとでも不安要素があったりするとピリッとしちゃう。だから、本番前ってすっごく疲れるんです。本番よりも頭が疲れる。本番が終わってからの「疲れたな〜」っていうのは、体のことなんです。本番中に「この曲のここはこう歌おう」とか「次のMCはこうしよう」とか、そこまで頭は使わないですからね。その分、本番前は部屋にこもってずっと集中して頭使って考えるんです。だから、本番直前までガヤガヤみんなと騒いでるっていうのは、俺はほとんどしたことがない。昔は、本番前にそういう人を見ると「お前、気合い入ってんのかよ」って気になってたんですけど、いまは人それぞれなんだなって思うようになったんで。俺自身もそういう人と普通に話したりできるようになったんですけどね。でも、本番直前はいまでも人と話したりするのは無理かな。

02. CANDY
(作詞・マオ/作曲・ゆうや)

これは、なにか出来事があったからではなく、ただ“怒り”をテーマに書きたいなと思ったんです。怒りの対象は、ステージに立つ仕事をしていると、いろんな声が聞こえてくるので……。あえて言うのであれば、そういうところに対して、ですかね。そういうものもロックでぶっ壊せっていう歌詞が、こういう曲調には合ってるんじゃないかな。この曲は、かなり巻き舌で歌ってますね。俺はちっちゃい頃から巻き舌ができたから、ちっちゃい頃でもこの「CANDY」は歌えたと思いますけど(笑)。巻き舌できない人って、結構多いんですよね。ファンの子からも「巻き舌で歌うのってどうやるんですか?」とか、「あそこはどうやったらああいう巻き舌で歌えるんですか?」とか聞かれたりするんです。俺の場合は最初から(巻き舌)できちゃったからな……。練習もしてないし。でも、いまは喉を開くために巻き舌の練習をしますね。巻き舌を練習すると、舌の奥のほうがぶるぶるって震えるんですね。それが喉が緩む運動になって、喉を開くためにはすごくいいんですよ。「CANDY」はライブでも2曲目にやっていたので、(喉の)運動になってよかったですね。1曲目の「laser」はファルセットだらけなんですけど、ファルセットも喉の運動になるんですよ。ファルセットって、声を張らなくていいから喉にあまり負担がかからないし、ファルセットを出すときは、喉を閉めてる状態だと声が出ないんで、勝手に喉が下がるんです。それがいいんですよ。なんか、ヴォーカル教室みたいになっちゃいましたけど(笑)。このアルバムのツアーは、オープニングのこの2曲で喉が温まるから、この後はどんな曲でも歌えるといういい流れになってました。歌詞全体を見ると、タイトルが出てくる後半の“病みつきで かじりつく キャンディーが~”のところがカッコいいですね。ここは初期衝動を忘れるなよってことを言ってるんですよね。サビの最後に“美しい五線譜 今夜 塗り潰すシャウトで” と歌っているところは、シドはこういう面も持ってるよということを表現してます。むしゃくしゃしてるときは、ぜひ皆さんにも「CANDY」を歌ってもらいたいですね。

03. V.I.P
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

TVアニメ『マギ The labyrinth of magic』OPテーマにもなりました。アニメのタイアップ曲を書くとき、めちゃめちゃアニメを意識する場合と、アニメを意識しつつもシドとしてもという場合と、ほぼほぼアニメは意識せずに書いてる場合。その3パターンぐらいあるんですけど。これはほぼ意識せずに書いてる歌詞です。ただ、曲調はアニメを意識してる気がしますけどね。「V.I.P」で歌ってることは、分かりやすくいうと「楽しいぜ!」っていうことかな(笑)。大歓声って気持ちいいなとか、そういうことを大声で言ってもいいんじゃないかなという気持ちで書きました。あんまりね、大歓声が気持ちいいって歌ってる人っていないじゃないですか? でも、めちゃめちゃ気持ちいいんですよ(笑)、大歓声って。ヤバイいんです、気持ち良さが。それのためにライブやってるところもありますから。自分がうまく歌えたときも気持ちいいんだけど、それ以上に大歓声は気持ちいいんで。ゾクッとくるんですよ。これはミュージシャン特有のものだと思います。例えば、俳優さんが舞台挨拶で浴びる大歓声、サッカー選手が浴びる大歓声、いろんな歓声があると思うんですけど。ミュージシャン、シドがステージに登場したときのものは特別なもので、俺たちだけに与えられたものなんですよね。だから、あれを一度味わうと一生ライブは辞められないです。「V.I.P」はそういう大歓声のなかにいるためにはってことを、ひたすら歌ってます。この歌詞のなかでは“下を見て 笑うよりも 上を見て 絶望したい”っていうところがすっごくファンのみんなに響いたみたいですね。この曲を発表した当時からそこは反響がありましたし。最近シドのファンになりましたっていう人や、アニソンからシドに入った人も「V.I.P」のそこの歌詞がすごく好きだと言ってくれるので。ここの歌詞はみんなに伝わったんだなと思って、うれしかったです。書いたときに自分でも手応えがあった部分だし、あのときの自分だからこそ書けた歌詞です。どっちかというと、俺は下を見て笑いたくて音楽をやってたんですよ。初期の頃は。俺のほうがイケてるんだという感じを味わいたくてやってた時期も実際にあったんですね。でも、それがどんどん変わってきて。下を見てそんなことを味わうよりも、上のすごい人を見て「うわー、この人ヤバイな」、「これは(上にいくのは)厳しいな」と思って「もっと」を口癖にしたほうがうまくいったんで、それを書いた部分なんですよね。いまもその気持ちは変わらないです。

04. 赤い手
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

これは、俺なりのジャパニーズホラーですね。曲もアレンジもおどろおどろしい感じがしたんで、曲に呼ばれて書いてみました。こういうテイストは、いままで書いたことはなかったですね。同じような和もので「御手紙」がありますけど、「御手紙」はただ相手を想ってるだけの歌で、この「赤い手」は憎悪混じりですから。そこがちょっと違うんですよ。歌詞では、時代設定としてなんとなく昔の日本っぽさを出したくて、日本の怖い昔話によく出てくる“柳”とか、そういうものをちょいちょいちりばめながら書いていきました。この歌詞は、個人的にはすごく好きです。いま読んでも面白いですね。きっと、ストーリーを最初に決めてから書いたからでしょうね。それが、すごく綺麗にまとまってる気がします。昔の作品と比べると、こういうストーリー仕立てのものも書き方がうまくなったなと思いますね。読みやすいし、1回読んだだけで内容が分かる。このストーリーでは、“先立つのが 楽でしょうか”と女の人は自殺をほのめかしたりしながらも、タイトルは「赤い手」ですから。殺しちゃってますね。好き過ぎて、相手の男の人を。ちゃんと読むと怖いんですよ(苦笑)。歌詞に出てくる赤色が2種類ありますね。最初に出てくる“紅”は、俺のなかでは女性が頬を染めるときの紅。“赤い手”の赤は、ドロドロした血の赤ですね。昔は同じ読みの漢字が出てくるときは、同じだったらつまらないから変えようという感じだったんですけど、この辺は最初からこっちの紅はこれにしよう、最後の赤はこれにしようっていう感じで、そこまできっちり考えを決めてから歌詞を書いてます。そういう部分でも無駄がなくなってきてますね。だから、歌詞を書くのもこの頃からめちゃくちゃ速くなってきたんですよね。

本当に魔法だと思うんですよ。だって、超冷静に考えたらおかしいですもん

05. MUSIC
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

これは昨年のツアー(SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR「いちばん好きな場所 2018」)でもやってたんですけど、意外とこの曲は盛り上がるんだなということに最近気付きました(笑)。もちろんこのアルバムのツアーや、それ以降もちょいちょい「MUSIC」はやってきてるんです。特にスタンディングでのライブだと、すごい盛り上がるんですよ。テンポがいい感じの速さだから、お客さんとしてはのりやすいんでしょうね。あと「MUSIC」はファンに向けて歌ってる曲なので、それもあって、ここにきてライブの戦力になってます。ただ(歌の)キーはめちゃくちゃ高いんですけどね。しかも、ずーっと高い!! 御恵明希さんは「マオならいける!」と思ったんですかね(微笑)。昨年のツアーでは本編の後半にやってたんで、ちょうど喉が開いてきてるときだったからよかったんですけど、これをライブの1曲目に歌うとなると、かなりキツいですね。「MUSIC」は一緒にこのライブ、盛り上がっていこうよというのが大きなテーマになってるんです。だから“しようぜ”とか“落としな”とか“じゃんか”とか、言葉遣いはそんなに綺麗じゃないんですよ。ノリ重視で書いてるから。ライブでは、この曲はあれこれいろいろ考えたりせずに(音楽を)感じてよって。そういう意味で“目耳肌アレで感じろよ”のところを書きました。ここの“アレ”の部分は、聴いた人それぞれが感じるものを入れてもらいたくて、ワザとこういう表現にしたんです。だから、“アレ”は一人ずつ解釈が違っていいんですよ。そういうノリ重視のなかに、シドとファンがこれまで築き上げてきた関係性も歌い込んでるところが「MUSIC」のポイントですね。そこが色濃く出ているところが“追いかける? かけられる? そんなんじゃなくて~”のパートです。最初は、ファンは追っかける子たちで、こっちはアーティストっていう関係性だったと思うんです。でも、あれからいろいろあったし、ツアーをやると一緒に回ってる気もするし。というところで、もうそろそろ俺たちそういう関係じゃないないよな、ファン同士の関係もそうでしょ? だから一緒に楽しもうよ、という気持ちが表れてますね。

06. サマラバ
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

最新版「夏恋」みたいなイメージで、めっちゃ夏な曲が欲しいなと思って書きましたね。(観客が)タオルを回してるところは、書いてるときからなんとなくですけどイメージはしてました。「サマラバ」は結構リアルな場面がいっぱい出てくる歌詞なんですよ。リアルといっても、俺が経験したリアルということでないですけど。歌の主人公の男の子はインドア派のんびり屋なんだけど、外に行ってみたら「すげー、夏楽しい!」ってなっちゃったというストーリーですね。そして、最後は恋人とラブラブな感じで終わっていくという、なんの濁りもない歌です。恋人と出掛けてるから、ちょっとシモも入りつつだけど、これは男の健全なエロですから(笑)。俺はこの曲、“魔法の面積に グッジョブ”のところが気に入ってるんです。あれって、本当に魔法だと思うんですよ。だって、超冷静に考えたらおかしいんですもん。例えばデパートとビーチって同じぐらい人がいるんですよ? でも、デパートでビキニ姿にはならないけど、ビーチは平気でビキニ姿になるじゃないですか?“夏”っていう魔法がかかって。そう考えると、男にとって夏のビーチは超最高で、まさに“グッジョブ”って感じがすごくするんですよね(笑)。夏のビーチとか見ると、俺は「なんで普通にそんな姿で歩けるの?」って思いますから。恋人同士で歩いてるのとか、不思議すぎて。本来なら絶対他人に彼女のそんな姿は見られたくないでしょ? けど、夏のビーチだとそれがみ〜んなOKになってる感じが、俺は改めてすごいなと思ったんですよ。夏のビーチのあの光景って。彼女は水着を着てるからといっても、(ビキニは)下着と変わらない形なんですよ? 本当にすごい不思議。こういうことは、男ならきっと一度は思ったことがあると思います。歌の主人公の男の子が曲の途中、ちょいちょい「帰りたいな〜」って挫けそうになってるのは、そのほうがサビがバーンと弾けるからです。だから、男の子はBメロで毎回「やだな〜」って気持ちになるんです。“けど”って言いながら、サビに入ると結局「なんだ、めっちゃ楽しいじゃん!」ってなるところが、この曲の面白さなんです。最後はその“けど”も“だって”になっちゃうんです。夏が楽しすぎて。そんな、うかれた男の子のお話ですね。

07. 恋におちて
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

昭和歌謡の曲調だったんで、どっぷり昭和歌謡の歌詞にしました。久々の2番手モノを書きましたね(笑)。不倫の歌です。この歌詞のなかでは、俺は“「コンビニに寄るけど何が欲しい?」”のところが大好きなんですよ。ここでグッとリスナーそれぞれの頭に残像、夜のコンビニの眩しい感じとか匂いとかが急にリアルにわきあがってくると思うんです。それまではこんなリアルな描写は出てこないのに、突然ここの場面で出てくるから、聴いてるとハッとするんですよ。そこがいいなと思って。これ、誰もが絶対1回は言ったことがある、言われたことがある台詞だと思うんですね。けど、歌詞では誰も扱わない。それを歌詞に違和感なく歌い込めたところが気に入ってます。この曲のなかの相手の男は能天気なんですよね。無神経だから普通に「なんかいる?」とか聞いちゃうんですよ。その時点で、男にはこのあと一緒に外に出掛けてご飯にでも行こうという発想がないことが分かる。なんだったら、コンビニで済まそうとしてる。ヒドいですよね(微笑)。歌詞のなかに“真っ白なYシャツ”というのが出てきますけど、そもそも最近、Yシャツって言わないですよね? 俺は、このYシャツっていう言葉に昭和を感じるんですよ。なので、あえて使いました。Yシャツと書くだけで、まず仕事勤めの男の姿が眼に浮かんでくる。そのYシャツに“しわひとつない”という描写で、男に家庭があることが分かる。ここは大事なところですよね。そうして、女はそのシャツにしわを残そうとするんだけど、この男はそんなに馬鹿じゃないから、帰り道でそのしわをちゃんと伸ばしてから家に帰る。Yシャツのエピソードを通して、男女がせめぎあってる感じを“遊びと 本気の つばぜり合いね”と歌詞では書いたんですけど。戦ってるんですよね。この男女は。そうやって押し合って戦ってたんだけど、最後は女の子のほうが弱かったという歌ですね。悲しいけど。

08. 迷路
(作詞・マオ/作曲・ゆうや)

引きずり系ですね。「迷路」は“慣れたルートで 君を送って 帰り道は 少し顔がゆるむ 今ごろ どっかの誰かとね そんな段階の恋をしてるの?”のところがすごい好きですね。自分が(彼女と)たどった場所を、いまは自分ではない誰かとたどってるのかって思うと“ウゥー”って嫌な思いになるじゃないですか? そこが出てますね。こういう気持ちは、女の子よりも男のほうが強いかもしれない。女の子って案外さっぱりしてるから、平気なのかもしれないけど、男はこういうのって、本当に苦手で。嫌なんですよ。過去に見ちゃってますからね。送って行く帰り道で、彼女の“少し顔がゆるむ”表情を。それをいまは他の誰かに見せてるって想像するだけで、ウゥーってなる。特に、この主人公の男はまだ彼女のことをふっきれてないので、余計にウゥーってなるんですよ。「迷路」では、男と彼女はもう別れてるのに、この2人、ちょいちょい会ってるんですよ。たまに、勢いで手をつないだりもしてて。こういうこと、あると思うんですよね(微笑)。そもそも、どっちも相手を嫌いになって別れた感じではないんですよ。きっと。見た目もお互い好きだから付き合い始めたんだろうから、そこは別れた後も変わってない。だから、別れても手をつないで歩いたりするのは嫌じゃないんですよ。お互いに。だけど、付き合うとなるとハードルが1つ上がって、またああいうことを繰り返すんじゃないかっていうことを思い出してしまう。だから、この男の子は相当頑張って女の子のことを忘れようとはしてるんだけど、嫌いじゃないから女の子には次の男の子がいるのに、こっちに電話してきたりしたら相手しちゃうんですよ。こういう経験、結構あると思うな。男の子は。だから、そういう子は女は迷路だっていうこと、分かると思う。女は迷路、マジでそう思います(苦笑)。男は別れたあと、こんなことしないもん。これ、タイトル「女は迷路」にしたほうがよかったかな(笑)。急に演歌っぽくなるけど。

10周年の頃の俺の実体験をまんま書いただけの歌詞です

09. darling
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

ニュースなのか映画なのか本なのか忘れちゃったんですけど、この時期にDV男のことを知ったんですよね。それに触発されて書いた歌詞です。DVまではいかなくとも、束縛男は世の中にはたくさんいるんですよ。女の子もね、そうなったときは「いいよ、もう。バイバイ」って言っちゃえばいいものを、逆にそれに耐えちゃう女ゴコロっていうものがある。それを書きました。“頬に残った 君からのジェラシーを 隠して笑って”とか“BOXたまる 君からのメッセージ ただ 怯え 過ごしたんだ”とか、この辺は男から詰め寄られてる感じを表してます。“普段は 優しいからと 許せば 何度もくり返した”というところを見ても、相手はどう考えても二重人格じゃないけど、ヤバ目な男じゃないですか? それなのに「あの人、普段は優しいから」って言ってる。DVにあってる人って、必ずそういうことを言うじゃないですか? ここは、それを言いかった。『闇金ウシジマくん』とかのような、人間の闇にあるリアルを生々しく描いた感じですかね。「darling」のようなことって、実際に起こってることだと思うんですよ。描いてるテーマがテーマだから、全体が重々しくならないようにタイトルは「darling」にしました。これは、こんな人でも元々は自分の大好きなdarlingだったんだよ、という女の子の気持ちですね。それで、サビでは“今夜辺り darling”とか、darlingをリズミカルな感じで使ったりして。じっくり見るとヤバ目な人なんだけど、darlingという言葉を繰り返すことで、それが中和するんですよね。でも「darling」みたいな状況になったら、とにかく女の子は逃げるしかないんで。だから、歌の最後はかなりせつない感じになりました。曲調的にはそこまでせつなくはないんですけどね(微笑)。「darling」の男も、昼間はきっとすごく優しいんですよ。手を上げると人は自分の周りからどんどん去っていくっていうのを男も分かってるからこそ、普段はより優しく彼女に接するんですよ。万が一、そういう男の人と付き合っちゃった場合は、すぐに逃げてください。

10. hug
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

これも「MUSIC」同様、昨年のツアーで毎回やったんですけど。セットリストの流れのなかで、この「hug」の壮大過ぎないバラード感がちょうどよかったんですよね。バラードだけど、バンドの音が全員際立ってて、テンポも心地いいぐらいの気だるい感じがね。いまのシドは15歳だから、こういう曲をパフォーマンスするとバンドとしての渋みも出てきて、年齢的にもぴったりはまってました。「hug」自体は告白の歌です。男の子が好きな女の子に「お願いします」っていう歌です。“短いキスのあと 迷ってた”という部分がありますけど、女神をちゃんと自分のものにできるかどうか。男はここがポイントだと思うんですよ。ここは、男が一番ビビっちゃうところなんですね。キスのあと、女の子が戸惑ってる。そうしたとき「迷ってるの? 大丈夫?」じゃなくて、「絶対俺のほうがいいから」って言えるかどうかにかかってるんです。最初は戸惑う君を見て、この男の子は“強く 弱く”と言ってるんで、強い気持ちがありながらも相手の気持ちのことを考えて、優しくケアしてあげてる。最初からこっちの強い気持ちだけでガンガン押しすぎちゃうと、相手に逃げられてしまうので、こういう配慮は大事なんですよ。そうやってケアしながら、いまだ! っていうときが訪れたら“強く 強く”って歌ってるように強引にいく。そういう手法も歌詞のなかに盛り込んでみました(笑)。ただ、誰にでもやっちゃダメですよ。噂がすぐに広まるから。本当に好きな人にはこうしたほうがいいよっていうことです。歌詞は全体的にロマンチック、優しい感じに仕上がりました。好きですね、この歌詞は。相手を包み込むような気持ちを歌ってるということで、タイトルは「hug」にしました。

11. ANNIVERSARY
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

このアルバムは「ANNIVESARY」で終わるところがいいですね。この曲は、10周年の頃の俺の実体験をまんま書いただけの歌詞です。“嫌というほどに 繰り返して”のところは、本当にそのまんま。“それでも まだまだ 与えるのか〜”という部分は本当に当時思ってたことなんですよ。“諦めない強さなら それなりに平等だけど”は、諦めなければみんな平等だよ、っていうことをこれまでよく歌で聴いてきたけど、現実の世界は全然違うじゃん、めっちゃキツいじゃん、と思ったときの気持ちが出てます。そういうとき、ちょっとした光が見えたのが、バンドを始めた頃に自分が憧れてたミュージシャンの人たち。その人たちを見ると、自分はこうなりたいと思って始めたんだし、いまは俺らのことをそう思って見てくれてる人たちもいっぱいいるんだから、ここからもうひと頑張りだって改めて思えたんですよね。それで、2番からはもっと明るく、前向きな歌詞に変わるんです。“簡単じゃないことでも 複雑に絡まる前に”というのは、当時俺がすごい思ってたことなんですよ。キツいとき、ツラくなったときってどんどんどんどん自分が分からなくなってきて、ぐしゃぐしゃぐしゃってなるじゃないですか? そういうときは、途中で誰かに相談したり、ストレス発散でシドのライブに来るでもいいんですけど、途中で逃げ場所を見つけないと、病気と一緒で手遅れになっちゃうんですよ。それを自分で経験したんで、特にファンのみんなにはそうなってほしくないなと思って、そうなる前に“どうか一度 見せにおいで”と歌詞のなかに2回歌いこんだんです。俺じゃなくても、友達でも親でも誰でもいいんですけど、キツかったりツラくなったときは、一人で考え込んでぐしゃぐしゃってなるんじゃなくて。そういうときは冷静さに欠けるから、他の人に相談することが大事なんだよということを伝えたくて、こういう歌詞を書きました。そういうメッセージを込めた曲だから、アルバムの最後にもってきたのかな。いまはライブが終わったあとも、これのインストバージョンをSEとして流してることが多いです。シドにとって、大切な曲になりましたね。

ヘア&メイク / 坂野井秀明
スタイリング / 奥村 渉

衣装協力 / NOID.
https://store.noid.jp/

次回 9th Album『NOMAD』編は3月中旬掲載予定です。


LIVE DVD / Blu-ray『SID TOUR 2017 「NOMAD」』

2018年7月25日リリース
【初回生産限定盤DVD(DVD+写真集)】
KSBL-6322-6323 ¥6,000+税
【通常盤DVD】
KSBL-6324 ¥5,000+税
【初回生産限定盤Blu-ray(Blu-ray+写真集)】
KSXL-268-269 ¥7,000+税
【通常盤Blu-ray】
KSXL-270 ¥6,000+税

Mini Album『いちばん好きな場所』

2018年8月22日リリース
【初回生産限定盤(CD+DVD)】
KSCL-3076-3077 ¥2,788+税
【通常盤(CD)】
KSCL-3078 ¥1,852+税

ライブ情報

SID 15th Anniversary GRAND FINAL at 横浜アリーナ ~その未来へ~

2019年3月10日(日) 横浜アリーナ
http://archive.sid-web.info/15th/
公演スケジュールなどの詳細は公式サイトをご参照ください。

マオ from SID

マオ/福岡県出身。10月23日生まれ。2003年に結成されたロックバンド、シドのヴォーカリスト。
2008年10月「モノクロのキス」でメジャーデビュー。以降、「嘘」「S」「ANNIVERSARY」「螺旋のユメ」など、数多くの映画・アニメテーマ曲でヒットを放つ。2018年、バンド結成15周年を迎え、4月にはセレクションベストアルバム『SID Anime Best 2008-2017』をリリース。直後の5月から6月28日まで”SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 2018”と銘打った全国6都市14公演ツアーを開催。9月からはLIVE HOUSE TOUR”いちばん好きな場所”を展開、11月21日のマイナビBLITZ AKASAKAで全国31公演を無事に完走した。

オフィシャルサイト
http://www.maofromsid.com
http://sid-web.info

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