Interview

WEAVERが文字と音楽で紡ぐ物語。小説と共に書き下ろされたアルバム『流星コーリング』

WEAVERが文字と音楽で紡ぐ物語。小説と共に書き下ろされたアルバム『流星コーリング』

デビュー10周年のアニバーサリーイヤーに突入するWEAVERが2枚目のベストアルバム『ID 2』に加えて、通算7枚目のアルバム『流星コーリング』と同名小説を同時リリースする。
ニューアルバムは、昨年5月に『夢工場ラムレス』で小説家デビューを果たしたドラムの河邉 徹が書き下ろした新作に対し、WEAVERの3人で同作を原作にした映画のサウンドトラックを書き下ろすように制作した全11曲を収録。同じメンバーが小説とアルバムを同時に作るという“流星コーリングプロジェクト”の制作過程を聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ

WEAVERならマッチする気がしたし、面白いアイデアだなって

まず、小説とリンクしたアルバムを作ろうと思った経緯からお伺いできますか?

河邉 徹 10周年を迎えるにあたり、次にどんな作品を作っていこうかという話し合いをしていたときに、バンドメンバーに小説を書けるメンバーがいるのは珍しいことだし、その本をもとにして音楽を作ってみたらいいんじゃないか、という案が浮かんで。これまでの10年間で作ってきた音楽とはまた違う景色をお客さんに見せられるんじゃないかなというのもあったので、挑戦してみることにしました。実際にどうなるかっていうのはまったく想像がつかないなかでしたが、小説とアルバムを作るというところに着手しました。

杉本雄治 もともとWEAVERの歌詞は河邉がほとんど書いていて。すごくドラマチックで物語性もある世界観なんです。しかも、本当にさかのぼると、デビューする前、自分たちがまだ高校生だった頃に「ひとつのアルバムで物語を語れるような、ストーリーのある作品を作りたいよね」っていうのを夢見て話していたんですよ。それがようやくというか、10年を経て話に上がってきて。そういえば自分たちはそもそもそういう気持ちでいたよねって思い出して。だから、すごくワクワクしましたね。

奥野翔太 ほかのバンドではやらないようなことだけど、WEAVERならマッチする気がしたし、面白いアイデアだなって思いました。これまでの数年間は音楽的にいろいろなことにチャレンジしていた時期で。エレクトロなサウンドをやってみたり、デビュー当時のWEAVERが良しとしていたものとは離れた部分での勝負にも挑戦していたんですけど、やっぱり制作中は迷うこともあったし、窮屈に感じることもあって。そういうときにこの案を聞いたときは、楽曲にしても歌詞にしても、すごく自然にいいと思えるものがストレスなく出てくるんだろうなって思いましたね。

小説とアルバムの制作はどのように進めていったんですか?

河邉 まず、核となる小説のプロットをいくつかメンバーに見せて。その中のひとつに、『流星コーリング』となる、天文部の高校生たち4人が人工的な流れ星が降るのを見に行くという物語があったんです。WEAVER自体、過去に星の歌があったりしたし、今のWEAVERに似合うんじゃないかということで、この題材に決めました。そのあと、チーム全体でまずは起承転結、大きく4つくらいに分けたストーリーの流れをみんなで共有して。だいたい3ヵ月くらいかな。そのプロットに対して、小説全体を書いていくのと同時進行で曲も作っていきました。

「最後の夜と流星」は、全体のテーマソングになる強い曲

昨年の7月に第1弾として、 WEAVERの王道とも言えるピアノロックナンバー「最後の夜と流星」が配信リリースされました。

杉本 一番最初に書いた曲ですね。物語の大きなテーマでもある“星”と、もどかしさみたいなものをずっと背負っている主人公を描いていて。僕らの日常的にも落とし込める心情が多かったので、こういう切ないピアノロックサウンドになっていきました。その中でも、主人公がどんどん前を向いていく推進力も表したいなという思いもあったし、この曲は全体のテーマソングになる強い曲だなということで第1弾に選びました。

河邉さんは、小説を書きながらも、それとは別に、曲に合わせた歌詞を書いてるんですよね。

河邉 そうですね。ただ、その頃には小説をほぼすべて書き上げていて。最初に出す曲を「最後の夜と流星」にしようよって決まった段階で、第1弾としてみんなに聴いてもらう曲の歌詞はどんなものがいいんだろうということを考えながら書いていきました。やっぱり一番最初に出す曲ということもあって、『流星コーリング』の世界観をすべて包括するような歌詞にしたかったんですね。だから、すごく苦労しました。僕らは最後まで話を知っているけれど、それを明かさずに、オープニング感がありつつ、けど、この世界観を全部表せるっていうさじ加減が難しいところで。でも、原作者と作詞者が同じ人間なので、何を書いても嘘じゃないような気持ちはあって。工夫できることはたくさんあったし、小説に出てくる一説が歌詞とリンクしてることも含め、アイデア次第でいろいろとできるなって思いながら書いていきましたね。

“明日のない世界”とか“今日がループしていく”という物語のテーマが描かれていますよね。一方で、サウンドに関しては、奥野さんが言っていた「デビュー当時に良しとしていた」という原点に立ち返っている印象も受けました。

奥野 そうですね。ピアノバンドというか、バンドとしてのエモーショナルな部分という意味では原点に立ち返りつつも、サウンド的には今っぽい音を入れているので、この10年間で培ってきたものを入れられているなというのはあります。それにこの曲は、サビのメロディは最初にあったものと変えて、より即効性のある、耳に残るものになっていて。小説とは関係ないところから聴く人も惹かれるような曲にできたらいいなっていう気持ちもあったし、いろんなものを慎重に精査して、オープニング曲として作り上げていった楽曲だったと思います。

物語が核にある楽曲制作だったから、今までだったら「バンドらしくない」ということにも挑戦できた

第2弾は10月に配信されたピアノバラード「栞」ですが、仲宗根泉(HY)さんとのデュエットになっています。女性ボーカルとのデュエットというのも新たな試みですよね。

杉本 もともとこの曲は、小説の中に“詩織”という名前のヒロインがいて、彼女が夜空を見上げるシーンが印象的に出てくるので、夜空が似合うような楽曲を作りたいなと思ったところから生まれました。その中でも、一緒にいたいのにいられないとか、伝えたいのに伝えられないっていう、詩織の切なさを歌えるバラードを書けたらという気持ちで作りました。最初はデュエットするイメージはなかったんですけど、女性の歌だから女性に歌ってもらうのはどうだろう?ということになったときに、全員一致で仲宗根さんにお願いしたいってなりました。

河邉 物語が核にある楽曲制作だったからこそ、今までだったら「それはちょっとバンドらしくないね」って思っていたようなことにも挑戦できたというか。自分たちのアイデアを自由に作品に詰め込めたんじゃないかなと思っています。

奥野 河邉 徹の歌詞の世界観は、主人公がめちゃくちゃ強くて引っ張っていくような感じではないというか。どちらかというと気弱な男の子が主人公であることが多いので、そういう意味でも女性的な視点や声が合うっていうこともありますし、河邉がもともと持っている魅力のひとつが新たに引き出されたなっていう感覚がすごくありますね。

実際に初めてデュエットしてみてどう感じました?

杉本 女性じゃないと歌えない曲があるんだなっていうのを改めて思いましたし、この曲を聴いたスタッフさんから「WEAVERって、すごくいい曲書くんだね」って、ちょっと失礼なことを言われたりして(笑)。でも、別の人が歌うことによって、「WEAVERの曲がいい」っていうことを感じてもらえた気がするので、聴く人にも新鮮さを届けることができると思うし、自分たちの中でも、自分たちの曲の良さを改めて感じられた曲だったと思います。

「流れ星の声」の歌詞としては、過去を振り返っている追想のようなシーンですよね。

杉本 いわゆる小説の前書きというか。

河邉 一番最初のシーンのような雰囲気があるんですけど、小説にはこういうシーンはまったくないんです。未来の自分たちがいるんだというような視点から物語に入っていく。小説とリンクしてはいるけど、小説にはないシーンを歌詞には描いています。今回、両方を手に取ってもらうので、『流星コーリング』の世界観により深く入ってもらえるようにこういう形にしました。

WEAVERの最近の活動をこの作品にきちんと落とし込むという意味でもすごく大切

原作の小説にはなかった、大人になった主人公の姿が描かれた映画『世界の中心で愛を叫ぶ』や『君の膵臓を食べたい』のスタイルですよね。続く、第3弾は12月に配信されたダンスロック「Loop the night」でした。

河邉 この物語のキーワードが“ループ”であるっていうことは最初からメンバー間の共通認識として持っていたので、楽曲制作の段階で、ループするようなリフやメロディがある、そんなトラックやサウンドのイメージはみんなの頭の中にありました。歌詞自体も、同じ日をループしてしまって次の日にいけない不思議な現象に巻き込まれる物語なので、同じシーンが繰り返されたり、ループする世界を表現できたらなと思っていました。

杉本 “ループ”というのはすごく重要なキーワードになっていくので、制作前に4つに分けたテーマのうちの大きな柱のひとつにしたいっていうのは、僕らの中で初めからありましたね。舞台としては日常的ではあるんですけど、人工流星なんてまだ起きてもいないことですし、ループという部分でもSF感があったので、WEAVERがこの2〜3年やってきたエレクトロサウンドも落とし込みたいなっていうのがあって。物語の中でも重要なテーマなんですけど、WEAVERの最近の活動をこの作品にきちんと落とし込むという意味でもすごく大切な曲になりました。

このアルバムを聴いてから、ベストアルバム『ID 2』に戻ると、シンセが効いたエレポップ「S.O.S.」やエレクトロファンク「Another World」の意味合いがまた違ってくるような気がします。

奥野 そうですね。これまで「Another World」とかでチャレンジしてきたものをいい形で昇華できたなというか、答えを出せたなって思います。それはバンドの中でというよりも、ファンの皆さんにとって「あ、こういうことだったんだな」ってわかってもらえるようなものになったんじゃないかと。決してここを目指して「Another World」を作ったわけではないんですけど、やっぱり10周年、右往左往しながら歩んできたものを全部自分たちの力にできてるなっていう実感は、この曲によってすごく感じます。そういう意味でも本当にこの10年間違いじゃなかったって答えになるような楽曲でもあるので、大事な曲ですね。

杉本 バンドがサウンド面で変化していくのは必然的なことだと思うんですけど、なかにはそのサウンドにはついていけない、もしくは嫌い、もともとのピアノがいいという方もいて。それらを理解しながら、変化を恐れず、僕たちもここまで進んできたんですけど、そういう最近ちょっとWEAVERから離れかけている人たちにも、改めて10周年を迎えるWEAVERの根本はズレてないというか、この10年の流れを受け入れてもらえるものになればいいなと思っていますし、僕ら自身もこの10年間のすべてをこの作品で肯定できるようなものにしたいという思いを持っていますね。

音楽って不思議で、文字だけでは伝わらない気持ちを伝えてくれる

そして、第4弾はR&B感もある「透明少女」なんですが、ここまでくると、詩織の正体についても想像ができて。

河邉 ふふふ。歌詞を読み解くと答えが出ると思うんですけど(含笑)。この曲は、一番最後ということもあるので、ネタばらし的なところも含めていますね。小説を読み終えた人が聴いて「そういうことだよね」と納得する、おさらいのような部分もあります。やっぱり音楽って不思議で、文字だけでは伝わらない気持ちを伝えてくれるので、小説を読んだ人がこの曲を聴いて、「あのときやっぱりそう思ってたんだよね?」ってなる歌詞を書けたらなって思ってました。

杉本 Bメロは女性ボーカルのゲストを迎えて歌ってもらっているんですけど、なかなか前に踏み出せない主人公がいろんなつらい経験を乗り越えて、ようやく前へと進める楽曲になればいいなと思ったので、最後は詩織の声でいきたいと思いました。なんといってもメロディの強さがある曲だと思うので、第4弾に適した曲なんじゃないかなと思います。

「I would die for you」は、WEAVER史上初めての詞先曲

配信でリリースされた起承転結の4曲目のあとに、アルバムには「I would die for you」というタイトルだけでも思わせぶりなラブソングが収録されています。

杉本 最後にヒロインが主人公に向けて手紙とともに残す曲ですね。この曲はWEAVER史上初めての詞先曲になっていまして。もともとはまったく違う曲調で、曲先で書いていたんですけど、このアルバムは河邉が小説に紡いだ言葉を軸に物語を作る、サウンドトラックとしての意味合いが強いなと思ったのと、小説の中でヒロインが主人公に向けて言葉を届けるというシーンなので、言葉が一番伝わるものを作りたいという思いがあったので、改めて詞先で書きたいってお願いして作った曲です。

河邉 杉本から詞先で曲を作りたいっていう話があったので、僕は元の曲のメロディの縛りから解き放たれて、もう一度自分の歌詞を見直して、付け足したり語尾を替えたり考え直して、新しい歌詞を渡したんです。そのときにタイトルは「I would die for you」にしたいなって思っていて。というのも、『流星コーリング』の本文中に唯一楽曲のタイトルが出てくるんですよ。「何を聴いてるの?」「この曲だよ」というような会話が。そこで、聴いていた曲というのはこういうメッセージのある曲なんだというリンクがあると、小説を読んだ人にとってより印象に残るかなと思って。それこそ原作者と作詞者が一緒だからこそできる面白い試みですよね。

この曲のあとに、花澤香菜さんがナレーションを務めたプロローグが収録されてます。

河邉 花澤さんはすごくきれいな透き通った声で。これ自体があらすじというか、主人公の詩織が物語をしっかり伝えているようなイメージで聴いてもらえたらと思って入れました。このトラックが小説とアルバムの『流星コーリング』を繋げるような役割になればなと思ってます。

WEAVERの良さを最新版にアップデートできた作品

全11曲が完成して、新たな試みを終えた今、どんな感想を抱いてますか。

奥野 11曲あるくせに30数分なんですよね。だから、特殊なアルバムではあるんですけど、やっぱり曲と曲の接着力とか世界観の繋がり具合というのは絶妙だなと思いますし、WEAVERがやりたい世界観とのマッチングっていうのも、ここ数年の作品と比べてもすごく強く出てると感じています。原点に戻っているのに新しいものをちゃんと提示できたかなと。

杉本 この世界観は自分たちが絶対に得意だろうなっていうものだったので、もともとあったWEAVERの良さを最新版にアップデートできた作品なんじゃないかなと思います。この10年間、いろんなチャレンジをしてきたことや、いろんな経験をしてきたことがあったからこそ出てきたアイデアやサウンドが、どの曲にも詰まっているので、最近あった産みの苦しみはこの作品にはまったくなくて。自分の中でこの10年で培ってきたものをちゃんと形に、素直に音にして届けることができた作品だなって思います。

河邉 誰も挑戦したことのないようなことに挑戦したんだなって思います。面白いことになるだろうなとは思っていましたけど、最初はどんなふうになるのか、先の見えない不安も実はあったんです。でも、小説とアルバム、その2つをもってして完結する作品が完成して、今は早くお客さんにどっちも楽しんでもらいたいなという思いでいっぱいですね。

今、バンドを10年続けられるって、本当にすごいことなんだって実感してる

今後も見えてきましたか?

杉本 そうですね。これまでは、自分たちの幅の広さをなかなか武器にできていなかったんですけど、まさに、そのすべてを発揮できる作品になったなと思っていて。河邉が歌詞を書いていく以上はコンセプトとなるストーリーがあるので、今回のような作り方はWEAVERのスタイルに合うという実感も得たし、ピアノロックじゃないといけないっていうしがらみのようなものに捉われずに、その物語に対して、こういう音を乗せたい、こういう言葉を紡ぎたいって、素直に湧いてくるものを自由に音楽にすることを続けていきたいなって思います。これで完結させるんじゃなく、次に広げていきたいなって思ってます。

そして、1年ぶりとなる東名阪ツアーが控えてます。

河邉 ツアーでも楽曲と小説の世界観が丸ごと伝わるような、今まで見たことのないショーを作り上げたいなって思いますね。

杉本 小説を読んで来てくれたら一番伝わると思うんですけど、そうでない人に向けても、ライヴの中だけでひとつのストーリーを見せられたらなって思います。デビューした当時は怖いもの知らずというか、ただ夢を見てた青年だったんですけど(笑)、いろんなことを経験して、荒波にも揉まれてきて……。今、バンドを10年続けられるって、本当にすごいことなんだっていうことを実感してるタイミングなんです。聴いてくれる人がいるからこその音楽だってことはこれまでも言い続けてきましたけど、それがすべてだなって本当に強く感じているので、この10年間、一曲でもいいからWEAVERの曲を聴いてくれた人に対して、改めて「WEAVERっていいよね」って言ってもらえるような作品がこうして形になって、ツアーを回れることが嬉しいですし、しっかりと感謝も伝えていきたいなと思います。

関連書籍:河邉徹『夢工場ラムレス』

WEAVER 14th TOUR 2019『I’m Calling You〜流星前夜〜』

2019年3月23日(土)愛知 ダイアモンドホール
2019年3月24日(日)大阪 BIGCAT
2019年3月31日(日)東京 マイナビBLITZ⾚坂

WEAVER(ウィーバー)

杉本雄治(piano, vocal)、奥野翔太(bass, chorus)、河邉 徹(drums, chorus)。
2004年に結成。2009年10月にダウンロードシングル「白昼夢」にてデビュー。翌年発表のシングル「Hard to say I love you~言い出せなくて~」、「僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから~」はそれぞれドラマ、CMソングに抜擢され、話題に。2014年1月末から7月にロンドンへ留学。2017年に「S/S」「A/W」の2枚のEPを発表。2018年5月には河邉が長編小説『夢工場ラムレス』にて作家デビューしたほか、杉本は舞台音楽も手がけており、地球ゴージャスプロデュース『ZEROTOPIA』の音楽をはじめ、9月〜上演ミュージカル『怪人と探偵』の作曲を担当する。奥野は”さや姉”こと山本彩のツアーサポートベースを担当。

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