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不条理な世界で生き抜く力を試される『メトロ エクソダス』の魅力

不条理な世界で生き抜く力を試される『メトロ エクソダス』の魅力

核戦争から20年後の荒廃した世界を生き抜く、ドミトリー・グルホフスキーの小説『メトロ2033』。それを原作とする、FPSゲーム『メトロ』シリーズの最新作『メトロ エクソダス』が発売された。そのタイトルどおり、ロシア・モスクワの“地下鉄(メトロ)”に逃れた人々の姿が描かれていた過去作だが、今回はそこから脱出(エクソダス)することになり、地上を舞台に新たな物語が描かれている。本稿では、そんな本作のさまざまな要素と魅力を紹介していこう。

文 / 長田雄太


命がけ……でも魅せられてしまう荒廃した地上世界

シリーズの主人公でありプレイヤーが操作するアルチョムは、以前はオーダーと呼ばれる組織に所属しメトロの治安を守っていた。同時に地上には生存者がいると信じていた彼は、隊を脱退。人が住めなくなったといわれている地上へ上がり、無線機を使って生き残りを探す日々を過ごしていた。そんななか、ある事件をきっかけに地上にはたくさんの人々が生存していることが判明。さらに、その事実を隠ぺいしていた組織に追われ、アルチョムは妻のアンナ、義父でオーダーの司令官・ミラー、さらにオーダーの仲間たちと共に蒸気機関車“オーロラ号”に乗り込み、モスクワの外へと旅立つことになる。

▲オーロラ号とオーダーのメンバーたち。一緒に地上へと上がることになる彼らとは、軍隊顔負けの堅い結束力と絆で結ばれている

生存者がいることが判明した地上。だからと言って安息の地というわけではない。アルチョムたちは1年をかけてさまざまな土地を巡るのだが、行く先々は放射線の影響で環境が変化。大地は干上がってしまったうえ、あちこちで石油が間欠泉のように湧き出る砂漠と化してしまったカスピ海など、もはやかつてのロシアの姿はどこにもない。また、メトロでの生活で人々を脅かしていた、 “ミュータント”と呼ばれるバケモノも跋扈。四足歩行の獣や人型、人と同じくらいの大きさでザリガニのような姿をしたものなど数多くの種類が存在するミュータントは、1匹だとそこまで脅威ではない。だが、多くが集団で行動しているため、もし近づいたり音を立てたりして目を付けられてしまうと、囲まれて一方的に殺されてしまう。結局のところ、地上もひどい有様なのだ。

▲本作は、各地に点在する小屋のベッドで寝たり、長時間行動をしていると時間が経過する。寝ると体力を回復することができるので、傷ついたときや朝または夜に行動したいときに選択したい

▲夜は視界が悪くなり、ミュータントが活発化する。しかし、なかには休んでいるミュータントもいるので日中と比べて見つかる危険性が低い。一方で、視界が悪くなるのはこちらも同じなので、うっかり遭遇してしまうことも

▲人型のミュータントは死んだふりをしたり、壁に張り付いて擬態したりと頭がいい。見つけた際には迂回するか、サプレッサー付きの銃器やナイフなどの音が出ない武器で仕留めよう

核戦争後の影響が残る本作の舞台はまさに荒廃した世界そのもの。廃墟と化した数々の建物、がれきの山、そこを我が物顔で歩く異形の生き物たち。そんな恐ろしく未知の世界を一人称視点で巡るのは格別だ。筆者のように、廃墟や廃工場の映像についつい魅せられてしまう方は、間違いなく本作にも魅入ってしまうだろう。

▲高所から望む荒廃した世界には、寂しさを感じる一方で美しさも感じてしまう

どう動くかはプレイヤー次第! 広大でスリリングな地上世界

ミュータントたちが徘徊する地上世界だが、残念ながらオーロラ号のメンバーが戦うことになるのはバケモノたちだけではない。オーロラ号は燃料不足など、さまざまな理由で各地に停車することになるのだが、そこでは生き残った人々が多様な組織を形成している。電気を悪とする宗教組織、奴隷制度で弱者を支配する組織など、そのどれもがとても21世紀とは思えないものばかり。彼らはオーロラ号に敵意を向けてくるため、争いになるのは必至だ。

▲とある施設では、食人で生きながらえている恐ろしい集団と衝突。彼らは食糧がやって来たと笑い声をあげながら襲い掛かってくるうえ、施設のなかは思わず目を覆いたくなるような光景が広がっている

オーロラ号のメンバーは、そんな状況で再び列車を動かすべく行動を開始。アルチョムも敵対する組織の拠点に潜入して情報を集めたり、現地の協力者と出会って一緒に戦ったりと、さまざまな任務を課せられる。ストーリーを進めていくためにはこれらの任務をこなしていく必要があるのだが、本作には任務で訪れる場所以外にも数多くの施設などが存在。車やボートなどの乗り物もあり、マップ内を自由に移動することができる。ストーリーのみに注力したりさまざまな場所を巡ってみたりと、とるべき行動はプレイヤーの考えかた次第。荒廃した世界を楽しみたい筆者としては、危険が伴うもののいろいろな施設を見て回ることをおすすめしたい。行ってみると意外なアイテムが見つかったりもするので、決して無駄にはならないはずだ。また、先述した石油が噴き出す場所のように、現実ではなかなか見られないスポットも点在。それらの場所に赴いて、荒廃した世界を堪能するのも一興だ。ただし、筆者は石油の池で銃撃戦をしたため火花が油に引火。火だるまになってしまったので、油断は禁物だが。

▲ヴォルガ川周辺やカスピ海など、本作には広大なマップが複数用意されており、ストーリーとは直接関係がない施設なども数多く点在している

任務で施設に潜入するにしても、潜入方法はひとつではない。銃撃戦を覚悟して正面から堂々と行くことも構わないが、塀を上って脇から施設に入ったり、地下へとつながる道を見つけたりと攻略方法もプレイヤーが考えていろいろなアプローチを試せる。プレイヤーの戦略やプレイスタイルによって、楽しみかたも多様に変化するのが本作の面白いところだ。

▲敵には見つかりたくない。でも、念のため敵は全部始末しておきたい筆者は、暗くなり敵に見つかりにくくなる夜を待って施設に潜入。暗殺者のごとく音を立てずに敵の息の根を止めていくが、いつも終盤で油断し見つかってしまう

▲ライトを消したり背後から忍び寄ったりなどで敵にうまく接近できると、音を立てずに気絶または殺すことができる。これは人型ミュータントにも有効で、気絶させるか殺すかの選択も可能

先述した協力者のなかにはオーロラ号に乗って共に旅をする者も出てくる。列車での移動中では彼らの日常を垣間見ることができるのだが、放射線やミュータントの襲撃など、常に死と隣り合わせの任務のあとに訪れる、彼らとの他愛のない会話は格別。世間話や過去の話を聞いたり、恋愛などで彼らの関係性が少しずつ変化したりと、客車がひとつだけの小さな空間で紡がれる人間ドラマも大きな魅力となっている。

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