Interview

TUBE・春畑道哉 新境地にたどり着いた約2年半ぶりのソロ・オリジナルアルバムは、縦横無尽かつ自由自在な装い

TUBE・春畑道哉 新境地にたどり着いた約2年半ぶりのソロ・オリジナルアルバムは、縦横無尽かつ自由自在な装い

春畑道哉は、約2年半ぶりとなるオリジナルアルバム『Continue』で、ギター・インストゥルメンタルの枠を越え、新境地の扉を開いてみせた。ギターとメロディ、この不動の軸がさらに太く、さらにしなやかになったのは言うまでもないが、音楽家やクリエイターとしての視点がこれまで以上に色濃く現れている。春畑のソロワークを“春ソロ”というのに倣えば、春度が濃い新作だ。発想は縦横無尽。演奏は自由自在。Jリーグ・オフィシャルテーマソング新バージョン「J’S THEME(Jのテーマ)25th ver.」も収録。彼の根っこであるギター小僧ぶりを炸裂させている「FULL MOON BOOGIE」から、これからの彼を示唆しているような「Daybreak Highway」まで、春畑道哉のすべてが凝縮されていると言ってもいい10枚目のフルアルバムだ。

取材・文 / 藤井徹貫

作曲やアレンジ、曲の構成など、聴いてもらいたいポイントがたくさんある

前作『Play the Life』までと、今作『Continue』とのもっとも大きな違いはどこですか?

出会いとチャレンジですかね。当然、前作までもいろいろな出会いはあったし、さまざまなチャレンジをしてきたけど、今回は特にそこが自分でも印象的です。今までの春ソロになかったアレンジに挑戦してみたり。きっかけは去年6月、“live image”というコンサートに出させていただいたとき、いろいろな楽器の特性とか、今まで知らずにいたことを教えてもらえたりしたことでした。例えばティンパニー。「Blue Moment」という曲を演奏したとき、リハーサルからティンパニーの音程がピッタリ合っていて。素朴な疑問として、いつチューニングしたのかなと思ったんですね。次から次に演奏者が入れ替わり、曲も替わるのに。で、リハーサルの後、演奏者の方のところに訊きに行きました。そうしたら、ティンパニーには、ペダルがついていて、それを踏むと、音程が変わる構造になっていて。ええっ! 足も使ってるの!? と。

たまげた?

衝撃でした(笑)。少し叩かせてもらったりして。クラシックやオーケストラに精通している音楽家なら、当たり前のことかもしれないけど、自分にとっては新鮮な驚きでした。そういう新発見がいくつも重なって連なってできているアルバムです。ストリングスの和音ひとつにしてもそう。シンセサイザーで弾けば、ただの白玉だとしても、コントラバスやチェロと楽器別、パート別に横軸で追うと、こんなに素晴らしいラインを弾いてたの? こんなに説得力が違うの? という感動があったし。いろいろな楽器への興味が強くなって。そこからのアレンジが楽しかったし、それ以前とは何かが違ったと思います。

新作収録の「東京classical」が、今のお話の代表格ですね。

あれは楽器が入れ代わり立ち代わり現れてきて、ギターとハモったり、カウンターメロディを奏でたり、いろいろな絡み方をしています。

その絡み方が人間模様に思え、映画を観ているようでした。

マスタリング中、エンジニアさんが不意に振り返り、面白い曲ですね、と言ってた(笑)。ギター・インストゥルメンタルアルバムに入るような曲ではないって意味だと思うけど。

アルバムでは、「東京classical」の前後がゴリゴリのギター楽曲だから、なおさら際立つ(笑)。

振り幅が広すぎる(笑)。

そういう点も含め、これまでのソロアルバムは、春畑道哉ギター・インストアルバムという枠組みでした。この新作は、春畑道哉アルバムに思えます。

そうかもしれないですね。作曲やアレンジ、曲の構成など、聴いてもらいたいポイントがたくさんあるから。

根本要さんは音楽博士。名前も知らなかった超絶ギタリストのライブにも連れて行ってもらったし

アルバム1曲目の「Every day is a new day」から、Stardust Revueの根本要さんがゲスト参加していたのは意外でした。

ここ2年くらい遊んでもらっています(笑)。昨日もロベン・フォードのライブ行く? とお誘いをいただいたばかりで。もちろん行きます! と返信しました。要さんは音楽博士。何から何まで詳しい。名前も知らなかった超絶ギタリストのOz Noyのライブにも連れて行ってもらったし。ギタリストの常識にはまらないセンスもテクニックも格好良くて、途中の休憩時間、もう我慢できずにステージに近づいて、足元のエフェクターボードの写真を撮っちゃった(笑)。

ギター小僧(笑)。

その写真を見て、気になるエフェクターを、翌日すぐに買いに行きました(笑)。

筋金入りのギター小僧(笑)。

意識はしてないけど、もしかしたら、そういうOz Noyとの出会いの影響も、今回のアルバムに入っているかもしれない。枠にはまらないとか、常識にとらわれないってところでは。

「Every day is a new day」での根本さんのボーカルも、確かに枠にとらわれていない。J-POPフォーマットから逸脱している点がステキ。

声とギターのバランスは考えました。作りながら、いろいろ試してみて、日々変化したけど、結果的にはとても面白いところに着地できたと思います。いわゆるポップスでいうところの、Aメロはギターならではの緩いメロディ、そこから曲が進むに連れ、厚さも熱さも、歪みも増していくようなイメージでした。ボーカルを録るとき、要さんからもアイデアをいただきました。

盟友・前田亘輝さんも「Fly to the world」に、スペシャル・バッキングボーカルで参加されていますね。

前ちゃんは、いつもの調子(笑)。発声練習とか、いわゆるアイドリングなしに、いきなりフルスロットル。もうちょい中間というか、グレーゾーンはないの? と思いながら、もうかれこれ34年(笑)。お酒も飲むし、タバコも吸うけど、実は日本屈指のロックヴォーカリスト。一昨日、織田哲郎さんが言っていましたね。今、ROLL-B DINOSAURというロックンロールバンドをやっているんだけど、織田さん自身は歌わずにギタリストに専念したいという希望があったみたいで。じゃあ、誰をボーカルに誘うかと考えたとき、ダイアモンド✡ユカイさんと前田しか思い浮かばなかったって。ブルースを基盤に太い声でロックが歌える人間は、その二人しか知らないって。TUBEでも前田のそういう一面は出ているけど、前田とブルース、前田とロックがつながらない人も多いんじゃないかな。

これ歌かよ!? と突っ込む人がいるかもしれない(笑)

「Daybreak Highway」では、春畑さん自ら歌っている。

偶然にも、要さんのアメージングボーカルの次の曲だから(笑)。ちょっと照れ臭い(笑)。

ニューアルバムでは歌うぞと、意気込みがありました?

いや、きっかけはプロデューサーからの提案。しゃべっている音域で、声を張らずに歌う曲を1曲と、お題を出されて。そういうお題というか、課題をクリアするのが大好きだから、いろいろチャレンジしました。

結果は大成功ですね。前田亘輝や根本要に代表される生粋のボーカリストとは、まったく異次元の、対極に位置するようなニュータイプ。

サビなのに声を張らない曲って、どうなんだろう? と思った瞬間もありましたけど(笑)。試行錯誤しながら、サビになったら、グッと落ち着くメロディになりました。これ歌かよ!? と突っ込む人がいるかもしれない(笑)。

春ソロの未来への扉ですよ。

じゃ、良かった。

実は、昨年11月2日、浜田麻里さんの35周年記念ツアー・Zepp Tokyo公演のバックステージで偶然会いましたよね。

そうそう。カックン(角野秀行)と一緒に。

新作収録の「Midnight Snow」に参加している、ギタリスト・増崎孝司さん(DIMENSION)が浜田さんのバンドで演奏している縁もあって?

それもあるし、麻里さんとはTUBEがデビューした頃から顔なじみなので。ちょうどこのアルバムのレコーディング中だったこともあって、そのライブとの出会いから生まれた曲を追加しました。「FULL MOON BOOGIE」。あのライブは、速くてテクニカルな曲の応酬だったから……。あれ? そういえば、このアルバムはこのままじゃ、弾いて弾きまくる曲がないぞと。そこで気がついて。最後に書き加えました。

昔は、名所旧跡とか、全く行かなかったのに(笑)。実際に足を運ぶと、いろいろな出会いがある

そして、TBSテレビ『じょんのび日本遺産』のメインテーマ曲「Continue(feat.宮本笑里)」と同番組のエンディングテーマ曲「花鳥風月」も、新作の中では大きな存在ですね。

昨年、お話をいただいてから、どういう曲にしようか、ずっと考えていました。TUBEの全国ツアー中にも頭の片隅にあったから、休日はお城に行ってみたりして(笑)。移動日とかで行ける範囲に日本遺産があれば、まあまあ早起きして出かけたりもしました。昔は、名所旧跡とか、全く行かなかったのに(笑)。実際に足を運ぶと、いろいろな出会いがあるもので……。天守閣まで登ったときの風だとか、そこからの景色だとか、戦国時代の合戦を想像してみたりだとか。メロディを練った、というと聞こえがいいけど、作ってはみたものの、録音する前に没にしたものもたくさんありました。録ってから、違うと思って、削除したメロディもけっこうありました。

ヴァイオリニスト・宮本笑里さんと共演した印象は?

本当に一発録音でした。激ウマ! 1回通して弾いて、どうですか? と言われても……。ディレクターと宮本さんは「あそこのここが」と気になった箇所を確認していたけど、僕は「もう何も言うことございません」しか返す言葉がなかった(笑)。ロックミュージシャン特有の、あーでもない、こーでもないの末、明日にしようか、みたいなグズグズ感は一切なくて。事前にヴァイオリンのフレーズを譜面でお渡ししたんですね。あんなに音符を書いたのは初めてかも(笑)。そうしたら、いきなり「冒頭の何小節か、音源と譜面がオクターブ違っていますが、どちらを重視しましょうか」と連絡がきて。ど頭から凡ミス(笑)。

TUBEのレコーディングで譜面を書くことは?

書いてもコードくらい。他は「ここ頑張る」「熱く」とか、そんなことしか書いていません(笑)。

昨年のソロツアーでも演奏された、ピアノだけの「空」も胸にしみる1曲。ライブMCで「亡くなった愛犬を見送る日、空を見あげると、浮かんできたメロディ。でも、しんみりした曲ではない」と言っていましたよね。その気持ちが分かりました。

号泣しながら作った曲ではないから。もちろん寂しさはあったけど、生活の中に笑いを提供してくれたことへの感謝のほうが大きかったから。

サンキュー、またね、みたいな響きに思えました。

そう聴こえたらうれしいです。

そして、今はもう、TUBEの……。

はい。ツアーの打ち合わせもレコーディングも猛スピードで進めています。前ちゃんも気合が入って、いつもより早いペースで仮歌を録っているし、事務所に4人で集まってミーティングも重ねています。うれしいことに、そんな忙しい中、春ソロでも新たな依頼をいただいたので、そっちも進めつつ……。だから、全然ゴルフ行けてないのが唯一の悩みかな(笑)。

その他の春畑道哉の作品はこちらへ。


初回生産限定盤A(CD+Blu-ray+PHOTO BOOK)
AICL-3658〜3659 ¥4,630+税

初回生産限定盤B(CD+DVD+PHOTO BOOK)
AICL-3660〜3661 ¥4,167+税

通常盤(CD)
AICL-3662 ¥2,778+税

ライブ情報

TUBE LIVE AROUND 2019

5月11日(土)神戸ワールド記念ホール
5月12日(日)神戸ワールド記念ホール
5月18日(土)仙台ゼビオアリーナ
5月23日(木)日本武道館
5月24日(金)日本武道館
5月30日(木)ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)
5月31日(金)ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)

オフィシャルサイト
http://www.tube-net.com

live image 19 dix-neuf(ライヴ イマージュ ディズナフ)

6月13日(木)Bunkamuraオーチャードホール
6月14日(金)Bunkamuraオーチャードホール
6月22日(土)神戸国際会館こくさいホール

出演:Alexis Ffrench(ピアノ)※東京のみ/沖仁(フラメンコギター)/小松亮太(バンドネオン)/ゴンチチ(ギターデュオ)/TSUKEMEN(ヴァイオリン&ピアノ)/羽毛田丈史(ピアノ)/春畑道哉(ギター)/宮本笑里(ヴァイオリン)

オーケストラ イマージュ
*バンドメンバー:青柳誠(key&Sax)、天野清継(g)、渡嘉敷祐一(ds)、藤井珠緒(per)、森田晃平(b) 
*ストリングスメンバー:相川麻里子(vn)、伊能修(vn)、菊地幹代(va)、柏木広樹(vc)、結城貴弘(vc)、他

オフィシャルサイト
http://wwwww.co.jp/wwwww/liveimage/

春畑道哉

はるはた・みちや/1966年11月5日生まれ。東京都町田市出身。1985年、TUBEのギタリストとして「ベストセラー・サマー」でデビュー。以降「シーズン・イン・ザ・サン」「SUMMER DREAM」「あー夏休み」などの“夏ソング”を中心に数々のヒットチューンを連発し、バンドの地位を確立する。1987年からはソロ活動もスタート。1993年のJリーグ開幕にあわせて発表したオフィシャルテーマソング「J’STHEME(Jのテーマ)」を25周年の節目に再レコーディング&リアレンジ。関連楽曲とともに収録されたJリーグ25周年記念アルバムを2018年8月22日にリリース。これまでに本作『Continue』含め14枚のアルバム(ミニアルバム・ベスト含む)をリリースしている。

オフィシャルサイト
http://www.sonymusic.co.jp/artist/MichiyaHaruhata/