モリコメンド 一本釣り  vol. 107

Column

みゆな 16歳とは思えない作家性。想像、空想、妄想に生々しいリアリティを与え、歌う。

みゆな 16歳とは思えない作家性。想像、空想、妄想に生々しいリアリティを与え、歌う。

アコースティックギターで鳴らされるマイナーコードとともに聴こえてくるのは、“あなたの香りで目覚めた。あなたの甘い誘惑”という、どこか淫靡な雰囲気の歌詞。独特のブルース感、甘美な色気をたたえたボーカルに触れれば、まさか彼女が16歳の少女だとは思わないだろう。

宮崎在住、高校1年生の女性シンガーソングライター、みゆな。冒頭で紹介したのは、2月にリリースされたばかりの1stミニアルバム『眼』の1曲目に収められている「ふわふわ」という楽曲だ。作詞と作曲はもちろん彼女自身。「あなたの胸で泣き潰れて。」「強めのお酒で酔いつぶれて」という歌詞は明らかに彼女の等身大ではなく、おそらくは“ここではないどこか”“自分ではない誰か”、つまり、別の世界に思いを馳せながら生み出された曲なのだろう。じつは「ふわふわ」は、彼女にとって人生初のオリジナル曲だという。多くの場合、シンガーソングライターを志す人間は身近なものに題材を求めるだろうが、彼女は違う。想像、空想、妄想といったものに生々しいリアリティを与えることができる、天性の作家性と呼ぶべきセンスが備わっているのだと思う。

みゆなが音楽に触れた最初のきっかけは、小学校のときに参加していた合唱部。中学のときにオーディションを受けはじめ、10代とは思えない表現力の深さ、楽曲のオリジナリティによって音楽関係者から注目を集める。そして2018年の夏から地元・宮崎のストリート、福岡や東京・下北沢でライブ活動を本格的にスタートさせた。さらに大型音楽イベント“a-nation”の長崎公演に出演、インディーズ系音楽配信サイトEggsで1位を獲得するなど、幅広い音楽ファンの間でも徐々に浸透しはじめる。

彼女の音楽の特長は、凛とした意志に溢れたボーカル、そして、自らのリアルな思いをはっきりと刻み込んだ歌詞。フェイバリットとして挙げているONE OK ROCK、椎名林檎、高橋優、NakamuraEmiといったアーティストからの影響もあるのだろうが、彼女の歌には、ふだんは胸に秘めていること、なかなか人には伝えられない思いを気持ち良く解放し、リスナーの感情を揺さぶる強さが確かに宿っている。サウンドメイクの妙、歌の上手さといったファクターも必要だが、シンガーソングライターにとってもっとも重要なのは“これを伝えたい”という強い意思、そして、それを具現化する声の魅力。みゆなは16歳にして、その条件をしっかりとクリアしているのだ。

“目を逸らしたものに目を向ける”“自分の未来や夢を見つめる”という意味をタイトルに込めた1stミニアルバム『眼』にも、彼女の鮮烈な個性がまっすぐに描き込まれている。最初に紹介した「ふわふわ」は、アコースティックと歌を軸にしたミディアムチューン、ロック、歌謡、ブルースなどが混ぜ合わせたサウンド、そして、少しハスキーな声から生み出される胸を焦がされるような恋心は、リスナーを強引に振り向かせるような生命力に満ち溢れている。初期の椎名林檎を思い起こす人も多いだろうが、瑞々しい情感、日本語を心地よくグルーヴさせる歌いっぷりからは、確かなオリジナリティが伝わってくる。

2曲目の「ガムシャラ」(TVアニメ「ブラッククローバー」第5クール オープニングテーマ)は鋭利なギターフレーズから始まるロックチューン。成田ハネダ(パスピエ)の作曲のよる緻密に構築されたドラマティックなメロディ(緊張と解放のコントラストが素晴らしい)をしっかりと乗りこなしながら、葛藤を抱えつつも“どんな未来も舞うよ 風受けて/自分を追い越すまで”というラインを堂々と響かせている。続く「天上天下」(TVアニメ「ブラッククローバー」第5クール エンディングテーマ)はファンキーなギターカッティング、しなやかなリズムセクションを軸にしたダンサブルなナンバー。ラップの手法を交えたボーカルからは、シンガーとしてのカンの良さが感じられる。

さらにRADWIMPSの「なんでもないや」のカバー(ひとつひとつの言葉に豊かな情感を込めた歌唱が印象的)、オリジナル曲「たんぽぽ」(“ちっぽけな自分”をテーマにしたフォーキーなナンバー)を収録。色彩豊かなサウンドメイク、自身のリアルな思いに裏打ちされたメッセージ性、そして、“歌うこと”に対する強い意思がひとつになった、理想的なデビュー作だと思う。2月から3月にかけて、博多、渋谷、札幌、大阪、名古屋でインストアライブを行った彼女。YouTubeでも“高校生とは思えない歌声!”と話題を集めているが、オーディエンスに歌を直接届けることで、その魅力はさらに強く伝わっていくはずだ。

文 / 森朋之

その他のみゆなの作品はこちらへ。

オフィシャルサイト
https://www.miyunamiyuna.com

vol.106
vol.107
vol.108