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プレイヤーは見た!『キャサリン・フルボディ』愛憎渦巻く四角関係の修羅場サスペンス

プレイヤーは見た!『キャサリン・フルボディ』愛憎渦巻く四角関係の修羅場サスペンス

“大人のアクション・アドベンチャー”と銘打たれ、血しぶきが飛ぶ刺激的な修羅場の描写や、アドベンチャー&アクションパズルという今までにない斬新なゲーム性が話題となった『キャサリン』から約8年の熟成期間を経て、新キャラクター、シナリオ、ステージなどが追加され、システム面もパワーアップしたリメイク版『キャサリン・フルボディ』が発売されました。優柔不断な男の浮気から始まる官能的でスリル満点の展開と、スピード感が心地よいアクションパズルゲームは、今作でどう進化したのでしょうか? まずはオフィシャルのプロモーション映像をご覧になって、本作の妖しさとアグレッシブさを堪能してください。それを踏まえていただいたら、本作の魅力を伝えていきましょう。

文 / 内藤ハサミ


ますます複雑に絡み合う物語

優柔不断な男・ヴィンセントには、交際して5年になるキャサリン(眼鏡/Katherine)という恋人がいる。結婚願望をちらつかせて来る彼女に対して同じ気持ちになれないヴィンセントは、突如目の前に現れた理想の美女、恋人と同名であるキャサリン(金髪/Catherine)と一夜を共にしてしまった。翌日からヴィンセントは、自分を追ってくる異形から逃れるため、ひたすらブロックを登り続けなければならない、という悪夢を毎晩のように見ることになる。そして同時期、“夢で落ちたら、リアルの世界でも死んでしまう”という噂が、男性の死体だけが次々に見つかる連続怪死事件のニュースとともに囁かれるようになるのだった── 。

▲毎晩、悪夢のなかで必死にブロックを登るヴィンセント

ここまでは、前作『キャサリン』の話。今回の『キャサリン・フルボディ』では、この3人の関係に、清楚なボブカットが可愛らしい第3の“キャサリン(通称・リン/Qatherine)”が現れ、ヴィンセントの心を動かすのです。何者かに追われているリンにヴィンセントは偶然出会い、追っ手から逃がしてあげるだけでなく、自分のアパートの隣の部屋を紹介し、行きつけのバー“ストレイ・シープ”に働き口まで世話をしてあげます。そんな彼の優しさに触れ、リンはヴィンセントに好意を持つように……。3人の魅力的なキャサリンのなかで心揺れるヴィンセント。物語は、まさかの四角関係に発展していくのです。

▲5年つき合っている彼女、しっかり者の眼鏡キャサリン。最近結婚を強く意識しており、ヴィンセントは及び腰……

▲そんなときに現れた奔放な性格の美女、金髪キャサリン

▲ヴィンセントが助けた、無垢でまっすぐな性格のリン。プレイ中の行動によって、エンディングは変わります。だれと結ばれるのか、それとも何ものにも縛られない生きかたを選ぶのか……?

ゲームは、主にバー“ストレイ・シープ”で過ごす夜時間のアドベンチャーパートと、深夜ヴィンセントが見る悪夢のアクションパズルパートに分かれています。アドベンチャーパートでは、仲間とボックス席で酒を飲みながら、店内の客と話したり、来たメールを読んで返信したり、トイレに籠ったり。人と話すと少しずつ時間が経過していき、店内にいる客の顔ぶれも変わっていきます。攻略には必ずしも必要な要素ではありませんし、何もせずに帰ることもできます。しかし、ここでの会話や任意で返信するメールの内容が、少しだけヴィンセントの未来に影響するかもしれません。

▲店内のどこでもメールチェックは可能ですが……お手洗いでコッソリ開かなくてはならない、ちょっと人には見せられないような添付画像が送られてくることも!?

△ボタンで受信したメールを確認できます。さらに定型文を選んで返信も可能です。また、○ボタンで他の客やジュークボックス、ミニゲームが遊べるゲーム機などにインタラクトでき、席に座っているときに□ボタンを押せば、自分の席にある酒を飲むこともできます。ストレイ・シープ内で行動することは、自分の置かれた状況、周りで何が起こりつつあるのかといった情報を得られるメリットはありますが、このバーのなかでただ時を過ごすというだけのことが、けっこう楽しかったりします。ヴィンセントが革靴でフローリングを歩くときのコツ、コツという足音、年季が入ってなんとなく薄汚れたトイレの洗面台、グラスの氷のカラン、という澄んだ音など……。行きつけのバーで過ごす大人の夜時間を臨場感たっぷりに演出してくれていて、ずっとここで過ごしていたいくらいの心地よさなのです。

▲リンとの出会いは、まさに青天の霹靂!

新キャラクター、リンのイベントはもちろんすべて新規追加されたものですが、今までのストーリーに絡める形で挿入されており、既存キャラクターとどう絡んでくるのかも見どころのひとつ。前作からの引継ぎ要素はなく、全プレイヤーは前作のエピソードをイチからプレイすることになります。とはいえ、ふたりのキャサリンに関してもアニメーションやイベントが増えていますから、前作でエンディングを一度見ているプレイヤーでも新たな楽しみが味わえます。新たな楽しみと言えば、金髪キャサリンの声を選ぶことができるというのも、今回加わった要素のひとつです。

▲人気声優をズラリとそろえた豪華ラインアップ

なぜ金髪キャサリンの声だけカスタムできるのか。未プレイの方には不思議かもしれませんが、プレイを進めひとたび彼女の正体を知ってしまえば、“彼女の理想の声を選ぶ”というのはとても自然なことに感じられるはずです。コケティッシュな魅力でヴィンセントを翻弄する金髪キャサリンの声については、前作から演じている沢城みゆき氏のイメージを強く持っている筆者。今回も基本的にはオリジナルのボイスで楽しんでいたのですが、他の声優さんのサンプルボイスを聞き、それぞれ魅力的な声で金髪キャサリンのプレイを味わってみたくなりました。ちなみに、初期状態で解放されているボイスは沢城みゆき氏、能登麻美子氏。他のボイスはダウンロードコンテンツです。

▲こんな怖いセリフも好きな声優さんの声でなら、ぜひ聴いてみたい……

さてここで、エンディングまでプレイを進めた筆者が、3人のキャサリンに対して持った感想を記しておきます。まず、浮気相手の金髪キャサリンについて。人間離れした美しさ、的確にヴィンセントの心を掴む技も仕草も本当に可愛らしくセクシーで、ついフラフラと落ちてしまいそうになりますが、時折見せる暴力的な裏の顔は、筆者のように平凡な人間の手に負える感じが全然しません。実際につき合うとしたら、やっぱり怖くて嫌かなぁ。でも、人生を棒に振ってでも彼女に身を任せてしまいたいというくらいの魅力……いや、魔力も感じてしまうのは確か。“本当の彼女”を知っても金髪のキャサリンを選ぶ人、相当な胆力だと思います!

▲眼鏡キャサリンは仕事のできる大人の女性ですが、気持ちの表しかたが不器用なところもあります

次に、ヴィンセントと付き合って5年になる彼女、眼鏡キャサリンについて。ハイスクールでの同級生だったヴィンセントと同じ32歳。周りが次々と結婚するなか、煮え切らない態度のヴィンセントに対しヒステリックになってしまう彼女には、前作ではあまり感情移入できず、金髪キャサリンと別種の怖さを感じていたのですが、今は筆者も多少は大人になり、彼女の焦りや苛立ちを以前よりは理解できるようになったかな? と思っています。相手が結婚に乗り気でない、逃げちゃうかもしれない……。それって、ふたりの未来が壊れるかもしれないという焦りなんですよね。怖がりで素直になれないけれど、素顔は繊細な人なのです。見る人の立場によって、一番印象の変わるキャラクターかもしれませんね。

▲澄んだ瞳、重め前髪のボブカット、中性的でイノセントな声。リンは筆者の好みど真ん中のルックスを持ったキャラクターです。はぁ、カワイイ……

最後は、新キャラクターのリン。ひょんなことからアパートの隣の部屋で暮らすようになるリンは、ほかふたりのキャサリンにはない魅力が満載のキャラクターです。以前の記憶がなく、ちょっと天然。できることといえば、へたくそなピアノを弾くことくらい。ですが、たまに人間を超越したかのような悟った目線で物事の本質を見抜くような発言をするなど、頑張り屋で人を疑わない強い心を持ったリンは、嘘と不安に満ちたヴィンセントの生活に新たな価値観を生むのです。リンみたいなタイプは一番現実離れしているようですが、かえってその“理想”を掲げるキャラクター性には、救いを感じる部分がありました。“いかにして生きていくか?”という人生のテーマに一石を投じるキャラクターであることは間違いありません。

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