TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』1年6か月の記憶  vol. 3

Interview

『新幹線変形ロボ シンカリオン』に、なぜ「Suicaのペンギン」を出したのか!? 大胆コラボの数々から見えてきた、アニメと“リアル”をつなぐ面白さ

『新幹線変形ロボ シンカリオン』に、なぜ「Suicaのペンギン」を出したのか!? 大胆コラボの数々から見えてきた、アニメと“リアル”をつなぐ面白さ

TBS系列にて全国放送中のTVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』。ロボットアニメとしては非常に珍しい放送2年目に突入するほどの大人気作品だが、本作は外部作品・キャラクターや企業とのコラボ企画においても注目されている。特に昨年8月、『新世紀エヴァンゲリオン』のキャラクターが本編に登場したエピソードのことはご存じの方も多いはずだ。

『新幹線変形ロボ シンカリオン』のそうした“驚きの仕掛け”シリーズとして、2019年最初に登場したのは「Suicaのペンギン」。あのJR東日本のICカードSuicaのキャラクターが、“ほぼそのまま”に近いビジュアルでアニメの劇中に登場したのだった。1月の初登場に続き、第60話(3月2日放送)では劇中でも意外な役割も担うこととなり、再び話題を集めることとなる。

今回はこの「Suicaのペンギン」の話題を起点に、『シンカリオン』にさまざまなコラボを仕掛けている制作陣にインタビューを実施した。作品のプロデューサーとして、制作の進行から、各種コラボにまつわる権利者との調整までを行う小学館集英社プロダクションの針原剛氏(以下、針原)。そして同じくプロデューサーとして『シンカリオン』とJR各社をつなぐ役割を担っているジェイアール東日本企画(jeki)の伊藤渉太氏(以下、伊藤)。このふたりへの取材から、大胆な施策に次々とチャレンジしていく『シンカリオン』の魅力、懐の広さに迫ってみたいと思う。

取材・文 / 柳 雄大


Suicaのペンギンが“単なるかわいいマスコット”だけで終わらなかった理由

まずは、アニメの劇中に「Suicaのペンギン」を登場させることになった経緯やきっかけを教えてください。提案されたのはどなただったのでしょうか?

針原 話はまず、2019年初頭に放送予定のシナリオ作りをしていた時期にさかのぼります。構成上、第58話以降は「キトラルザス決着編」として話が進行していますが、そこからは話の本線のクライマックスになるので、その前の第53話付近はある種のお遊び的な要素が入れられる最後のタイミングだろうね、という話をシリーズ構成の下山健人さんがされていて。さて、ここで何ができるだろう、とスタッフみんなで頭をひねって考えていたんですが……まずはこのタイミングで、シンカリオンを運用する超進化研究所の総指令長を登場させる予定でした。

ですので、その総指令長のキャストさんは話題になる人がいい、というのがありつつ(結果、総指令長・東スバルのキャストはあの山寺宏一が務めることになる)、宣伝面も考慮していろいろな話をしていくなかで……当時アニメーションプロデューサーだった亜細亜堂・山口達也さんが、「Suicaのペンギン、出せないですか」とサラッと言ったんです。それに下山さんが「いいねぇ!」と食いついて。僕らやスタッフもおもしろいな、と賛同し動き始めたといった経緯ですね。

東スバル(左)と「Suicaのペンギン」(右)

伊藤 その流れの中でSuicaのペンギンが出てきたのには理由があって。総指令長・東スバルの設定をつくっていく過程で、“顔バレしないための影武者”を作る必要が出てきたんですよ。

針原 スバルは総指令長ですが、普段はあくまで一人の鉄道ファンとしてハヤトくんと向き合いたい。だから、このふたりはシンカリオンの任務に関わる場面では直接会わないんです。こういった形にした過程には、『釣りバカ日誌』のハマちゃんとスーさんのような師弟関係になったらおもしろいよね、というアイデアもありましたね。

伊藤 そのうえで、『名探偵コナン』の江戸川コナンと毛利小五郎のように、隠れているスバルの代わりに他のキャラクターがハヤトくんたちとしゃべっているように見せる演出をしたかった。代わりにしゃべらせるキャラクターを立てるなら、それは何がいいか? というところから、Suicaのペンギンにする案が出てきたわけです。

スバルからの総指令長としての指令は、Suicaのペンギンを通してハヤトくんに伝わると。これは想像していた以上におもしろい仕掛けでした。

針原 あと、スバルは総指令長という、すごく偉くて威厳のある立場にいますが、その裏ではハヤトに負けないぐらいの鉄道ファン。こういうギャップのある一面を持たせようという話になり、かわいいマスコット的な存在、つまりペンギンの前ではギャップを見せるという性格設定ができました。

なかなかに深い理由があったんですね。ちなみに、スバルの代わりにペンギンが「私が責任をとる!」としゃべるシーンの声は、山寺宏一さんとは別のキャストさんが?

針原 はい。金魚わかなさんに演じていただいています。

あえて詳細な説明は省いたシュールな存在感

第53話でSuicaのペンギンが初登場したシーンは、「このペンギンは何か」といった説明がいっさいなかったのが印象的でした。「きっと、ハヤトくんあたりが劇中で熱心に説明してくれるんだろうな」と予想していたんですが(笑)、ここでは「ちょっと説明を入れなくても大丈夫?」というような話にはならなかったんでしょうか。

針原 まったくならなかったですよね。

(一同笑)

針原 実は当初、Suicaのペンギンを本当に登場させられるのかがまだわからない段階で、(既存のキャラクターではない)本物のペンギンを出すかも? という話も存在して、その名残でもあります。ちなみにキャラの存在感として参考にしていたのは『エヴァンゲリオン』でした。『エヴァ』の劇中にもペンギンが出てきましたが、それ自体についてはあまり詳しく説明していないんですよ。

劇中のSuicaのペンギンは、独特のキャラクターデザインもあいまって、他のキャラクターとは別次元にいるような不思議な存在感がありましたが……これは、「生きているペンギン」ということでいいんでしょうか?

針原 生きています(笑)。

ペンギンであるかどうか、というのはいったん置いておいて、生きてはいる。

伊藤 生きています。生きているし、あれはペンギンです。

針原 ちゃんとペンギンです。あれが何者なのかっていうところまでは、とても僕らの口からはお答えできないんですが……ペンギンだということは確かです(真顔)。

せっかくなので……Suicaのペンギンのことをもう少し聞いてみる

首都圏で過ごしているとSuicaのペンギンは毎日のように見かけるキャラクターですが、『シンカリオン』は全国放送されているアニメですよね。Suicaのペンギンの全国的な知名度はどのぐらいなのでしょうか?

伊藤 まずJR東日本エリアでは、ICカードにSuicaを採用していることから、見たことがないという人はほぼいないと思います。そのうえで、例えば大阪駅前の書店にSuicaのペンギングッズコーナーがあったりと、関西でも交通系ICカードのキャラクターとして有名です。Suicaのペンギンをテーマにした雑誌やムック本も全国で販売されているので、知名度はかなり高いと思いますよ。

単なるICカードのキャラクターを超えた存在、認知度になっているんですね。

伊藤 実際に登場したシーンをご覧になった方の反応を見ていても、Suicaのペンギンファンって本当に多いなと感じます。そういう意味でも、ひとつのキャラクターコンテンツとして成り立っていると思いますね。

ちなみに、Suicaのペンギンはあくまで“Suicaのキャラクターのペンギン”であり、それ以上に固有の名前を持っていないですよね。それは『シンカリオン』の劇中設定においても同じなんでしょうか。

伊藤 そのとおりです。

針原 特定の名前はつけていないです。もしエンディングクレジットでキャラクター名が表記されるとしても、「Suicaのペンギン」と表記されるかと思います(注:3月2日のオンエアで実際にエンディングクレジットに表記された)。

そうなったら相当おもしろいですね!

伊藤 シュールですよね(笑)。

また、Suicaのペンギンといえばキャラクターグッズが人気ですが、『シンカリオン』とコラボした玩具やグッズなどの商品化予定はあるのでしょうか。

伊藤 今のところ具体的にそういう話は出ていないですね。ただ、可能性はゼロではないと思います。

SuicaのペンギンがE5系新幹線と一緒に並んでいたりするイラストのグッズをよく見るので、ああいった感じで出てくれたらいいなと、個人的には思っていました。逆に、『シンカリオン』のグッズも最近はかなり裾野が広がってきていますよね。

針原 そうですね。おかげさまでグッズはかなり種類が増えていて……発音ミク(ボーカロイド『初音ミク』と『シンカリオン』のコラボから誕生したキャラクター)のグッズも出てくるようになったり。

伊藤 今後はシンカリオン 500 TYPE EVAなど、『エヴァンゲリオン』とコラボしたグッズが登場する予定もあります。

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