山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 54

Column

ザ・ローリング・ストーンズ / ロックンロール・サヴァイヴァー 継続する志

ザ・ローリング・ストーンズ / ロックンロール・サヴァイヴァー 継続する志

1962年に英国で結成して以来、半世紀以上にわたってR&Rの王道を走り続けるザ・ローリング・ストーンズ。
3月15日からついに日本でも開催される大規模な企画展 “Exhibitionism”を目前に、山口洋がバンドの魅力、その存在の意味について考察する。


編集部からのリクエストは、再びザ・ローリング・ストーンズ。3月15日から大規模なエキシビジョンが始まるのに合わせて。

ええ、いくらでも書かせていただきますとも。わたくし、チャーリー・ワッツ翁のことなら、アイリッシュ・ウイスキーを1本空にしながら一晩中語り続けます。キースは言わずもがな、ビル・ワイマンについても、ブライアン・ジョーンズについても。ただし、なぜかミック・ジャガーだけは語りたくならないんですけどね。

ラジオから「HOT STUFF」が流れてきて完全にノックアウトされ、人生が変わったのが1976年、僕は中学1年生。そこからの自分の音楽的、精神的成長、そして紆余曲折の日々。どんな時もストーンズは傍に居てくれたのです。

『BLACK AND BLUE』(1976年、中学1年)➡︎『LOVE YOU LIVE』(1977年、中学2年)➡︎『SOME GIRLS』(1978年、中学3年)➡︎『EMOTIONAL RESCUE』(1980年、高校2年)➡︎『TATOO YOU』(1981年、高校3年)。

もっとも多感な時期に、細胞の隅々まで行き渡った黄金期のストーンズ。色あせないロックンロール。とある曲のイントロのピアノを聞いただけで、あの娘とデートした白い砂浜と、そこを歩いた足の裏の感触までを思いだします。青春の日々はストーンズによって、記憶されているのです。

同時に、1964年にリリースされたデビュー盤、『THE ROLLING STONES』(1964年、僕は2歳)に遡って、後追いで聴きあさることも始めました。ブルースという深遠かつ、情念の魂が奏でる音楽に、若い頃からたどり着くことができたのもストーンズのおかげなのです。

マディ・ウォーターズ、ジミー・リード、ロバート・ジョンソン、ハウリン・ウルフ、エルモア・ジェイムス、ウィリー・ディクソン、ルーファス・トーマス、それにチャック・ベリー、エトセトラ、エトセトラ。彼らがカヴァーした曲のオリジナルをたどることで、田舎の高校生はブルースの洗礼を受けました。その齢で本物の音楽の魂に触れたことは、財産です。だって、ほんとうにまやかしじゃないんだもん。

ストーンズの功績はロックンロールのビートを進化させたところにもあります。8ビートのひな型がまだ存在しない60年代。個性に富んだドラマーたち、誰もがそれを手探りで試行錯誤していた頃。

ジャズ畑出身のチャーリーとビル・ワイマンは8ビートと4ビートの中間のような、絶妙に揺れるビートを奏でていました。初期の録音を聴くと、試行錯誤を繰り返しているのがよくわかります。その過程は「発明」に近いと思うのです。結果、彼らは70年代後半にかけて、ストーンズにしか出せない絶妙なグルーヴを創りあげました。

それゆえ、ビル・ワイマンの抜けたストーンズは、残念ながら僕にとってストーンズとは言い難い。ダリル・ジョーンズは素晴しいけれど、ストーンズのベースは直立不動でベースを斜めに抱える男、ビル・ワイマンでなければ。ええ、ファン心理ってほんとに厄介です。すいません。

話を時系列に戻します。(僕にとっての)問題作、『UNDERCOVER』(1983年、大学2年)。いつものように胸を躍らせながら、ストーンズの新譜に針を落とします。1曲目からぶっ飛ばされる予定だったのに、なんだか響かない。ぐっと来ない。

まるで恋人にとつぜん別れを切りだされたような気持ちになって、そのアルバムを何度も聞いたけれど、ぐっと来ないのです。ほんとうに哀しかった。『UNDERCOVER』が好きな人、ごめんなさいね。でも、このアルバムで、同じ時代を生きてきた感覚が僕はズレてしまった。理由は未だにわからないのです。

それゆえ『TATOO YOU』のB面で、ストーンズとの恋愛は一度終わりました。偉大なソニー・ロリンズのサックスとともに。B面、ほんとうに好きだったなぁ(遠い目)。

1990年。僕はプロのミュージシャンになったばかり。ストーンズを観るのも、東京ドームでコンサートを体験するのも、コンサートに1万円を払ったも初めて。ええ、心躍らせて。

でも、とんでもなく音が悪かったのです。当時のドームの音響はほんとうにヒドかった。曲が進むごとにだんだん悲しくなってくるのです。大掛かりなセットなんかいらないから、ただいい演奏を聞きたかった。豆粒みたいなストーンズを観ながら、もう2度とドームのコンサートなんかに来るかと、固くこころに決めたのです。ファンはかように厄介。ただし、名曲「TUMBLING DICE」で号泣したことはお伝えしておかねば。

それからというもの。ストーンズは株式会社ローリング・ストーンズに見えるようになって、どんどん気持ちが離れていきました。渋谷公会堂あたりで特殊効果なしで、5人だけでエル・モカンボ・サイド(『LOVE YOU LIVE』に収録されているカナダの小さなクラブでのライヴ)みたいな演奏してくれるなら、30万払ってでも観にいくんだけれど。

でも、この頃。自分のバンドが今年40年目を迎えるのもあるのだけれど。気持ちが変化してきたのです。

自分が生まれる1年前から存在している、ストーンズの56年の歴史がどれだけのものなのか、身にしみてわかるようになりました。キースはお腹が出て、好々爺になり、ビルはいなくなり、チャーリーはガンを克服し、ロンは相変わらずのひょうきん者で、ミックの動きは未だ衰えない。これはいったい、どういうことなのか? どんな70代のじいさんたちなんだか。

これだけの長きにわたって、継続してきたということは、それだけでとてつもないことです。しかも、最前線を走り続けてきたこと。近年、メンバーがほんとうに楽しそうに演奏しているシーンが増えました。キューバでの演奏、ひさしぶりにタイトな演奏を聞いてこころが震えました。

こうなってくると、どうやって、ストーンズは終わるんだろう?と、つい、考えてしまいます。想像したくないけれど。彼らのことだから、誰かの命が尽きるまで、走り続けるのかなぁ?

ロックンロールとは継続する志のことでもあります。情熱と言い換えてもいい。

僕の前には道が、彼らが遺してくれた轍があるけれど、彼らの前にはないのです。いつだって前例になってきてくれた、偉大なるロックンロール・サヴァイヴァーたち。彼らか僕か。どちらかがくたばるまで、この耳に焼きつけていきたいと思います。

感謝を込めて、今を生きる。


©Mikio Ariga

ザ・ローリング・ストーンズ / THE ROLLING STONES

1962年4月英国ロンドンで結成。翌年シングル「COME ON」でデビュー。当初のメンバーはブライアン・ジョーンズ(Guitar)、イアン・スチュワート(Piano)、ミック・ジャガー(Vocal)、キース・リチャーズ(Guitar)。その後、ビル・ワイマン(Bass)、チャーリー・ワッツ(Drums)が参加。初期のレパートリーではR&Bとブルースのカヴァーが多くを占めていたが、その中にはR&Rが含まれ、ほどなくザ・ビートルズと拮抗するバンドとなる。バンド名はシカゴブルースの巨匠、マディ・ウォーターズの”Rollin’ Stone”にちなんで付けられた。
1968年発表の「JUMPIN’ JACK FLASH」以降は、よりルーツに根ざした泥くさいサウンドを展開。1969年、ジョーンズは体調不良と法律問題でバンドを脱退、その3週間後にプールで溺死。後任としてミック・テイラーが加入、2本のギター・アンサンブルを軸に独自のR&Rを確立。「HONKY TONK WOMEN」、「BROWN SUGAR」「TUMBLING DICE」等数々のヒット曲を生み出す。1976年にギタリストがテイラーからロン・ウッドに交代したあとも「MISS YOU」などのヒット曲を連発。1993年にワイマンがバンドを脱退、後任としてダリル・ジョーンズがベースを担当(正式メンバーとしては加入していない)。
1989年にロックの殿堂入り。全世界でのアルバム・セールスは2億枚以上。2019年4月20日、マイアミのハード・ロック・スタジアム公演を皮切りに“ノー・フィルター USツアー 2019”をスタートさせる。また、3月15日から5月6日、TOC五反田メッセにて大規模な企画展「Exhibitionism—ザ・ローリング・ストーンズ展」を開催。それに併せて1995年3月12日東京ドームで行われた “ザ・ヴードゥー・ラウンジ・ワールド・ツアー”日本公演のライヴ映像(及びCD)『ヴードゥー・ラウンジ・イン・ジャパン 1995』が全6形態で初めて再発される。

UNIVERSAL MUSIC JAPAN オフィシャルサイト

Exhibitionism—ザ・ローリング・ストーンズ展 オフィシャルサイト

『ヴードゥー・ラウンジ・イン・ジャパン 1995 [スペシャル・エディション / Exhibitionism – ザ・ローリング・ストーンズ展限定商品]』
ユニバーサル・ミュージック
PROT-4009 ¥9288(税込)
SD-Blu-ray+2SHM-CD(スペシャル・エディション / Exhibitionism – ザ・ローリング・ストーンズ展会場限定)/初CD化/日本限定発売
●ストーンズ2度目の来日の模様を収録。これまでVHSとLDでしか発売されていなかった作品を最新技術による再編集やリストア&リマスター
●特製スリーヴケース付/ステッカー3枚封入
●SD-Blu-rayにSHM-CD2枚をセットしたデジパック仕様
●有賀幹夫20ページ・フォトブック(正方形サイズ)付
●日本語字幕付
●解説:寺田正典
<SD-Blu-ray仕様>
収録時間:約130分/画面サイズ:16:9 [※]
SD素材をアップコンバートしたSD-Blu-ray仕様
音声:リニアPCMステレオ/DTS HDマスターオーディオ
[※] 本編映像はサイドパネル付きの16:9

『ヴードゥー・ラウンジ・イン・ジャパン 1995 [スペシャル・エディション / Exhibitionism – ザ・ローリング・ストーンズ展限定商品]』
ユニバーサル・ミュージック
PROT-3001 ¥8208(税込)
DVD+2SHM-CD(スペシャル・エディション / Exhibitionism – ザ・ローリング・ストーンズ展会場限定)/初CD化/日本限定発売
●ストーンズ2度目の来日の模様を収録。これまでVHSとLDでしか発売されていなかった作品を最新技術による再編集やリストア&リマスター
●特製スリーヴケース付/ステッカー3枚封入
●DVDにSHM-CD2枚をセットしたデジパック仕様
●有賀幹夫20ページ・フォトブック(正方形サイズ)付
●日本語字幕付
●解説:寺田正典
<DVD仕様>
収録時間:約130分/画面サイズ:4:3
音声:ドルビー・デジタル ステレオ/ドルビー・デジタル 5.1chサラウンド/DTSサラウンド・サウンド

『ヴードゥー・ラウンジ・イン・ジャパン 1995』
ユニバーサル・ミュージック
UIXY-15023 ¥5616(税込)
SD-Blu-ray
●有賀幹夫20ページ・フォトブック(長方形サイズ)付
●日本語字幕付
●解説:寺田正典
<SD-Blu-ray仕様>
収録時間:約130分
音声:リニアPCMステレオ/DTS HDマスターステレオ

関連音楽:ザ・ローリング・ストーンズ

著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。1990年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』には阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。2019年2月22日公開の映画『あの日のオルガン』(監督:平松恵美子、主演:戸田恵梨香、大原櫻子)にアン・サリーによるカヴァー「満月の夕(2018ver.)」が起用されたことでも話題に。2011年の東日本大震災後は、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らと“MY LIFE IS MY MESSAGE”として、福島県相馬市の人たちと希望のヴァイブレーションを起こすイベントを続けている。2018年4月から池畑潤二(Drums)、細海魚(Keyboard)
と新生HEATWAVEとしての活動を開始。今春3月25日からは名古屋を皮切りにソロ・ツアー“山口洋(HEATWAVE)the boy 40 tour”をスタートさせる。4月6日〜7日には東京・国立で本連載の番外編ライヴ・イベント第2弾を開催。トークとライヴの2部構成で、連載で書き下ろしたアーティストの楽曲紹介をはじめ、HEATWAVE結成40年秘話や、カヴァー曲、新曲などを各日異なるテーマで披露する。4月26日〜27日に“ARABAKI ROCK FEST.19”への出演も決まった。

オフィシャルサイト

Rock’n Roll Goes On!Vol.3

3月21日(木・祝)東京 代々木 Zher the ZOO
【出演】リクオwith HOBO HOUSE BAND(ベース:寺岡信芳/ギター:高木克/ドラム:小宮山純平/ペダルスティール:宮下広輔) ゲスト:山口洋(HEATWAVE)
詳細はこちら

山口洋(HEATWAVE)the boy 40 tour

2019年3月25日(月)名古屋TOKUZO
2019年3月26日(火)京都coffee house拾得(Jittoku)
2019年3月28日(木)高松 Music & Live RUFFHOUSE
2019年3月30日(土)広島 音楽喫茶ヲルガン座
2019年4月1日(月)大坂 南堀江 knave(ネイブ)
2019年4月3日(水)静岡 LIVEHOUSE UHU(ウーフー)
詳細はこちら

「Seize the Day/今を生きる」番外編トーク&ライヴ

“Long Way For Freedom”
2019年4月6日(土)国立 地球屋
“Long Way For 40th”
2019年4月7日(日)国立 地球屋
詳細はこちら

HEATWAVE SESSIONS 2019

2019年4月18日(木)横浜THUMBS UP(サムズアップ)
2019年4月20日(土)京都 磔磔(takutaku)*磔磔45周年記念 HEATWAVE SESSIONS 2019 in 磔磔
詳細はこちら

ARABAKI ROCK FEST.19
THE ARABAKI ROCKERS SATURDAY NIGHT ROCK’N’ ROLL SHOW 1969→2019

2019年4月27日(土)・28日(日)みちのく公園北地区「エコキャンプみちのく」(宮城県柴田郡川崎町大字川内字向原254番地)
出演 :池畑潤二(ROCK’N’ROLL GYPSIES/HEATWAVE)
陣内孝則 / 澄田健 / 百々和宏 / 穴井仁吉 / 田中元尚(TH eROCKERS)
山口洋 / 細海魚(HEATWAVE)
花田裕之 / 下山淳 / 市川勝也(ROCK’N’ROLL GYPSIES)
仲井戸”CHABO”麗市 / 土屋公平 / 早川岳晴(From麗蘭)
出演日、ステージは後日発表。
詳細は、ARABAKI ROCK FEST.19 オフィシャルサイト

vol.53
vol.54
vol.55