冒険Bリーグ  vol. 14

Column

【W杯出場記念・特別編】「波は来ると思う」。日本代表主将、篠山竜青(東芝)が描く、日本バスケの未来

【W杯出場記念・特別編】「波は来ると思う」。日本代表主将、篠山竜青(東芝)が描く、日本バスケの未来

『冒険Bリーグ』第14回はW杯出場記念・特別編。川崎ブレイブサンダースの司令塔・篠山竜青を取り上げる。篠山は2016年9月にBリーグが開幕するまで、東芝の社員としてプレーをしていた。しかし今の彼はファンとの接し方という部分でも模範的なプロフェッショナルとなっている。Bリーグの「変化」を体現する存在と言っていいだろう。

さらに日本代表のキャプテンとして、ワールドカップ2019中国大会の出場にも貢献。今回はそんな篠山のファンサービス、Bリーグ発展に向けた思いを取り上げる。

今季の川崎は親会社が東芝からDeNAに変わり、平均入場客数は20%を超える増加を見せている。そんな変化について篠山に尋ねると、こう答えてくれた。

「前向きな変化が起きていると思いますが、変化という言葉を実はあまり使いたくありません。過去2年間もプロとして地域密着でやっていこうと、東芝の方がフロントに入ってやってくれていた。その2年間の下地も感じます。ただDeNAさんになって、野球のノウハウがありますし、フロントの人数もかなり増えました。そういう部分で厚みができたのかなとは感じます」

Bリーグの開幕は2016年9月。バスケ界の変化はそこから始まっていて、川崎も一昨年、昨年から継続して積み上げてきている。彼はそれを言いたかったのだろう。

篠山はファンサービスの意識が高い選手。今年1月19日に富山で開催されたBリーグ・オールスターゲームでも、篠山は「オフコートのMVP」と言える働きを示していた。

前日に高岡市の福祉施設で行われた交流イベントでは、篠山がANAのキャビンアテンダントと一緒に子供たちと接していた。篠山はビジネスクラスのお客に扮して子供たちのサービスを受けたと思えば、機長に扮してポーズを取る活躍ぶり。ちょっとした「お遊び」なのだが、ロールプレイングの役を全力で演じていた。彼は内輪受けや品のないおふざけでなく、ちょうどいいユーモアで親しみやすさを表現できる。

ファンサービスの意識について尋ねたら、彼はこう答えてくれた。

「社員のときは、東芝の会社からお給料をもらっていました。プロになって、当たり前ですけれど、チケット代やスポンサーさんからお金をもらうようになります。例えばお見送りで『今日はありがとうございました。また来てください』と言ったことによって、また来たと言ってくださるお客さんがリアルにいるんです。そういうひと言で、試合とは関係ないところでお客さんを呼べる手応えがあります。小さなところですけれど、それが積み重なっていければもっと人が沢山集まるとどろきアリーナになる。そこは意識してやっています」

一度の会話、ファンサービスで劇的にお客が増えるわけではない。しかし過去3シーズンの繰り返し、継続が川崎の集客増につながっているのだろう。お客が増えれば報酬は上がり、外国籍選手のレベルが上がり、プレー環境もよくなる。回りまわって代表の強化予算も増える。篠山はそのようなサイクルの中心にいる。

日本代表は選手全員がBリーガーという編成でイラン、カタールに連勝。2月24日にW杯アジア地区予選突破を決めた。試合後の篠山はこう口にしていた。

「技術的なところはもちろんありますけれど、Bリーグができたことによるプロ意識の上昇も含めて、メンタル的な成長があったと思います。W杯に出ることで注目してもらえると思うし、ひとつの波は来ると思います。それをしっかりつかんで、日本のバスケやBリーグを文化にしていくことができるかどうかはこれから。開幕してから地道に伸ばしてはいるけれど、飛躍的な認知度アップはまだ起こっていません。それを一気に突き抜けるチャンスをもらったと思っています」

彼の真面目さ、楽しさにはそれぞれ理由がある。こんなリーダーを持てて、川崎と日本代表は幸せだ。

取材・文 / 大島和人 写真提供 / B.LEAGUE

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https://www.bleague.jp/

著者プロフィール:大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。大学在学中にテレビ局の海外スポーツのリサーチャーとして報道の現場に足を踏み入れ、アメリカの四大スポーツに接していた。損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年から「球技ライター」として取材活動を開始。バスケの取材は2014年からと新参だが、試合はもちろんリーグの運営、クラブ経営といったディープな取材から、ファン目線のライトなネタまで、幅広い取材活動を行っている。

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