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初舞台の林遣都をはじめ、松重豊、鈴木京香、夏帆らが演じる家族劇

初舞台の林遣都をはじめ、松重豊、鈴木京香、夏帆らが演じる家族劇

ドラマ『信長のシェフ』(フジテレビ/2013)『弱くても勝てます〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜』(日本テレビ/2014)の脚本や『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』(NHK)のコント執筆など、幅広いフィールドで活躍している倉持裕が作・演出を手がけるM&Oplaysプロデュースの舞台『家族の基礎〜大道寺家の人々〜』がBunkamuraシアターコクーンにて開幕した。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影/ 田中亜紀・柴田和彦(メイン写真・★印写真)

荒唐無稽でとんでもない、かなりぶっ飛んだ事件がハイテンポで頻発する家族劇

本作は、波乱万丈な運命を辿る一家<大道寺家>の人々と彼らを取り巻く個性豊かな人々の成功と挫折、混乱と狂騒を描く家族コメディ。大道寺の家の両親を舞台では初の夫婦役となる松重豊と鈴木京香が演じ、長男に舞台初挑戦となる林遣都、長女に夏帆、大道寺家の子供同然に育つ近所の子として、堀井新太が出演。さらに、六角精児、坪倉由幸(我が家)、黒川芽以など、芸達者な面々が脇を固める。 kazokukiso_kaiken_gousei_1 初日を控えた9月5日には、倉持をはじめ、松重や鈴木らキャストが勢揃いしての初日前会見が行われた。 kazokukiso_kaiken_gousei_2 昨年は、代表作である『鎌塚氏』シリーズなどのコメディ作品とは一線を画した舞台『虹とマーブル』で高度成長期に社会の底辺から成り上がっていく男を中心にした人間ドラマに挑戦した倉持は「シアターコクーン初進出となる作品なので、自分が今、一番得意とするコメディで勝負をかけようと思いました」と力強く語り、「荒唐無稽でとんでもない、かなりぶっ飛んだ事件が、そろそろ落ち着けって言われるくらいのハイテンポで次々と頻発する家族劇です。なかなか見たことのない家族劇に仕上がっていると思います」とコメントした。
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大道寺家の父親・尚親役の松重は「僕は10歳から実年齢(現53歳)くらいまでを演じないといけなくて。冒頭の10歳のパートを演じただけで息が上がってるんですけど、2時間35分という時間を人生のように走っていきたいと思います」と意気込みを語った。 kazokukiso_0228 尚親の妻・須真と母親の二役を演じる鈴木京香が「緊張がMAXで、だんだん、普段の言動まで変になってきました」と語ると、キャスト陣からは笑い声が沸き起こった。1ヵ月にわたる稽古期間で築かれたチームワークの良さとなごやかな雰囲気を感じさせる発言のあと、「とにかく楽しい家族の姿を舞台いっぱいに繰り広げて頑張りたいと思います。楽しい舞台になると思いますので、ぜひよろしくお願いします」と深々と頭を下げた。 kazokukiso_0226 また、長女の友人で、長男の初恋の相手・由弦を演じる黒川が「コメディの要素はあるんですが、最後のシーンは稽古場で泣いちゃうくらい感動しました」と述べる一方、大衆演劇<五郎丸一座>の座長役の六角は「大道寺家にいろいろ関わりながら、長い間にわたって迷惑をかけていく、とてもやりがいのある役でございます。自分の人生を鑑みながらやらせていただけることが、非常に楽しくもあり、悲しくもあります……」と、ギャンブル好きで3度の離婚歴がある自身の半生を振り返るかのように、実感を込めて話した。 kazokukiso_0002 物語は、椅子に座った尚親が長男の益人からインタビューを受けているシーンからスタートする。30年以上前の幼少期を語りだすと、舞台後方の壁が開き、五郎丸一座の芝居がクライマックスを迎える瞬間へとタイムスリップ。五郎丸が「尚坊! 幕だ、幕」と呼びかけると、尚親が着ていた服がはだけ、半ズボンをはいた小学生の姿になり、明るく快活に飛び跳ねる。さらに、尚親と母親の関係性を垣間見せたあと、五郎丸が「♪MY MOTHER IS URBAN ROYER〜」と美声を響かせると、時代は一気に15年後へ。弁護士になった20代の尚親の弁護士事務所が登場するのだが、松重による50代から10歳、10歳から20代へと年齢に合わせて変化する声のトーンの違いには驚かされた。 kazokukiso_0038 その後、尚親は女優の卵である須真と出会い、プロポーズをし、二人の子供が生まれる。女優として活躍する夢を捨てきれないままに母親になった須真を演じた鈴木のチャーミングな表情には観客を引き込む強烈な力がある。 kazokukiso_0144 また、母親の期待にこたえるべく、勉強に励みながらも本当は芸術家志望である長男の益人を林が熱演。一方、長女の紅子役の夏帆は、何事も長男優先で両親の愛を受けてないと感じている不満を攻撃的な言動で表現し、会場の笑いを誘っていた。二人のキャラクターには、家庭内の“愛と教育”というテーマも託され、男と女、夢想主義者と現実主義者、従順と反発という二面性が表されていた。
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仕事ばかりで子育てを妻に任せきりだった尚親は弁護士を辞め、酒屋を開くことを一方的に提案。酒屋の店番をしていた紅子が常連客に益人の作品である傘を貸したことがきっかけで大道寺家は莫大な財産を得る。成金となった大道寺家は“大道寺シアター”なる劇場を作るが……。大道寺シアターのこけら落とし公演の舞台上と舞台裏の混乱を同時に見せるダイナミズムは、ぜひ生で体感してほしいところ。
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五郎丸は尚親の人生にたびたび現れてはトラブルを起こし、坪倉演じる元汚職警官で探偵の千々松がさらにかき乱し、近所の子である明司は長男長女の変化成長を図る鏡となっていた。そして、紅子の友人で自由人の由弦役の黒川は、大道寺家の地下やバーでラブ・ソングを歌い、舞台を彩っていたが、彼女が涙したクライマックスは、ハッピーエンドなのかどうか。家族の幸せや温かさを感じる人もいるだろうし、父親や母親、もしくは子供たちの誰に感情移入をして観たかによっても捉え方は変わってくるだろう。きっと、この舞台の登場人物たちも、それぞれが異なる家族観と家族愛を持っていて、それがユーモアと事件を引き連れ猛烈なドライブを起こすことになるのだ。
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また、大道寺家に訪れた様々な事柄は当事者にとっては悲劇ではあるが、他者からみると喜劇であり、逆に、笑いの裏にはつねに涙も感じる。歌あり、ダンスあり、大衆演劇やオーディション風景、大捕り物まで。大いに笑い、ドキドキしながら、自分にとっての家族の幸せとは何か?に頭を巡らせずにはいられない2時間半。家族に対する愛とユーモアと切なさが独特の感性で絡み合い、流れ出している“普通ではない”家族の物語だが、それぞれの根底にある家族に対する感情は、自分たちともどこか似たものがあるような思いがする。
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尚、この公演は、9月28日までシアターコクーンで上演されたのち、愛知、大阪、静岡と巡演し、10月16日に千秋楽を迎える。

ステージ情報

撮影 / 三浦憲治 宣伝イラスト / 白根ゆたんぽ

撮影 / 三浦憲治 宣伝イラスト / 白根ゆたんぽ

M&Oplays プロデュース『家族の基礎〜大道寺家の人々〜』

【東京公演】2016年9月6日(火)〜9月28日(水)シアターコクーン
【愛知公演】2016年10月1日(土)・2日(日)刈谷市総合文化センター 大ホール
【大阪公演】2016年10月8日(土)〜10月10日(月・祝)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
【静岡公演】2016年10月16日(日)浜北文化センター 大ホール

【作・演出】倉持裕 【キャスト】松重豊 鈴木京香 夏帆 林遣都 堀井新太 黒川芽以 山本圭祐 坪倉由幸 眞島秀和 六角精児
長田奈麻 児玉貴志 粕谷吉洋 水間ロン 山口航太 近藤フク
【主催・製作】㈱ M&Oplays

オフィシャルサイト http://mo-plays.com/kazokunokiso/

M&Oplaysプロデュース「 家族の基礎~大道寺家の人々~」30秒CM

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