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奥田民生、盟友総出演の生誕50周年伝説ライブ映像があまりに凄い!

奥田民生、盟友総出演の生誕50周年伝説ライブ映像があまりに凄い!

文 / 平山雄一 撮影 / 三浦憲治


昨年は奥田民生の生誕50周年イヤー。地元・広島で5月に行なったユニコーン恒例の50祭イベント“もみじまんごじゅう“をはじめ、広島マツダスタジアムでの“ひとり股旅スペシャル”、同じく50歳になったユニコーンのEBIの“海老乃大漁祭”を祝ったり、夏フェスのライジング・サンでは“民生の部屋”を開設。トータス松本やパフュームを招いて、見事なホストぶりを披露した。秋からは、バンドMTR&Yを率いての全国ツアー「秋コレ」も実施した。

そんな2015年の最後を飾ったのが、12月22日に東京国際フォーラムで行なわれた「奥田民生 生誕50周年伝説“となりのベートーベン”」だった。2部構成で、ゲストが多数出演する内容は前代未聞。充実の音楽と濃厚な絡みは、“離れ業”と言っていい。まさに奥田民生だから実現した一夜の全貌が8カ月をかけて編集され、ついにDVD、Blu-ray、CDとしてリリースとなった。
もちろん僕は当日、この超スペシャル・イベントに参加したのだが、そのときにはすぐにわからなかったこと、感じられなかった音がこれらのパッケージから伝わってくる。2部構成のライブを、Blu-rayは1枚で、DVDとCDは2枚組として収録。まずはBlu-rayを中心に話を進めることにする。

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第1部のライブの映像が始まる前に、このイベントの発案者の斎藤有太がリハーサルの合い間に企画意図を語るシーンがある。奥田の50歳の祝いもあるが、斎藤が奥田と一緒に演奏を始めて20年になることも、このイベントを発案する大きなモチベーションだったという。さらに斎藤が参加する前から奥田を支えてきたスタッフたちがいる。「このイベントは俺たちと、スタッフからのリクエストであり、お祝いなんです」と、斎藤がさらに大きなモチベーションを語るシーンが貴重だ。
この語りの部分では、マネージャー、舞台監督、照明、楽器など、“奥田組”とも言えるスタッフたちの、リハーサル・スタジオでの何気ない表情が映し出されていて、斎藤の語る“モチベーション”が映像化されているのが嬉しい。このイベントに来れなかった人も、来た人も、この作品でなければ触れることのできない舞台裏の真実がここにある。
第1部は、奥田と交流のあるボーカリストが、奥田の曲を一人一曲ずつカバーする。登場しては奥田と会話を交わし、奥田の曲を歌っては次のボーカリストを紹介するという段取りだ。その段取りの“肝心”な部分もしっかり収録されているので、歌だけでなく、奥田と参加アーティストの関係性や、このイベントに対する奥田の気持ちが伝わってくる。

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たとえばトップバッターのオカモトショウ(OKAMOTO’S)が奥田を呼び込むと、奥田はすかさず「ありがとうございます。ゲストが歌ってくれるので、何とも言えない嬉しさがあります」と本音を漏らす。
もちろん奥田は歌うことも好きだが、演奏するのも大好きなのだ。それを反映して、第1部のバックを務めるのは、奥田民生自身。しかもバンドは、ソロ活動のライブを共にしてきた新旧メンバーが勢ぞろいする。第1部の前半は、初期の古田たかし(dr)、根岸孝旨(b)、長田進(g)、斎藤有太(kyd)が担当。奥田ソロのファンにとっては、このメンバーでの演奏シーンは懐かしくも嬉しくもあるに違いない。
くるりの岸田繁が歌う「The STANDARD」では、奥田がハモを付ける。面白いのは、このパートを歌う奥田は他では絶対に見れないこと。何しろ自分のライブでは奥田がリードパートを歌うのだから、あり得ないのだ。それにしても、奥田のハモは上手い。自分の曲だということを差し置いても、素晴らしいハーモニー・サウンドだ。それは岸田のボーカルをよく知っている奥田だからこそのものだ。岸田の隣りにさり気なく立つ奥田の姿が、2人のリスペクトし合う関係を象徴している。また曲が佳境に差しかかって、集中して歌う岸田を見て、奥田がベースの根岸と目を見合わせてにっこりするシーンも美しく、このBlu-rayの見どころの一つだ。
後半はバンドがMTR&Yに交代。斎藤はそのままで、小原礼(b)、湊雅史(dr)がバンドセットに入る。
まずTRICERATOPSの和田唱が「夕陽ヶ丘のサンセット」を歌う。その登場シーンが小気味いい。世代を越えて音楽でつながる親しさが、奥田と和田の笑顔から見て取れる。
演奏前に和田は愛用の朱色のストラトキャスターの6本の弦を、1本ずつ鳴らす。まるでこれから始まる“ギター・ゲーム”で使う自分の武器を、相手の奥田に確認してもらっているようで、二人の“永遠のギター少年”のセッションにふさわしい仕草が爽やかだ。

バンドは前半より野太い音で、次々に現われる“少年たち”をサポートする。Charもその一人だ。70年代から走り続けてきたCharの向こうに、さらに長い年月を走り続けてきた少し年上の小原礼が見えるのは、歴史的なシーンと言えるだろう。Charの抱えるピンクのストラトキャスターは、当日の朝、急にひらめいて持ってきたものだという。イントロでCharがこのギターでデリケートなフィードバック音を奏でる。奥田にギターでコードを弾くように、目でうながすシーンが素敵だ。

第1部のラストは、出演者全員で「イージュー★ライダー」。岸田から桜井秀俊→オカモトショウ→・・と続く豪華な歌い継ぎには、圧倒される。この曲も見どころだ。

第1部では、奥田がバックを務めることで、それぞれのミュージシャンの個性が見事にあぶり出されることになった。こんなイベントを50歳の記念にやってしまうアーティストは、他にいないだろう。それは奥田がいろんな人と音楽を楽しむことを愛しているからだろう。

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第2部は斎藤有太がどうしてもやりたかった企画で、フルオーケストラをバックに民生が歌う。その思いを語る映像から、斎藤の真摯な人間性が伝わってくる。おそらくこのイベントは、奥田も大変だったと思うが、アレンジや音楽的な演出を担当した斎藤がもっとも大変だったはずだ。その斎藤にスポットを当てた映像演出は、このイベントを見逃した人にも当日の雰囲気を味わってもらうのに最適な効果を上げている。

第2部のステージ上を埋めるのは、サザンや椎名林檎などのライブで活躍するストリングスとブラスだ。バンドも入れて50人の“ロック・オーケストラ”の景色は圧巻。彼らが、斎藤が入念に準備してきた“奥田用スコア”を演奏する。リハーサルのシーンでもチラリと聴こえてくるが、そのオーケストラ・サウンドは力強い。特にストリングスがパワフルで、驚かされる。斎藤は奥田のために、繊細さよりもパワーを重視したスコアを書いた。思いを込めて指揮を取る斎藤の、充実した表情が見ものだ。

「さすらい」では真心ブラザーズの桜井が、スーツを着てバイオリン隊に参加するという粋な計らいがあったり、奥田の肩越しにバックコーラスを務める和田唱の真剣な表情が見えたり、あの夜のリアルな場面が丁寧に切り取られる。

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アンコールは何と言っても「すばらしい日々」が凄い。斎藤が思い入れたっぷりにアレンジしたインストは、オーケストラの音から“歌詞”が聴こえてきそうな素晴らしい一篇となっている。

そしてこの一大イベントは奥田の音楽に賭ける個人的な思いをつづった「CUSTOM」で幕を閉じる。堂々とした決意の歌でありながら、押しつけがましいところがまったくない。これが“となりのベートーベン”というイベント・タイトルのゆえんだろう。

その他、吉井和哉の「手紙」の熱唱や、仲井戸麗市の含蓄のあるお祝いのMCなど、必見のシーンを挙げたらきりがない。また、CDで聴くと、「さすらい」がBlu-rayとはまた別の表情を見せてくれたりするのも一興だ。
参加したミュージシャンたちやスタッフたちは、日本の音楽文化の最良の部分を担ってきた人々だ。だからこの作品は、奥田民生というアーティストを通して見た、2015年の音楽シーンの優れたドキュメンタリーになっている。

リリース情報

2016年9月7日発売
「奥田民生 生誕50周年伝説“となりのベートーベン”」

【CD】

【CD】

【DVD】

【Blu-ray】

 【CD】
RCMR-2004-5/¥4,500+税
【DVD】
RCMR-2004-5/¥6,500+税
【Blu-ray】
RCMR-2503/¥7,500+税
【完全受注販売デラックスボックス】
RCMR-99001-5/¥18,500+税
※アナログサイズデラックス仕様のボックスに、DVD、Blu-ray、CDの全パッケージを収納。加えて、50P特別ブックレット、特製トランプも付属。
※完全受注販売デラックスボックスは、オンラインストア“ROCKET-EXPRESS”のみでの取り扱いとなります。

【収録曲】
1部  [Blu-ray] / DISC1 [DVD/CD]
1.マシマロ feat.オカモトショウ(OKAMOTO’S)
2.野ばら feat.浜崎貴司
3.悩んで学んで feat.うつみようこ&Leyona
4.The STANDARD feat.岸田繁(くるり)
5.愛のために feat.八熊慎一(SPARKS GO GO)
6.手紙 feat.吉井和哉
7.夕陽ヶ丘のサンセット feat.和田唱(TRICERATOPS)
8.スカイウォーカー feat.草野マサムネ(Spitz)
9.息子 feat.真心ブラザーズ
10.明日はどうだ feat.トータス松本(ウルフルズ)
11.人間 feat.仲井戸麗市
12.あくまでドライブ feat.Char
13.イージュー★ライダー

2部  [Blu-ray] / DISC1 [DVD/CD]
1.ライオンはトラより美しい
2.コーヒー
3.股旅(ジョンと)
4.手引きのようなもの
5.ヘヘヘイ
6.MILLEN BOX
7.さすらい
8.風は西から
9.アジアの純真 feat.PUFFY
10.すばらしい日々
11.CUSTOM

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ライブ情報

ユニコーンツアー2016「第三パラダイス」

2016年9月7日(水) 千葉・市川市文化会館 大ホール
9月9日 (金) 石川・本多の森ホール
9月11日 (日) 新潟テルサ
9月16日 (金) 埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
9月18日 (日) 宮城・仙台サンプラザホール
9月19日 (月/祝) 宮城・仙台サンプラザホール
9月22日 (木/祝) 山形・南陽市文化会館 大ホール
9月24日 (土)  秋田県民会館
10月1日 (土)  名古屋国際会議場センチュリーホール
10月2日 (日)  名古屋国際会議場センチュリーホール
10月7日 (金)  北海道・帯広市民文化ホール 大ホール
10月9日 (日)  北海道・札幌ニトリ文化ホール
10月10日 (月/祝) 北海道・札幌ニトリ文化ホール
10月14日 (金)  兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
10月15日 (土)  兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
10月17日 (月)  京都・ロームシアター京都
10月22日 (土)  東京・オリンパスホール八王子
10月23日 (日)  東京・オリンパスホール八王子
10月29日 (土)  神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール
10月30日 (日)  神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール
11月5日 (土)  福岡サンパレス
11月6日 (日)  福岡サンパレス
11月12日 (土)  大阪・オリックス劇場
11月13日 (日)  大阪・オリックス劇場
11月19日 (土)  広島文化学園HBGホール
11月20日 (日)  広島文化学園HBGホール
11月23日 (水/祝)  東京・中野サンプラザホール
11月24日 (木)  東京・中野サンプラザホール
12月5日 (月) 高知県立県民文化ホール オレンジホール
12月7日 (水)  大阪・フェスティバルホール
12月9日 (金) 東京国際フォーラム ホールA
12月17日 (土)  沖縄コンベンション劇場
12月18日 (日)  沖縄コンベンション劇場

弱虫のロック論Ⅱ(仮) リリース・パーティー

10月4日 (火) 東京都豊洲PIT
出演:奥田民生 / NICO Touches the Walls

【サンフジンズ】サンフジンズ対バン企画 “問診過注射2016” vol.9

2016年10月6日 (木) 北海道札幌サンプラザホール
11月3日(木) 大分県大分DRUM Be-0
12月13日(火) 東京都恵比寿LIQUIDROOM

パフィーと対バン「愛の説教小屋 FINAL」 奥田ファミリー頂上決戦 ~PUFFYフルバンド VS 奥田ぼっち参戦~

2016年12月22日 (木) 大阪府新歌舞伎座

奥田民生

1965年広島生まれ。1987年、ユニコーンのボーカリストとしてデビュー。1993年の解散を経て、1994年にシングル「愛のために」でソロ活動を本格的にスタート。「イージュー★ライダー」「さすらい」などヒットを飛ばし、井上陽水とのコラボレーションや、プロデューサーとしてもPUFFY、木村カエラを手掛けるなど、その才能をいかんなく発揮。弾き語りスタイルの“ひとり股旅”、ひとりレコーディングライヴ“ひとりカンタビレ”など活動形態は様々。2009年にはユニコーンの活動を再開し、ソロと並行して行う一方、世界的なミュージシャンであるスティーヴ・ジョーダンらとのThe Verbs、近年は岸田繁(くるり)、伊藤大地と結成したスリーピースバンド、サンフジンズとしても活動している。昨年50歳を迎え、新たにレーベル「ラーメンカレーミュージックレコード」を立ち上げ、アニバーサリーライブも数々行った。8月10日には、2年5ヵ月ぶりとなるユニコーンのアルバム『ゅ13-14』をリリースし、全国ツアー「第三パラダイス」がスタートしたばかり。

オフィシャルサイト http://okudatamio.jp/