Interview

クリープハイプの最高傑作『世界観』今、改めて「バンド」を歌う。

クリープハイプの最高傑作『世界観』今、改めて「バンド」を歌う。
クリープハイプは今年の1月に全国ツアー<わすれもの~つま先はその先へ~2016>を開催した。2012年4月発売のメジャー1stアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』のリリース・ツアーと同じ会場を回る、いわば“原点回帰”をテーマにしたツアーで、本編のラスト・ナンバーはその1stアルバムに収録されていた失恋ソング「手と手」だった。そして、前作アルバム『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』から約1年9ヵ月ぶりとなる通算4枚目のアルバム『世界観』の1曲目は、「手と手」のその後とも言える続編「手」であり、フロントマンの尾崎世界観が現3人のバンド・メンバーを正式メンバーに迎えた夜を描いた「バンド」で締められている。そうして、初心を思い起こす素振りを見せつつも、全編打ち込みのR&Bやラッパーのチプルソをゲストに迎えたヒップホップ、ラウドな弾き語りナンバーなど、ロック・バンドの枠を超えた楽曲にもチャレンジしている。原点回帰と進化の両立は意図的なものだったのか? 先のツアーの振り返りから話を始めた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 関 信行
ヘアメイク / 杉本和弘

徹底的にやりたいことをやりきりたいなという気持ちでした

<わすれもの>ツアーの本編の最後に「手と手」を歌っていて、ニュー・アルバム『世界観』の1曲目が「手」になっていますよね。シングル「鬼」のMVの「オレンジ」とのシンクロも含め、全部が原点回帰に繋がっていると感じました。

長谷川 こんなに“回帰”と言われると思っていなかったので結構びっくりしていますけど、その繋がっているという話はキレイだなと思いますね。その時々に一生懸命やっていたら、こうなっていったんですけど。

尾崎 全部が後付けなんですよね。たまたまというか。あのツアーも迷いながらやっていたところがあったし、そんなにわかりやすく確かなものをつかみましたという感じではなかったので。でも、ツアーでお客さんを見れたことは自分にとっては大きくて。お客さんの前でライブができるのは嬉しいことなので、そこから少しずつ、迷いながら制作を始めていった感じです。ただ、メチャクチャなことがしたいなとは思っていて。

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メチャクチャなことがしたいっていうのは?

尾崎 前作はしっかり考えながら作ったんですけど、あまり届かなかったという反省点があったので、今作は考えすぎずに好き勝手にやってみようと思って。徹底的にやりたいことをやりきりたいなという気持ちでした。

でも、結果的には原点回帰と進化の共存共栄を果たしたような、そういう意味ではコンセプトすら感じる作品に仕上がっていると思います。

尾崎 そうやっていろいろ考えてくれる人がいっぱいいたらいいですよね(苦笑)。原点回帰をツアーでしてみたけれど、「どうだろう」っていうなかで曲を作っていって、レコーディングして、松居(大悟)くんとまたやってみようと思ってMVを一緒にやって。「何か意味はあるんですか?」とよく聞かれるんですけど、特に意味はなくて。「メチャクチャにしてやろう」と思っていたのに、終わってみたら、すごくキレイにかっちりいろいろなものがハマっていてびっくりしたんです。

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メンバーのみなさんはどう感じてますか?

小川 ツアーはバンドとしてグッとまとまったというか、楽しかったですね。でも、そこで悔しい思いもあったりして。バンドの良さというものを改めて感じたところはありましたけど、アルバムを作っていくうえで過去を振り返ったかと言われると、そういうわけでもなくて。

そんなに初心に戻って制作しようという気持ちがあったわけではなかったんですね。

小泉 そうですね。むしろ新しいことをやろうというテーマのほうがいつも大きいです。1stアルバムを作っていた頃もそういう感覚で作っていたと思います。それじゃないものを選んだはずだったけど、結果がそういう見え方になったということだと思いますね。

尾崎 溜めてきたものを一曲一曲に全力でぶちまけるっていう意味では、当時と同じような気持ちでやらないといけないなと思っていたのはたしかですね。4枚目だけど1枚目のように聴いてもらいたいっていう気持ちもありましたし。

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「手」とか「バンド」のようにこれまでの歴史を感じさせる曲もありながら、「TRUE LOVE」「5%」のように新しい音も入っていて。そのバランスがいいなって思ったんですよね。中でも、進化の部分でまず一番驚いたのは、ラッパーでマルチプレイヤーでもあるチプルソさんとのコラボですよね。

尾崎 『MCバトル』が好きでよく観ていたんですけど、その中でかっこいいなと思って好きになって、イベントにも出てもらったりしていたんです。大阪に行くたびに会ってもいるし、ずいぶん前からアルバムで一緒にやりたいって決めていて。ある種、バンドとしては冒険ではあるけど、今回はやってみたいことはやろうと決めていたので。なんとなく弾いたギターから発展させたトラックだけを先に録ってチプルソに聴いてもらって、メールでやりとしながら歌詞を書いていきました。

長谷川 アルバムの中で、もしかしたら一番セッションじみた作り方をしているかもしれないですね。二人が交互に歌うっていうコンセプトは決まっていたので、ループを2番まで作ってレコーディングをして、しばらくしてから二人が歌を入れたんですけど、完成が楽しみな曲でしたね。

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ヒップホップって言っていい楽曲ですよね。

長谷川 バンドでやるヒップホップ。そういうものが録れたらいいなと思っていました。意外と弾いてる、叩いてる人たちの顔も見えるものになったので、ビートはカッチリしているけどコラボ感のある、面白いものになったなと思いますね。

小川 オケの中にも哀愁というか、ちょっと切ない感じがあったりするんですけど、リズムははっきりしているという。その中にどういう歌が乗るんだろうと、僕も楽しみにしていました。

続く「5%」は完全に打ち込みの曲ですよね。

尾崎 もともとは弾き語りのシンプルな曲なんです。曲が出来たときに平坦な感じにしたかったから、バンドでやると埋もれちゃうなと思っていて。いままでだったら、無理やりバンドでやってイメージと違うところに着地するっていう選択肢しかなかったし、そういうものだって諦めていたところがあったんですけど、今回のアルバムは自分が理想とするところまでやってみようと思えたので、初めて外部の方にトラックを作ってもらってもいいんじゃないかなと。これも「TRUE LOVE」と同じようにどうなるかわからなくて怖いと思ったんですけど、実際にやってみたら自分の気持ちが解消されたし、ファンの人も喜んでくれるものになったんじゃないかと思っています。

長谷川 僕らが演奏した音がいっさい入ってないというのが、まったく寂しくないんですよ。例えば、これが1stアルバムだったら、なんらかの形で無理やりにでも参加していたと思うんですけど、そうじゃないというのは今だからできることだし、よく決断をしてくれたなと思ってます。

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小川 出来上がったものを聴いたときに、生音で表現したらこういうふうにはならないので、曲の持っている方向性だったり、ささやかれるように歌われる部分が表現として合っているなと思いました。楽器の音をメンバーで鳴らさなきゃいけないという固定観念ではなくて、曲にどういうふうにアプローチしていくのが一番いいのか……今回のアルバムを作っていくうえで、いろんな曲が自由に考えられていると思うので、この曲だけでなく、全体がいい方向にいったと思ってます。尾崎が「怖い」と言ってましたけど、それが挑戦というか……どういうトラックがくるかわからないし、果たしてアルバムで並べたときにどうなのか、やったことがなくて不安な部分も多少はありましたけど、結果としてアルバムでしっくり聴ける曲になっているというのがすごく良かったです。

尾崎 こういう曲も表現できるっていうことは、またバンドにも返ってくるなって思いますね。

小泉 かっこいいですよね。アルバムの中にこの曲が入っていることがすごくいいと思うんです。バンドのアルバムで、弾き語りの曲も良しとする懐の深さみたいなものも見せられていると思うので。

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