LIVE SHUTTLE  vol. 334

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星野源が『POP VIRUS』を掲げ、初のドームツアーを実現! 彼にしかなし得ないエンターテインメントが広がるライヴ

星野源が『POP VIRUS』を掲げ、初のドームツアーを実現! 彼にしかなし得ないエンターテインメントが広がるライヴ

星野源の初のドームツアー〈星野源 DOME TOUR 2019「POP VIRUS」〉、東京ドーム公演初日(2月27日)。リリック、メロディ、アレンジ、サウンドメイクのすべてを徹底的に追求し、旺盛な実験精神と溢れんばかりのポップネスを注ぎ込んだアルバム『POP VIRUS』のリリースに伴って行われた今回のツアーで星野源は、驚くようなアイデアを随所に盛り込みながら、誰も体験したことがないエンターテインメントを実現してみせた。

取材・文 / 森朋之 撮影(トップ画像) / 西槇太一

“らしさ”と“新しさ”をこれでもかと凝縮した『POP VIRUS』の楽曲がドーム全体に広がっていく

開演時間(18時30分)の30分前に会場に入ると、客席はすでにびっしり。小さな子供から高齢の方までビックリするほど客層が広い。BGMはマイケル・ジャクソンのアルバム『オフ・ザ・ウォール』。40年前にリリースされた名盤に耳を傾けながら、ライヴが始まるのを待つ。

撮影 / 渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)

何の前触れもなく、スッと会場の照明が落とされると同時に、アリーナから歓声が。アリーナの真ん中に設置されたセンターステージに星野源がひとりで登場。アコギを手にして、弾き語りからライヴがスタート。「歌を歌うときは 背筋を伸ばすのよ」という歌詞がドームに響き、すべての観客が星野の歌に耳を傾ける。じっくりと1曲歌い、寂しさと心地よさが混ざった空気が広がるなか、2曲目の「Pop Virus」へ。ギターと歌から始まり、MPCプレイヤー・STUTSのビート、バンドのアンサンブルが重なった瞬間にステージが照らされ、大型ビジョンに赤いパーカー姿の星野の姿が映しだされる。凄まじいばかりの歓声、そして、「みんなで歌おう!」という声によってドーム全体の一体感がいきなりアップ。「刻む 一拍の永遠を/渡す 一粒の永遠を」というフレーズが心に刻まれる。

重厚にしてしなやかなストリングスも印象的だった「地獄でなぜ悪い」でさらなる盛り上がりを演出したあと、最初のMC。「人がいっぱいいるよ! すごい! やばい! サンキュー!」「東京ドームはやっぱり違うね。鬼ほど緊張しました……。来てくれてありがとう!」という挨拶を挟み、アルバム『POP VIRUS』収録の「Get a Feel」、星野と長岡亮介(guitar)のギターカッティングに導かれた「桜の森」を披露。

撮影 / 田中聖太郎

ライヴの軸になっているのは、やはり『POP VIRUS』の楽曲だった。現代音楽にも通じるストリングスが絡み合う「肌」、STUTSによる鋭利なビートが炸裂する「Pair Dancer」(メインステージ、センターステージ、後方ステージで女性ダンサーが踊る)、ピアノ、チェロ、ホーンセクションを中心とした洗練されたサウンドとドラマチックなメロディがひとつになった「Present」、そして、ドラムンベース的なリズムを取り入れながら、曲が進行するにつれて高揚感を増していった「サピエンス」。斬新すぎる音楽性を貪欲に吸収しつつ、“らしさ”と“新しさ”をこれでもかと凝縮した『POP VIRUS』の楽曲が空気に触れ、ドーム全体に広がっていく。その瞬間に生まれる未知のポップ体験こそが今回のツアーの醍醐味なのだと思い知らされる。これだけ“攻めた”アレンジの曲を徹底してポップに響かせられるアーティストはほかにいない。

撮影 / 渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)

「みんなで歌おう!」という声によって「どどどどどどどどど/ドラえもん」の大合唱が生まれた「ドラえもん」(目の前の席にいた小さなお子さんの興奮ぶりがヤバかった)のあとは、恒例の“一流ミュージシャンからのお祝いコメント”。バービーボーイズ(椿鬼奴、レイザーラモンRG)、井上陽水(神奈月)、赤えんぴつ(バナナマン)のコメントで大笑いをしていると、バックネット裏あたりの客席にライトが当てられ、そこに星野の姿が。驚きの声が上がるなか、「客席で歌ってみたかったんです」と弾き語りで披露されたのは、1stアルバム『ばかのうた』から「ばらばら」。「ぼくらは ひとつになれない/そのまま どこかにいこう」というフレーズがじんわりと伝わり、静かな感動に繋がる。星野が20代半ばの頃に書いたというこの曲に込められた“払拭しようがない孤独”は、彼の音楽世界の通奏低音だと言っていい。みんながばらばらに生きている。だからこそ、ひとつになりたがるし、繋がりたがるのだ──それは星野源が抱え続けている価値観なのだと思う。

気の置けないメンバーと一緒にライヴをゆったりと楽しんでいる姿も印象的

STUTS SHOW(星野の楽曲をサンプリング&ミックスした音源で、会場をダンスフロアに変貌させた)に続き、アリーナ後方のセカンドステージに移動。黒のパーカーに着替えた星野がバンドメンバーの長岡、ハマ・オカモト(bass)、河村”カースケ”智康(drums)、櫻田泰啓(keyboards)、石橋英子(keyboards)、STUTSを紹介し、まずは「KIDS」を演奏。間奏パートでカースケとSTUTSの“リズム対決”を挟み、ほかのメンバーは「いけいけ!」「負けるな!」とはやし立てる。

撮影 / 田中聖太郎

80’sポップスのテイストをたっぷり取り入れた「プリン」では、演奏の途中でなぜかトークコーナーが挿入される。ステージに寝ころび「だいぶ喋ったり歌ったりしたから、あとは任せた!」という星野は、いつも以上にリラックスした雰囲気。気の置けないメンバーと一緒にライヴをゆったりと楽しんでいる姿も印象的だった。さらに「とても久しぶりにバンドセットでやります」と「くせのうた」。「寂しいと叫ぶには/僕はあまりにくだらない」という切ないフレーズが大きな会場全体にじんわりと染み込んでいく場面は、今回のツアーの見どころのひとつだろう。
「ああ楽しかった。“星野源と愉快な仲間たち”でした!」という言葉とともに、このコーナーは終了。2度目の“一流ミュージシャンからのお祝い”(ビヨンセこと渡辺直美、雅マモルこと宮野真守など)が紹介され、ライヴはいよいよクライマックスへ。

撮影 / 田中聖太郎

マリンバを軸にした濃密なグルーヴが渦巻く「化物」を皮切りに、「一緒に踊ってもらっていいですか!?」という言葉とともに放たれた「恋」(もちろん、観客のほとんどが“恋ダンス”で盛り上がる)、ノイズが聴こえた瞬間に歓声が上がり、ソウルフル&ファンキーなビートが響き渡った「SUN」など星野のキャリアを象徴するヒット曲が続けざまに披露される。従来のJ-POPのスタイルを刷新するような革新的な楽曲が、約5万人のオーディエンスを踊らせまくる。その事実を目の当たりにして、得体の知れない感動が沸き上がってくる。いったい何なんだ、これは。

次は大切な曲。この曲があったから、自信を持って『POP VIRUS』の制作に臨めた

「次は大切な曲をやろうと思います。音楽的な挑戦、やりたいこと、自分の思い……楽しい思いもクソみたいな思いも……いろんなものを詰め込んで一曲のポップスを作りたくて。ドキドキしながらリリースしたんだけど、みんなの反応が素敵で、嬉しいものばかりで、その後、自信を持って『POP VIRUS』の制作に臨めました」というMCに導かれたのは、「アイデア」。
明るくてほがらかな気分、暗く沈んだ思いを行き来しながら、有機的なファンクネス、先鋭的なビートを交えて表現された「アイデア」は間違いなく(現時点における)星野の最高到達点であり、この日も大きな享楽と感動を呼び起こしていた。中盤の弾き語りパートはセンターステージで披露。セグウェイに乗ってメインステージに戻り、「つづく日々の〜」のサビが始まった瞬間に銀テープが発射される演出もめちゃくちゃ楽しい。

ダンサーが花道にズラリと並び、巨大なミラーボールが光を放った「Week End」、そして、「素晴らしい景色です。最高です!」という感謝の言葉とともに演奏された「Family Song」で本編は終了した。

撮影 / 西槇太一

観客と星野が手を振り合い、笑顔が広がっていく

星野源のライヴではすでにお馴染みの構成作家・寺坂直毅の口上から始まったアンコールも見どころたっぷり。おなじみの“ニセ明”が「君は薔薇より美しい」をキレキレの動きで熱唱、さらに“ウソノ晴臣”(ハマ・オカモト)も登場し、ふたりでセンターステージに向かう。そこにまさかの星野自身が登場し、3人での絡みに会場はさらに大きな歓声と拍手に包まれる。

撮影 / 渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)

続く「時よ」では「バイバイ〜」という歌詞に合わせて観客と星野が手を振り合い、笑顔が広がっていく。ラストナンバーはアルバム『POP VIRUS』収録の「Hello Song」。「いつかあの日を いつかあの日を/超える未来 Hello Hello/笑顔で会いましょう」というフレーズとともにライヴはエンディングを迎えた。

撮影 / 田中聖太郎

日本のポップスの未来を切り開く傑作『POP VIRUS』を中心とした星野源のポップワールドを存分に味わえる、圧巻としか言いようがないステージだった。

星野源 DOME TOUR 2019「POP VIRUS」
2019.02.27@東京ドーム SET LIST

M01. 歌を歌うときは
M 02. Pop Virus
M 03. 地獄でなぜ悪い
M 04. Get a Feel
M 05. 桜の森
M 06. 肌
M 07. Pair Dancer
M 08. Present
M 09. サピエンス
M 10. ドラえもん
M 11. ばらばら
〜STUTS SHOW〜
M 12. KIDS
M 13. プリン
M 14. くせのうた
M 15. 化物
M 16. 恋
M 17. SUN
M 18. アイデア
M 19. Week End
M 20. Family Song
<ENCORE>
M 21.君は薔薇より美しい
M 22. 時よ
M 23. Hello Song

星野 源(ほしの・げん)

1981年、埼玉県生まれ。音楽家・俳優・文筆家。
2000年にバンドSAKEROCKを結成。2010年に1stアルバム『ばかのうた』にてソロデビュー。2016年10月発表のシングル「恋」は、自身も出演のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』主題歌として社会現象とも呼べる大ヒットを記録。2017年8月に発売した10作目のシングル「Family Song」がオリコンウィークリーシングルランキングにて、同年度のソロアーティストによるシングル作品として最高売上枚数も記録する。2018年は映画『映画ドラえもん のび太の宝島』の主題歌、挿入歌を担当し、主題歌を収録したシングル『ドラえもん』はオリコンウィークリーシングルランキングで1位を獲得したほか、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』の主題歌「アイデア」は初の配信リリースながら、オリコンデジタルランキングにおいて、デイリーチャートの史上最高記録を樹立した。
また、俳優として、映画『箱入り息子の恋』、『地獄でなぜ悪い』等に出演し、第37回日本アカデミー賞新人俳優賞等の映画賞を多数受賞。ほかに、ドラマ『コウノドリ』シリーズ、大河ドラマ『真田丸』、『逃げるは恥だが役に立つ』、『プラージュ』など、出演作も多数。アニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』では声優として初主演を務め、アニメ映画『未来のミライ』にも出演。2019年8月30日には主演映画『引っ越し大名!』が公開を控える。

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