モリコメンド 一本釣り  vol. 108

Column

a flood of circle ニューアルバムでロックンロールバンドとしての魅力をさらにアップデート

a flood of circle ニューアルバムでロックンロールバンドとしての魅力をさらにアップデート

R&B、ヒップホップ、ダンスミュージックが完全に主流となり、現在、20世紀中頃に生まれたアートフォームである“ロックバンド”はどう存在するべきか? そのもっとも優れた答えの一つが、a flood of circleのニューアルバム『CENTER OF THE EARTH』は、その問いに対する、もっとも優れた回答の一つだと思う。

佐々木亮介(Vo, G)、HISAYO(B)、渡邊一丘(Dr)を中心に2006年に結成されたa flood of circle(以下afoc)は、オーセンティックなブルース、ロックンロールを基軸にした音楽性、そして、佐々木の鮮烈なボーカルを中心にしたライブパフォーマンスによって注目を集め、2009年4月に1stフルアルバム「BUFFALO SOUL」でメジャーデビュー。その直後にギタリストが脱退するという出来事に見舞われつつも、最新の音楽を吸収しながら、独自の進化を続け、バンドシーンのなかで確かな支持を得た。結成10周年を迎えた2016年には初のイギリス・ロンドン公演、海外レコーディングを行ったほか、自主企画ライブイベント「A FLOOD OF CIRCUS 2016」や東京・大阪のBillboardLiveでアコースティックを主体としたワンマンライブを開催するなど、ライブ活動の幅を広げてきた。

afocに大きな変化が訪れたのは、2017年。ロンドン・メトロポリススタジオでレコーディングした「NEW TRIBE」、さらに翌年リリースされた2度目のセルフタイトル・アルバム『a flood of circle」で海外のシーンとリンクした音楽性に移行したのだ。トラップ以降のヒップホップ、オルタナR&Bの要素を含んだサウンドを十分に刺激的だったし、最新の音楽に敏感な佐々木の志向がこれまで以上に反映されたという意味でも、大きな意味を持った作品だった。ただ、もともとafocが持っていた“性急なグルーヴを放ちまくるロックンロール・バンド”としての印象がやや薄まったのも事実。その結果、afocは再び、自らのスタイルを模索する時期に入った。

転機となったのは、佐々木亮介がソロアルバム『LEO』を制作したこと。マーク・ロンソンが「アップタウン・ファンク」——ご存知の通り、テン年代の大きな潮流であるネオソウルの在り方を決定付けた名曲だ——を制作したロイヤルスタジオで、現地の凄腕ミュージシャンとともにレコーディングされた本作は、本場のソウルやブルースを現代的なサウンドにアップデートさせた意欲作だった。じつはafoc結成当初のギタリストが好きだったのが、アル・グリーンをはじめとしたソウルやブルース。佐々木も彼から教わった音楽に影響されてきたのだが、前述した通り、そのギタリストはデビュー後、すぐに脱退。その喪失感を埋められないままバンドを率いてきた佐々木だが、彼が好きだった作品が録音されたスタジオで自分のソロを作ったことにより、過去の傷を乗り越える大きなきっかけを得たのだ。

その1年後、サポートギタリストのアオキテツ(G)が正式加入。“佐々木がデモを作って、バンドでアレンジする”という従来のスタイルから、バンドでスタジオに入り、音を出しながら曲を作る作業が増えていった。さらにバンド結成当初から交流がある田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)がシングル「13分間の悪夢」のプロデュースを担当したことで、外からの視点による“afoc本来の良さ”を再認識できたことも大きなポイントだったと思う。

ここ数年に起きた様々な出来事を受け、大きなターニングポイントを迎えたafoc。そのなかで得た経験が作品として結実したのが、ニューアルバム『CENTER OF THE EARTH』だ。本作について佐々木は「たとえばトラップっぽいものだったり、自分のなかでやりたいことはあるんだけど、いろいろ話をするなかで、今回は“バンドが輝くものがいい”という結論になって。“ギターとドラムがうるさくて、速い”っていう(笑)。田淵さんにも“それがfloodのいいところじゃん”みたいなことも言われたし」とコメントしているが、その言葉通り、本作はafocの根本である“性急なグルーヴを放ちまくるロックンロールバンド”としての魅力がさらにアップデートされた形で描き込まれている。それは単なる原点回帰ではない。たとえばリード曲「ハイテンションソング」には、トラップの影響を感じさせるボーカル、チャンス・ザ・ラッパーを想起させるゴスペル・テイストのコーラスなどが含まれているが、それを踏まえたうえで、生々しいバンドのグルーヴを押し出しているのだ。クリック(レコーディングの際に使うテンポのガイド音)を使わずにレコーディングされた曲もあり、メンバー4人の息使い、どの場の雰囲気がリアルに感じられることも本作の聴きどころ。何よりも『CENTER OF THE EARTH』(“ここが世界の中心なんだ”)という堂々たるタイトルに、そこに刻まれた強い確信に心を揺さぶられてしまう。

アルバム『CENTER OF THE EARTH』のレコーディング後、佐々木はシカゴに赴き、現在のUSヒップホップの拠点とも言えるCLASSIK STUIDOで新たなソロアルバムの制作を行った。(筆者は新曲を聴く機会に恵まれたが、現行のヒップホップとリンクしつつ、彼自身の作家性を強く滲ませた、非常に興味深い楽曲だった)ソロで自分自身の音楽的興味を追求することにより、afocではメンバー同士のつながりを軸にしたサウンドに振り切り、ロックンロール・バンドとしての存在感を押し出す。デビューから10年。佐々木、そして、afocはようやく、自らのスタイルをしっかりと掴み取ったのかもしれない。

文 / 森朋之

a flood of circleの作品はこちらへ

オフィシャルサイト
http://afloodofcircle.com

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