Interview

やなぎなぎが奏でる鎮魂歌。 目を閉じ安らかに眠る英雄たち

やなぎなぎが奏でる鎮魂歌。 目を閉じ安らかに眠る英雄たち

やなぎなぎが奏でる鎮魂歌。 目を閉じ安らかに眠る英雄たち

珠玉のポップスを集めた3rdアルバム『Follow My Tracks』を引っ提げた全国ツアーを終え、エンターテイナーとしての“幅”を獲得したやなぎなぎ。しかし最新作の13thシングル「瞑目の彼方」(TVアニメ『ベルセルク』EDテーマ)は、ライブを通じてオーディエンスと一緒に成長させていく音楽づくりから一転、まるで自身のルーツミュージックを再提示するような、心安らぐエレクトロニカが鳴る一枚となっている。やなぎなぎが今、原点回帰する理由とは? 9月25日に開催されるコンセプチュアルライブ「color palette ~2016 Green ~」への想いも含め、本人に聞いた。

取材 / 西原史顕
文 / 大用尚宏(クリエンタ)

エレクトロニカへの回帰。やなぎなぎの「もう一度自分の音楽を見つめ直す時期が来ているのかな?」という発言の真意とは?

エレクトロニカへの回帰。やなぎなぎの「もう一度自分の音楽を見つめ直す時期が来ているのかな?」という発言の真意とは?――先日、3rdアルバム『Follow My Tracks』を引っ提げたワンマンツアーが無事終了しましたが、いかがでしたか?

今回はダンスや演出など、いつもよりもパフォーマンス面で見せる要素が多かったので、歌はもちろん歌以外のことも集中してやりました。TOKYO DOME CITY HALLでのファイナルがいい形で終われたのでホッとしています。今回は特に皆さんと成長できた面をたくさん感じて、次の制作に繋げられそうな、良い”制作とライブの関係”ができたなと思っています。

具体的にはどんなところで成長を感じましたか?

段階を経て、来てくださる方もライブの楽しみ方をわかってきてくださっていると感じて、私自身もどうしたらみんなが喜んでくれるか考えるようになれたことですかね。アルバム自体もライブで完成をめざすような作品だったので、楽曲自体の完成度はもちろんありつつも、生で聴くことの価値を高める曲づくりもあるのだという考え方が、自分のなかで強まりましたね。

ツアー後は少しリフレッシュできましたか? 『Follow My Tracks』ではいろんな「旅」を表現されていましたが……。

ちょっとだけ空いて、またすぐにシングルの制作という感じだったので、十分な休息というのはできなかったですね。「旅」には行きたかったんですけど(笑)。

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(笑)。では今作「瞑目の彼方」について。鷺巣詩郎さんの作編曲ですが、初めてのタッグでしたよね?

私自身、鷺巣さんの曲をたくさん聴いていましたが、自分が音楽をやるなかでご一緒できる方だとは思っていなかったです(笑)。すごく世界観を持たれてる方で、提供していただいた曲にもサビの輪唱だったり北欧っぽいサウンドだったり、いろんなチャレンジの提案が入っていたんですが、それがTVアニメ『ベルセルク』の世界とも合っていて、すごい方だなと思いました。さらに実際にお会いするとすごく知識が豊富な方だなという印象が強くて、この知識があるからこそああいう音楽になるんだなと納得しました。

“北欧”というキーワードが出てきましたが、やなぎなぎさんが書かれた歌詞にも北欧のイメージが盛り込まれていますね。

『ベルセルク』の世界も北欧神話がモチーフになっているところがあるので、自然に出てきたイメージです。曲を聴いていても近代的な北欧のエレクトロニカパートを入れてきてるのがビシビシ伝わってきましたし。

“エインヘリヤル”などの表現は独特で面白いですね。こういったモチーフはやなぎなぎさん自身もお好きなんですか?

北欧神話はよくRPGゲームの題材にもなっていますし、神話自体もよく読んでいて憧れがありました。”エインヘリヤル”というのは北欧神話の死せる戦士たちの魂のことで、何度も蘇って戦いに赴く勇者というイメージは、曲と作品にぴったりでした。彼らはどんな気持ちで何度も生を繰り返していたんだろうと考えながら作詞しました。

“プシュケー”はギリシア語ですね。

魂というか魂そのもの。繰り返し転生してさまよえる魂をイメージしています。

そうするとこの曲は鎮魂歌の意味合いが強いのでしょうか?

レクイエムには近いと思います。戦士たちがどう思っているかはわからないですが、終わらない戦いの中にいる魂も、ときには眠って休みたいんじゃないかと思って書いたので。

『ベルセルク』の主人公とマッチしていますね。原作マンガ「ベルセルク」はご覧になっていましたか?

もちろん昔から読んでいたんですが、すごい大作なので、EDテーマで関わるということで最近読み直して「今はここまで進んでるんだ」と確認しました(笑)。救いが少ない世界で戦い続けるという、ダークファンタジーの真骨頂という感じがします。

作中にある独特の緊張感を歌で表現するのは難しかったと思いますが、歌詞を書く上で、こうした「戦い」の部分を現実世界にシンクロさせて描いたところはありますか?

『ベルセルク』の世界と違ってスケールの小さいものですけど、現代の生活でも救いのない瞬間はあって、丸一日いいことがなかったとか、今の環境に馴染めないとか、絶望したり抗ったりすることはよくあると思います。「瞑目の彼方」がこういう状況に対しても、少しでも安らぎになればいいなと思います。

そしてもう一曲、「キミミクリ」。こちらは自身の詞曲ですが、やなぎなぎさんらしいシンプルなアンビエント音楽ですね。

表題曲の雰囲気に合わせてというのもあるんですが、アルバム『Follow My Tracks』がデビューしてからいろんな方々と関わって、「こういうことができるようになったよ」っていう完成形だったので、今回のシングルは自分の音楽を振り返ってていねいに作ってみようかなと思い、エレクトロニカなサウンドになっています。

曲や詞のモチーフとして、”わらべうた”の雰囲気が異色を放っています。

テーマにしたのが、「幼い頃に悪意なくやっていた悪いこと」でした。打ち込みではあるんですけどアナログ感の強い音、メロトロンだったりギターの音だったりに、少しモコモコさせて暖かみを加えています。そういう部分で童謡っぽさがミックスされているのかもしれませんね。

現代版「かごめかごめ」というか、少し怖さを感じました。

わらべうたってちょっと心にひっかかる言葉が多くて、小さい頃に聞くと意味は入ってこないんですけど、大人になってから歌詞を見ると改めて考え込んだりするじゃないですか。「キミミクリ」には子どもがアリの巣を潰したり、虫の足を一本ずつもいだりとか、そういう善悪もわからないまま残酷なことをしていることに対して、「今は子どもだから許されるのかもしれないけど、自分の中では悪いことだったと覚えておいてね」というメッセージを込めています。

悪気はないんだけどひどいことをする子どもって、たしかにいますよね。

子どもって、虫とかモノだけでなく対人においてもさらっと残酷なことを言って、相手を傷つけたりとかしますよね。

自身の子供時代を振り返るとどうですか?

思い返すと無自覚で残酷なことをやっていたなーって。私は男の子に交じって遊ぶことが多くて、穴掘って秘密基地を作ったり、どんぐりコーヒーとか作ってやんちゃなことをやっていましたから(笑)。でも、そういう心当たりは皆さんにもあるんじゃないかと。

タイトルが「キミミクリ」なのは?

二人称である「君」と、「ミミクリ」という社会学の用語で「模倣」「ごっこ遊び」という意味の言葉をつなぎ合わせた造語です。人の心を「善悪の判断ができていない自分」と「悪いことを自覚している自分」というふたつに分離して、ごっこ遊びのようにお互いの真似ごとをしているイメージを描いたのが、この曲なんです。

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さて、9月25日にはコンセプチュアルライブ「color palette~2016 Green~」を控えています。今回は”green”をテーマに野外でのライブになるということで、今はどんな準備をしているのでしょうか。

楽器の編成を変えて、それに合わせてアレンジなども変えようと考えているところです。以前、上野の水上音楽堂で野外ライブをしたこともあるので、そのときの経験も活かしつつ、自然に入ってくる光だったり虫の声だったりをミックスしていけるようにしたいです。

まさにアンビエントですね。

最強のアンビエントです(笑)。そこと融合させたいのもありますし、今回は新しい楽器も入れていこうと思っているので、今までとは違ったイメージになるんじゃないかと。

“green”はご自身のテーマカラーでもあります。

元々は植物の色が由来なんですが、緑ってひと口に言ってもいろんな種類があると思うんですよ。ちょっと褪せた緑から、新緑の青々とした緑とか元気なイメージもあると思うので、そういう幅の広さを意識して緩急をつけていこうかなと思います。

色をテーマにしたコンセプチュアルライブはこれまでもやっていますが、色選びのポイントってどんなところにあるんですか?

そのときの気持ちがいちばん大きいですね。今回は特にデビュー4周年を迎えて、アルバム『Follow My Tracks』が集大成というか、デビューしてからの自分を1枚にまとめられた作品になったと思っていて。だからこそ5年目は昔の自分を振り返るというか、もういちど自分の音楽を見つめ直す時期にきているのかなと思っているんですよ。だからこそライブタイトルも、自分のテーマカラーである“green”がしっくりくるかなと。

なるほど初心に還る意味合いもあるんですね。

だからこそ今回、2曲ともエレクトロニカを前面に出したシングルが作れてうれしかったです。ここにきてまたちょっと新しい扉が開いた感じもありますし、5周年に向けて、いろいろアイデアもありますので今後の展開にもご期待ください!

リリース情報

【初回限定盤】

【初回限定盤】

【通常盤】

【通常盤】

シングル「瞑目の彼方」

【初回限定盤 CD+DVD】
GNCA-0440 ¥1,800+税
【通常盤 CD】
GNCA-0441 ¥1,200+税

【収録曲】
01.瞑目の彼方
02.瞑目の彼方 English ver.
03.キミミクリ
【DVD収録内容】
「瞑目の彼方」MV

ライブ情報

「color palette ~2016 Green ~」
9月25日(日) 東京・日比谷屋外大音楽堂
開場16:30/開演17:30

TVアニメ情報

『ベルセルク』

MBS(毎週金曜26:40)、TBS(毎週金曜26:25)、CBC(毎週金曜27:16)、BS-TBS(毎週土曜24:30)、WOWOW(毎週金曜22:30)ほか、dアニメストア、ビデオマーケットなど配信サイトで放送中!
※曜日・日時につきましては放送局の編成の都合により変更となる場合がございます。
公式HP http://berserk-anime.com/index.html
©三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/ベルセルク製作委員会

プロフィール

やなぎなぎ


5月31日生まれ、関西出身。2006年より音楽活動を開始。2009年、supercellからオファーを受けnagi名義でゲストボーカルを担当。2012年にはTVアニメ『あの夏で待ってる』EDテーマ「ビードロ模様」でメジャーデビューを果たす。ふとした日常やノスタルジックな風景、童話のような情景を描いていく音づくりのもと、2016年9月現在までに13枚のシングルと3枚のフルアルバムをリリース。繊細な歌声と独特の世界観で躍進を続けるアーティスト/ボーカリスト。