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ピアノ弾き語りスタイルに回帰したノラ・ジョーンズが魅せた特別な夜

ピアノ弾き語りスタイルに回帰したノラ・ジョーンズが魅せた特別な夜

 ノラ・ジョーンズが10月5日に発売される新作アルバム『デイ・ブレイクス』を記念して、「BLUE NOTE TOKYO」でショーケース・ライブを開催した。会場にはアルバム予約などの一般応募の当選者、さらに多数のマスコミ関係者が詰めかけた。とはいえジャズ・クラブなので、キャパは250名ほどであり、すぐ目の前に彼女が感じられる、文字通りスペシャルな一夜となった。

まず進行役のクリス・ペプラーが登場し、ノラを招き入れ、新作への想い、曲作りに関することをインタビュー。そしていよいよライブがスタートする。ピアノの前に座った彼女は、この場所で演奏出来る喜びを手短に語る。オープニングは、アルバムのリード曲であり、最初に聴いた時から馴染みがあるかのように親しめた「キャリー・オン」。人生において、誰しも様々な荷物を抱えざるを得ないけど、それでも前を向こうとする人を応援する名曲だ。さらにベースが“ウォーキング”的アクセントでまさにジャズ・トリオな雰囲気の「イッツ・ア・ワンダフル・タイム・フォー・ラヴ」と、新作からのナンバーが続く。中域の豊かさを感じるその声は、まさに“中身のあるもの”としてこちらへ届く。彼女の演奏するピアノは“歌心”にあふれ、時には自慢の“スモーキー・ヴォイス”を包み、さらにはまだ見ぬ景色へと歌を先導していった。

ちなみにこの日はベースとドラムを加えた演奏だった。ベースはMonday満ちるはじめ様々なミュージシャンとの共演で知られる 小泉P克人、ドラムはSOIL&”PIMP”SESSIONSのメンバーであるみどりんという、日本の俊英ふたりが務めていた。以前、共演経験があったわけじゃない三人だけど、安定感があってハツラツとしたアンサンブルが届く。ミュージシャン各々にJAZZやSOULの確かな素養があれば、それはすぐさま音楽の“共通語”へと変わるが、それを示す実に良い例だったかもしれない。

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新作のなかでもひときわ名曲だと思っていた「トラジディ」が聴けたのも嬉しかった。ルーツ・ミュージックに根ざしつつもメロディの豊かさが感じられる作品が多い彼女だが、特に冒頭の「キャリー・オン」やこの曲は、普段、洋楽に関心ない人でも親しみやすいのではと思う。その理由は70年代の洋楽ヒット的な彫りの深いメロディ・ラインとでもいうか…。さらに「トラジディ」では、後半で彼女が声を張って、ハイ・トーンで盛り上げるあたりも迫力充分だった。

これまでと雰囲気が違った曲調だったのが、同じく新作からの「フリップサイド」だ。ここではベースの小泉がアップライトからエレキ・ベースへ持ち替えての演奏となる。夜の幹線道路を心地良く疾走するかのようなビートを伴うこの作品。曲が進むにつれて強靭になっていくグルーヴが、まさに爽快であった。ピアノやジャズの要素が増したことで、「初期に戻った」という評価が出来なくもない『デイ・ブレイクス』だが、単なる回顧ではないことが、こうした演奏からも伝わった。

このあと、ノラは「ゲストを紹介する」とひとりの男を招き入れた。それはジェシー・ハリス。言わずと知れた、彼女の出世作「ドント・ノー・ホワイ」の作者である。そしてジェシーがアコースティック・ギターで加わり、その曲を…。『デイ・ブレイクス』のショーケース・ライブということで、もちろん中心は新作からのナンバーだったが、最後に彼女から、大きな大きな別のプレゼントをもらった気分だった。

取材・文/小貫信昭 撮影/濱谷幸江

リリース情報

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デイ・ブレイクス

初回限定盤(CD+DVD) UCCQ-9039 ¥3,200+税
通常盤(CD) UCCQ-1065 ¥2,571+税

【収録曲】
01.バーン (Burn – Norah Jones/ Sarah Oda)
02.トラジディ (Tragedy – Norah Jones/ Sarah Oda)
03.フリップサイド (Flipside – Norah Jones/ Pete Remm)
04.イッツ・ア・ワンダフル・タイム・フォー・ラヴ(It’s A Wonderful Time For Love – Norah Jones/ Sarah Oda)
05.アンド・ゼン・ゼア・ワズ・ユー(And Then There Was You – Norah Jones-Pete Remm)
06.ドント・ビー・ディナイド (Don’t Be Denied – Neil Young)
07.デイ・ブレイクス (Day Breaks – Norah Jones/ Pete Remm)
08.ピース (Peace – Horace Silver)
09.ワンス・アイ・ハッド・ア・ラーフ (Once I Had A Laugh – Norah Jones)
10.スリーピング・ワイルド (Sleeping Wild – Sarah Oda)
11.キャリー・オン (Carry On -Norah Jones) ※リード・シングル
12.アフリカの花 (African Flower “Fleurette Africaine”- Duke Ellington)